QUESTIONS質問主意書
第154回国会 「セクシュアル・ハラスメントの被害者救済に関する質問主意書」(2002年7月26日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)
質問主意書
質問第四三号
セクシュアル・ハラスメントの被害者救済に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成十四年七月二十六日
福島 瑞穂
参議院議長 倉田 寛之 殿
セクシュアル・ハラスメントの被害者救済に関する質問主意書
「衆議院議員阿部知子君提出セクシャルハラスメントの被害者救済に関する質問に対する答弁書」が提出されたが、セクシュアル・ハラスメントの問題の本質、また被害者救済を考えると極めて不十分であると言わざるを得ない。
セクシュアル・ハラスメントの本質は性暴力であり、最も大切なことは、被害者の権利の擁護と尊厳の回復という点である。
前年成立した「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の前文においても、ドメスティック・バイオレンスが「個人の尊厳を害し、男女平等の実現の妨げとなって」おり、「被害者の救済が必ずしも十分に行われてこなかった」と述べられている。また、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の第一条の目的規定でも、「児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ」と、近年の立法においても、一般的に性犯罪が、個人の権利を侵害し、尊厳を奪うものであるという認識が示されるようになった。
セクシュアル・ハラスメントも、多くが密室で行われ、加害者がその地位を利用して暴力を行う点で、ドメスティック・バイオレンスと何ら暴力の形態において変わらない。しかし、一九九九年に改正された男女雇用機会均等法においても、職場の配慮義務にとどまり、救済や罰則の規定がないために、被害者を救済する直接的な根拠にはならない点を考えると、法的措置を急ぐとともに、運用面においても、早急に、被害者救済に取り組み、被害者個人の権利と尊厳の回復に努める必要があると言えよう。
以上のことを踏まえた上で、以下質問する。
一、人事院規則一〇-一〇について
1 人事院規則においては、目的が「人事行政の公正の確保、職員の利益の保護及び職員の能率の発揮」と規定されており、セクシュアル・ハラスメントの防止は、あくまでも円滑な行政の運営のため行われている。そのため被害者の保護、権利の救済がどうしても後回しになっているのではないかと思われる。この目的とセクシュアル・ハラスメントの被害者救済に関する政府の見解を示されたい。
2 第四条において、各省各庁の長の責務として、セクシュアル・ハラスメントを訴えた職員が、「職場において不利益を受けることがないよう配慮しなければならない」としているが、この「不利益」が想定している事例を、具体的に示されたい。
3 職場の監督者の責務として、セクシュアル・ハラスメントに対する環境配慮義務を設けていないのはなぜか。改正均等法第二十一条にも、事業主の配慮義務についての規定が設けられているところであり、当然のことながら、人事院規則には、より厳しい配慮義務違反に対する罰則(職場名の公表や監督者の処分等)の規定が設けられるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
4 過去に、セクシュアル・ハラスメントに対する配慮義務違反として、監督者が処分を受けた事例はあるか。件数とそれぞれの概要を明らかにされたい。
5 第五条において、職員の責務として「セクシュアル・ハラスメントをしないように注意しなければならない」との規定があるが、なぜ、「セクシュアル・ハラスメントをしてはいけない」と禁止することができないのか、その理由を明らかにされたい。また、セクシュアル・ハラスメントをしてはいけないことは自明の理であり、であるとすれば、例えば、「行政及び公務員に対する国民の信頼を回復するための新たな取組について」(平成八年十二月十九日付事務次官等会議申合せ)において「関係業者等との接触に当たっての禁止事項」を定めているように、セクシュアル・ハラスメントを禁止規定とすべきではないのか。政府の見解を明らかにされたい。
6 第七条において研修を規定しているが、各省各庁ごとの研修の具体的内容を、研修体制、対象、人数、時間、回数等についてまで明らかにされたい。また、所管の外郭団体の取組についても、個別具体的に明らかにされたい。特に、セクシュアル・ハラスメントが発生した職場には、再発防止のための特別な研修を行うべきと考えるが、そのような措置を採っているかも含めて明らかにされたい。
二、事実認定について
