QUESTIONS質問主意書
第149回国会 「東京電力MOX燃料の品質保証確認に関する質問」(2000年8月9日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)
質問主意書
質問第一〇号
東京電力MOX燃料の品質保証確認に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成十二年八月九日
福島 瑞穂
参議院議長 斎藤 十朗 殿
東京電力MOX燃料の品質保証確認に関する質問主意書
東京電力MOX燃料の品質保証確認について、五月三十日に質問主意書を提出し、七月十八日に答弁書を受領したが、十分な答弁にはなっておらず、不明な点が多くあるので、改めて以下のように質問する。
一、監督官庁の責任について
質問主意書は、英国核燃料公社(以下「BNFL社」という。)による関西電力高浜原発MOX燃料のデータ捏造事件を受け、東京電力の福島第一原発及び柏崎刈羽原発のMOX燃料を製造したベルゴニュークリア社(以下「ベルゴ社」という。)において、同様の不正が行われていないことを日本側がどのように確認したかを問うたものである。不正を見逃さないためには、いくつかの重要なポイントがあり、そのポイントについて、ベルゴ社とのMOX加工契約の日本側当事者である東芝、MOX加工の発注者であり利用者である東京電力、そして監督官庁である通産省の三者それぞれが、どのような方法で確認したかが明らかにされることが、品質保証という点では不可欠の要素である。特に日本政府の立場としては、監督官庁である通産省が、これをどのように確認したかを示すことが、最も重要であると考える。ところが、答弁の多くは「と聞いている」とくくられており、当事者側からの伝聞にすぎず、監督官庁として積極的に品質保証確認を行おうとする姿勢そのものがないのではないかと疑わざるを得ないものが多い。
1 六月二十八日に行われた東京電力の本年度株主総会では、「ベルゴ社に対し、所管官庁が安全確認上必要な検査や監査を実施したり、必要な品質保証用のデータを閲覧することは、可能でございます。」と東京電力自身が答弁している。この答弁は、所管官庁に対してはベルゴ社の専有情報は存在しないということであり、品質保証にかかわるデータは通産省が直接確認することができるという理解に間違いないか。
2 プルサーマル計画により国民が生命財産に甚大な被害を被ることがないよう、MOX燃料の品質保証について、通産省は監督官庁として最終的な確認を行い、安全性について最終責任を負うという立場にあるという理解に間違いないか。
3 関西電力の高浜原発3号機用MOX燃料については、通産大臣が一度は安全宣言を出した後、不正が行われていたことが明確となったにもかかわらず、安全宣言を出した通産大臣の責任は不問に付されている。最終責任を負うという立場から、今後、このずさんな安全宣言の責任を政府として取る考えがあるか。
4 東京電力MOX燃料について、仮に安全宣言が出された後に不正が発覚したり、不正に起因する事故が発生したりした場合、その責任は誰がどのように取ることになるのか。
二、不正の方法の可能性について
答弁書によれば、ベルゴ社においてMOX燃料ペレットの外径測定を行う際、作業員が人為的にペレットを回転させるなどして合格範囲のデータを作成したりできないような防御システムは存在しない。にもかかわらず、「ベルゴ社においては、品質部門が製造部門から独立していること、MOX燃料ペレットの外径測定とその評価が別の人間によって行われていること、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定が行われていること、内部監査が計画的に実施されていること」などにより、「抑止効果」でこのような不正は行われないかのように書いている。
1 作業員が人為的にペレットを回転させるなどして、合格範囲のデータが得られるまでペダルを踏まずにデータを入力しなかった場合、ベルゴ社の品質部門の人間はどのようにしてその事実を把握することができるのか。また、別の人間が外径測定を評価する場合に、測定された数値でなく、その測定が不正に行われたか否かということをどのようにして認識するのか。
