QUESTIONS質問主意書

第151回国会 「高レベル放射性廃棄物地層処分の研究開発に関する質問主意書」(2001年2月26日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)

質問主意書

質問第一一号

高レベル放射性廃棄物地層処分の研究開発に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十三年二月二十六日

福島 瑞穂   

       参議院議長 井上 裕 殿

   高レベル放射性廃棄物地層処分の研究開発に関する質問主意書

 高レベル放射性廃棄物の処理処分については、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律が成立し、やっと処分実施主体が設立され、処分実施に向けたプログラムがスタートしたように思われている。しかし、法律では概要調査地区等の処分地選定の手続は不透明で、処分候補地ではどのような調査や試験が行われ、その結果がどうであれば処分地に選定されるかなどは、ほとんど明らかにされていない。

 一方、例えば岐阜県においては、核燃料サイクル開発機構(旧動力炉・核燃料開発事業団)の超深地層研究所計画があり、かねてから処分の候補地に上がっているのではないかという懸念を多くの住民が抱いている。現在の説明では、超深地層研究所と高レベル放射性廃棄物の処分候補地は関係がないとされているが、過去に旧動力炉・核燃料開発事業団(以下「旧動燃」という。)と土岐市で取り交わされた文書や、旧科学技術庁が作成した文献等では、核燃料サイクル開発機構の東濃地科学センター(旧動燃・中部事業所)が中心となって処分予定地選定のための調査が行われていたように読み取ることができる。

 これは、超深地層研究所計画地の周辺及び広く岐阜県に暮らす人々にとっては、非常に重大な関心事である。さらに、岐阜県民のみならず、全国民にとっても、国民の知らないところで、知らないうちに処分予定候補地選定の調査が具体的に行われていたかのような印象を抱かせる記述があることは、重大な問題である。よって、以下質問する。

一 岐阜県土岐市に対し、「動力炉・核燃料開発事業団(原子燃料公社の時代も含む)と土岐市の間で交わされた文書のうち一九九六年三月三一日までの間の文書」を公開請求したところ、二〇〇〇年一一月一三日に開示された文書の中に、一九八八年(昭和六三年)の「中部事業所の業務概要」という文書があった。

 この「中部事業所の業務概要」の「5.地質環境調査」の項には、「中部事業所では、国の定める方針に従って処分予定候補地の選定に資するため、日本全国を対象とした地質環境調査を行うこととしており、このためのデータ収集作業をこれまでに実施してきた国内ウラン資源探査の資料、あるいは探査技術を活用して実施しており、六三年度も調査を継続します。」との記載がある。

 旧動燃の中部事業所が「国の定める方針に従って処分予定候補地の選定に資するため、日本全国を対象とした地質環境調査を行うこととして」いたことを、この資料は明らかにしている。そこで以下の点について明らかにされたい。

1 「中部事業所の概要」の「5.地質環境調査」に記された調査は、本当に行われたのか。

2 実際に調査が行われたのであれば、その調査の正式名称は何と呼ばれていたか。

3 調査の目的は何だったのか。

4 調査は何年から何年まで行われたのか。

5 調査は、どこで行われたのか、具体的に都道府県名と当該自治体名及び字名等を明らかにされたい。

6 調査は、どのような方法によって行われたのか、具体的に示されたい。

7 調査報告書はあるか。あるならばその名称は何か。

8 「中部事業所の業務内容」に記載されている「国の定める方針」とは、旧科学技術庁原子力局が一九八六年一一月に作成した「地層処分研究開発五か年計画」を指すのか。そうでないとすれば、具体的には何を指すのか。

二 期間を一九八七年から一九九一年までと定めている前述の「地層処分研究開発五か年計画」によると旧動燃は地層処分技術の研究開発の中核推進機関と位置付けられている。

 その一方で同資料の中では、旧動燃はこの五か年計画の研究開発と平行して進められる「処分予定地の選定のための調査」を行うものとも書かれている。この旧動燃に課せられた、「処分予定地の選定のための調査」について、詳細は明らかにされていない。そこで以下の点について明らかにされたい。

1 旧動燃による「処分予定地の選定のための調査」は実施されたか。

2 実施されたのであれば、実施期間はいつからいつまでか。

3 実施されたのであれば、その調査はいつどこでどのような方法によって実施されたか。

4 調査報告書はあるか。あるならば、その名称は何か。

三 高レベル放射性廃棄物の処分地選定は、二〇〇〇年五月に成立した特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律に基づいて、これから行われることになっているが、前述の「中部事業所の業務概要」や「地層処分研究開発五か年計画」の記述にも「処分予定候補地の選定」や「処分予定地の選定」などの表現がある。これらの表現は何を意味するのか政府の見解を示されたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第一一号

内閣参質一五一第一一号

  平成十三年四月十三日

内閣総理大臣 森 喜朗   

       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員福島瑞穂君提出高レベル放射性廃棄物地層処分の研究開発に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島瑞穂君提出高レベル放射性廃棄物地層処分の研究開発に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「中部事業所の業務概要」に記載されている「地質環境調査」(以下「本件調査」という。)について、核燃料サイクル開発機構(以下「サイクル機構」という。)から聴取したところ、その概要は次のとおりである。

