QUESTIONS質問主意書

第177回国会 「国連人権諸条約の個人通報制度に関する質問主意書」(2011年8月26日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)

質問主意書

質問第二七五号

国連人権諸条約の個人通報制度に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年八月二十六日

福 島 み ず ほ   

       参議院議長 西 岡 武 夫 殿

   国連人権諸条約の個人通報制度に関する質問主意書

 本年二〇一一年は、個人が人権侵害救済を国際機関に申し立てることができる「個人通報制度」を定める「市民的及び政治的権利に関する国際規約の選択議定書」(第一選択議定書)が国連総会において採択されてから四十五年、発効してから三十五年に当たる年である。

 個人通報制度は、人権侵犯事案が国内で十分に救済されない場合に、国際人権の観点から人権保障を図る重要な制度である。

 本年八月現在、個人通報制度を定める第一選択議定書の締約国数は百十四か国にものぼっており、同制度は人権保障のグローバルスタンダードということができる。

 しかしながら、政府はいまだ第一選択議定書の批准を行っておらず、国連の国際人権関連委員会から早期批准を勧告される等、国際社会の中で孤立しているとすら評価でき、非常に憂慮すべき状況にあるといえる。

 民主党は、二〇〇九年衆議院総選挙のマニフェストにおいて、「個人が国際機関に対して直接に人権侵害の救済を求める個人通報制度を定めている関係条約の選択議定書を批准する」ことを政権公約に掲げ、政権を獲得した。また、江田五月法務大臣は就任直後の本年一月二十日の政務三役会議において同制度の検討を指示するなど、民主党政権の歴代法務大臣、外務大臣等関係閣僚はいずれも同制度の早期導入に前向きな姿勢を示している。

 このことを踏まえ、以下質問する。

一 個人通報制度の導入によって国内の司法機関等で救済されなかった人権侵犯事案が、国際人権機関の審査を通じて救済される可能性が広がるものと考えられる。同制度は、日本国憲法の人権尊重や国際協調の理念に適うものと考えるが、政府の見解はどうか。

二 本年六月下旬の報道によれば、個人通報制度の導入の検討を開始したとあるが、事実か。事実であるとすれば、具体的にどのような検討を行っているのか。

三 政府が個人通報制度を導入した場合、すでに政府が批准している同制度を有する人権条約すべてについて適用されるのか。

四 個人通報制度が導入された場合、同制度の所管は外務省となるのか、あるいは個々の事案を所管する官庁となるのか。

五 個人通報制度については、十年以上前から外務省、法務省において導入の準備がなされていると聞き及んでいる。現在の同制度導入検討に係る両省の担当政務三役及び担当部署の体制はどのようになっているのか。担当政務三役名、担当部署名及び担当部署の人員等の体制を示されたい。

六 江田五月法務大臣は本年八月十九日の記者会見で個人通報制度の導入に関し、「いろいろな意見もあり、なかなかスタートボタンを押すところまで行かない」と述べたとのことであるが、これは政府として同制度を導入しないという意思表示であるのか。

  右質問する。

答弁書

答弁書第二七五号

内閣参質一七七第二七五号

  平成二十三年九月六日

内閣総理大臣 野田 佳彦   

       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員福島みずほ君提出国連人権諸条約の個人通報制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出国連人権諸条約の個人通報制度に関する質問に対する答弁書

一から三までについて

 市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号)の第一選択議定書等人権に関する様々な条約に設けられている個人通報制度については、条約実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度であると考えている。個人通報制度の受入れに当たっては、我が国の司法制度や立法政策との関連での問題の有無や個人通報制度を受け入れる場合の実施体制等の検討課題があると認識している。個人通報制度の受入れの是非については、現在、各方面から寄せられている意見も踏まえつつ、政府として真剣に検討を進めているところである。

四について

 お尋ねの「同制度の所管」の意味するところが必ずしも明らかではないが、個人通報制度を受け入れた場合には、人権に関する様々な条約に基づき設置されている委員会から通知を受けた事案について、外務省が当該事案に関する事務を所掌する府省庁に当該通知を伝達し、当該府省庁が中心となって委員会に提出する書面の作成等の対応を行うこととなると考えている。

五について

 お尋ねの「担当政務三役」については、本質問主意書を受領した本年八月三十一日の時点では、外務省においては山花外務大臣政務官が、法務省においては黒岩法務大臣政務官が中心となって対応していたところである。また、一から三までについてで述べた検討に係る事務については、主として、外務省においては総合外交政策局人権人道課人権条約履行室の職員五名が、法務省においては大臣官房秘書課国際室の職員三名が担当しているところである。

六について

 御指摘の本年八月十九日の記者会見における江田法務大臣の発言は、個人通報制度の受入れの是非については、各方面から寄せられている意見も踏まえつつ、法務省を含めた政府全体での検討が必要であるという趣旨を述べたものであり、「政府として同制度を導入しないという意思表示」をしたものではないと承知している。

MENU