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第156回国会 「「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」の運用に関する質問主意書」(2003年7月25日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)
質問主意書
質問第四五号
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」の運用に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成十五年七月二十五日
福島 瑞穂
参議院議長 倉田 寛之 殿
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」の運用に関する質問主意書
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下「本法律」という。)による審判に裁判官が加わる理由は、「自由に対する制約や干渉を伴うものであるゆえ」とされている。このことなどに関し、以下質問する。
一 刑事事件においては適正手続の保障により、事件に至った経過などが考慮され、重罪であっても執行猶予となる場合があるが、本法律の審判の対象とされる者は適切な取調べや調書の作成、本人の的確な弁明、権利行使が困難であることが予想される。そこで、本法律において、例えば正当防衛、医療事故による犯罪であること等が疑われる場合、審判の際に、いかなる方法により、適切な取調べを確保するのか、具体策を明らかにされたい。
二 本法律による審判では、「自由に対する制約や干渉」の度合いを決めるに際して、司法的判断と医療的判断のどちらが優先されるのか示されたい。また、その場合の法的根拠を明らかにされたい。
三 本法律の下での治療に関する、施設及び対象者双方の義務規定・権利規定を明らかにされたい。
四 治療の対象者が治療内容に関して第三者に相談できるのか、例えば元の主治医の意見を求めるなどセカンドオピニオンの利用が許されるのか。利用できない場合であれば、その理由を明らかにされたい。
五 面会者の制限規定はあるのか。また、職員の同席あるいは監視なしで、面会できるのか。法施行以前に具体的な規定若しくはガイドラインがあれば、その内容を示されたい。
六 「自由の制約、拘束」が前提となっている限り、入所者にとって医療者は権力者であり、支配者でもある。入所者は、更なる制約、拘束を恐れて「病状を隠す」などの自衛手段を採らざるを得ない。その場合、治療効果が上がらないという事態が生ずる可能性が高いと容易に想像できる。
1 右記、「自由の制約」を本人にどのように理解させ得るかが重要となるが、その説明は、誰がどの時点で、どのような理由に基づき、どの法的根拠を示して、説明されるのか。
2 政府は指定入院医療機関において「高度な技術」を持つ医療スタッフが治療を実施するとしているが、「高度な技術」とはどのようなものを指しているのか。具体的構想を明らかにされたい。
七 過去五年間に心神喪失による不起訴処分や心神耗弱による起訴猶予処分を受けた事件のうち、この審判の対象となり得る各年度ごとの事件数を明らかにされたい。加えて、心神喪失・心神耗弱のそれぞれについて弁護人が選任された事件数、また、治療のために勾留執行停止が執られた事件数についてもそれぞれ明らかにされたい。
右質問する。
答弁書
答弁書第四五号
内閣参質一五六第四五号
平成十五年九月二日
内閣総理大臣 小泉 純一郎
参議院議長 倉田 寛之 殿
参議院議員福島瑞穂君提出「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」の運用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員福島瑞穂君提出「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」の運用に関する質問に対する答弁書
一について
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成十五年法律第百十号。以下「本法律」という。)第二条第三項に規定する対象者(以下「対象者」という。)のうち、同項第一号に掲げる公訴を提起しない処分をされた者については、検察官の申立てにより審判が開始された場合には、その者が同条第二項に規定する対象行為(以下「対象行為」という。)を行ったか否かについても裁判所が認定することとされている。この審判においては、対象者に弁護士である付添人を必ず付することとされた上で、対象者はもとより、この付添人等に対しても、意見陳述権、資料提出権、決定に対する抗告権等対象者の適正な利益を保護するための様々な権利が保障されており、また、裁判所が必要があると認めるときは、三人の裁判官により構成される別の合議体で対象行為の存否についての審理及び裁判を行うこともできることとされている等、対象行為の存否についても裁判所が適切に認定することができる仕組みとされている。
二について
本法律による処遇の要否及び内容については、裁判官一人と医師である精神保健審判員一人により構成される地方裁判所の合議体が、それぞれの専門的知見をいかしつつ十分に協議した上で、両者の意見の一致したところにより決定することとされており(本法律第十一条、第十三条及び第十四条)、御指摘のいずれの判断にも偏ることがないような仕組みとされている。
三について
