QUESTIONS質問主意書
第180回国会 「大飯原発再稼働に関する政治的責任に関する質問主意書」(2012年6月21日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)
質問主意書
質問第一六〇号
大飯原発再稼働に関する政治的責任に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成二十四年六月二十一日
福島 みずほ
参議院議長 平田 健二 殿
大飯原発再稼働に関する政治的責任に関する質問主意書
関西電力大飯原発三、四号機の再稼働について、政府は最終判断を下した。この間、社民党は原発の再稼働に反対する申入れを繰り返し行ってきたところである。しかし、それに対する政府の回答は、「おおむね原発の安全性は様々な知見から科学的に原子力安全・保安院や原子力安全委員会が確認している。その上で、政治家が様々な意見を聞いて総合的に判断し、安心の部分を国民の皆さんに示す必要がある。」旨であった。
今回の再稼働決定について、野田首相が「私の責任で判断して」と発言したことについて、重要性と責任の範囲と内容を確認するために、以下質問する。
一 二〇一二年五月三十日、野田首相は首相官邸で、第七回となる原子力発電所に関する四大臣会合を開催し、「大飯発電所三、四号機の再起動について、関西広域連合からは、原子力規制庁等の政府機関が発足していない中で、政府の安全判断が暫定的であることを踏まえた適切な判断を求めると声明をいただきました。関係自治体の一定のご理解が得られつつあると認識しております。政府は今回の事故を踏まえた、専門家の意見に基づき、安全性を慎重に確認してまいりました。(中略)立地自治体のご判断が得られれば、それをもって最終的にはこの四大臣会合でしっかりと議論をし、最終的には総理大臣である私の責任で判断を行いたいと思います。」(首相官邸ホームページ)と発言している。
この中で、野田首相は「責任」と発言しているが、その「責任」とはどのような意味として使っているのか。「責任」の内容を具体的に示されたい。
二 この「責任」に関する発言について、原発の再稼働の是非を最終的に判断するのは首相の責任なのかどうか、その法的根拠を含め、具体的に示されたい。
三 「私の責任で再稼働を判断した」原発が事故を起こした場合、「事故を起こした責任を野田首相が負う」と理解してよいか。その場合、東京電力福島原発事故で明らかなように、国家社会に与える被害は莫大になることも想定すべきだが、首相としてどのように責任を取るのかをその賠償方法を含め、具体的に説明されたい。また、「責任」の意味するところが、「事故を起こした責任を負う」とは違う場合は、どのような意味か具体的かつ詳細に説明されたい。
四 前記一のホームページの中で、野田首相は「あのような事故を防止できる対策と体制は整っております」と断言している。「あのような事故」の内容と事故原因を明確に説明されたい。
五 二〇一二年六月八日の記者会見で、野田首相は「四月から私を含む四大臣で議論を続け、関係自治体の御理解を得るべく取り組んでまいりました。(中略)これにより、さきの事故で問題となった指揮命令系統を明確化し、万が一の際にも私自身の指揮の下、政府と関西電力双方が現場で的確な判断ができる責任者を配置いたします。」と発言しているが、この意味するところは、東京電力福島原発事故当時、指揮命令系統が明確でなかったと政府が認識していると理解して良いか。
六 前記五において、野田首相は「問題となった指揮命令系統」と発言しているが、その原因はどこにあったのか具体的に示されたい。さらに、現在、指揮命令系統を明確化するために行われている対策、今後予定されている対策などを具体的に説明されたい。
また、「的確な判断ができる責任者」の配置は既に行われているか。行われている場合、その責任者の氏名と経歴を明らかにし、「的確な判断ができる」とする根拠を示されたい。配置が行われていない場合は、いつ配置される予定か、その時期と配置予定責任者の氏名と経歴を明らかにされたい。
七 前記五における記者会見で野田首相は「国民生活を守ることの第二の意味、それは計画停電や電力料金の大幅な高騰といった日常生活への悪影響をできるだけ避けるということであります。豊かで人間らしい暮らしを送るために、安価で安定した電気の存在は欠かせません。」と発言しているが、原発が安価な電力である根拠について、他の発電方式と比較した具体的な単価を含めて示されたい。また、その価格は各発電所の稼働率をどの程度と想定した上で計算しているか。さらに、想定した稼働率は、実際の各発電所の稼働率と一致しているか。加えて、「安価」とする原発の発電価格には、使用済み核燃料の再処理やバックエンドのコストを含んでいるか。これらの条件を含めて「安価」とする根拠を示されたい。
右質問する。
答弁書
答弁書第一六〇号
内閣参質一八〇第一六〇号
平成二十四年六月二十九日
内閣総理大臣 野田 佳彦
参議院議長 平田 健二 殿
参議院議員福島みずほ君提出大飯原発再稼働に関する政治的責任に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員福島みずほ君提出大飯原発再稼働に関する政治的責任に関する質問に対する答弁書