2 燃料ペレットは円筒形をしており、BNFL社のケースでも上、中、下の三点が同一ではなく、臼型若しくは植木鉢型をしていたことが英国原子力施設検査局(NII)の調査でも指摘されている。ベルゴ社のペレットが同様の形状をしていた場合、上、中、下のうち上と下はできるだけ中から離れた位置で測定されなければならないが、答弁書は、ベルゴ社ではこのような位置取りについて何の規定もなかったとしている。上、下の測定点が、仮に中から一ミリから二ミリ程度離れているだけであれば、この測定には品質保証上ほとんど意味がないと言わざるを得ないが、上、下の測定が適切に行われていることを監督官庁の通産省はどのようにして知り得るのか。
3 通産省はベルゴ社で「植木鉢型」の形状をしたペレットが製造されたか否かを確認していないというが、このような重要な問題は直接確認すべきではないか。それとも直接確認してはいけないという制約でもあるのか。
4 本来、燃料ペレットは正円筒形でなければならず、上、中、下、更に回転させた場合の上、中、下もほぼ同一の数値でなければならないが、監督官庁である通産省は、この一致度合いも確認していないと答弁している。品質保証確認のデータを取り寄せれば今でも通産省が確認できることであるが、これを電力会社とベルゴ社任せにして自ら確認しようとしない理由は何か。
三、ペレット外径の全数計測データについて
1 答弁書において、ベルゴ社は全数計測データを「保存していないと聞いている」と他人事のように答弁しているが、東京電力あるいは通産省においてもベルゴ社は技術が優れ品質が良いので加工契約を結んだということが何度も言われている。製造工程におけるの研削機の不良率を含め、製造工程のデータが保存されていない状態で、東芝、東京電力、そして通産省は、どのようにしてベルゴ社の「品質が良い」ことを確認し得たのか。
2 ベルゴ社が工程管理上ペレットの全数計測を行うレーザー計測装置の認定報告書について、通産省は「その内容を確認、検討していない」ということであるが、東芝及び東京電力は「確認、検討」しているのか。
3 東芝及び東京電力が確認しているのであれば、通産省はその内容を改めて確認し、示すべきであると思うが、どうか。
4 昨年秋の通産省の説明では、約五〇%が全数自動計測、残りの約五〇%は抜取りによる計測という説明が行われていた。この説明は、今年二月二十四日にまとめられた東電報告書から変わるが、これ以前に通産省及び東京電力が誤って理解していた原因は何か。
5 ベルゴ社における製造工程でペレット外径の全数計測が行われていたことを知ったのはいつかという問いに対し、答弁書では、柏崎刈羽原発分については東京電力が平成十年(一九九八年)六月以前、通産省が平成十一年(一九九九年)九月、福島第一原発分については東京電力と通産省ともに平成十二年(二〇〇〇年)一月であると答弁している。品質に関する情報が一括でなくバラバラに伝えられていることになった原因は何か。しかも、柏崎刈羽原発分については「以前」という表現で、時期の特定すら行われていない。バラバラとなった原因も含め、正確な時期の特定が必要と考えるが、政府の考えはどうか。
四、抜取検査規格について
MOX燃料ペレットの品質保証のための、ベルゴ社における抜取検査はMIL-STD-105D(以下「MIL規格」という。)を参考に定めたというが、実際には、抜取率すら「MIL規格」を満たしているとは思われない。
1 MIL規格を参考に定めたという抜取率は何%か。
2 答弁書では、「個々のブレンダーから実際に何個のMOX燃料ペレットが抜き取られて検査をされたかについては確認していない」と答弁しているが、個々のブレンダーからの抜取り数を確認せずして、監督官庁である通産省はどのようにして、この抜取率が「MIL規格」を満たしていると確認できたのか。
3 監督官庁である通産省が行う輸入燃料体検査は、品質保証確認のために行われる抜取検査が、「MIL規格」なり「日本工業規格(JIS規格)」なりを満たしていなくとも構わないという考えか。仮にそう考えているのであれば、その理由は何か。
4 仮に「MIL規格」より多くの抜取りをすることが、より厳しい検査を行うことになるとしても、そこには何らかの法則性が存在するべきであると考えるが、ベルゴ社の抜取検査には何らの法則性も存在しない。あるものは数個、あるものは倍以上も抜き取っていると伝えられている。このような抜取り方でも「より厳しい検査」であると考えるのであれば、その根拠を示されたい。