1 答弁書の回答五について、人事院規則のセクシュアル・ハラスメント事実認定における加害者の立証責任とは、事実認定をめぐって、当事者間の主張に不一致がある場合に加害者の側が、自分の主張を裏付ける責任があるということである。具体的には、加害者が事実を否認する場合には、当該の言動を行っていないことを証明したり、加害者が事実を合意とする場合には、当該の言動の合意であることを証明することを指す。加害者と被害者の力関係を考慮することはもちろんだが、加害者側の立証責任を求めることも必要と考えるが、この点について、政府の見解を示されたい。
2 過去に受けたセクシュアル・ハラスメント相談のうち、人事院が認定できないことが理由で、若しくは言い分が対立していることが原因で調停不能となった事例はあるか。それぞれの概要と件数を示し、その理由も説明されたい。
3 答弁書の回答十一にあるように、セクシュアル・ハラスメントの事実認定では、当事者以外の者からの事情聴取等の方法により事実関係を十分に確認することが必要であるとしている。当事者以外の者とは、被害者、又は加害者と職場内で利害関係のある関係者であったり、自らが監督責任の問われかねない立場にいる者であったりし、中立的な意見を聴取できるとは言い難いケースも出てくる。そこで、セクシュアル・ハラスメントの事実認定では、被害者が当時相談をしていた部外の人などを含めて、被害者と加害者の主張を対等に聴くことが、中立、公正なのではなく、被害者と加害者の力関係を考慮して、行うことが必要である。被害者の立場に立ち、かつ客観的な事実認定を行うには、どのような工夫が必要と考えるか。
4 答弁書の回答四において、「双方の主張に不一致がある場合には、それぞれの主張を踏まえて双方から更に聴取すること等により、事実関係の確認が適切に行われるものと考える」としているが、これは被害者に、被疑者である加害者の言い分を明らかにした上で、それに対する十分な反論と訴えの機会を与えることと解釈してよいか。実際には、加害者に被害者の陳述書を渡したり、言い分を伝えたり、加害者の反論を先にさせているような事例が見受けられる。セクシュアル・ハラスメントの本質からすれば、被害者の反論を先に始めるのはもちろんのこと、被害者のプライバシーの保護を優先させるべきと考えるが、いかがか。
5 当事者以外の者からの事情聴取等を経てもなお、セクシュアル・ハラスメントの事実認定が困難であった事例はあるか。また、その場合、どのような対応を取ったか、それぞれの事例につき具体的に説明されたい。
三、加害者の処遇について
1 過去(人事院規則一〇-一〇施行後から現在に至るまで)に各省庁から、人事院がセクシュアル・ハラスメントの加害者の処分量定について、相談を受け指導したケースは何件あるか。それぞれの事例における助言内容と、実際の処分量定、それに対する政府の見解を示されたい。
2 答弁書の回答六では、「懲戒処分の指針について」は、標準的な処分量定として、相手の意に反することを認識の上で、セクシュアル・ハラスメントを行った場合に処分を受ける旨明記してあるが、加害者が認識していない場合、懲戒処分に当たらないという認識であるのか明らかにされたい。セクシュアル・ハラスメントの認定については、人事院規則一〇-一〇に基づく「セクシュアル・ハラスメントをなくすために職員が認識すべき事項についての指針」の基本的な心構えに、「セクシュアル・ハラスメントに当たるか否かについては、相手の判断が重要であること」とあるように、加害者が相手の意に反することを認識していないからといって、懲戒処分の対象とならないとすれば、セクシュアル・ハラスメントの本質を全く理解していないものと言わざるを得ない。この点についての政府の見解を示されたい。
3 答弁書の回答六では、「被害者が受けた精神面への打撃についても」処分量定として考慮されるとのことだが、過去、セクシュアル・ハラスメントの被害者が精神疾患を訴えてきたことはあるか。あるとしたらそれぞれの事例概要を具体的に明記されたい。また、加害者の処分量定の決定に際し、精神疾患を考慮したことはあるか。あるとしたら何件あり、それぞれの決定にどのように影響を与えたのか明記されたい。過去に精神疾患を被害者が訴え、加害者の処分量定が重くなったケースがあれば示されたい。また、既に処分量定が決定した場合でも、その後、被害者がセクシュアル・ハラスメントにより精神疾患に罹患したことが、医師・専門家等の証明により認定された場合、当然のことながら処分量定の見直しが行われるものと理解してよいか。
4 加害者の処分量定において、既に加害者が被害者に示談金を支払う等の民事的な償いをしている場合は、軽微な処分で終わるという事例が見受けられる。行政の処分は、国家の懲戒規定に基づいて厳正になされるべきであり、被害者への個人的な償いのいかんによって左右されるべきではないと考えるが、政府の見解を示されたい。
四、被害者の保護、救済について
1 被害者からセクシュアル・ハラスメントの訴えがあった場合は、まず被害者の心身の安全を最優先する必要があり、何よりもまず加害者と接触しなくてよい環境を保障することが求められる。被害者保護の観点から、加害者の速やかな配置換えや、被害者の休暇保証など被害者保護のための具体的な対策を取るべきと考えるがどうか。
