QUESTIONS質問主意書

第151回国会 「高速横浜環状北線計画に関する質問主意書」(2001年2月23日) | 社民党 福島みずほ 参議院議員(比例区)

質問主意書

質問第一〇号

高速横浜環状北線計画に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十三年二月二十三日

福島 瑞穂   

       参議院議長 井上 裕 殿

   高速横浜環状北線計画に関する質問主意書

 いま地球上では、地球温暖化問題、有害化学物質による人類や各種生物の健康障害、生態系の破壊と異変などの事態が進んでいる。それらの地球危機を、政治、行政の責にあるものが一致して認識し、地球全体を救うための施策を進めることが現代の世界的課題となっている。中でも交通システムについては環境負荷の大きい自動車の走行を削減し、環境負荷の小さい鉄道交通の活用などの対策が求められている状況にある。

 ところが神奈川県では、自動車の走行をますます助長する高速横浜環状北線計画(以下「北線計画」という。)が進められている。北線計画は、平成十一年十二月十七日に環境影響評価書が作成され、建設省に送付され、関係機関の意見を聴取した後、平成十二年六月一日に最終的な修正環境影響評価書(以下「修正評価書」という。)が作成され、平成十二年七月十四日に都市計画決定が行われた。これに基づき、建設大臣は平成十二年十二月二十八日付け「首都高速道路公団法第三十条第一項の基本計画の変更について」と題する書信により、横浜市長に対して基本計画についての協議を申し入れている。

 しかしながら、北線計画事業の実施では、既に劣悪となっている神奈川県下の大気汚染に係る環境基準の実現は到底期待できず、環境影響評価法第三条「環境影響評価その他の手続が適切かつ円滑に行われ、事業の実施による環境への負荷をできる限り回避し、又は低減する」よう努めなければならないとした国の責務、さらに同法第三十三条及び第三十七条において「環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査」しなければならないとし、審査結果によっては「当該免許等を拒否する処分」を行うことができるとした国の責務が果たされるとは考えられない。

 そこで、この北線計画とその都市計画決定過程への疑義について以下質問する。

一 北線計画の環境影響評価について

 本来環境影響評価とは、当該公共投資計画を実施するに先立って、環境に対するマイナスの影響を最小にとどめ、事業実施後の各項目についての環境基準が確保されることを目的として、環境に対する諸事項を予測、評価するものである。ところが北線計画の環境影響評価には、幾つかのあいまい事項、事実に反している点がある。

1 平成十二年三月十三日に、環境庁長官(当時)は北線計画についての意見書を建設大臣(当時)に提出し、北線計画の予定地域では現在でも窒素酸化物、浮遊粒子状物質による大気汚染が著しく、多くの観測点で環境基準に達しておらず、「近年の汚染状況等を勘案すれば、将来の周辺大気環境が現況より大幅に改善するとした予測結果については不確実性が高く、関係者間で連携を図りつつ、更なる対策の推進が必要と考える。」と述べている。そして、窒素酸化物を高効率で除去できる脱硝装置や浮遊粒子状物質を高効率で除去できる集塵装置を設置することを求め、それらの設置措置について修正評価書に書き込むよう求めている。環境庁長官のこれらの意見は、修正評価書に反映されていないが、現在の環境省はこれを十分と考えているのか。

2 さらに環境庁長官は、「(1)明り部からの沿道大気への影響を低減することを目的とした道路構造を含む対策、(2)事業者の管理する対象道路以外の周辺道路における、大気への環境負荷の低減を目的とした対策」を具体的に上げて、「所要の措置を実施に移す」ことを求めている。これらの措置の実施についても修正評価書には反映されていないが、環境省はこれも十分として受け入れているのか。

3 環境庁長官は、北線計画予定地域の周辺各地で環境基準に達していない騒音についても、供用時、工事中双方について予測・評価とその対策を求めている。これら騒音についての措置は修正評価書には反映されていないが、環境省はこれも十分として環境影響評価を受け入れているのか。