5 監督官庁である通産省は、抜取検査の分母である各ブレンダーがそれぞれ何個のペレットで構成されているかさえ確認していない。分母のペレット数や、抜き取ったペレット数は、抜取検査の前に作成されたベルゴ社の品質管理計画書及び作業指示書に記されているはずであるが、通産省はこれも直接は確認していない。通産省職員は、品質保証検査の確認のため何度もベルギーに出張しているが、なぜこのような重要な確認を行わなかったのか。
五、不合格ブレンダーの取扱いについて
MOX燃料を製造している会社は、ベルゴ社以外には、データ捏造事件を起こした英国のBNFL社とフランスのCOGEMA社しか存在せず、しかもCOGEMA社とベルゴ社はCOMMOX社を窓口とした兄弟関係にある。この三社の間に競争関係など存在しない。MOX燃料は、極めて特殊な燃料であり、その品質が多くの人々の安全性確保と不可分の関係にあるような燃料である。事実上存在しない「競争上の地位」を理由に、不合格ブレンダーが何ブレンダーあったかという、安全確保上の重要な問題を隠ぺいするということは、原子力安全行政にかかわる監督官庁としてはあってはならないことである。
1 通産省は原子力安全行政を担う行政機関であるのか、それとも安全性を無視して企業権益を守るための行政機関なのか。
2 不合格ブレンダーの数を通産省は把握しているのか。
3 不合格ブレンダーの要件である「仕様を外れたデータ」の意味は上、中、下の三点のうち一点でも仕様を外れていれば不合格という理解で良いか。違っていれば、正しい理解を示されたい。
4 ベルゴ社では不合格ブレンダーの処理手順について「不適合報告書」に記載しているというが、答弁書で、通産省はこれを直接確認する必要がないと書いている。では、今回の柏崎刈羽原発用MOX燃料の不合格ブレンダーの処理が、この処理手順どおりに行われたか否かを通産省はどのように確認したのか。
5 答弁書では、「一般に、ベルゴ社においては、不合格ブレンダーが発生した場合、必要に応じて原因調査及び是正措置を実施した後、当該ブレンダーのMOX燃料ペレットすべてを製造部門に戻し、再研削の必要と判断されたMOX燃料ペレットについては、再研削及び全数レーザー自動計測を実施した後、これを品質部門に引き渡し」と書かれているが、柏崎刈羽原発用MOX燃料の不合格ブレンダーは、再研削が必要と判断されたのか。また、原因調査の結果はいかなるものであり、是正措置はどのような措置がとられたのか。
6 仮に不合格ブレンダーが再研削もされることなく製造部門に戻され、当初と同じ「ゆるい検査」で合格したとすれば、これはMIL規格におけるゼロイチ判定の方法とは異なる。このような抜取検査方法でAQL(合格品質水準)が〇・一五%になるとは考えられないが、通産省はこれをAQL〇・一五であると考えているのか。
六、ヒストグラムについて
BNFL社が製造した関西電力高浜3号機用MOX燃料の場合は、一ロットのペレットの数は約四千個で抜取検査のために抜き取ったペレットの数は二百個と、その規格に従って明確に示され、ペレット外径の測定データは千分の一ミリ単位ですべて明らかにされていた。ところがベルゴ社については、一ロットがいくつかのブレンダーに別れ、ロットごとのペレット数も、ブレンダーごとのペレット数も、さらにブレンダーごとに抜き取ったペレット数も何も明らかにされていない。ペレットの外径測定データも千分の四ミリ単位のヒストグラムが示されているだけで、しかも、このヒストグラムはブレンダーではなくロットごとに作成されている。ロットは品質保証上の単位ではないため、ヒストグラムは漠然としたペレット外径の分布を示すものではあるが、品質保証検査が正しく行われたということを証明するものではない。このように、ベルゴ社はBNFL社以上に情報をことさら秘匿し、品質の確認を行わせないような体質を保有しているように見える。
1 通産省はベルゴ社が作成したロットごとのヒストグラムで、ブレンダーごとに行われた品質保証検査の結果を読み取ることができたか。読み取ったとすれば、どのような方法によってか。
2 通産省は外径測定データが千分の四ミリ単位で、品質保証に関する統計的分析が可能であると考えているか。
