QUESTIONS質問主意書

第162回国会 「イラク戦争における劣化ウラン弾使用並びにイラク住民及び自衛隊員の健康診断等に関する質問主意書」(2005年8月4日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)

質問主意書

質問第四六号

イラク戦争における劣化ウラン弾使用並びにイラク住民及び自衛隊員の健康診断等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十七年八月四日

福島 みずほ   

       参議院議長 扇 千景 殿

   イラク戦争における劣化ウラン弾使用並びにイラク住民及び自衛隊員の健康診断等に関する質問主意書

 政府は、二〇〇四年三月一二日の参議院予算委員会において、「(米国によって)劣化ウラン弾の大部分はムサンナ県よりも北側で使用されたが、サマワ地域においても使用された模様であると、そういう認識を持っております。」と答弁し、その他の委員会でもイラクで劣化ウラン弾の使用について認める発言をしている。また、政府は、劣化ウラン弾の健康に及ぼす影響については、従前どおり国際機関等の調査や報告を根拠にしてその事実を否定している。

 しかし、イラク現地に入ったジャーナリストの報告や米国軍に関する報道等を総合的に判断すると、劣化ウラン弾が使用された場合、その残骸や汚染土壌などによって放射能汚染による被害が生じ得ると考えられる。したがって、イラクに派遣されている自衛隊員のみならず、イラクの住民に対しても健康診断を実施するとともに、放射能汚染された環境の管理と危険の除去がなされるべきである。

 よって、以下質問する。

一 米国や英国などイラクに派兵している国において、派兵された自国軍の兵士が放射能の影響と思われる疾病にかかっているとの情報を得ているか。また、その兵士の子どもに身体的・精神的な異常が特異な発生率により発症しているとの情報を入手しているか。入手しているのであれば、どのような内容を得ているのか公開すべきと考えるが、いかがか。

二 イラクで劣化ウラン弾が使用された地域における住民の健康被害について、どのような情報を入手しているか。特に現地病院などにおいて、遺伝子異常による特異な症状を呈している小児患者の存在、あるいは他地域と比較して流産の発生率が特別に高い状況にあるといった情報はないのか。

三 現地で劣化ウラン弾の影響があるかないかを確認するために、イラクへ派遣されている自衛隊員に携行させている機器は何か。また、その機器で劣化ウランの影響を検知することは十分可能であるのか、その理由とともに示されたい。

四 現地で劣化ウラン弾が使用された地域での活動方法や、劣化ウラン弾の残骸を発見又は触れた場合などの対処方法については、きちんとした指針を作り、指導をする必要があると考える。英国は、兵士に「劣化ウラン情報カード」を配付し安全の確保に努めている。イラクに派遣されている自衛隊員に対して、劣化ウラン弾についての情報提供、研修、教育を実施しているのか。実施しているならば、その指導要領ないしマニュアルなどの内容を具体的に示されたい。実施していないならば、その理由を示されたい。

五 イラクに派遣されている自衛隊員には、劣化ウラン弾の影響を考慮した特別な健康診断を受けさせているのか。受けさせているのであれば、その健康診断の検査項目の具体的内容及び一人当たりの経費も示されたい。受けさせていないのであれば、通常の健康診断をいつ、どの程度の頻度で、どこで受けさせているのか。

六 イラク派遣から帰還した自衛隊員(帰還後に除隊した元自衛隊員を含む。)の健康診断を実施しているか。実施しているのであれば、どのような内容の健康診断をどのような頻度で実施しているのか。

七 劣化ウラン弾が使用された地域におけるイラク住民の健康診断のために、自衛隊が持てるノウハウと資材を活用するつもりはないのか。

八 テレビ朝日「報道ステーション」(二〇〇四年一〇月一八日放映)において、自衛隊が劣化ウラン弾の訓練弾を使用している模様が報道されていた。これは、「特集米軍再編・自衛隊と第一軍団」とのタイトルで、米国ワシントン州ヤマキ演習場にて、自衛隊九〇式戦車に劣化ウラン訓練弾(対戦車用一二〇ミリ弾)を積み込む北海道富良野駐屯地の自衛隊員の模様が映されており、その訓練弾の先端は劣化ウランの代わりにタングステンが使用されているとのことである。自衛隊は、劣化ウラン弾を所持していないし、使用する予定もないと言っているが、なぜ米国ワシントン州の演習場で訓練弾を使用するのか。将来の使用を前提とした技術演習ではないのか。また、同時に劣化ウラン弾の放射能影響に関して留意するノウハウについても指導を受けているのではないか。その内容を具体的に示されたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第四六号

