QUESTIONS質問主意書

第154回国会 「メロックス社製MOX燃料について東京電力の行った製造確認試験及び製造実績調査に関する質問主意書」(2002年7月18日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)

質問主意書

質問第三六号

メロックス社製MOX燃料について東京電力の行った製造確認試験及び製造実績調査に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十四年七月十八日

福島 瑞穂   

       参議院議長 倉田 寛之 殿

   メロックス社製MOX燃料について東京電力の行った製造確認試験及び製造実績調査に関する質問主意書

 関西電力は昨年十二月に、フランスのメロックス社において製造中であったMOX燃料を廃棄することを決めた。この同じ施設では今も、東京電力向けのMOX燃料が製造され続けている。しかし、この施設での沸騰水型原発(以下「BWR」という。)用MOX燃料製造開始に当たっては、製造確認試験や製造実績調査についての疑義が指摘されており、速やかに製造中止と、指摘されている疑義の検証という措置が採られるべきであると考える。

 メロックス社の施設は、東京電力からMOX燃料製造を委託されて初めてBWRのMOX燃料を製造することになったものである。それまでは加圧水型原発(以下「PWR」という。)用のMOX燃料の製造実績しかなかった。したがってBWR用MOX燃料の製造能力については、実際のMOX材料を用いてBWR用MOX燃料をきちんと製造できるということを確認することが、製造確認試験の当然の原則のはずである。しかし東京電力は、メロックス社においてMOX材料を用いた製造確認試験を行わず、ウランペレットを用いた試験でそれに代えている。また、製造実績調査ではPWR仕様の燃料についての記録確認しか行わないなど、不可解としか言いようのないやり方をしている。メロックス社が海外顧客向けMOX燃料の製造のために設置した施設については、東京電力が製造確認試験を行っていた時期には、まだプルトニウムを持ち込む許可がフランス政府から下りておらず、そのために、やらなければならないはずの試験ができなかったのでないか、という疑問を抱かざるを得ない。

 メロックス社において、製造確認試験や製造実績調査が正当に行われたか大きな疑義があるので、以下質問する。

一、MOX粉末を用いた製造確認試験を行わなかった件について

 東京電力が二〇〇〇年十一月十四日に通商産業大臣(当時)に申請を行った輸入燃料体検査申請書(メロックス社製福島第一原発3号機用MOX燃料関係)添付書類Ⅳ品質保証に関する説明書によると、「当社(東京電力)は元請企業であるJNFと共に、1F3(福島第一原発3号機)用のMOX燃料の製造に先だち、一九九九年から二〇〇〇年にかけて、日本向けBWR仕様のMOX燃料を初めて製造するメロックス社に対してMOX燃料の各製造工程毎に、製造実績の調査及び実際の部材または模擬部材を使用してMOX燃料の製造確認試験を実施し、その技術的能力を評価」しており、その結果「メロックス社はその技術的能力に問題はなく、当社の要求仕様を満足するMOX燃料を製造できることを確認した。」と結論している。

 ところが、内容についての記述をみると、「燃料材(ペレット)製造工程については、PWR仕様のMOX燃料材の製造実績調査」、すなわち、PWR仕様についての記録の確認を行っただけである。実際の部材を使用しての試験については、「UO2燃料材約八十㎏を使用して研削工程の能力を調査」、すなわち、ウランペレットを用いての試験を行っただけである。ベルゴニュークリア社におけるMOX燃料の製造に先だっては、約八十㎏のMOX粉末を使用してBWR仕様のMOXペレットを製造し、確認を行っており、明らかに際立った違いがある。

 東京電力は、これについて、ベルゴニュークリア社が開発し、十分な実績があるMIMAS法を使っており、既にベルギー(ベルゴニュークリア社)において製造し、福島と柏崎に搬入したものと同等の方法で製造してあると説明している。しかし、たとえ製造方法が同じであっても、施設が違えば、その製造能力について、MOX材料を用いてMOX燃料をきちんと製造できるということを確認することが、事前の製造確認試験の当然の原則である。さらに、両社の製造能力が同等であるという根拠となる資料も示されておらず、逆に、経済産業省の委託研究である、財団法人原子力発電技術機構が行った燃料集合体信頼性実証試験に関する報告書からは、ベルゴニュークリア社製MOX燃料ペレットとメロックス社製MOX燃料ペレットでは、プルトニウムの分布状況に大きな差異があることが見て取れる。