3 答弁書によれば、ベルゴ社が製造したMOX燃料のうち、ブレンダーについては使用しなかったものはなかったが、ペレットについては「製造されたが使用されなかった数は承知していない」と書かれている。これは、ブレンダーの中に含まれないペレットが存在していたということか。
七、BNFL委員会の検討結果の反映について
通産省はBNFL社のデータ捏造事件の発覚と、それに対する通産省自身の不適切な対応への反省を踏まえて、電気事業審議会基本政策部会の中に「BNFL社製MOX燃料データ問題検討委員会」(以下「BNFL委員会」という。)を設置した。この検討結果として、海外からの輸入燃料体検査に不備があり、MOX燃料の製造は当該原子炉の設置変更申請及び同許可、さらに輸入燃料体検査申請を済ませたあとに開始されるべきであるという結論を示している。
1 ベルゴ社が製造した東京電力福島第一原発、柏崎刈羽原発のMOX燃料は、いずれもこの条件を満たしておらず、今回特例措置として、事後の輸入燃料体検査で品質確認を行うとされているものである。現時点では、品質保証確認は書類の確認でしか行うすべがない。したがって、できる限りの品質保証に関するデータを通産省自ら取り寄せ、直接確認を行うべきであると思うが、政府の考えを示されたい。
2 答弁書において、「ベルゴ社においては、品質部門が製造部門から独立していること、MOX燃料ペレットの外径測定とその評価が別の人間によって行われていること、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定が行われていること、内部監査が計画的に実施されていること並びに従業員の教育及び訓練が適切に行われていることが確認されており、不正に対する抑止効果が働いている」と何度も書いているが、以上の五点の中でBNFL社において行われていなかったものがあるのか。BNFL社とベルゴ社の違いを具体的に示されたい。
3 東京電力はベルゴ社と二百体のMOX燃料加工契約を結んでいたが、昨年百四十体について契約変更を行い、加工工場をメロックス社に変更したという。ベルゴ社は実績があり、品質上も問題がないと言いながら、なぜこのような契約解除が行われたのか。
右質問する。
答弁書
答弁書第一〇号
内閣参質一四九第一〇号
平成十二年九月十九日
内閣総理大臣 森 喜朗
参議院議長 斎藤 十朗 殿
参議院議員福島瑞穂君提出東京電力MOX燃料の品質保証確認に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員福島瑞穂君提出東京電力MOX燃料の品質保証確認に関する質問に対する答弁書
一の1について
通商産業省は、ベルゴニュークリア社(以下「ベルゴ社」という。)が保有する情報について、法律上の調査権限を有していないが、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)福島第一原子力発電所三号機(以下「福島三号機」という。)及び柏崎刈羽原子力発電所三号機(以下「柏崎刈羽三号機」という。)用ウラン・プルトニウム混合酸化物(以下「MOX」という。)燃料の品質保証にかかわるデータについては、東京電力にMOX燃料体を供給する株式会社東芝(以下「東芝」という。)とベルゴ社のMOX燃料ペレットを使用して製造される燃料体を供給するコモックス社等との間の契約に基づき、守秘義務を遵守した上で、東芝がベルゴ社の検査を行う際にこれに同行し、当該データを確認することは、可能である。
一の2について
MOX燃料の品質及び安全性については、これを使用する電気事業者自らが確保すべきことは当然であるが、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第五十一条に基づき、通商産業大臣が検査を行うことによっても担保されている。
一の3について
御指摘の安全宣言が何を指すのか明らかではないが、通商産業省においては、電気事業者からの輸入燃料体検査申請を受けて、当該燃料体が、発電用核燃料物質に関する技術基準を定める省令(昭和四十年通商産業省令第六十三号。以下「技術基準」という。)に適合するか否かを確認するところ、関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)高浜発電所三号機(以下「高浜三号機」という。)用MOX燃料については、輸入燃料体検査申請を受けていないため、技術基準に適合するか否かの判断を示していない。
