QUESTIONS質問主意書

第166回国会 「久間章生前防衛大臣の「原爆発言」と政府の核兵器に対する見解に関する質問主意書」(2007年7月5日) | 社民党 福島みずほ 参議院議員(比例区)

質問主意書

質問第八〇号

久間章生前防衛大臣の「原爆発言」と政府の核兵器に対する見解に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年七月五日

福島 みずほ   

       参議院議長 扇 千景 殿

   久間章生前防衛大臣の「原爆発言」と政府の核兵器に対する見解に関する質問主意書

 六月三十日、麗沢大学(千葉県柏市)での講演で久間章生前防衛大臣は、「原爆を落とされて長崎は本当に無数の人が悲惨な目にあったが、あれで戦争が終わったんだという頭の整理で今、しょうがないなと思っている」と発言した。その後、久間章生前防衛大臣は「声明」「釈明」「お詫び」とめまぐるしく対応に追われたが、広島・長崎の被爆者を始めとして国民の怒りは燎原の火の如く広がっているとの観点から、以下質問する。

一 久間章生前防衛大臣の発言の真意について

1 「米国は戦争に勝つのは分かっていたが、長崎に原爆を落とすことでソ連の参戦を阻止する」という意図をもっていたのは誰なのか、政府の見解を明らかにされたい。

2 「長崎への原爆投下」と「ソ連の参戦」はどのように関連するのか、政府の見解を明らかにされたい。

3 「長崎に原爆が投下されたことで、戦争が終結した」ということが政府の見解であるという理解でよいか、明らかにされたい。

4 「原爆投下を待つ」以外に、当時の日本に戦争を終結させるための選択肢はなかったのか。なかったとすれば、その理由を明らかにされたい。また、原爆投下を避ける道があったのではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

5 一九四五年の世界情勢や戦後の占領状態から、「原爆投下は選択肢としてあり得る」という認識なのか、政府の見解を明らかにされたい。

二 安倍内閣の認識について

1 安倍内閣総理大臣は「久間氏は米国の考え方について紹介したと承知している」とコメントしているが、久間章生前防衛大臣の語った原爆投下に関しての「考え方」は安倍内閣の一閣僚として容認できるものだったのか、政府の見解を明らかにされたい。

2 安倍内閣総理大臣は「防衛大臣としても、核の廃絶について、これからも大いに力を発揮して頂かなければならない。国民の皆様に誤解を与える様な発言については厳に慎んでいかなければならない」と述べているが、久間発言を国民がどのように「誤解」する危険性があるのか、具体的に説明されたい。また、久間発言の真意は正しいが表現が足らないところがあったというのが、安倍内閣の見解なのか、明らかにされたい。

3 今年もまた、八月六日にヒロシマ、九日にナガサキの原爆記念日がやってくる。原爆症認定のための集団訴訟は次々と国が敗訴し続けているが、七十代半ばを超える高齢の原告団と、柳澤厚生労働大臣は「訴訟中だから」と会うことを拒否している。内閣総理大臣自ら、国を相手に訴えを起こしている高齢の被爆者と即刻会うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 国際法と被爆国としての日本の核兵器に対する見解について

1 一九九三年五月十四日世界保健機関(WHO)によって、また一九九四年十二月十五日第四十九回国連総会によって、国際司法裁判所に対して核兵器に関する勧告的意見を求める決議が採択された。この決議を受け、国際司法裁判所は、各国に書面陳述を求めるとともに、一九九五年十月から十一月にかけて一部の国の口頭陳述を求めた。この際に日本政府代表も口頭陳述を行った。日本政府代表は、国際司法裁判所における口頭意見陳述において、「核兵器の使用はその絶大な破壊力や殺傷力を考えると、国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないと考える」と述べたが、この口頭陳述に対する安倍内閣の見解を示されたい。

2 この口頭陳述に際して、平岡敬広島市長(当時)は、「市民を大量無差別に殺傷し、しかも、今日に至るまで放射線障害による苦痛を人間に与え続ける核兵器の使用が、国際法に違反することは明らかであります。また、核兵器の開発、保有、実験も非核保有国にとっては、強烈な威嚇であり国際法に反するものです」と述べ、伊藤一長長崎市長(当時)は、「この子供たちに何の罪があるのでしょうか、この子達が銃を持って敵に立ち向かったとでもいうのでしょうか、あえて私からも申し上げます。すべての核保有国の指導者は、この写真を見るべきであります。核兵器のもたらす現実を直視すべきであります。そしてあの日、この子らの目の前で起きたことを知って欲しいのです」と述べられている。ヒロシマ・ナガサキの被爆地の両市長の陳述を、安倍内閣はどのように受け止めているか、見解を明らかにされたい。

