QUESTIONS質問主意書
第162回国会 「義務教育諸学校教科書採択の公正確保に関する質問主意書」(2005年3月24日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)
質問主意書
質問第一二号
義務教育諸学校教科書採択の公正確保に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成十七年三月二十四日
福島 みずほ
参議院議長 扇 千景 殿
義務教育諸学校教科書採択の公正確保に関する質問主意書
義務教育諸学校において使用される教科用図書無償制度は、国民の教育を受ける権利を差別なく保障するために重要な柱であるがゆえに、国家財源で賄われている。貴重な国家財源が支出されていることから、旧文部省や現在の文部科学省は採択をめぐる不当な金銭や便宜の授受、あるいは過当な宣伝活動等を禁じ、採択関係者に対しても「公正確保」の徹底が指導されてきた。
しかし、教科書採択に当たっては、教育関係者の利害が大きく左右されることから、かつて採択過程において不当な金銭や便宜の授受が発覚して大きな問題となっただけでなく、文部科学省自身も平成十五年十一月二十一日一五文科初第八百二十七号文部科学省初等中等教育局長通知「教科書採択の公正確保の徹底について」において、以下のように問題を認めている。
「平成十三年度の小・中学校教科書採択をめぐり、採択関係者が収賄で逮捕・起訴されたことは、極めて遺憾であります。教科書の採択は、児童生徒により良い教科書を提供する観点から、各採択権者の権限と責任のもと、教科書の内容についての十分かつ綿密な調査研究によって公正かつ適切に行われるべきものです。各教育委員会においては、採択関係者に対し、法令遵守は言うまでもなく、発行者の過当な宣伝行為を誘発するような行為も厳に慎み、社会の疑惑を招くことのないよう、採択の公正確保について改めて指導の徹底を図るとともに、域内の市町村教育委員会に対しても周知をお願いいたします。」
改めて、本年四月以降小・中学校教科書採択手続が開始されるが、その過程において社会に疑惑を招くようなことのないよう求める趣旨から、以下質問する。
一、義務教育諸学校教科用図書の採択にかかわる都道府県教育委員会の権限と責任について
義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律及びその施行令による義務教育諸学校において使用する教科用図書の研究の計画及び実施、選定審議委員の任命、採択基準の作成・選定に必要な資料の作成、市町村教育委員会の行う採択業務に対する指導・助言・援助並びに都道府県立の盲聾養護学校小学部・中学部及び中等教育学校の前期課程で使用する教科書の決定のすべてが地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条第六号に規定されている都道府県教育委員会の権限と責任に含まれると解されるが、その権限と責任について具体的に示されたい。
二、教科書採択に関し「指導」を行う権限と責任を有する機関について
文部科学省設置法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律並びに地方自治法(それぞれの施行令等を含む。)によれば、教科書採択に関して「指導」権限を有するのは文部科学省及び教育委員会であり、選定審議会・調査員等は、その指導の下にそれぞれの事務を行うと解されるが、教科書採択に関し「指導」を行う権限と責任を有する機関はどこか具体的に示されたい。
三、昭和三十三年四月十四日文初教第二百三十一号各都道府県教育委員会あて文部省初等中等教育局長通知「教科書の編著作者等が選定・採択等に関与することの排除について」の解釈について
1 「事実上編著作に参加し、またはこれに協力した者」、「編著作に関与した者」とはどのような者か、具体的に示されたい。
2 「教科書または教師用指導書の編著作者ないしは編著作に関与した者(以下「編著作者等」という。)は、教科書の選定・採択等に関与し、またはその指導を行わないようにすること。」、「編著作者等には、事実上編著作に参加し、またはこれに協力した者を含むものとし、団体が編著作者等である場合には、上記に該当する者ならびにその団体の役員およびこれに準ずる者を編著作者等とすること。」とされている。この内容は現在も維持されていると解されるが、いかがか。
3 今次の検定申請本が平成十三年検定合格教科書の部分改訂となっている場合、平成十三年検定合格教科書の監修者は、「事実上編著作に参加し、またはこれに協力した者」、「編著作に関与した者」に該当すると考えられるが、いかがか。
