QUESTIONS質問主意書
第161回国会 「JCOにおけるウラン溶液製造の許可に関する質問主意書」(2004年10月14日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)
質問主意書
質問第一号
JCOにおけるウラン溶液製造の許可に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成十六年十月十四日
福島 みずほ
参議院議長 扇 千景 殿
JCOにおけるウラン溶液製造の許可に関する質問主意書
株式会社ジェー・シー・オー(以下「JCO」という。)は、旧動力炉・核燃料開発事業団(以下「旧動燃」という。)の研究炉用にウラン転換を行っており、一九九九年に起こした臨界事故の原因となった「常陽」用中濃縮ウラン溶液の製造はその一部分であった。
ところが、JCOが実施していた「ふげん」「常陽」「もんじゅ」用のウラン溶液製造について、転換試験棟での「常陽」用中濃縮ウラン溶液以外は製造許可を得ていないものであった疑いがある。
旧動燃を引き継いだ核燃料サイクル開発機構東海事業所は、「JCO臨界事故に関するサイクル機構とJCOとの関係について-改訂版-(調査報告)」と題する報告書(以下「本報告書」という。)を二〇〇三年一二月に発表しており、その中で「ふげん」「常陽」用ウラン溶液が無許可製造であったことを記している。すなわち、一九八〇年前後にJCOが製造した「ふげん」「常陽」用ウラン溶液はJCOの「研究室」で製造されたものであり、製造許可を得ていなかった。
本報告書は、一九八九年ごろから一九九六年ごろにJCOで「もんじゅ」用ウラン溶液が製造されていたことも記しているが、その製造許可の有無については記載が無い。
よって、以下質問する。
一 「もんじゅ」用ウラン溶液製造に関して
1 JCOにおいて、第一加工棟、第二加工棟及び転換試験棟以外にウラン粉末又は溶液を製造していた施設は存在するか。存在していたならば、施設名、製造物の種別及び製造時期を明らかにされたい。
2 JCOが操業を開始して以降、第一加工棟、第二加工棟及び転換試験棟における、ウラン粉末製造又は溶液製造のそれぞれにつき、許可の有無を明らかにされたい。また、1において別施設が示された場合は、当該施設に関しても同様に許可の有無を明らかにされたい。
3 「もんじゅ」用ウラン溶液は、JCOのどの施設で製造され、溶液製造許可を得たものであったか。操業ごとに、製造量(キログラム・ウランと溶液リットルの各単位による。)の詳細、製造された施設及び許可の有無を示されたい。
二 「ふげん」「常陽」用ウラン溶液製造に関して
1 本報告書によれば、JCOないしJCOの親会社である住友金属鉱山株式会社が行った「ふげん」「常陽」用ウラン溶液の製造は違法とされているが、違法製造の事実を規制当局は把握しているか。把握している場合、各違法製造とされた事項につき、違法製造に当たる事実と該当する法令条文、把握の時期及び事実確認措置の内容を明らかにされたい。
2 本報告書で示された違法製造に対する罰則規定はあるか。また、それぞれの違法製造とされた事項について罰則を適用する場合、現時点で公訴時効が成立しているのか、又は公訴時効までの期間がどの程度残っているのかも併せて明らかにされたい。
3 本報告書で示された違法製造に対し、行政処分はなされているのか。既になされているのであればその処分の詳細を、今後行政処分を行う方針であればその手続の進捗状況を、併せて明らかにされたい。
4 通常、発注者が、受注者の受けるべき製造許可の有無を確認せずに、発注することは考えられない。発注者である旧動燃は、受注者側が製造許可のない施設であることを知りながら、「ふげん」又は「常陽」のための溶液製造を発注したのではないか。
また、規制当局は、旧動燃による当該ウラン溶液の発注が、受注者において製造許可を取得していないものであることを把握していなかったのか。
5 無許可で製造された核燃料の使用は、いかなる問題が生ずると認識しているか。法に抵触するとすれば該当する法令条文と罰則の有無を明らかにされたい。法に抵触しない場合であっても、政策的又は倫理的に生ずると考えられる問題及び品質管理上の問題について、それぞれ見解を明らかにされたい。
6 「ふげん」「常陽」用ウラン溶液の旧動燃に出荷後の使用履歴について、混合転換履歴、製造燃料集合体数及び装荷の時期の詳細を示されたい。
右質問する。
答弁書
答弁書第一号
内閣参質一六一第一号
平成十六年十一月十九日
内閣総理大臣 小泉 純一郎
