QUESTIONS質問主意書
第166回国会 「森林行政全般にかかわる政府の施策に関する質問主意書」(2007年4月16日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)
質問主意書
質問第二七号
森林行政全般にかかわる政府の施策に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成十九年四月十六日
福島 みずほ
参議院議長 扇 千景 殿
森林行政全般にかかわる政府の施策に関する質問主意書
平成十三年、林業基本法は、森林・林業基本法に改正され、同法に基づき森林・林業基本計画を作成することとしており、昨年九月、五年ぶりに森林・林業基本計画が見直されたと承知しているが、政府は、森林行政において、国として責任を持った森林管理、国土保全、環境保全、木材の安定的な供給を行うべきであり、国民生活の安全と安心の確保、持続可能な森林経営等が今後ますます重要になると考える。
そこで、以下質問する。
一 森林・林業基本法の成立以降、森林にかかわる計画制度の確立が求められ、森林整備地域活動支援交付金制度が確立されたが、民有林千二百六十万ヘクタールの中で森林の所有が不明確な、いわゆる不在村林は三百万ヘクタールを超える状況となっており、全国森林計画において義務付けられている各種計画の作成が不十分となっている。森林の管理・整備や国有林・民有林の連携を考えた場合、適切な森林計画を作成するとともに、日常的な管理・巡視等をどのように行うかが重要となる。その調査等を実施するために国として「森林レンジャー」を安定的に配置・育成する必要があると考えるが、具体的な対応策を明らかにされたい。
二 林業が抱えている大きな課題として、担い手対策がある。林業労働者について、平成十七年度は五万二千人であるが、林野庁は、平成二十七年の見通しを三万六千人程度としている。また、年齢構成でみると六十歳以上が一万九千三百人であるのに対し、四十歳未満は、九千九百人と平成十二年度の調査と比較して千六百七十一人も減少している。林業労働は長い経験を要するものであり、国有林内に人材育成のための研修施設や技術開発にかかわる施設もあると聞いているが、施設の更なる整備や民間林業労働者の研修施設としての活用を含めて、林業労働者をどのように確保していくか、具体的な対策を明らかにされたい。
三 林業労働における死亡災害の発生状況は、平成十五年度六十一件、平成十六年度四十六件、平成十七年度には四十七件、平成十八年度では五十七件と増加している。また、発生の頻度(度数率)で比べた場合、平成十七年度の全産業が三・三四であるのに対し、林業は四十六・三二と著しく高くなっている。こうした災害を根絶するために、安全教育にかかわる国としての支援等が不可欠であり、林業経験者を活用した労災防止指導員の確保等、林野行政と一体的に進めるべきと考えるが、具体的な対策を明らかにされたい。
四 林野庁は、地球温暖化防止対策等にかかわる森林吸収量千三百万炭素トンの目標達成のためには、百十万炭素トンの更なる確保が必要であり、そのための予算の必要額は毎年度千三百三十億円(平成十九年度から二十四年度)とし、毎年二十万ヘクタール(六年間で百二十万ヘクタール)の追加的な森林整備を確保する必要があるとしている。しかし、平成十八年度補正予算五百三十億円に加えて、平成十九年度予算二百三十五億円を合わせて総額七百六十五億円が確保されたが、地方自治体や森林所有者による費用負担が発生する仕組みとなっている。このことから、政府予算で措置したとしても、現状の地方財政の悪化や木材価格の低迷などから、間伐等の森林整備の実行が困難となっており、地方自治体や森林所有者等の負担軽減対策が必要となっている。この状況に対して、更なる予算措置や他の施策による対応を図るべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
五 日本は、毎年台風が多数上陸し、森林関係の被害総額は、平成十二年度から平成十六年度の五カ年合計で六千三百六十六億円であるが、この間政府が復旧対策として措置した予算は、千六百四十五億円でしかない。災害復旧への予算措置、災害の予防対策も含めた予算の拡充を図るべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
六 平成十七年度における国内材の使用量は、八千七百四十二万立方メートルで、うち国産材の使用量は千七百十八万立方メートルにとどまり、自給率は二十パーセントにすぎない。また、平成十八年のスギ中丸太、ヒノキ中丸太の木材価格は、ピーク時の四割まで落ち込んでいる。林野庁の試算によれば、平成二十七年の国有林・民有林からの供給目標を二千三百万立方メートルとしているが、現状は、木材価格が安定していないこと、川上における森林資源と供給量が把握しきれていないこと等もあり、目標達成が厳しい状況にある。政府として、森林の実情の把握、地元における加工技術と受入れ、住宅メーカー等との連携等の対策を進めるなど、具体的な対策を検討し、提示すべきではないか。また、国が設置する施設については、国産材の使用を基本として対応すべきではないか。政府の見解をそれぞれ示されたい。
右質問する。
答弁書
答弁書第二七号
内閣参質一六六第二七号
平成十九年四月二十四日
内閣総理大臣 安倍 晋三