4 神奈川県は「自動車排出窒素酸化物総量削減計画」(以下「削減計画」という。)を策定し、北線計画に関する環境影響評価では、高速横浜環状北線(以下「横環北線」という。)の供用後においても、削減計画に基づいて大気環境が改善されるとしている。しかし、現状ですら、大気環境は改善しておらず、横環北線の供用後に大気環境が改善し、窒素酸化物、浮遊粒子状物質等の環境基準が確保できるという予測に根拠があるとは考え難い。現在においても環境省は、北線計画の環境影響評価書に書かれた予測が妥当であると考えるのか。

5 以上に示したように、神奈川県は環境庁長官の意見書で求められたことを修正評価書には反映せず、環境基準達成予測の根拠も示さず、環境庁の指摘に応えることなく都市計画決定を行っている。建設大臣は、そのような都市計画決定に基づいて基本計画の変更協議を申し入れていることになるが、都市計画決定のもとになったこのような修正評価書が、十分なものであると認識した上で変更協議を申し入れたのか。あるいは認識していなかったのか。

6 一九九九年十一月、工事予定地域の鶴見川多目的遊水地で、ダイオキシン、PCBに汚染された土壌が発見された。住民は道路工事によって汚染土壌が飛散して健康障害を受けることを恐れ、これを北線計画の環境影響評価の評価項目とするよう要求したが、神奈川県はこれを行わなかった。ダイオキシン、PCBは猛毒の物質であり、政府としての対策も進められており、これらを評価項目に加えた環境影響評価をやり直すよう求めるべきではないか。

7 環境影響評価書には、不可欠の役割を果たす各種環境計測データに正確さが欠け、統一性にも欠けるものもある。例えば生麦では、最も大気汚染の激しい地域は「産業道路」に面した生麦交差点であることは明らかだが、その地点の観測データはなく、あえてそこから数百メートル住宅街に入った生麦小学校のデータを生麦のデータとして示すなどの方法である。北線計画の事業推進のため作為的な数字を作り上げた手前味噌の手法と言わざるを得ない。このような手法で、現状の大気汚染を正しく把握できると考えるか。

8 環境影響評価書は、浮遊粒子状物質の汚染対策として道路路面を定期的に清掃すれば改善できるかのように述べている。これは、同物質の汚染について無知であるか、環境影響評価に関する法令をあえて愚弄する行為のいずれかである。このような神奈川県の姿勢は、極めて悪質なものと言わざるを得ないが、これに対する政府の見解はどうか。

二 本件計画道路の交通量及び収支並びに関係自治体の財政に対する影響について

 北線計画によれば、横環北線の交通量を一日当たり四万台から五万四千台と推計している。過去の計画交通量と実績及び工事費の計画金額と実績を見ると、交通量は過大に推計し、工事費は過少に見積もった事例が数多い。東京湾アクアラインでは計画交通量は一日三万五千台であったのに、実績は一万台程度、計画工事費は一兆千五百億円であったのに実際の工事費は一兆四千五百億円となったのはその一例である。総務庁行政監察局も首都高速公団に対する監察報告で、「基本計画」指示段階での事業費見積りの精度を上げるよう勧告している。

1 北線計画の交通量の推定が出されたのは、この行政監察局の監察報告が出される以前であったが、その後、交通量の改定は行われていない。それでも政府は、この北線計画の事業費見積りが、適正な水準まで精度を上げたものであると受けとめているのか。

2 建設工事費は平成十三年になって、三千五十億円から四千百七十億円に増加し、しかも公費負担分は二十五%から三十五%に増額となった。この増加は直ちに関係自治体の財政支出の増加に直結し、自治体住民の税負担の増加に帰結する。地方自治体の財政は悪化し、とても工事費の追加を許せるような状態ではなく、政府は国民生活の安定を確保する立場からも、自治体が追加支出をしなければならないような状態にならないよう計画工事費の見積りを精査すべきであると考えるが、これについての政府の見解を示されたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第一〇号

内閣参質一五一第一〇号

  平成十三年三月二十七日

内閣総理大臣 森 喜朗   

       参議院議長 井上 裕 殿

参議院議員福島瑞穂君提出高速横浜環状北線計画に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島瑞穂君提出高速横浜環状北線計画に関する質問に対する答弁書