1 メロックス社における製造確認試験において、東京電力が、MOX粉末を用いたペレットの製造試験を行わなかった理由をどのように承知しているのか。また、政府はこの妥当性についてどのように考えているのか、根拠を含めて明らかにされたい。

2 メロックス社とベルゴニュークリア社のMOX燃料の製造能力及び品質が同等であるという具体的な根拠は示されているのか。示されているのであれば、それを公表されたい。

3 経済産業省が財団法人原子力発電技術機構に委託した研究の報告書である「燃料集合体信頼性実証試験に関する報告書(混合酸化物燃料照射試験編)(平成十一年度及び平成十二年度版、以下「報告書」という。)の記載内容について、以下三点を問う。

 (1) 報告書にあるベルゴニュークリア社製燃料のプルトニウム分布(平成十一年度報告書三十五ページ、平成十二年度二十九ページ他)をメロックス社製の分布(平成十二年度七十五ページ)と比較すると、分布形状が異なり、富化度が同程度のもので比較しても、プルトニウム濃度25~30%程度のプルトニウムの面積率及び存在率はメロックス社の方が明らかに高くなっている。報告書に「比較的大きなプルトニウムスポットでは平均プルトニウム濃度は約30%である。この値はMIMAS法で製造したMOX燃料ペレットの一次混合粉末のプルトニウム濃度(約30%)とほぼ等しい。このことから、一次混合粉末と濃度調整用UO2粉末とを混合した際に、一次混合粉末が凝集したまま残存したのがプルトニウムスポットになったと推定される。」(平成十二年度二十五ページ)との記述があることから、メロックス社では、ベルゴニュークリア社と比べて、すなわち二次混合がうまくいっていないといえるのではないか。もしうまくいっているとするのであれば、具体的にその根拠を示されたい。

 (2) 一方で、プルトニウム濃度が30%を超える領域では、逆にベルゴニュークリア社の方が面積率及び存在確率が高くなっている。これは、メロックス社の方がベルゴニュークリア社よりも、一次混合の技術が優れているといえるのではないか。もしそうでないならば、具体的にその根拠を示されたい。

 (3) ベルゴニュークリア社とメロックス社のMOX粉末混合技術に差異があるとするならば、その原因は何か。政府の見解を示されたい。

4 メロックス社における製造確認試験において、東京電力が、わざわざウランペレットを用いた試験を行っている点は、非常に不可解である。MOX燃料の製造がウラン燃料の製造に比べ、著しく困難であることは、二〇〇〇年に通商産業省(当時)が設置したBNFL社製MOX燃料データ問題検討委員会の報告にも記されている。さらにウランペレットとMOXペレットでは研削の方法が異なることからも、MOXペレットの代わりにウランペレットを用いる理由を見出すことはできない。

 ペレットの研削工程の確認に限っても、ウランペレットではなくMOXペレットを用いて行うのが当然ではないか。もし両者は同等であるとの見解であれば、その根拠を示されたい。

二、PWR仕様の製造実績調査を行った件について

 製造実績調査において、東京電力向けに製造する燃料がBWR仕様であり、メロックス社にとって初めてのBWR仕様のMOX燃料の製造であるのに、PWR仕様の製造実績しか調査していない点も不可解である。BWR仕様とPWR仕様では寸法が異なり、寸法の違いを無視して検査を行った場合、品質に影響する可能性がある。

1 BWR仕様のMOX燃料の製造に先だつ確認である以上、まずBWR仕様の燃料を造ってみて、製造確認試験ないしは製造実績調査を行うのが原則ではないか。

2 メロックス社における初めてのBWR仕様燃料の製造に先だつ確認であるのに、東京電力が、PWR仕様のMOX燃料についての製造実績調査のみしか行わなかった理由をどのように承知しているか。

3 メロックス社には、BWR仕様のMOX燃料の製造実績は、試験製造を含めて全くなかったのか。

三、施設の使用許可及びプルトニウム持込許可と製造確認試験との関係について

 メロックス社が海外顧客向けのMOX燃料の製造のために設置した施設について、これにプルトニウムを持ち込む許可がフランス政府から下りたのが二〇〇〇年四月十八日であり、その時点では、東京電力は既に製造確認試験を行っていた。こうした事実から、やらなければならないはずの試験が、許可が下りていなかったためにできなかったのでないか、という疑問を抱かざるを得ない。