一から三までについて
御指摘の野田内閣総理大臣の発言は、定期検査で停止中の原子力発電所の運転再開については、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)等に基づき経済産業大臣が所掌していることを前提として、関西電力株式会社大飯発電所第三号機及び第四号機(以下「大飯発電所三・四号機」という。)の運転の再開の可否については、政治的判断を必要とする国政上の重要な問題であり、内閣の首長である野田内閣総理大臣がこれに関与し責任を持って判断を行うという趣旨で述べたものである。
なお、原子力損害の賠償については、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)において、原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものである場合を除き、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めを負うこととされている。また、原子力損害賠償支援機構法(平成二十三年法律第九十四号)においては、国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、原子力損害賠償支援機構を通じて、原子力損害の賠償が適切かつ迅速に実施されるよう、万全の措置を講ずるものとされている。
四について
お尋ねの「あのような事故」とは、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故(以下「本件事故」という。)を指す。これまでの調査等によれば、本件事故においては、平成二十三年三月十一日の東北地方太平洋沖地震により、同発電所において、外部電源を喪失した後、非常用ディーゼル発電機が正常に起動し、安全上重要な設備・機器がその安全機能を保持できる状態にあったと考えられるが、その後の津波の到達により、非常用ディーゼル発電機の機能を喪失し、第一号機から第四号機までの各号機において、全交流電源を喪失した結果、第一号機から第三号機までの燃料が損傷し、大量の放射性物質が環境中に放出されたものと考えられている。また、原子炉で発生した水素が原因となって、第一号機、第三号機及び第四号機において爆発が生じ、それぞれの原子炉建屋が損傷したと考えられている。
五及び六について
御指摘の指揮命令系統に関しては、「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書―東京電力福島原子力発電所の事故について―」(平成二十三年六月原子力災害対策本部決定)において「政府と東京電力との関係、東京電力本店と現場の原子力発電所との関係、政府内部の役割分担などにおいて、責任と権限の体制が不明確な面があった。特に、事故当初においては、政府と東京電力との間の意思疎通が十分ではなかった。」としている。これを踏まえ、総理大臣官邸(以下「官邸」という。)、原子力災害対策本部事務局が置かれる経済産業省緊急時対応センター、原子力発電所、電力会社の本店等との間をつなぐテレビ会議システムを整備した上で、緊急時には電力会社の本店等に政府と電力会社との連絡調整拠点を確保し、同省の責任者を派遣することにより、官邸の指示や連絡調整が迅速に行われるよう、体制の整備等に取り組んでいるところである。今後は、第百八十回国会で成立した原子力規制委員会設置法(平成二十四年法律第四十七号)の規定を踏まえ、原子力災害対策本部を始めとする関係機関等における責任や役割分担等が制度上においても明確になるよう、同法の施行に合わせて、関係法令や「防災基本計画」(平成二十三年十二月二十七日中央防災会議決定)、「原子力災害対策マニュアル」(平成十二年八月二十九日原子力災害危機管理関係省庁会議)等を改定することとしている。
大飯発電所三・四号機については、本件事故の後、初の再起動となることを踏まえ、万が一事故が発生した場合の緊急対応に万全を期すため、常時監視・緊急対応体制を整備しているところであり、当該体制の責任者として、牧野経済産業副大臣を大飯発電所三・四号機の再起動前に派遣することとしている。同副大臣は、万が一事故が発生した場合には、現行の原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)に基づき、原子力災害現地対策本部長となる予定であり、その経歴については、同省のホームページで公表しているところである。
七について
御指摘の野田内閣総理大臣の発言は、エネルギー・環境会議及び電力需給に関する検討会合の下に開催した需給検証委員会の報告書において、仮に、国内の全原子力発電所が稼働を停止し、火力発電で代替した場合には、燃料コストが大幅に増加すると試算されていること等を踏まえ、いずれ電気料金が上昇することは避けられないとの趣旨で述べたものである。なお、当該コストの試算においては、電源ごとの発電単価ではなく、火力及び原子力の燃料費のみにより計算した単価を用いている。
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