2 答弁書の回答三で、「各府省において、個別の事例に応じ、事後における調査も含めた必要な措置を適切に講ずることとしている」とあるが、被害者への配慮措置、就労・就学・研究継続のための環境整備も含む被害者の権利回復がどのように行われたかについて、その調査方法も含め、事例別に明らかにされたい。また、事後における各職場からの報告制度の検討についての見解を示されたい。
3 答弁書の回答二において、セクシュアル・ハラスメントに起因する問題で人事異動の措置を講じた事例二十一件のうち、配置換えを行ったことにより、起因となるセクシュアル・ハラスメントの問題が解決したかどうか、それぞれの事例について明らかにされたい。
4 国家公務員が公務上受けた心身のダメージに対しては、国家公務員災害補償法によって補償される。セクシュアル・ハラスメントについても、当然それが公務上行われたものと認定されれば、第十条の療養補償に基づき、被害者の心身のダメージについて補償されると考えてよいか。また、加害者が国家公務員で、被害者が国家公務員以外、例えば非常勤職員や学生であった場合でも、補償の対象となると考えてよいか。
5 各職場に対して、セクシュアル・ハラスメントの認定に必要な資料の提供協力を義務付けることについての見解はいかがか。
6 実際の被害者の心身のダメージは、胃潰瘍になったり、うつ状態になる等、他の心身症状として認識されることも多い。PTSD以外の疾患でも、被害者の心身のダメージを総合的に考慮し対応する必要があると考えるが、いかがか。
7 セクシュアル・ハラスメントを申し立てた被害者に、「被害者をトラブルメーカー視する」「非常勤職員を雇い止めする」「現場の相談窓口で、事実認定を放棄されたりもみ消される」というような二次被害が多発している。人事院はこのような二次被害の実態を把握しているか。もし把握していないとすれば、解決後、一定期間の後に追跡調査を実施するなど実態の把握を行い、アフターケアーをすべきである。被害者が二次被害を被らないために、人事院ではどのような対策をしているか。
8 元職員、元非常勤職員、元学生らが、セクシュアル・ハラスメントを申し立てたことによって、雇い止めや解雇をされたり、退学奨励される等の著しい不利益(人権侵害)が生じた場合には、現行法の解釈においても、速やかに、「職場に復帰させて、環境を調整する」「学校に復学させて環境を調整する」という具体的な救済措置を採る必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。
9 二次加害(脅迫・報復・プライバシー暴露など)の実態を把握しているか。またどのような対策を講じているか明らかにされたい。
五、苦情相談、不服申立てについて
1 答弁書の回答九に対する回答では、人事院規則のセクシュアル・ハラスメントの苦情処理相談の対象者として、元職員、元学生、元関係者からの被害申立てにも積極的に応じると解釈してよいか。そうであれば、この点について、各省庁にどのように周知しているか。各省庁に通知を出す必要があると考えるが、いかがか。
2 答弁書でも述べているとおり、人事院規則では、セクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談に係る問題を、迅速かつ適切に解決するよう努めるものとすることを定めているが、中には、被害者が人事院に苦情相談の申立てをして、セクシュアル・ハラスメントの事実認定から、職場への指導まで、約半年から、一年近く時間が掛かっている事例があると聞いている。どのくらいの期間であれば被害者が不利益を被らずに「迅速に」解決できると考えるか。個々の事例により異なるところであろうが、目安となる期間を示されたい。また、過去のセクシュアル・ハラスメントの相談において、解決に至るまでどの程度の時間が掛かっているか、各事例について明らかにされたい。
3 セクシュアル・ハラスメントの苦情相談において、被害者が、関係省庁の相談体制、相談員の対応、また解決方法等に不服のある場合は、どこに訴えることができるか。加害者にのみ処分の不服申立て制度を与えるのではなく、被害者にも当然の権利として処分の不服申立て制度を認める必要があると思うがいかがか。また、第八条第三項において、「人事院に対しても苦情相談を行うことができる」としているが、人事院の苦情相談に上記のような不服があった場合、どこに申し立てることができるか明らかにされたい。このような場合の不服申立ての手段について、政府はどのように配慮しているのか。
4 不服申立てのできる被害者には、当然のことながら、元職員、元学生、元関係者も含まれると解釈してよいか。
5 過去において、被害者から不服申立てがあった事例は何件か。それぞれの事例について具体的に説明されたい。
右質問する。
答弁書
答弁書第四三号
内閣参質一五四第四三号
平成十四年九月二十日
内閣総理大臣 小泉 純一郎
参議院議長 倉田 寛之 殿