四、昭和三十九年二月十四日文初教第九十六号各都道府県知事・各都道府県教育委員会・義務教育諸学校を付置する各国立大学長あて文部省初等中等教育局長通達「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律等の施行にともなう事務処理について」の解釈について
1 「都道府県の教育委員会が、市町村の教育委員会等の採択を行なう者に対し行なう指導、助言または援助の内容」として、「採択の公正確保のための指導を行なうこと」が挙げられている。この内容は現在も維持されていると解されるが、いかがか。
2 「採択の公正確保のための指導を行なう」立場にあり、採択の適正・公正の確保に関し問題が生じた場合には適切な措置を講ずる立場にある都道府県教育委員会には、指導される側と少なくとも同等の「公正さ」が求められると考えるが、いかがか。
3 「教科用図書の採択に直接の利害関係を有する者」には、「教科用図書および教師用指導書の著作者(事実上、著作に参加し、または協力した者を含む。)」が含まれるとしている。この内容は現在も維持されていると解されるが、いかがか。
4 「教科用図書の採択に直接の利害関係を有する者」の例として、「顧問、参与、嘱託等いかなる名称によるを問わず、事実上発行者の事業の運営に重要な影響力を有している者」、「著作者が団体である場合は、その団体の役員およびこれに準ずる者」を挙げている。
ある教科書の作成を全面的に支援し、今次の検定申請後も教科書出版社名やその教科書名を明示して、機関誌及び一般の新聞等を通じて採択推進運動を行っている団体において、昨年十二月まで重要な役職に就いて活動していた者は、「教科用図書の採択に直接の利害関係を有する者」に該当すると考えられるが、いかがか。
五、文部省初等中等教育局『教科書採択事務取扱要領』(平成三年発行)の解釈について
1 「教科書の編著作者はその教科書の発行と密接な関係があるので、それらの者が教科書の採択等に関与する場合には、おのずからの結果として採択の公正な実施が阻害される恐れがある。したがって、教科書の編著作者ないし編著作に関与した者は、教科書の採択に関与し又はその指導を行ってはならないものである。」としている。この内容は現在も維持されていると解されるが、いかがか。
2 「教科書の採択に関与し又はその指導を行ってはならない」とされていることから、選定審議会・調査員等には採択に関する「指導」権限はない。また、「教科書の編著作者ないし編著作に関与した者」も初めから選定審議会・調査員等になることができない。これらのことは、教育委員会に適用されるべきであり、教科書の編著作者ないし編著作に関与した教育委員は教科書の採択に関与し又はその指導を行ってはならないと解されるべきと考えるが、いかがか。
六、教育委員の教科書採択への関与について
平成十五年十一月二十一日一五文科初第八百二十七号文部科学省初等中等教育局長通知「教科書採択の公正確保の徹底について」では、「教科書の編著作者が採択に関与することについては、従来より文部科学省の指導により禁止しているところですが、各教育委員会においては、引き続き、採択手続に参加させようとする者から編著作者等でない旨の確認を得るなどの方法により、編著作者等が教科書採択に関与することがないよう御留意願います。」としている。教育委員会が採択の手続き上、一で示した権限を有することから、教育委員は「教科書採択関係者」に当たり、「教科書の編著作者等」に該当する教育委員は教科書採択に関与することがないようにすべきであるというのが、文部科学省の指導であると解するが、いかがか。
右質問する。
答弁書
答弁書第一二号
内閣参質一六二第一二号
平成十七年四月一日
内閣総理大臣 小泉 純一郎
参議院議長 扇 千景 殿
参議院議員福島みずほ君提出義務教育諸学校教科書採択の公正確保に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員福島みずほ君提出義務教育諸学校教科書採択の公正確保に関する質問に対する答弁書
一について
