QUESTIONS質問主意書
第151回国会 「刑事拘禁施設における懲罰の手続等に関する質問主意書」(2001年6月8日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)
質問主意書
質問第三二号
刑事拘禁施設における懲罰の手続等に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成十三年六月八日
福島 瑞穂
参議院議長 井上 裕 殿
刑事拘禁施設における懲罰の手続等に関する質問主意書
刑事拘禁施設における懲罰制度については、一九九二年に「懲罰手続規程」が整備され、適正な運用が期待されているところであるが、現状ではいまだ十分とは言い難い。一九九八年一一月、国際人権自由権規約に基づく第四回日本政府報告書の審議の結果、規約人権委員会から、日本の刑務所制度、特に「規則違反を犯したとされる受刑者に対する懲罰を決定するについて、公正で開かれた手続が存在しないこと」(第二七項(C))などの懸念が表明されたことは記憶に新しい。懲罰制度の改善は我が国の刑事拘禁制度にとって、緊急の課題となっている。そこで以下質問する。
一、過去一〇年間の全国の刑事拘禁施設における規律違反容疑者の取調べ件数、懲罰不相当により終了した件数及び懲罰審査会を開催した件数を各年ごとに明らかにされたい。
二、懲罰審査会の議長について、「懲罰手続規程の運用について」(平成四年三月二五日矯保五八三矯正局長依命通達)4(1)は、被収容者の処遇に直接関与する部の責任者を指名する、としている。懲罰の決定は、本来的には施設長の職務に属する事項であり、かつ公平性を担保するという視点からは、むしろ「直接関与する部の責任者」ではない者の方が望ましいと考えられる。右規定の趣旨を具体的に明らかにされたい。
三、懲罰審査会の委員について、「懲罰手続規程の運用について」4(2)は、総務部及びこれに属する課以外の部課の責任者又はこれに準ずる者の中から指名する、としている。公平性を担保するという視点からは、むしろ処遇に直接関与しない、「総務部及びこれに属する課」の「責任者又はこれに準ずる者」の方が望ましいと考えられる。右規定の趣旨を具体的に明らかにされたい。
四、補佐人については、刑務所、少年刑務所及び拘置所組織規程(平成五年法務省令第一三号)第一〇条第一項第三号(教化教育、特殊教育、レクリエーション及び生活指導に関する事項)又は第四号(資質鑑別、収容及び処遇の分類、作業の指定、累進処遇及び仮釈放の審査並びに保護に関する事項)に掲げる事務を掌理する首席矯正処遇官又は所長の指定により同事務を統括する統括矯正処遇官(支所の首席矯正処遇官及び統括矯正処遇官を除く。)若しくはこれに準ずる者の中から指名していると聞いているが、その趣旨を具体的に明らかにされたい。
五、過去一〇年間の懲罰審査会の結果、懲罰相当の旨の意見が出された件数及び懲罰不相当の旨の意見が出された件数並びに右各意見を基に懲罰が科された件数及び懲罰が科されなかった件数を、各年ごとに明らかにされたい。
六、補佐人について
1 懲罰審査会開催以前に補佐人の氏名が当該規律違反容疑者に告知されたことがあるか。あるとすれば過去一〇年間の件数を各年ごとに明らかにされたい。
2 懲罰審査会開催以前に補佐人が当該規律違反容疑者と面接したことがあるか。あるとすれば過去一〇年間の件数を各年ごとに明らかにされたい。
3 懲罰審査会開催以前に補佐人が当該規律違反容疑に関し証拠書類等を閲覧したことがあるか。あるとすれば過去一〇年間の件数を各年ごとに明らかにされたい。
4 懲罰審査会において、補佐人が懲罰不相当を趣旨とする意見を陳述したことがあるか。あるとすれば過去一〇年間の各年ごとの件数及びそれらのうち懲罰審査会において懲罰不相当の意見が出された件数を明らかにされたい。
七、懲罰の執行停止について、裁判所への出頭(施行規則第一六二条第一項)及び他所への移送(施行規則第一六二条第二項)を理由とする場合並びに診断の結果その健康上障害があると認められたことを理由とする場合に関し、それぞれ過去一〇年間の件数を各年ごとに明らかにされたい。
八、過去一〇年間の懲罰の免除件数を各年ごとに明らかにされたい。
九、「行刑施設収容者の処遇に関する規定の認可について」(昭四〇年一二月二一日矯正局長依命通達矯正甲第一一九五号)について
1 右通達における「行刑累進処遇令施行細則等処遇に関する基本的な事項を内容とする規程及び収容者の権利又は重要な利益に関連する内容を含む規程」とはどのようなものか。同様に「その他の収容者の処遇に関する規程」とはどのようなものか。具体的な定義を明らかにされたい。
2 過去一〇年間、矯正管区ごとに、右通達に基づき矯正管区長が認可した規程の件数及び認可が得られなかった件数を明らかにされたい。
3 2のうち、認可が得られなかった規程の認可申請の年月日及び施設名並びに表題を明らかにされたい。
4 過去一〇年間、東京矯正管区において、右通達に基づき管区長が認可した規程の表題を施設ごとに明らかにされたい。
十、矯正統計年報中、「九三 被収容者の懲罰事犯別重罰人員」の懲罰事犯中「その他」に分類される事犯につき、件数上位一〇番目までの具体名を明らかにされたい。
十一、法務省矯保第二七六八号、平成九年一一月一〇日付け「被収容者の動作要領について(参考送付)」を掲載した複数の印刷物が、各施設において被収容者への差し入れ不許可ないし抹消処分を受けていると聞いているが、どのような基準で差し入れ不許可ないし抹消処分としているのか。基準が存在するとすれば、その具体的内容について明らかにされたい。施設ごとに異なる場合、東京拘置所、大阪拘置所、府中刑務所、大阪刑務所並びにL級(千葉刑務所、岐阜刑務所、岡山刑務所、大分刑務所、熊本刑務所、宮城刑務所、旭川刑務所、徳島刑務所)及びW級(栃木刑務所、和歌山刑務所、笠松刑務所、岩国刑務所、麓刑務所、札幌刑務所)の各施設につき、具体的基準を明らかにされたい。