参議院議長 扇 千景 殿
参議院議員福島みずほ君提出森林行政全般にかかわる政府の施策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員福島みずほ君提出森林行政全般にかかわる政府の施策に関する質問に対する答弁書
一について
意欲ある森林所有者や林業事業体等による森林施業計画の作成を促進するため、森林整備地域活動支援交付金により、森林施業の実施に必要な情報を収集する活動に対する支援等を行うこととしている。
これに加えて、不在村森林所有者に対し、森林組合等が森林施業の委託を働きかける取組に対する支援や、林業普及指導員による指導を通じ、森林施業計画が適切に作成されるとともに森林施業が着実に実施されるよう取り組んでおり、今後とも、これらの取組の円滑な実施を図ってまいりたい。
二について
林業就業者の減少と高齢化が進む中で、今後の森林整備を着実に推進していくためには、担い手の確保や育成を図っていくことが重要である。
このため、平成十五年度から、新規就業者を対象として、林業に必要な技術及び技能を習得するための実践的な研修を現地で行う緑の雇用担い手育成対策事業を実施し、平成十八年度当初時点で約三千八百人の新規就業者を確保したところである。さらに、同年度から、かかり木処理等のより高度な技術に関する研修を行う緑の雇用担い手対策事業を実施しているほか、就業準備のための無利子資金の貸付けや都道府県の森林整備担い手対策基金を通じた支援を行っているところである。今後とも、森林整備を担う林業就業者の確保や育成を図るため、各般の事業を総合的に推進してまいりたい。
なお、森林技術総合研修所林業機械化センターにおいては、国有林の職員のみならず、地方公共団体からの研修生や民間の林業従事者を受け入れ、高性能林業機械の研修を始めとした人材育成のための研修を実施しており、今後とも、同研修所を活用した人材育成のための研修を実施していく考えである。
三について
労働行政及び林野行政の関係機関が合同で巡回すること等により、林業事業場に対し、労働者に対する安全のための教育の徹底等について指導を行っているほか、林業・木材製造業労働災害防止協会が行う安全のための教育等の自主的活動への指導及び援助に努めているところである。
さらに、現場作業者に対する安全な作業技術の現地検討会の開催に対し支援を行うほか、安全で使いやすい機械・器具の開発等に取り組み、林業労働災害の防止に努めてまいりたい。
四について
森林吸収源対策の推進を図るため、平成十八年度補正予算及び平成十九年度予算において約二十三万ヘクタールの追加的な森林整備に相当する、計七百六十五億円の予算を措置したところである。
これらの事業の実施に伴い地方公共団体が負担する経費に対しては、普通交付税等の地方財政措置が講じられているとともに、川上と川下の連携による間伐材等の安定供給を通じた国産材の利用拡大、作業道等の路網整備と高性能林業機械の組合せによる施業の低コスト化等を推進することにより、間伐の収益性を高め、実質的に森林所有者の負担軽減につながる施策を推進しているところである。また、平成十九年度から、新たに未整備森林の解消を図るため、国からの定額助成方式により、都道府県等が森林所有者に代わって森林施業を実施するモデル事業を行うこととしている。
今後とも、京都議定書目標達成計画(平成十七年四月二十八日閣議決定)に基づく森林吸収源対策の目標達成に向け、所要の財政措置を含め、諸対策の推進に努めていく考えである。
五について
梅雨前線豪雨や台風等による山地災害の発生箇所に対し、再度の災害発生の防止を図る観点から荒廃箇所や被災施設の早期復旧を行う災害関連緊急治山等事業や治山施設災害復旧事業等の災害復旧関係事業を実施するのに必要かつ十分な額として、平成十二年から平成十六年までの五年間で事業費約千九百五十六億円が計上されてきたところである。また、これらに加え、経常の治山事業においても、荒廃箇所の計画的な復旧対策等を講じてきたところである。
今後とも、山地災害の復旧対策及び予防対策を図るための所要の予算額の確保に努め、事業の適切な実施を通じて、国民の安全・安心の確保が図られるよう万全を期していく考えである。
六について
森林・林業基本計画(平成十八年九月八日閣議決定)において示されている林産物の供給及び利用に関する目標を達成するためには、品質及び性能の明確な製品を大量かつ安定的に供給し得る体制を整備していくことが重要である。このため、川上と川下が連携して、伐採可能な立木資源に関する情報のデータベース化を行い、原木供給側と加工側の需要に関する情報の結び付け等を図るとともに、住宅メーカー等の大口需要者に対し大ロットで安定的に供給する新たな加工・流通体制の整備等を支援してまいりたい。
また、国が設置する施設について国産材の使用を基本とすべきとの点については、公共の施設において国産材の使用を義務付けることは、千九百九十四年四月十五日マラケシュで作成された政府調達に関する協定により、政府機関等による産品の調達に当たり外国産品より国内産品を優先して使用することが禁止されていることを踏まえて対応すべきと考えているが、森林整備のために国産材を利用することの重要性について普及啓発に努めてまいりたい。
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