内閣参質一六二第四六号

  平成十七年八月十二日

内閣総理大臣 小泉 純一郎   

       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員福島みずほ君提出イラク戦争における劣化ウラン弾使用並びにイラク住民及び自衛隊員の健康診断等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出イラク戦争における劣化ウラン弾使用並びにイラク住民及び自衛隊員の健康診断等に関する質問に対する答弁書

一について

 政府として、これまでのところ、御指摘のイラクに派遣された外国の軍隊の要員及びその子の疾病等に関する情報を有していない。

二について

 政府として、これまでのところ、劣化ウラン弾の影響による健康への被害の事実を確認する情報を有していない。

三について

 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(平成十五年法律第百三十七号。以下「イラク人道復興支援特措法」という。)に基づきイラクへ派遣されている陸上自衛隊の部隊(以下「イラク復興支援群」という。)においては、自衛隊員の安全及び健康を確保するため、万が一に備え、ガンマ線用線量計を自衛隊員全員に携行させている。劣化ウランはガンマ線を発する特徴を有しているところ、同線量計は、これを携行する自衛隊員個人が受けたガンマ線の累積放射線量を測定する機能を有している。

四について

 イラク復興支援群の自衛隊員に対しては、派遣前に、劣化ウランの特性、三についてで述べたガンマ線用線量計その他の放射線検知器類及び防じんマスクの使用方法等について教育している。御指摘の「指導要領ないしマニュアルなど」については、特に作成していない。

五及び六について

 イラク復興支援群については、万が一に備え、①放射線検知器類を携行させること、②通常と異なる放射線レベルを検知した場合には当該地域には立ち入らない等の対応をとること、③砂嵐が発生した場合には自衛隊員に防じんマスクを着用させること等としており、仮に劣化ウランが活動地域に存在したとしても、自衛隊員が自然界の放射線量を大きく超える放射線を浴びたり、劣化ウランの粉じんを大量に吸い込むような事態が起きることは考えにくいと認識している。

 したがって、現時点では、イラク復興支援群のうち派遣期間が長いイラク復興業務支援隊の自衛隊員に対し、派遣中に一回、現地において臨時の健康診断として、例えば、問診、理学的検査、尿検査等を行うとともに、イラク復興支援群の自衛隊員全員に対し、その所属部隊等において、帰国後直ちに臨時の健康診断として、例えば、問診、理学的検査、尿検査、血液検査、胸部エックス線検査等を行うほか、年一回の定期の健康診断として、例えば、年齢等により違いはあるが、問診、理学的検査、尿検査、血液検査、胸部エックス線検査、胃部エックス線検査等を行うことで問題ないと考えており、御指摘の「劣化ウラン弾の影響を考慮した特別な健康診断」は行っていない。また、自衛隊員が退職した場合には、防衛庁として特段の健康診断は行っていない。

 いずれにせよ、今後とも、自衛隊員の健康については万全を期してまいりたい。

七について

 二についてで述べたとおり、政府として、これまでのところ、劣化ウラン弾の影響による健康への被害の事実を確認する情報を有していない。

 なお、イラク復興支援群においては、イラク人道復興支援特措法第四条に規定する基本計画及びイラク人道復興支援特措法第八条第二項に規定する実施要項に従い、イラク南東部のムサンナー県において、人道復興支援活動としての医療として、病院の運営・維持管理について、イラク人医師等に対して助言・指導を行うとともに、状況に応じ、地域住民等の診療を実施している。

八について

 自衛隊は、劣化ウラン弾を保有しておらず、御指摘の「劣化ウラン訓練弾」を使用した事実もない。

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