なお、通商産業省においては、高浜発電所四号機(以下「高浜四号機」という。)用MOX燃料については、平成十一年九月二十四日に公表された関西電力の作成に係る「MOX燃料ペレット外形寸法データ問題に係る調査報告書(中間報告書)」と題する報告書においてブリティッシュ・ニュークリア・フュエル・ピーエルシー社(以下「BNFL社」という。)の不正はないとする点を妥当として、その後、厳正に輸入燃料体検査を行うとしていたところ、同年十二月にBNFL社における不正が明らかになり、関西電力が輸入燃料体検査申請を取り下げたため、技術基準に適合するか否かの判断を示していない。
一の4について
御指摘の安全宣言が何を指すのか明らかではないが、MOX燃料に起因する事故であるか否かを問わず、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)に基づき、原子炉の運転等により生じた原子力損害については、当該原子炉の運転に係る事業者が、その損害を賠償する責任を負うこととされている。なお、電気事業法第五十一条に基づく検査の実施その他の権限を適切に行使しなかったために事故が発生したような場合には、通商産業省においても責任を負うべきことは言うまでもない。
二の1について
通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社において、MOX燃料ペレットの外径測定は品質部門で行われているところ、測定担当の人間が御指摘のような操作を行った場合、別の人間がその事実を把握することはできないと聞いている。
二の2について
通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社において、福島三号機用及び柏崎刈羽三号機用MOX燃料ペレットについて、上・中・下部の三か所で外径測定することが同社の品質管理計画書に規定されていると聞いているが、その具体的な測定位置については把握していない。
二の3及び4について
通商産業省においては、平成十二年二月二十四日に公表された東京電力の作成に係る「福島第一原子力発電所三号機並びに柏崎刈羽原子力発電所三号機用MOX燃料に関する品質管理状況の再確認結果について」と題する報告書(以下「東電報告書」という。)によれば、ベルゴ社においては、品質部門が製造部門から独立していること、MOX燃料ペレットの外径測定とその評価が別の人間によって行われていること、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定が行われていること、内部監査が計画的に実施されていること並びに従業員の教育及び訓練が適切に行われていることが確認されており、不正に対する抑止効果が働いていると考えていることから、御指摘の点について直接確認する必要はないと考えている。
三の1について
東京電力及び東芝は、ベルゴ社においては、品質部門が製造部門から独立していること、MOX燃料ペレットの外径測定とその評価が別の人間によって行われていること、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定が行われていること、内部監査が計画的に実施されていること並びに従業員の教育及び訓練が適切に行われていることから不正に対する抑止効果が働いていると考えており、このような体制の下で行われた検査結果により、東京電力が定めたMOX燃料ペレットの外径に関する仕様(以下「仕様」という。)を満たす高い精度の円筒形の形状を有するMOX燃料ペレットを製造できると判断したものと承知しており、この判断に特段の問題はないものと考えている。
三の2について
通商産業省においては、東京電力及び東芝は、ベルゴ社におけるMOX燃料に関する品質管理状況の再確認を行う中で、製造工程でMOX燃料ペレットの外径の全数レーザ自動計測が行われていることを、ベルゴ社が作成したレーザ計測装置認定報告書により確認したものと承知している。
三の3について
通商産業省においては、東京電力から、レーザ計測装置認定報告書は、ベルゴ社がレーザ計測装置の機能等を確認するための社内文書であり、当該装置により計測された福島三号機用及び柏崎刈羽三号機用MOX燃料ペレットの外径の計測データが記載又は添付されたものではないと聞いていることから、その内容を確認する必要はないと考えている。