右質問する。
答弁書
第百五十一回国会答弁書第三二号
内閣参質一五一第三二号
平成十三年九月二十五日
内閣総理大臣臨時代理
参議院議長 井上 裕 殿
参議院議員福島瑞穂君提出刑事拘禁施設における懲罰の手続等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員福島瑞穂君提出刑事拘禁施設における懲罰の手続等に関する質問に対する答弁書
一について
刑務所、少年刑務所及び拘置所(以下「行刑施設」という。)におけるお尋ねの各件数については、これらを的確に把握することができる記録が存在しない等の事情から、お答えすることが困難である。
二及び三について
平成四年三月二十五日付け法務省矯保第五百八十三号法務省矯正局長依命通達「懲罰手続規程の運用について」(以下「運用通達」という。)4の(1)及び(2)の趣旨は、懲罰制度を適切に運用するためには、懲罰審査会の審査において、規律違反の疑いのある行為の動機・内容・態様、規律違反の行為をした疑いのある被収容者(以下「容疑者」という。)の行状・処遇経過、当該行刑施設の保安の状況等を十分に考慮する必要があるところ、これらの事項については、総務部以外の部課の職員が通じていることから、原則として、これらの部課の責任者又はこれに準ずる者で懲罰審査会を構成し、議長には、処遇に直接関与する部の責任者を指名することとしたものである。
四について
御指摘の補佐人の指名については、運用通達7の(1)に示されているところ、その趣旨は、容疑者のために意見を陳述する等する補佐人の任務にかんがみ、容疑者の行状・処遇経過等に通じている処遇部等の職員のうち、規律違反の疑いのある行為の取調べを行うなどする部門を担当しない企画担当の首席矯正処遇官らをもって、補佐の任に当たらしめることとしたものである。
五について
お尋ねの各件数については、これらの記録が被収容者個々人ごとに編てつされており、これらを調査・集計することは作業が膨大なものとなるため、お答えすることは困難である。なお、全国の行刑施設において平成三年から平成十二年までの各年に科された懲罰の件数は、別表一のとおりである。
六について
補佐人は、懲罰審査会における意見の陳述に資するため、必要に応じて、容疑者との面接、証拠書類等の閲覧その他の活動をあらかじめ行った上で同審査会の審査に臨んでいるところであり、懲罰不相当の意見を述べることもある。容疑者との面接に際しては、補佐人の氏名又は職名を告げることもある。
お尋ねの各件数については、これらを把握することができる記録が存在しない等の事情から、お答えすることは困難である。
七について
お尋ねの各件数については、懲罰の執行停止件数をその理由別に記録したものが存在しないため、お答えすることができない。なお、全国の行刑施設における平成十年から平成十二年までの間の各年の監獄法(明治四十一年法律第二十八号)第六十二条第一項の規定に基づく懲罰の執行停止件数は、平成十年において千七百七十四件、平成十一年において千九百十六件、平成十二年において二千四百九十四件である。
八について
全国の行刑施設において監獄法第六十二条第二項の規定に基づき懲罰が免除された件数は、平成十年において千六百二十一件、平成十一年において千六百六十九件、平成十二年において二千二百十八件である。
平成九年以前の件数については、これらの記録が被収容者個々人ごとに編てつされており、これらを調査・集計することは作業が膨大なものとなるため、お答えすることは困難である。
九の1について
お尋ねについては、御指摘の通達中の文言でその意味内容が尽くされていると考えており、それ以上に具体的な定義等をお示しすることは困難である。
九の2及び3について
全国の矯正管区において、平成八年から平成十二年までの間、お尋ねの通達に基づき認可された規程の件数は、別表二のとおりであり、認可されなかった例はない。平成七年以前の各件数については、これらを把握することができる資料が存在しないため、お答えすることができない。
九の4について
平成八年から平成十二年までの間に御指摘の通達に基づき東京矯正管区長が認可した規程の表題及び当該認可申請を行った行刑施設は、別表三のとおりである。平成七年以前については、これらを把握することができる資料が存在しないため、お答えすることができない。
十について
矯正統計年報Iの「被収容者の懲罰事犯別受罰人員」表において、「その他」の区分は、同表に事犯名として掲げられた態様のいずれにも分類できない事犯を対象としているところ、これらの事犯については、それ以上に細分した統一的な事犯名による把握又は記録を行っていないことから、お尋ねについては、お答えすることができない。
十一について
被収容者に対する印刷物の差入れについては、監獄法第五十三条及び監獄法施行規則(明治四十一年司法省令第十八号)第百四十六条第二項により、その差入れが処遇上害があると認められる場合には、差入れを不許可としている。また、差入れが許された印刷物については、同法第三十一条、同規則第八十六条及び収容者に閲読させる図書、新聞紙等取扱規程(昭和四十一年法務省矯正甲第千三百七号法務大臣訓令)により、行刑施設の規律及び秩序を害するおそれ等のある部分は抹消し、閲読を許さないものとしている。
別表一
別表二
別表三
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