参議院議長 扇 千景 殿
参議院議員福島みずほ君提出JCOにおけるウラン溶液製造の許可に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員福島みずほ君提出JCOにおけるウラン溶液製造の許可に関する質問に対する答弁書
一の1について
平成十五年十二月に核燃料サイクル開発機構東海事業所が発表した「JCO臨界事故に関するサイクル機構とJCOとの関係について―改訂版―(調査報告)」(以下「本報告書」という。)において高速増殖原型炉「もんじゅ」用燃料の製造に用いられるウラン溶液が製造されたとされる平成元年から平成八年にかけて、株式会社ジェー・シー・オー(旧日本核燃料コンバージョン株式会社を含む。以下「JCO」という。)において、第1加工施設棟、第2加工施設棟及び転換試験棟のほかに、お尋ねのような施設が存在していたとは承知していない。
一の2について
JCOは、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第十三条第一項の規定に基づき、第1加工施設棟、第2加工施設棟及び転換施設棟にある化学処理施設において、六フッ化ウラン等を硝酸ウラニル溶液に転換し、さらに、それを酸化ウラン粉末にする工程を含む加工の事業(以下「加工事業」という。)の許可を得ていた。
一の3について
JCOは、一の2についてで述べたとおり、加工事業の許可を得ていたが、お尋ねのような特定の原子炉の燃料の製造に用いられるウラン溶液の製造に係る操業ごとの製造量及び製造された施設については、国に対して報告されることとなっていないので、お答えすることが困難である。
二の1から3までについて
本報告書には、「昭和56年度頃の天然ウラン硝酸ウラニル溶液の製造はJCOの「加工施設に中の研究室(使用施設)」において行われていたが、許認可申請書には硝酸ウラニル溶液の製造に関しては記載されていない」との記載があるが、昭和五十六年度当時、JCOは、原子炉等規制法第五十二条第一項の規定に基づき、管理棟にある使用施設において天然二酸化ウラン粉末を硝酸に溶解して硝酸ウラニル溶液にする工程を含む核燃料物質の使用の許可を得ている。いずれにせよ、御指摘のような「違法製造」が行われていたとの事実は承知していない。
二の4について
核燃料サイクル開発機構から聴取したところ、旧動力炉・核燃料開発事業団とJCOとの契約は、JCOが所要の許可を取得していることを前提として締結されたものであると認識しているとのことである。
また、規制当局は、原子炉等規制法上、お尋ねのような事業者間におけるウラン溶液の発注及び受注について把握する立場にない。
二の5について
原子炉等規制法第五十二条第一項の規定に基づく核燃料物質の使用の許可を受けた者(以下「使用者」という。)が、原子炉等規制法第三条第一項の指定を受けた製錬事業者、原子炉等規制法第十三条第一項の許可を受けた加工事業者、原子炉等規制法第二十三条第一項の許可を受けた原子炉設置者、原子炉等規制法第四十四条第一項の指定又は同条第三項の承認を受けた再処理事業者、原子炉等規制法第五十一条の二第一項の許可を受けた廃棄事業者及び他の使用者から原子炉等規制法第五十二条第一項の許可を受けた核燃料物質を譲り受けた場合等を除き、核燃料物質を譲り受けたときは、当該譲渡人及び譲受人については、原子炉等規制法第六十一条の違反が問題となり、原子炉等規制法第七十八条第二十五号の規定に基づき、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処され、又はこれを併科される場合がある。
二の6について
核燃料サイクル開発機構から聴取したところ、お尋ねの使用履歴についての直近の例は、次のとおりであるとのことである。
新型転換炉「ふげん」に関しては、JCOから出荷された硝酸ウラニル溶液を平成八年四月から同年十一月にかけて混合転換し、これにより製造されたウラン・プルトニウム混合酸化物粉末を、平成十二年十一月から平成十四年十一月にかけて炉心に装荷された五十九体の燃料集合体の一部として用いた。
高速実験炉「常陽」に関しては、JCOから出荷された硝酸ウラニル溶液を平成八年一月から同年四月及び同年十一月から平成九年二月にかけて混合転換し、これにより製造されたウラン・プルトニウム混合酸化物粉末を、平成八年十月から平成十五年十二月にかけて炉心に装荷された百十六体の燃料集合体の一部として用いた。
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