QUESTIONS質問主意書

第165回国会 「朝鮮人労務者等に対する未払金等の取扱いに関する質問主意書」(2006年12月14日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)

質問主意書

質問第四四号

朝鮮人労務者等に対する未払金等の取扱いに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十八年十二月十四日

福島 みずほ   

       参議院議長 扇 千景 殿

   朝鮮人労務者等に対する未払金等の取扱いに関する質問主意書

 二〇〇四年一二月、私は「朝鮮人労務者等に対する未払金その他の取扱いに関する質問主意書」(第一六一回国会質問第二二号)を提出し、未払金の取扱いについて内閣に質問した。しかし、「供託された供託物については、現時点において、特段の措置を採ることは考えておらず、その保管を継続することとしている。」と答弁するなど、残念ながら、この問題を解決していこうとする姿勢は見られなかった。一方、韓国では、新たな国内措置として強制徴用被害者に対する未払金の補償及び支給をするための「日帝強占下国外強制動員犠牲者等の支援に関する法律案」が国会に提出されている。

 そこで、以下質問する。

一 日韓条約・請求権協定における強制徴用被害者への補償について

1 日本政府は、一九六五年の日韓条約・請求権協定の無償資金の中に、強制徴用への補償支払いが含まれていると認識しているのか。

2 含まれていると認識しているのであれば、韓国政府への無償資金三億ドルのうち、どの程度を強制徴用者への補償分と想定していたか。

二 日本銀行に保管されている未払金について

1 日本銀行に保管されている未払金は、現在、現金一億六七七九万一四〇〇円、有価証券四七三五万五六〇〇円保管されている。この未払金は、当時と現在の貨幣価値の変化を勘案すると、現在ではどの程度の金額になると試算されるか。

2 戦後、この未払金を強制徴用労働者に返却するために、日本政府はどのような努力を行ったか。

3 一九六五年の日韓条約・請求権協定締結の協議の中で、韓国側に提供した無償資金の中に未払金を含めるという話合いは行われたのか。

4 一九六五年の日韓条約・請求権協定締結の協議の中で、未払金を強制徴用労働者に返却するための方法について協議されたか。協議されたのであれば、その内容を明らかにされたい。

5 戦後、日本政府が保管する強制徴用労働者についての資料を韓国政府に提供したか。提供したのであれば、いつ、どのような資料を提供したのか、明らかにされたい。

三 無事生還した者への補償について

1 韓国政府によれば、死亡又は負傷することなく生還した韓国の強制徴用被害者に対する補償について、一九六五年の日韓条約・請求権協定に関する協議の席上、日本政府が自国内の援護対象に生還者が含まれていないことを理由に強く反対したとされている。このような日本政府の姿勢は事実か。

2 日本政府が、戦後、太平洋戦争において死亡した者、負傷した者及び遺族に対して支払った補償額及び年金の総額をそれぞれ明らかにされたい。

3 日本政府は、朝鮮半島で生存している強制徴用者だった者に対して、何らかの措置を追加的に行う考えはあるか。

  右質問する。

答弁書

答弁書第四四号

内閣参質一六五第四四号

  平成十八年十二月二十日

内閣総理大臣 安倍 晋三   

       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員福島みずほ君提出朝鮮人労務者等に対する未払金等の取扱いに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出朝鮮人労務者等に対する未払金等の取扱いに関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「強制徴用」の趣旨が明らかではないが、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和四十年条約第二十七号。以下「日韓請求権・経済協力協定」という。)第二条1において、いわゆる朝鮮人徴用者等の問題を含め「両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、(中略)完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認」している。お尋ねの「無償資金」を含む日韓請求権・経済協力協定に基づいて行った経済協力とは、このような日韓両国及びその両国民間の財産、権利及び利益並びに請求権に関する問題の解決と並行して、日韓間の歴史的な特別の関係にかんがみ、また今後両国間の友好関係を確立するという大局的見地に立って、韓国の経済の発展に寄与するために行うこととしたものである。

二の1及び2について

 旧厚生省労政局長から「朝鮮人労務者等に対する未払金その他に関する件」と題する通達(昭和二十一年十月十二日付け労発第五百七十二号)を地方長官に対し発出し、終戦による社会的混乱と朝鮮人労働者の帰国等によるこれら労働者の居所不明、通信不能等の事情のために、事業主がこれら労働者に対して支払うことができなくなっている場合に関し、できる限り供託手続を執るよう関係事業主に対する指導を行い、未払賃金等の散逸の防止に努めた。

 なお、予算決算及び会計令(昭和二十二年勅令第百六十五号)第百三条及び第百四条の規定において、各省各庁の長の保管する金銭及び有価証券は、日本銀行に寄託すべきものとされていることから、法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又は法務大臣が指定したこれらの出張所が、同通達に基づき供託物として受け入れた金銭及び有価証券については、日本銀行に寄託して保管される。

 お尋ねの日本銀行に保管されている未払金が、具体的に、いつの時点でされたどの供託事件に関するものかが明らかでなく、お尋ねについてお答えすることは困難である。

二の3及び4並びに三の1について

 日韓間では、財産及び請求権の問題、経済協力等について議論した結果、千九百六十五年の国交正常化に際して、日韓請求権・経済協力協定を締結しているが、その議論の詳細については、日朝間の協議に与える影響等にかんがみ、お答えすることは差し控えたい。

二の5について

 平成二年五月二十五日の日韓外相会談の際に、韓国側から終戦前に徴用された者の名簿の入手について協力要請があったことを受け、政府は、各都道府県、各市区町村、いわゆる朝鮮人徴用者等を受け入れていた可能性がある民間事業所等に対し、韓国政府に提出することを目的として調査を依頼した。その結果、提供された情報を取りまとめて、平成三年三月五日に九万八百四人、平成四年十二月二十五日に一万七千百七人のいわゆる朝鮮人徴用者等に関する名簿の写しを駐日韓国大使館へ提出している。

三の2について

 お尋ねの「太平洋戦争において死亡した者、負傷した者及び遺族に対して支払った補償額及び年金の総額」の意味が必ずしも明らかではないが、昭和十六年十二月八日以後における戦争公務等により障害の状態となった者及び死亡した者の遺族に対する恩給法(大正十二年法律第四十八号)に基づく恩給、戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)に基づく年金等の戦後の支給総額については、把握しておらず、お答えすることは困難である。

三の3について

 お尋ねの「措置を追加的に行う」の意味が必ずしも明らかではないが、韓国との間では、日韓請求権・経済協力協定第二条1に規定されているとおり、両国及びその国民の間の財産、権利及び利益並びに請求権の問題は、完全かつ最終的に解決されたことが確認されている。また、北朝鮮との間では、日朝平壌宣言において「双方は、国交正常化を実現するにあたっては、千九百四十五年八月十五日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議する」ことが明記されており、いわゆる朝鮮人徴用者等の問題を含め、右のとおり日朝平壌宣言に明記されているところに従い、日朝国交正常化交渉において協議されるべきものである。

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