1 メロックス社における日本向けMOX燃料の製造が、フランスの国内法規を遵守して行われているか確認をしたか。

2 メロックス社が海外顧客向けMOX燃料の製造のために設置した施設について、これの使用許可がフランス政府から下りたのが一九九九年七月三十日であるという事実に間違いはないか。

3 メロックス社が海外顧客向けのMOX燃料の製造のために設置した施設について、これにプルトニウムを持ち込む許可がフランス政府から下りたのが二〇〇〇年四月十八日であるという事実に間違いはないか。

4 二〇〇〇年四月十八日までは、新施設ではMOX粉末及びMOXペレットを用いた製造確認試験はできなかったとみてよいか。もしこの日までに、新施設でMOX粉末を使った燃料製造を行っていたらそれは違法であったとみてよいか。

5 東京電力が製造確認試験をウランペレットを用いて行ったのは、新施設へMOX粉末及びMOXペレットを持ち込む許可が下りていなかったためではないのか。

四、製造実績調査の調査対象となった燃料の製造施設について

 メロックス社における製造実績調査について、東京電力がこれを行うのであれば、東京電力向けの製造に実際に使用される施設と、全く同じ施設で製造された燃料についての調査でなければ意味がない。ところが、許可の時期の関係から、そのように調査が行われたかどうかについて疑義がある。

1 東京電力がメロックス社で行った製造実績調査の対象となったPWR仕様のMOX燃料を製造した施設、製造ラインは、東京電力向けの製造に現在実際に使用されている施設と、全く同じ施設か。

2 この試験の対象となる燃料が製造されたのは、二〇〇〇年四月十八日より前か後か。あるいは、一九九九年七月三十日よりも前か後か。

3 もし、東京電力が製造実績調査の対象とした燃料が、東京電力向けの燃料製造に使用されている施設と同じ施設で製造されていたのであれば、政府の施設使用許可あるいはプルトニウム持込許可が下りる前にMOX燃料が製造されたことになるが、この矛盾について、どのように理解しているのか。

  右質問する。

答弁書

答弁書第三六号

内閣参質一五四第三六号

  平成十四年九月三日

内閣総理大臣臨時代理           

国務大臣 福田 康夫   

       参議院議長 倉田 寛之 殿

参議院議員福島瑞穂君提出メロックス社製MOX燃料について東京電力の行った製造確認試験及び製造実績調査に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島瑞穂君提出メロックス社製MOX燃料について東京電力の行った製造確認試験及び製造実績調査に関する質問に対する答弁書

一の1及び三の5について

 電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第五十一条第三項の規定による電気事業者が輸入した発電用原子炉に燃料として使用する核燃料物質である燃料体(以下「輸入燃料体」という。)の検査については、経済産業省において、当該電気事業者により輸入燃料体の加工に関する適切な品質保証がなされていることを確認することとしているが、当該品質保証における燃料体加工事業者の技術的能力の評価が特定の方法によるべきものとはしておらず、お尋ねの東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)が「MOX粉末を用いたペレットの製造試験を行わなかった理由」については承知していない。

 また、経済産業省において東京電力から聴取したところ、東京電力がメロックス社で行った製造確認試験については、燃料ペレットを研削する工程(以下「研削工程」という。)及び研削された燃料ペレットを燃料棒に組み込む工程について、ウラン・プルトニウム混合酸化物(以下「MOX」という。)燃料ペレット(以下「MOXペレット」という。)と同じ形状の二酸化ウラン燃料ペレット(以下「ウランペレット」という。)並びにMOXペレット用の燃料被覆管等と同じ材質及び形状の燃料被覆管等を用いて、試験を行ったとのことであり、これらの工程に関する技術的能力の評価は、使用する燃料ペレットの形状並びに燃料被覆管等の材質及び形状がMOXペレット用の燃料棒の製造に係るものと同じであれば、MOXペレットの代わりにウランペレットを用いて行うことも可能と考えていることから、東京電力がメロックス社で行った製造確認試験について、特段の問題はないと考えている。