三の4について
通商産業省においては、東京電力が、平成六年に行った工程調査の結果により、ベルゴ社において、二つの製造工程のうち、一方は抜取りによる計測、他方は全数レーザ自動計測であると理解し、このことを通商産業省に説明したことを受けて、御指摘のような説明を行っていたものであり、昨年においても、このような説明を行っていたのは、当該工程調査の後に、同社において製造工程の変更が行われ、いずれの製造工程においても全数レーザ自動計測が行われていることを把握していなかったためである。
なお、通商産業省においては、東京電力は、MOX燃料ペレットの外径の全数レーザ自動計測は、ベルゴ社の製造工程においてMOX燃料ペレットの研削機の調整のために行われているものであるところ、このような研削機の調整方法については、ベルゴ社内で決定する事項であり、その決定に当たり東京電力の了解を得る必要がないことから、福島三号機用MOX燃料ペレットについては、福島三号機用MOX燃料ペレットに関する品質管理状況の再確認の時点までこれを把握しなかったと承知している。
三の5について
通商産業省においては、MOX燃料ペレットの外径の全数レーザ自動計測は、ベルゴ社の製造工程における研削機の調整のために行われているものであるところ、このような研削機の調整方法については、ベルゴ社内で決定する事項であることから、東京電力がその実施を知った時期を特定する必要はないと考えている。
なお、通商産業省においては、東京電力は、柏崎刈羽三号機用MOX燃料ペレットについて、平成十年六月以前に、二つの製造工程において全数レーザ自動計測が行われていることを知ったことから、福島三号機用MOX燃料ペレットの製造工程についてベルゴ社に確認したところ、当該MOX燃料の製造の時点から、二つの製造工程において全数レーザ自動計測が行われていることを知ったものであると承知している。また、柏崎刈羽三号機用MOX燃料ペレットについては、東京電力において、二つの製造工程において全数レーザ自動計測が行われていることを知ったことについて、直ちには同省に報告しなかったものと承知している。
四の1について
東電報告書によれば、ベルゴ社におけるMOX燃料ペレットの抜取検査では、一ブレンダー当たり約七千個のMOX燃料ペレットから三十二個以上を抜取検査したとされている。
ベルゴ社における一ブレンダー当たりのMOX燃料ペレット数を七千個、抜取個数を三十二個とした場合、抜取率は約〇・四五パーセントとなる。
四の2及び3について
通商産業省においては、輸入燃料体検査では、燃料体が、技術基準に適合するか否かについて確認できるデータが提供されることが必要であると考えており、ベルゴ社の抜取検査がMIL-STD-一〇五D又は日本工業規格Z九〇一五を満たすことを要求するものではないことから、その確認をする必要はないものと考えている。
四の4について
同一の判定基準を用いる限り、より多くの個数を抜き取り検査することは、より厳しい検査を行うことになると考えている。
四の5について
通商産業省においては、ベルゴ社における福島三号機用及び柏崎刈羽三号機用MOX燃料の品質管理状況に関する調査については、第一次的には東京電力により実施されるべきものであると考えている。なお、通商産業省においては、ベルギーにおいて、ベルゴ社における東京電力の調査方法等の確認を行ったものである。
五の1について
通商産業省においては、原子炉の設置及び運転に関する審査等を行うべき部局が、電気事業法第五十一条に基づく検査等の原子力発電の安全確保に関する規制を行っているところである。
五の2について
不合格ブレンダーの数については、これを公にすることにより、ベルゴ社の競争上の地位を害するおそれがあり、また、ベルゴ社に具体的な不正の疑義があるわけでもないことから、答弁を差し控えたい。
五の3について
通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社におけるMOX燃料ペレットの抜取検査については、上、中、下の三点のうち一点でも仕様を外れた場合には不合格とすると聞いている。
五の4及び5について
通商産業省においては、柏崎刈羽三号機用の不合格ブレンダーの処理について、ベルゴ社が作成する不適合報告書に記載された処理手順どおりに行われたか否かについて直接確認していない。
