QUESTIONS質問主意書

第166回国会 「自己管理型労働制の検討過程等に関する質問主意書」(2007年3月1日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)

質問主意書

質問第一〇号

自己管理型労働制の検討過程等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年三月一日

福島 みずほ   

       参議院議長 扇 千景 殿

   自己管理型労働制の検討過程等に関する質問主意書

 規制改革・民間開放推進会議の答申に沿って検討が進められてきた、いわゆる自己管理型労働制(以下「本制度」という。)の導入については、労働政策審議会労働条件分科会の労働者委員が「導入は認められない」との意見を明らかにしているほか、多くの労働者とその家族が過労死や過労自殺を増大させることになると危機感を募らせている。こうした中で、本制度の導入を図ることは、この間の検討が、専ら「過労死は労働者の自己責任」等の発言を繰り返す一部の経営者(使用者)の意見にのみ依拠したものとの疑念を抱かざるを得ない。

 このような観点から、働く人々の健康、生活、そして権利に重大な影響を及ぼす本制度の検討過程や必要性等について、以下質問する。

一 本制度の検討に当たって、多くの国民が懸念する過労死や過労自殺の予防の観点から、産業医学の研究者を交えた専門医学的な検討を行った実績の有無を明らかにされたい。仮にあるとした場合、本制度の検討に当たって、検討結果をどのように反映させたのか明らかにされたい。

二 本制度の検討に当たって、厚生労働大臣は、本年一月十六日の閣議後の記者会見で「私も具体の話もいろいろな方々に当たって聞いている」と発言しているが、厚生労働大臣及び同省幹部は、過労死や過労自殺の予防を強く訴える「全国過労死を考える家族の会」と面会し、直接意見を聴いたことはあるか。仮にないとすればその理由を示されたい。

三 本制度の下で、過労死や過労自殺を防止する法的措置は万全のものであると考えるか。また、本制度の下で、過重労働による過労死や過労自殺が発生することはないと断言できるか。仮に断言できない場合、その責任は使用者、労働者のどちらが負うことになるのか。それぞれ政府の見解を示されたい。

四 本制度について、「労働時間規制を適用除外とし、労働時間を自分で決めることができるようにする制度」と説明しているが、現行法には、労働者が労働時間を自分で決めることができることを前提としたフレックスタイム制が定められている。フレックスタイム制を活用することでは足りず、本制度の導入に固執する理由を明らかにされたい。また、現行法上、労働者が労働時間を自分で決めることを直接妨げる条項はあるか明らかにされたい。

五 本制度の下で、使用者は個々の労働者に対して、一定の仕事量や一定の達成目標を設定することは可能か。仮に可能であるとするなら、本制度の下で、過大な仕事量や達成目標によって過重労働が引き起こされ、過労死や過労自殺を生じさせる危険はないのか。また、本制度と同様に「労働時間を自分で決めることができるようにする制度」である裁量労働制の下で発生した過労死や過労自殺について、過重労働が原因となった例はあるのか。それぞれ明らかにされたい。

六 平成十四年二月十二日付基発第〇二一二〇〇一号「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」では、「発症前一か月間におおむね百時間を超える時間外労働が認められる場合又は発症前二か月間ないし六か月間にわたって一か月当たりおおむね八十時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症の関連性が強い」とされているが、一日、一週の労働時間規制を適用除外する本制度の下で、このような過重労働が生じないと断言できるか。政府の見解を示されたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第一〇号

内閣参質一六六第一〇号

  平成十九年三月九日

内閣総理大臣 安倍 晋三   

       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員福島みずほ君提出自己管理型労働制の検討過程等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出自己管理型労働制の検討過程等に関する質問に対する答弁書

一について

 厚生労働省としては、労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事すること等の一定の要件を満たす労働者が、労働時間を自ら管理し、仕事と生活の調和を図りつつ、より弾力的かつ効率的に働くことができるよう、自己管理型労働制の創設を検討してきたところであるが、その検討に当たっては、労働政策審議会における医学的知見に基づく専門的な検討を経て、平成十八年に労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)において、長時間労働により疲労の蓄積が認められる労働者から申出があった場合に、事業者は医師による面接指導を行わなければならないこととされたことも踏まえ、一週間当たり四十時間を超える在社時間等がおおむね月八十時間程度を超えた労働者から申出があった場合には、医師による面接指導を行わなければならないこと等の労働者の健康の確保のための措置を検討してきたものである。

二について

 厚生労働省においては、一般的に、各種団体等の意見については、担当部局の職員が聴いた上で、適宜大臣及び幹部に報告することとしており、「全国過労死を考える家族の会」についても、日程、対応者等について同会と調整の上、平成十八年十月二十四日、十一月二十二日及び十二月十一日に、自己管理型労働制の検討に当たっている労働基準局監督課の職員が面会し、その意見を聴いたところである。

三について

 厚生労働省としては、自己管理型労働制の検討過程において、長時間にわたる過重な労働及びこれに伴う健康障害を防止するため、その対象となる個々の労働者と業務内容、業務の進め方等について話し合うこと、一年間に百四日以上の休日を与えること、一についてで述べた医師による面接指導を行わなければならないこととする等の措置を検討してきたものである。また、仮に労働災害が発生した場合には、使用者の責任に基づく補償等がなされるものである。

四について

 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第三十二条の三に定めるフレックスタイム制は、始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねることとする制度であるが、この制度においては総労働時間があらかじめ労使協定で定められるものであるため、労働者が労働時間を自ら管理し、仕事と生活の調和を図りつつ、より弾力的かつ効率的に働くことができるよう、自己管理型労働制の創設を検討してきたものである。

 また、労働基準法上は、第三十二条において労働時間の最長限度を規定するとともに、労働者が労働時間の配分を決定できる場合を第三十八条の二に定める事業場外みなし制並びに第三十八条の三及び第三十八条の四に定める裁量労働制の下で働く場合に限定している。

五について

 自己管理型労働制の検討過程においては、使用者が個々の労働者について仕事量や達成目標を設定することは可能であるが、これらを含め、使用者は当該労働者と業務内容、業務の進め方等について話し合うこと、仮に、仕事量が過大であることが明らかとなった等の場合には、労使の話合いにより適正なものとなるよう必要な措置を講ずること等の長時間にわたる過重な労働及びこれに伴う健康障害を防止するための措置について検討してきたものである。

 また、お尋ねの例については、平成十七年度の過労死等事案の労災認定件数三百三十件のうち、厚生労働省において、労働基準法第三十八条の三に定める専門業務型裁量労働制の適用を受ける労働者と確認できたものが一件あった。

六について

 厚生労働省としては、これまでも、長時間にわたる過重な労働及びこれに伴う健康障害の防止に努めてきているところであり、今回の自己管理型労働制の検討過程においても、三についてで述べたような措置について検討してきたものである。

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