1 本件調査は、サイクル機構の前身である動力炉・核燃料開発事業団(以下「動燃事業団」という。)の中部事業所において、昭和六十一年度から昭和六十三年度までの間、日本各地の地層に関する基礎的な情報を得ることを目的として、おおむね日本全国を対象として、各調査地点の地層に係る文献の調査又は各調査地点における地表踏査によって実施された。また、本件調査の結果は、「広域調査地表調査シート(昭和61年度および昭和62年度)」及び「広域調査地表調査シート(昭和63年度)」と題する報告書として取りまとめられている。

 本件調査は、法令に基づくものではないから、法令上の正式名称は存在していない。

2 本件調査は、約五百七十地点において実施された。本件調査は、日本各地の地層に関する基礎的な情報を得ることを目的として、おおむね日本全国を対象として実施したものであるが、その調査の対象となった地点を公表した場合、当該地点の周辺地域がサイクル機構により放射性廃棄物が持ち込まれる候補地であると誤って理解をされ、当該周辺地域の住民等に混乱を引き起こす可能性があることから、サイクル機構としては、現時点においては、当該地点を公表することができるかどうか慎重に検討すべきであると考えている。

 なお、サイクル機構においては、今後、情報公開請求があった場合、公開の原則等を定めたサイクル機構の情報公開指針に従って、外部の有識者により構成される情報公開委員会の意見を聴いて、個別に公開請求に係る資料の公開又は非公開の判断を行っていくこととしている。

3 昭和六十一年度及び昭和六十二年度における本件調査は、「放射性廃棄物処理処分方策について(中間報告)」(昭和五十九年八月七日原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会報告。以下「昭和五十九年中間報告」という。)及び「放射性廃棄物処理処分方策について」(昭和六十年十月八日原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会報告。以下「昭和六十年報告」という。)において、動燃事業団は高レベル放射性廃棄物の処分予定地の選定主体として「広域調査」(精密調査地点の選定等を目的として、複数地点において行われる地表踏査等による岩体規模等の調査をいう。以下同じ。)及び「精密調査」(広域調査によって順次選定された候補地点において行われる水理機構調査及び試すい等による岩体規模、岩石特性等の調査をいう。以下同じ。)を行うこととされたことを受けて、「広域調査」の一部として実施された。また、昭和六十三年度における本件調査は、「原子力開発利用長期計画」(昭和六十二年六月二十二日原子力委員会決定。以下「昭和六十二年長期計画」という。)において、国が別に決定する処分事業の実施主体が処分予定地の選定を行い、動燃事業団は「地質環境等の適性を評価するための調査」を実施するとされたことを受けて、その一部として実施された。「中部事業所の業務概要」に記載されている「国の定める方針」は、昭和六十二年長期計画における右の内容を指している。

二について

 御指摘の「地層処分研究開発5ケ年計画」(昭和六十一年十一月二十一日科学技術庁原子力局策定。以下「5ケ年計画」という。)における「処分予定地の選定のための調査」は、昭和五十九年中間報告及び昭和六十年報告において動燃事業団が行うこととされた「広域調査」及び「精密調査」を意味している。これらの調査について、サイクル機構から聴取したところ、その概要は次のとおりである。

1 「広域調査」として実施されたものとしては、一についてで述べた昭和六十一年度及び昭和六十二年度における本件調査のほか、昭和六十年度から昭和六十二年度までの間、文献の調査、航空写真及び人工衛星(ランドサット)画像の判読及び解析による調査並びに地表踏査(以下「本件調査以外の広域調査」という。)が実施されており、本件調査以外の広域調査の結果を取りまとめた調査報告書の名称は別紙のとおりである。

 なお、「精密調査」については、昭和五十九年中間報告及び昭和六十年報告において、「広域調査」によって候補地点を選定した上で実施するとされていたところ、昭和六十二年長期計画の決定を受けて、具体的な候補地点を選定しないまま「広域調査」を終了したことから、実施されていない。

2 サイクル機構においては、本件調査以外の広域調査の対象となった地点を公表した場合、当該地点の周辺地域がサイクル機構により放射性廃棄物が持ち込まれる候補地であると誤って理解をされ、当該周辺地域の住民等に混乱を引き起こす可能性があることから、サイクル機構としては、現時点においては、当該地点を公表することができるかどうか慎重に検討すべきであると考えている。

 なお、サイクル機構においては、今後、情報公開請求があった場合、公開の原則等を定めたサイクル機構の情報公開指針に従って、外部の有識者により構成される情報公開委員会の意見を聴いて、個別に公開請求に係る資料の公開又は非公開の判断を行っていくこととしている。

三について

 御指摘の5ケ年計画における「処分予定地の選定」との表現については、昭和五十九年中間報告及び昭和六十年報告において、高レベル放射性廃棄物については「地層処分による」とされるとともに、「処分予定地の選定は、動力炉・核燃料開発事業団が」行うとされたことを踏まえたものである。

 また、サイクル機構から聴取したところ、御指摘の「中部事業所の業務概要」における「処分予定候補地の選定」との表現は、昭和六十二年長期計画において、高レベル放射性廃棄物については「深地層中に処分することを基本的な方針とする」とされるとともに、「処分予定地の選定は処分事業の実施主体に行わせる」とされたことを踏まえたものであるとしている。

 なお、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号)に定められた概要調査地区、精密調査地区及び最終処分施設建設地については、同法に従って、原子力発電環境整備機構が選定することとされている。

別 紙 1/2

別 紙 2/2

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