一の2について

 輸入燃料体の検査に当たっては、異なる燃料体加工事業者の間の製造能力及び燃料体の品質の比較を行うこととはしておらず、検査の申請者である東京電力からは、「メロックス社とベルゴニュークリア社のMOX燃料の製造能力及び品質が同等であるという具体的な根拠」は提示されていない。

一の3の(1)について

 経済産業省においては、プルトニウム・スポット(プルトニウム含有率が局所的に高い領域をいう。以下同じ。)の大きさによって、プルトニウムの存在の不均一性に起因するMOXペレットの原子炉の安全性への影響を判断することとしているところ、御指摘の面積率等の比較をもって、メロックス社のMIMAS法の第二段階の混合工程に問題があるとは言えないと考えている。

 なお、御指摘の平成十三年三月に財団法人原子力発電技術機構が作成した「平成十二年度燃料集合体信頼性実証試験に関する報告書(1/3炉心混合酸化物燃料照射試験編)」には、メロックス社製MOXペレットのプルトニウム・スポットの直径が最大二百マイクロメートル以下であったことが示されており、右報告書の記載に係るメロックス社製MOXペレットについては、原子炉の安全性確保の観点からは、特に問題はないと考えている。

一の3の(2)について

 御指摘のようにベルゴニュークリア社製MOXペレットとメロックス社製MOXペレットとの間で面積率等に違いが生じたのは、MIMAS法の第一段階の混合工程(以下「一次混合」という。)で配合する二酸化プルトニウム粉末の割合等のいかんによる可能性もあり、御指摘のような事情が存在することをもって、一次混合の技術の優劣を判断することはできないと考える。

一の3の(3)について

 お尋ねの技術の差異の有無等は承知していない。

一の4について

 一の1及び三の5についてで述べたとおり、東京電力がメロックス社のMOXペレットの研削工程の評価のためにウランペレットを用いたことについて、特段の問題はないと考えている。

 なお、ウランペレットの研削工程とMOXペレットの研削工程との間では、作業者の被ばくを防護するための方法については違いがあるが、研削方法については違いがないと承知している。

二の1について

 一の1及び三の5についてで述べたとおり、電気事業法第五十一条第三項の規定による輸入燃料体の検査については、経済産業省において、当該電気事業者により輸入燃料体の加工に関する適切な品質保証がなされていることを確認することとしているが、当該品質保証における燃料体加工事業者の技術的能力の評価が特定の方法によるべきものとはしていない。

二の2及び3について

 経済産業省において東京電力から聴取したところ、メロックス社において沸騰水型軽水炉(以下「BWR」という。)仕様のMOX燃料の製造実績がなかったため、BWR仕様のMOX燃料の製造実績調査は行わなかったとのことである。

三の1について

 経済産業省において東京電力から聴取したところ、東京電力としてメロックス社に対し問い合わせを行い、メロックス社からフランス共和国の関係法令を遵守して東京電力向けのMOX燃料の製造を行っている旨の回答を得ているとのことである。

三の2及び3について

 経済産業省において東京電力から聴取したところ、メロックス社は、フランス共和国政府から、BWR仕様のMOX燃料等を製造するための施設の設置については平成十一年七月三十日に、右施設全体を通じたMOXの使用については平成十二年四月十八日に、それぞれ許可を取得したとのことである。

三の4について

 お尋ねは、フランス共和国の法令の解釈適用にかかわるものであることから、答弁は差し控えたい。

四の1について

 経済産業省において東京電力から聴取したところ、東京電力がメロックス社で行った製造実績調査の対象となったMOXペレットを成形及び焼結した施設は、東京電力向けのMOXペレットの成形及び焼結に現在実際に使用されている施設と同一のものであるとのことである。

四の2について

 お尋ねの「試験」は東京電力が実施したメロックス社における製造実績調査を指すものと考えるが、経済産業省において東京電力から聴取したところ、当該製造実績調査の対象となったMOXペレットは、平成十年に製造されたものとのことである。

四の3について

 経済産業省において東京電力から聴取したところ、東京電力がメロックス社で行った製造実績調査の対象としたMOXペレットは、お尋ねの許可に係る施設において製造されたものではないとのことである。

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