参議院議員福島瑞穂君提出セクシュアル・ハラスメントの被害者救済に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員福島瑞穂君提出セクシュアル・ハラスメントの被害者救済に関する質問に対する答弁書
一の1について
人事院規則一〇-一〇(セクシュアル・ハラスメントの防止等)は、人事行政の公正の確保、職員の利益の保護及び職員の能率の発揮を目的として、セクシュアル・ハラスメントの防止及び排除のための措置とともに、セクシュアル・ハラスメントのため職員の勤務環境が害されたり、セクシュアル・ハラスメントヘの対応に起因して職員がその勤務条件につき不利益を受けたりする問題が生じた場合に適切に対応するための措置に関し必要な事項を定めており、お尋ねの「被害者救済」に関しても、苦情相談を受ける体制の整備及び苦情相談に係る問題の迅速かつ適切な解決に関する事項等を定め、職員の利益の保護のために必要な方策を講ずることとしているところである。
一の2について
人事院規則一〇-一〇第四条の職場における「不利益」には、昇任、配置換え等の任用上の取扱いや昇格、昇給、勤勉手当等の給与上の取扱い等の勤務条件に関する不利益のほか、同僚等から受ける誹謗や中傷等が含まれる。
一の3について
人事院規則一〇-一〇第四条は、各省各庁の長は、職員がその能率を充分に発揮できるような勤務環境を確保するため、セクシュアル・ハラスメントの防止及び排除に努めるとともに、セクシュアル・ハラスメントに起因する問題が生じた場合においては、必要な措置を迅速かつ適切に講じなければならないと定めており、さらに、同規則第五条第二項は、職員を監督する地位にある者(以下「監督者」という。)は、良好な勤務環境を確保するため、日常の執務を通じた指導等によりセクシュアル・ハラスメントの防止及び排除に努めるとともに、セクシュアル・ハラスメントに起因する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならないと定めている。
この場合において、監督者が、セクシュアル・ハラスメントの防止及び排除に努めることを怠った場合等に該当すると認められるときは、懲戒処分等の対象となり得るものである。
一の4について
人事院規則一〇-一〇が施行された平成十一年四月一日から平成十四年三月三十一日までの間(以下「過去三年間」という。)に、監督者が、セクシュアル・ハラスメントの防止及び排除に努めることを怠ったこと等を理由の一つとして懲戒処分に付された事例は一件あり、国立学校において複数の学生の身体に触る行為等をした教員の監督者に対するものである。
一の5について
衆議院議員阿部知子君提出セクシャルハラスメントの被害者救済に関する質問に対する答弁書(平成十四年五月二十一日内閣衆質一五四第五五号。以下「答弁書」という。)の十三についてでお答えしたとおり、人事院規則一〇-一〇第五条は、人事院の定める指針に従いセクシュアル・ハラスメントをしないように注意することを職員の責務として定めるとともに、当該指針である「人事院規則一〇-一〇(セクシュアル・ハラスメントの防止等)の運用について」(平成十年十一月十三日職福-四四二人事院事務総長通知。以下「運用通知」という。)別紙一「セクシュアル・ハラスメントをなくすために職員が認識すべき事項についての指針」において、セクシュアル・ハラスメントの態様等によっては懲戒処分の対象となることを定めており、セクシュアル・ハラスメントはしてはならないものであるということが明らかにされていると考える。
一の6について
平成十三年度における各省各庁ごとの人事院規則一〇-一〇第七条の規定に基づく研修の具体的内容は、別表のとおりである。なお、お尋ねの「所管の外郭団体の取組」については、把握していない。
また、お尋ねの「特別な研修」が具体的にどのようなものを指すのか必ずしも明らかではないが、各府省において、「セクシュアル・ハラスメントが発生した職場」におけるセクシュアル・ハラスメントの再発防止のため、必要に応じ、研修の実施も含め適切な措置が講じられるものと考える。
二の1について
セクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談に係る問題の事実関係の確認については、被害者及び加害者とされる者から事実関係等を聴取するとともに、当事者間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実関係の確認が十分にできないと認められる場合等においては、それぞれの主張を踏まえて双方から更に聴取し、又は第三者からも事実関係等を聴取することにより、事実関係の確認が適切に行われるものと考える。
二の2について
お尋ねの「人事院が認定できないことが理由で、若しくは言い分が対立していることが原因で調停不能となった事例」が具体的にどのようなものを指すのか必ずしも明らかではないが、セクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談が行われた場合には、被害者及び加害者とされる者双方の主張に不一致がある事例であっても、事実関係について双方からの聴取等を行い、その結果に基づいて当該事例に関し必要な措置が講じられているところであり、対応が不能となった事例として把握しているものはない。