本法律による医療に関し、指定医療機関、指定医療機関の管理者、指定医療機関に勤務する精神保健指定医又は指定医療機関の職員について、その権限等を直接に定める本法律の規定としては、第四十九条第三項、第五十四条第三項、第五十九条第三項、第九十条、第九十二条第一項、第九十九条第一項及び第二項並びに第百条第一項から第三項までがあり、その義務を直接に定める本法律の規定としては、第四十九条第一項及び第二項、第八十二条、第八十四条第二項、第八十六条、第八十八条、第八十九条、第九十一条、第九十二条第二項及び第三項、第九十三条第二項、第九十四条、第九十九条第三項及び第五項、第百十条並びに第百十一条がある。また、本法律による医療に関し、本法律第四十二条第一項第一号若しくは第二号、第五十一条第一項第二号又は第六十一条第一項第一号の決定を受けた者について、その権利を直接に定める本法律の規定としては、第五十条、第五十五条及び第九十五条があり、その義務を直接に定める本法律の規定としては、第四十三条第一項及び第二項、第五十一条第三項並びに第六十一条第四項がある。
四について
本法律において、第二診断の利用等の治療内容に関する第三者への相談を直接に制限する規定はない。ただし、本法律第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により指定入院医療機関に入院している者については、本法律第九十二条第一項の規定により、その医療又は保護に欠くことのできない限度において、その行動について必要な制限を行うことができることとされていることから、結果的に第三者への相談ができない場合があり得ると考えられる。
五について
指定入院医療機関の管理者は、本法律第九十二条第一項の規定により、本法律第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により指定入院医療機関に入院している者の医療又は保護に欠くことのできない限度において、その行動について必要な制限を行うことができることとされているが、本法律第九十二条第二項の規定により、同条第一項の規定にかかわらず、信書の発受の制限、弁護士及び行政機関の職員との面会の制限その他の行動の制限であって、厚生労働大臣があらかじめ社会保障審議会の意見を聴いて定める行動の制限については、これを行うことができないこととされている。
精神病院に入院している者については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十六条第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める行動の制限(昭和六十三年厚生省告示第百二十八号)において、精神病院の管理者は、人権擁護に関する行政機関の職員及び患者の代理人である弁護士との電話及び面会の制限並びに患者又は保護者の依頼により患者の代理人となろうとする弁護士との面会の制限を行うことができないこととされており、本法律第九十二条第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める行動の制限においても、同様の行動の制限を行うことができない旨定めることを予定している。
また、精神病院に入院している者については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十七条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準(昭和六十三年厚生省告示第百三十号)において、原則として病院の職員の立会いなく患者が面会できるようにするものとされており、本法律第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により指定入院医療機関に入院している者についても、本法律第九十三条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準において、同様の基準を定めることを予定している。
六の1について
指定入院医療機関の管理者は、本法律第九十二条第一項の規定により、本法律第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により指定入院医療機関に入院している者の医療又は保護に欠くことのできない限度において、その行動について必要な制限を行うことができることとされているところ、患者の行動の制限についてはできる限り事前に患者に説明するよう努める必要があると考えており、本法律第九十三条第一項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準においてその旨を定める方向で検討している。
六の2について
指定入院医療機関においては、本法律第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により指定入院医療機関に入院している者の精神障害の特性に応じ、その円滑な社会復帰を促進するために可能な限り質の高い専門的な医療を提供することとしている。
具体的には、一般的な精神障害に対する治療や社会復帰促進のプログラムに加え、欧米の司法精神医療機関で実施されているように、精神障害と重大な他害行為との関係に着目した専門的な評価のほか、自身が行った重大な他害行為に対する認識、自身の精神症状に対する自制能力等を高めるような治療等が可能となるような技術を有する医療従事者によって医療を行うことを予定している。
七について
お尋ねの数については、暦年ごとに人数で把握しており、平成九年一月一日から平成十三年十二月三十一日までの五年間について、不起訴処分において対象行為を行ったこと及び心神喪失者であることが認められた者の各年ごとの数は、平成九年は二百六十二人、平成十年は二百六十二人、平成十一年は二百五十人、平成十二年は二百九十四人、平成十三年は二百二十三人であり、また、不起訴処分において対象行為を行ったこと及び心神耗弱者であることが認められた者の各年ごとの数(ただし、心神耗弱者である疑いのある者を含めて計上した。)は、平成九年は九十五人、平成十年は六十八人、平成十一年は六十一人、平成十二年は六十三人、平成十三年は九十五人である。これらの者について、弁護人が選任されたか否か及び治療のために勾留の執行停止の措置がとられたか否かについては、把握していない。
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