3 一九九六年七月、国際司法裁判所は、①核兵器の使用・威嚇は、一般的に国際法に違反する。②ただし、国の存亡にかかわる極限の状況の中で、自衛のための核兵器の使用が合法か違法かは判断できない。③国際社会で核軍縮交渉を誠実に進め、交渉をまとめる必要がある、という勧告的意見を示しているが、安倍内閣の見解を示されたい。

4 米国の広島・長崎に対する原子爆弾の投下は戦後の世界体制の中でソビエトに対して優位に立とうとしたものであることは久間章生前防衛大臣も認めているところであり、これが「国(アメリカ)の存亡にかかわる極限の状況の中で、自衛のため」なされたものでないことは明らかではないか。この点についての安倍内閣の見解を示されたい。また、日本政府の長年における国際社会における「核廃絶」の主張に照らして、「久間章生前防衛大臣発言」は、さきの政府見解、国際司法裁判所の勧告的意見のいずれにも抵触するものと考えるが、政府の見解を示されたい。

5 「久間章生前防衛大臣発言」は核兵器の禁止を願う国際世論に背を向け、国際法の確立した考え方にも抵触するものである。このような大臣を、原子爆弾の被害を受けた当事国の防衛大臣として任命し、発言について「注意」するのみで罷免しなかったことは我が国の核政策に対する国際的な不信を招くと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第八○号

内閣参質一六六第八○号

  平成十九年七月十日

内閣総理大臣 安倍 晋三   

       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員福島みずほ君提出久間章生前防衛大臣の「原爆発言」と政府の核兵器に対する見解に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出久間章生前防衛大臣の「原爆発言」と政府の核兵器に対する見解に関する質問に対する答弁書

一の1から5までについて

 久間前防衛大臣の個人の考え方について、政府として答弁することは差し控えたいが、久間前防衛大臣自身は、米国としては、当時の状況の中で、広島及び長崎に対する原子爆弾の投下もやむを得ないと判断したのであろうと思うとの趣旨で発言したと述べていると承知している。いずれにせよ、政府としては、広島及び長崎に対する原子爆弾の投下は、極めて広い範囲にその害が及ぶ人道上極めて遺憾な事態を生じさせたものであると認識しており、人類に多大な惨禍をもたらし得る核兵器が将来二度と使用されるようなことがないよう、核兵器のない平和で安全な世界の実現を目指して、現実的かつ着実な核軍縮努力を積み重ねていくことが重要であると考える。

二の1及び2について

 久間前防衛大臣は、政府の認識や見解と同様、広島及び長崎に対する原子爆弾の投下は、国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないものと考えており、原子爆弾の投下を是認するとの趣旨で発言されたものではないと承知している。しかしながら、被爆者の方々を始めとする多くの方々に原子爆弾の投下を是認するとの趣旨で発言したとの誤解を与えたことについては、安倍内閣総理大臣から、かかる発言を厳に慎むよう注意したところである。

二の3について

 御指摘の件について内閣総理大臣がお会いするかどうかは、裁判の進行状況等を踏まえて判断されるものである。

三の1及び3について

 国際司法裁判所が千九百九十六年七月八日に発表した勧告的意見は、核兵器による威嚇又はその使用は、武力紛争時に適用される国際法の規則、特に人道法の原則と規則に一般的には反するが、国家の存続自体が問題となるような自衛の究極的状況における核兵器による威嚇又はその使用が合法か違法かについて最終的な結論を出すことはできない等と述べているところであり、政府としては、国際連合の主要な司法機関である国際司法裁判所が同意見の中で示した見解について、厳粛に受け止めるべきものと考えている。

 なお、政府としては、かねてから明らかにしてきたとおり、核兵器の使用は、その絶大な破壊力、殺傷力の故に、国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないと考えており、人類に多大な惨禍をもたらし得る核兵器が将来二度と使用されるようなことがあってはならず、核兵器のない平和で安全な世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮努力を積み重ねていくことが重要であると考えている。

三の2について

 お尋ねの広島、長崎両市長による国際司法裁判所における発言は、被爆地の市長として、被爆の実相等について証言したものであると承知している。

三の4について

 当時の交戦国たるアメリカ合衆国が、いかなる意図をもって我が国に原子爆弾を投下したかについては、政府としてお答えする立場にないが、広島及び長崎に対する原子爆弾の投下は、極めて広い範囲にその害が及ぶ人道上極めて遺憾な事態を生じさせたものであると認識している。政府としては、人類に多大な惨禍をもたらし得る核兵器が将来二度と使用されるようなことがないよう、核兵器のない平和で安全な世界の実現を目指して、現実的かつ着実な核軍縮努力を積み重ねていくことが重要であると考える。

三の5について

 久間前防衛大臣は、広島及び長崎に対する原子爆弾の投下を是認するとの趣旨で発言したものではなく、核兵器が将来二度と使用されることがあってはならないということを強く認識しているが、被爆者の方々を始めとする多くの方々に誤解を与える発言をしたことについて、深く反省し、辞任したところである。

MENU