二の3について
セクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談に係る問題の事実関係の確認については、二の1についてで述べたとおりである。
なお、事実関係の確認に際し第三者から聴取する場合には、運用通知別紙二「セクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項についての指針」(以下「運用通知別紙二の指針」という。)に定められている相談者から事実関係等を聴取する際の留意事項を参考にするなどして、適切に対応する必要があるものと考える。
二の4について
答弁書の四についての趣旨としては、セクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談に係る問題の事実関係の確認に当たって、被害者及び加害者とされる者双方の主張に不一致がある場合には、それぞれの主張を踏まえて双方から更に聴取すること等により、事実関係の確認を適切に行う必要があるということであり、事実関係の確認の具体的方法については、例えば、被害者に加害者とされる者の主張の内容を明らかにした上で、又は加害者とされる者に被害者の主張の内容を明らかにした上で、これらに対する十分な主張の機会を与えるなど、個別の事例に応じた適切な方法によるべきものと考える。
なお、その際、運用通知別紙二の指針に定められているように、関係者のプライバシーや名誉その他の人権が十分に尊重されるべきことは当然である。
二の5について
お尋ねの「当事者以外の者からの事情聴取等を経てもなお、セクシュアル・ハラスメントの事実認定が困難であった事例」及びその場合における対応として承知しているものは、引き続き聴取しても事実関係を確認できる見込みがないことから相談者の所属する職場の全職員を対象とするセクシュアル・ハラスメントの防止のための啓発活動を行ったもの等がある。
三の1について
任命権者が懲戒処分の量定を決定する際に、人事院に協議等を行う仕組みにはなっておらず、人事院は、セクシュアル・ハラスメントに関する個別の事例における処分量定の当否について指導する立場にない。
なお、人事院は、各種の機会を通じて、セクシュアル・ハラスメントに関する事例については「懲戒処分の指針について」(平成十二年三月三十一日職職-六八人事院事務総長通知)に掲げる標準例を踏まえ厳正に対処するよう指導している。
三の2について
「懲戒処分の指針について」は、代表的な非違行為の事例を選び、それぞれにおける標準的な処分量定を掲げたものであり、その性格上、懲戒処分の対象となる行為をすべて網羅しているものではない。
セクシュアル・ハラスメントの加害者が相手の意に反することを認識していない場合であっても、懲戒処分の対象となり得ると考える。
三の3について
過去三年間にセクシュアル・ハラスメントを理由に懲戒処分に付された事例のうち、事実関係の確認の際に被害者がセクシュアル・ハラスメントにより精神疾患に罹患したと主張したものは、教員が学生等に対し、わいせつな行為その他の身体への不必要な接触や性的な発言を行ったことによるものが五件、職員が同じ職場の職員に対し、わいせつな行為を行ったことによるものが一件である。これらの事例においては、いずれも、セクシュアル・ハラスメントにより被害者の精神面に相当程度の打撃を与えたことをも総合的に考慮して、懲戒処分の量定を決定している。
懲戒処分については、重大な事実の誤認のあることが処分後に明らかになった場合、著しく客観的妥当性を欠き明らかに条理に反する場合等特殊な事情があるときは、当該処分を取り消し、当該処分の対象となった行為について改めて処分を行うことができると解される。被害者がセクシュアル・ハラスメントにより精神疾患に罹患したことが処分後に明らかになった場合に、当該処分を取り消して再度処分をすることができるかどうかは、個別の事例において、この考え方を基礎として判断すべきものと考える。
三の4について
任命権者が懲戒処分の量定を決定するに当たっては、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、態様、結果、影響等のほか、日ごろの勤務態度や非違行為後の対応等も含め諸般の事情を総合的に考慮して判断すべきものと考える。
四の1について
人事院規則一〇-一〇第四条は、各省各庁の長は、セクシュアル・ハラスメントに起因する問題が生じた場合においては、必要な措置を迅速かつ適切に講じなければならないと定めており、運用通知別紙二の指針に定められているセクシュアル・ハラスメントに関する問題処理のための具体的な対応例を参考にするなどして、各府省において、個別の事例に応じて必要な措置を適切に講ずべきものと考える。