都道府県の教育委員会は、義務教育諸学校(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する小学校、中学校、中等教育学校の前期課程並びに盲学校、聾学校及び養護学校の小学部及び中学部をいう。以下同じ。)の教科用図書(学校教育法第二十一条第一項(同法第四十条、第五十一条の九第一項及び第七十六条において準用する場合を含む。)及び第百七条に規定する教科用図書をいう。以下同じ。)の採択に関し、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(昭和三十八年法律第百八十二号。以下「無償措置法」という。)及び義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律施行令(昭和三十九年政令第十四号)の諸規定により、義務教育諸学校において使用する教科用図書の研究に関する計画及び実施、市町村(特別区を含む。以下同じ。)の教育委員会及び義務教育諸学校(公立の義務教育諸学校を除く。)の校長の行う採択に関する事務についての適切な指導、助言又は援助、教科用図書採択地区の設定並びに教科用図書選定審議会の委員の任命を行うこととされており、また、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)第二十三条第六号の規定により、都道府県立の義務教育諸学校において使用する教科用図書の採択を行うこととされている。
二について
教科用図書の採択に関しては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四十八条第一項の規定により、文部科学大臣は都道府県又は市町村に対し、都道府県教育委員会は市町村に対し、都道府県又は市町村の教育に関する事務の適正な処理を図るため、必要な指導を行うことができることとされている。また、無償措置法第十条の規定により、都道府県の教育委員会は、当該都道府県内の義務教育諸学校において使用する教科用図書の採択の適正な実施を図るため、市町村の教育委員会及び義務教育諸学校(公立の義務教育諸学校を除く。)の校長の行う採択に関する事務について、適切な指導を行わなければならないこととされている。
三の1について
「教科書の編著作者等が選定・採択等に関与することの排除について」(昭和三十三年四月十四日付け文初教第二百三十一号文部省初等中等教育局長通知)に記された「事実上編著作に参加し、またはこれに協力した者」及び「編著作に関与した者」については、例えば、教科用図書の編著作者ではないが、原稿を読んで誤りを正したり不足を補ったりする作業を行い編著作に関与した者などが含まれる。
三の2について
お尋ねの通知の内容については、現在も維持されている。
三の3について
教科用図書の検定は、制度上、各年度において発行者等が検定申請する図書について行うものであり、過去に検定を経た教科用図書の発行者等が、当該教科用図書と共通の記述がある教科用図書を新たに検定申請する場合であっても、当該検定申請に係る教科用図書は過去に検定を経た教科用図書とは別のものとして取り扱われる。また、教科用図書の採択は、年度ごとに、検定を経て教科書目録に登載された教科用図書の中から行うものである。
したがって、特定の者が教科用図書の編著作者又は編著作に関与した者に該当するかどうかは、それぞれの教科用図書ごとに判断されるべきものである。一般に、過去に検定を経た教科用図書と新たに検定を経た教科用図書に共通の記述があるという理由だけで、過去に検定を経た教科用図書の監修者が、直ちに、新たに検定を経た教科用図書の編著作者又は編著作に関与した者に該当するとは言えないと考える。なお、個別具体の事案については、採択の事務を行う教育委員会等において判断されるものと考える。
四の1について
お尋ねの通知の内容については、現在も維持されている。
四の2について
都道府県教育委員会が市町村教育委員会等に対し採択に関する指導、助言又は援助を行う場合にも、公正な立場から行うことが求められると考える。
四の3について
お尋ねの通知の内容については、現在も維持されている。
四の4について
お尋ねのような者が「教科用図書の採択に直接の利害関係を有する者」に該当するかどうかについては、その者が事実上発行者の事業の運営に重要な影響力を有しているかどうか、お尋ねのような団体が教科用図書の著作者であるかどうかなどを勘案して、個別具体の事案に即して都道府県の教育委員会において判断されるものと考える。
五の1について
お尋ねの内容については、現在も維持されている。
五の2及び六について
文部科学省においては、従来から、教科用図書の編著作者又は編著作に関与した者が採択に関与しないよう指導しているところであり、採択の対象となる教科用図書の編著作者である教育委員又は編著作に関与した教育委員は、当該教科用図書の採択に関与すべきではないと考える。
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