また、通商産業省においては、柏崎刈羽三号機用の不合格ブレンダーに関してのベルゴ社における御指摘のような再研削の必要性の判断、原因調査の結果及び是正措置の内容について承知していない。
五の6について
通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社においては、製造部門に戻された不合格ブレンダーのMOX燃料ペレットのうち、再研削の必要がないと判断されたものについては、全数レーザ自動計測による選別を実施された後に品質部門に引き渡され、その上で品質部門が再度抜取検査を行い、改めて合否判定を行うと聞いている。その場合においては、AQL(合格品質水準)は、〇・一五パーセントに相当する検査であると考えている。
六の1について
ベルゴ社が作成したロットごとのヒストグラムから、ブレンダーごとに行われた品質保証検査の結果を読み取ることはできないが、通商産業省においては、ブレンダーによって構成されるロットごとに、検査されたMOX燃料ペレットが仕様を満たしていることを確認することができる。
六の2について
通商産業省においては、東電報告書にあるベルゴ社作成の千分の四ミリ単位のヒストグラムによる統計的分析により、検査されたMOX燃料ペレットが高い精度で仕様を満たしていることを確認することができる。
六の3について
通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社において製造されたMOX燃料ペレットのうち、製造過程において除外された等の事由により燃料棒の製造に使用されなかったものはあるが、ブレンダーの中に含まれないものは存在していないと聞いている。
七の1について
MOX燃料に係る輸入燃料体検査に当たっては、電気事業者に対して検査に必要な範囲で情報の提供を求めることとしているが、MOX燃料の製造等に係る個々のデータをすべて確認するのではなく、MOX燃料の製造等が適切な品質保証体制の下に行われていることを確認することが重要であると考えている。このため、本年七月、電気事業法施行規則(平成七年通商産業省令第七十七号)を改正し、事業者から品質保証計画等を記載した品質保証に関する説明書を提出させることとしたところである。この中でMOX燃料の製造時の品質保証体制及び第三者機関を活用した確認結果を明記することを求めていることから、通商産業省において、品質保証体制を適切に確認できるものと考えている。
なお、福島三号機用MOX燃料については、電気事業法施行規則の改正前に輸入燃料体検査申請が行われていたが、その趣旨を踏まえ、東京電力から、MOX燃料の製造時の品質保証体制及び第三者機関を活用した確認結果が記載された品質保証に関する説明書の提出がなされ、通商産業省において、これを確認したところである。
七の2について
通商産業省においては、東京電力及び関西電力からの報告に基づいて、BNFL社MOXデモンストレーション・ファシリティー(以下「MDF」という。)における高浜三号機用及び高浜四号機用MOX燃料の製造過程と、ベルゴ社における福島三号機用及び柏崎刈羽三号機用MOX燃料の製造過程の間の、MOX燃料ペレットの品質保証体制の差異について以下のとおりであったと認識している。
(1) MDFでは、品質保証に係るMOX燃料ペレット外径の測定を製造部門の職員が担当していたが、ベルゴ社では、製造部門ではなく品質部門の職員が測定を担当していた。
(2) MDFへの立会検査については、関西電力は短期間の立会検査を数回実施していたが、ベルゴ社への立会検査については、東京電力が同社向けMOX燃料の製造期間を通じて立会検査を実施していた。
(3) MDFでは、内部監査及び教育訓練については、有効に機能していなかったが、ベルゴ社では、的確に実施されていた。
なお、MDF及びベルゴ社においては、MOX燃料ペレットの外径測定結果とその評価が別の人間によって行われていることから、この点については差異はなかったものと認識している。
七の3について
御指摘の契約先の変更については、東京電力が行う契約に係る判断であることから、答弁を差し控えたい。
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