一の1について

 建設大臣は、高速横浜環状北線(以下「横浜環状北線」という。)に係る環境影響評価書(以下「評価書」という。)について、環境影響評価法(平成九年法律第八十一号。以下「法」という。)第四十条第二項の規定により読み替えて適用される法第二十四条(以下「読替え後の法第二十四条」という。)の規定に基づき、評価書についての環境庁長官意見(以下「環境庁長官意見」という。)を勘案して、都市計画決定権者である神奈川県に対し意見を述べたところである。

 神奈川県は、法第四十条第二項の規定により読み替えて適用される法第二十五条(以下「読替え後の法第二十五条」という。)の規定に基づき、当該建設大臣意見を勘案して、窒素酸化物を高効率で除去可能な脱硝装置及び浮遊粒子状物質を高効率で除去可能な集じん装置について評価書の補正を行ったものと考えている。

一の2について

 建設大臣は、評価書について、読替え後の法第二十四条の規定に基づき、環境庁長官意見を勘案して、神奈川県に対し意見を述べたところである。

 神奈川県は、読替え後の法第二十五条の規定に基づき、当該建設大臣意見を勘案して、明り部からの沿道の大気への影響を低減することを目的とした対策及び事業者の管理する、対象道路以外の周辺道路における、大気への環境負荷の低減を目的とした対策について評価書の補正を行ったものと考えている。

一の3について

 建設大臣は、評価書について、読替え後の法第二十四条の規定に基づき、環境庁長官意見を勘案して、神奈川県に対し意見を述べたところである。

 神奈川県は、読替え後の法第二十五条の規定に基づき、当該建設大臣意見を勘案して、供用時の騒音についての予測及び評価並びに工事中の騒音についての予測、評価及び対策について評価書の補正を行ったものと考えている。

一の4について

 環境省においては、近年の汚染状況等を勘案すれば、将来の周辺大気環境が現況より大幅に改善するとした評価書の予測結果については不確実性が高く、関係者間で連携を図りつつ、更なる対策の推進が必要であり、また、工事中、供用時を通じて、関係機関と協力しつつ、大気環境等に係る事後調査を実施するとともに、その調査結果に応じて適切な措置を講ずることが必要であると考えている。

 その旨は環境庁長官意見としても述べたところであり、神奈川県は、読替え後の法第二十五条の規定に基づき、当該意見を勘案した建設大臣意見を勘案して、評価書の補正を行ったものと考えている。

一の5について

 一の1についてから一の4についてまでで述べたとおり、神奈川県は環境庁長官意見を勘案した建設大臣意見を勘案して、評価書の補正を行ったものと考えており、横浜環状北線に関する都市計画については、建設大臣が、法第四十二条の規定に基づき、環境保全について適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査した上で同意し、神奈川県がこれを決定したものである。

 横浜環状北線については、このようにして決定された都市計画を受けて、建設大臣は、横浜市等に対し首都高速道路公団法(昭和三十四年法律第百三十三号)第三十条第三項において準用する同条第二項の規定に基づき、基本計画の変更の協議を申し入れたものである。

一の6について

 横浜環状北線の環境影響評価の評価項目は、神奈川県により適正に選定されたものと理解している。

 また、当該環境影響評価は、適正な手続を経て行われたものと考えている。

 なお、御指摘のポリ塩化ビフェニル及びダイオキシンに汚染された土壌が発見された地点は、横浜環状北線の区域(都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第五項の都市施設の区域をいう。)の外であると承知している。

一の7について

 横浜環状北線の建設予定位置と大気汚染常時監視測定局の設置状況等を踏まえるならば、神奈川県が採った大気汚染の調査手法によって、評価書における大気汚染の現状把握は適正に行われたものと考えている。

一の8について

 補正後の評価書には、定期的な路面清掃の実施のほか、「トンネル内の排気ガスは、換気設備により十分に希釈し、拡散させることにより、周辺に与える影響を小さくするとともに、換気所において、浮遊粒子状物質を高効率で除去可能な集じん装置を設置」することが記載されており、浮遊粒子状物質の汚染対策は適正なものであると考えている。

二について

 事業費のうち、工事費は、既存の地質データや鉄道等の交差を考慮し、適切な構造、工法を選定した上、過去の同種構造物における実績を基に算出している。また、用地費及び補償費は、路線価、過去の実績等を基に算出しており、事業費の見積りは適正なものと考えている。

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