四の2について
お尋ねの「被害者への配慮措置、就労・就学・研究継続のための環境整備も含む被害者の権利回復」が具体的にどのようなものを指すのか必ずしも明らかではないが、事後における調査も含めた必要な措置を行った事例として承知しているものは、加害者の配置換えを行うとともに、被害者に対し継続的なカウンセリングを行ったもの、被害者の配置換えを行うとともに、その後の被害者の状況の把握を行ったもの、被害を受けた学生の指導教官を他の教員に変更するなどの加害者とされる指導教官と当該学生とを接触させないよう環境面の措置を講じたもの等がある。
また、お尋ねの「事後における各職場からの報告制度」が具体的にどのようなものを指すのか必ずしも明らかではないが、セクシュアル・ハラスメントに起因する問題が生じた場合において、必要な措置を迅速かつ適切に講じるため、各府省において、職員からの苦情相談に対応した相談員や監督者から報告させることを含め適切な対応がされるものと考える。
四の3について
答弁書の二についてでお答えしたセクシュアル・ハラスメントに起因する問題が生じた場合に任命権者が配置換え等の人事異動の措置を講じた事例二十一件のすべてについて、セクシュアル・ハラスメントは解消し、当該問題への対応は終了したものと承知している。
四の4について
国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)においては、常勤職員であると非常勤職員であるとを問わず、職員が、公務に起因して傷病等の災害を受けた場合には、療養補償その他の同法に基づく補償を行うことが定められている。セクシュアル・ハラスメントをされたことによる傷病についても、それが公務に起因するものであると認定された場合には、同法に基づく補償が行われる。
四の5について
セクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談に係る問題の事実関係の確認に当たっては、各府省において、職員からの苦情相談に対応した相談員に報告させたり、セクシュアル・ハラスメントがあったとされる職場の監督者等から必要な資料を提供させたりすることを含め適切な対応がされるものと考える。
四の6について
セクシュアル・ハラスメントをされたことにより被害者が肉体的又は精神的な打撃を受けた場合には、各府省において、個別の事例に応じて必要な措置を迅速かつ適切に講じなければならないものと考える。
四の7について
お尋ねのような「二次被害」として人事院が確認したものはないが、人事院に対するセクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談においてそのような事実が確認された場合には、各府省に対して適切な措置を講ずるよう指導することとなると考える。また、お尋ねのような「二次被害」も含めたセクシュアル・ハラスメントに起因する問題が生じた場合における適切な対応のため、セクシュアル・ハラスメントの防止等に関する研修等を実施することにより各府省の人事担当者等の理解を深めるとともに、セクシュアル・ハラスメントの防止等に関するシンポジウムの開催等を通じて、広く職員のセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する意識の向上を図っている。
四の8について
人事院規則一〇-一〇第四条は、セクシュアル・ハラスメントに対する苦情の申出、当該苦情等に係る調査への協力その他セクシュアル・ハラスメントに対する職員の対応に起因して当該職員が職場において不利益を受けることがないよう配慮しなければならないと定めており、各省各庁の長は、セクシュアル・ハラスメントに関する苦情を申し出たことを理由に、職員が職場における不利益を受けることのないように配慮しなければならないこととされている。
なお、学生に対しても同様の配慮をしなければならないこととしている。
四の9について
お尋ねのような「二次加害」について承知しているものとしては、セクシュアル・ハラスメントに関する苦情を申し出たがその後加害者とされる者から仕事上の嫌がらせを受けるようになったというもの、加害者とされる者が聴取された事実関係等を他の職員に漏らしたことにより被害者のプライバシーを侵害したというもの等がある。
お尋ねのような「二次加害」に対する対応については、各府省において、加害者への再発防止の警告や監督者に対する経過観察の指示を行うなどの対策を講じている。
五の1について
答弁書の九についてでお答えしたとおり、人事院規則一〇-一〇は、人事行政の公正の確保、職員の利益の保護及び職員の能率の発揮を目的としていることから、セクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談の対象を職員としているものである。
なお、お尋ねの「元職員、元学生、元関係者からの被害申し立て」の内容に懲戒事由に該当する可能性があるものが含まれる場合等においては事実関係を確認することが適当と考える。
五の2について
セクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談においてお尋ねの「被害者が不利益を被らずに「迅速に」解決できると考える」期間がどのくらいであるかについては、セクシュアル・ハラスメントに該当するとされる行為の内容、相談者の求める措置その他の事情が事例により様々であることから、目安としても一概にお示しすることは困難である。
また、平成十三年度に行われたセクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談については、苦情相談が行われた日から一か月以内に、即日処理されたおおむね二割の事例を含めておおむね六割の事例が処理されており、苦情相談が行われた日から、三か月以内にはおおむね八割、六か月以内にはほとんどすべての事例が処理されている。
五の3について
被害者である職員が、各府省のセクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談において苦情相談を受ける体制、相談員の対応、解決方法等への不満(以下「相談の対応に関する不満」という。)がある場合には、人事院又は当該府省の相談員に対して苦情相談を行うことができる。お尋ねの被害者にも認める必要がある「不服申立て制度」が具体的にどのようなものを指すのか必ずしも明らかではないが、相談の対応に関する不満については、人事院又は各府省の相談員に対する苦情相談を行うことができる。
また、被害者である職員が、人事院に対するセクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談において相談の対応に関する不満がある場合には、これについても別途人事院に対して苦情相談を行うことができる。
五の4について
人事院規則一〇-一〇第八条は、セクシュアル・ハラスメントに関する苦情相談の対象を職員としているものであり、当該苦情相談において相談の対応に関する不満がある場合の苦情相談についても職員が対象となるものであるが、お尋ねの「元職員、元学生、元関係者」からの苦情等の内容に懲戒事由に該当する可能性があるものが含まれる場合等においては事実関係を確認することが適当と考える。
五の5について
過去三年間において、セクシュアル・ハラスメントについての相談の対応に関する不満を内容に含む苦情相談が行われた事例として把握しているものは五件であり、いずれも、相談員の発言に心情を傷つけられた等の不満を内容に含むものである。
別表 平成13年度における各省各庁ごとの人事院規則10-10第7条に基づく研修(1/10)
別表 平成13年度における各省各庁ごとの人事院規則10-10第7条に基づく研修(2/10)
別表 平成13年度における各省各庁ごとの人事院規則10-10第7条に基づく研修(3/10)
別表 平成13年度における各省各庁ごとの人事院規則10-10第7条に基づく研修(4/10)
別表 平成13年度における各省各庁ごとの人事院規則10-10第7条に基づく研修(5/10)
別表 平成13年度における各省各庁ごとの人事院規則10-10第7条に基づく研修(6/10)
別表 平成13年度における各省各庁ごとの人事院規則10-10第7条に基づく研修(7/10)
別表 平成13年度における各省各庁ごとの人事院規則10-10第7条に基づく研修(8/10)
別表 平成13年度における各省各庁ごとの人事院規則10-10第7条に基づく研修(9/10)
別表 平成13年度における各省各庁ごとの人事院規則10-10第7条に基づく研修(10/10)
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第200回国会 外国人の収容および「送還忌避」に関する質問(2019年12月2日)
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第196回国会(常会) 質問主意書 質問第一九一号 日本年金機構の情報連携と業務委託並びにマイナンバーの利用と個人情報保護に関する質問主意書(2018年7月18日)
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第196回国会 「麻生財務大臣の2013年4月19日の水道民営化発言に関する質問主意書」(2018年7月10日)
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第196回国会 「森友学園への国有地貸付・売却に関する決裁文書原本の大阪地方検察庁への任意提出に関する質問主意書」(2018年3月14日)
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第196回国会 「森友学園に関して二〇一七年二月二十二日に行われた、菅官房長官に対する報告会議に関する質問主意書」(2017年4月23日)