QUESTIONS質問主意書

第168回国会 「「先住民族の権利に関する国連宣言」の採択とアイヌ民族の法的地位に関する質問主意書」(2007年12月27日) | 社民党 福島みずほ 参議院議員(比例区)

質問主意書

質問第一〇五号

「先住民族の権利に関する国連宣言」の採択とアイヌ民族の法的地位に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年十二月二十七日

福島 みずほ   

       参議院議長 江田 五月 殿

   「先住民族の権利に関する国連宣言」の採択とアイヌ民族の法的地位に関する質問主意書

 国連総会は、二〇〇七年九月一三日、先住民族を国際法の主体と認め、その中核的権利体系を明らかにした「先住民族の権利に関する国連宣言」を賛成一四四箇国、反対四箇国、棄権一一箇国の圧倒的多数で採択した。この起草作業は、国連人権委員会及び差別防止・少数者保護小委員会の下に一九八二年に設置された国連先住民作業部会(WGIP)における国際社会の約二五年以上に及ぶ大きな努力のたまものにほかならない。そして、アイヌ民族が一九八七年から、この作業部会を始め、その他の作業部会、先住民族問題に関する常設フォーラム(PFII)などにおいて、一貫して自らが先住民族であることを主張してきたことも否定しようのない事実である。

 しかし、日本政府は、一九九一年に国連の規約人権委員会に提出した国際人権規約・自由権規約に関する第三回定期報告書において、アイヌ民族を「少数民族」と認めて以来、先住民族であるかどうかの判断は国際的に受け入れられる定義がない以上できないとの立場を一六年間も維持し、今回も二〇〇七年九月一四日の町村外務大臣の発言、一〇月三日の衆議院本会議における福田内閣総理大臣の答弁は、「壊れたレコード」のように全く同じ見解を繰り返した。

 「先住民族の権利に関する国連宣言」の採択という事実に加え、一九九六年に報告書を提出した「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」も、国連における先住民族の権利認定作業が進展すれば、アイヌ民族の権利も、日本の事情に応じてではあるが、保障されるとの見解を出している。もし定義がないから判断できないという日本政府の見解に実体的な意味がなければ、今後、更にアイヌ民族が本来享受すべき先住民族としての権利は日本政府によって不当に侵害されることとなる。そして、こうした日本政府による明確な人権侵害が、二〇〇六年六月に設置されたばかりの人権理事会の最初の理事国であり、国際的な人権保障の進展に尽力することを国連総会に「公約」として誓った日本政府に対する国際的信用を、大きく失墜させることを懸念してやまない。

 そこで、「定義がないから判断できない」という日本政府の見解について、以下質問する。

一 一九九一年、日本政府はアイヌ民族を「少数民族」と判断したが、当時国際的に受け入れられる「少数民族」の定義は存在しておらず、国連で「民族的または種族的、宗教的および言語的マイノリティに属する者の権利宣言」が採択されたのは翌年の一九九二年であった。したがって、国際人権規約・自由権規約第二七条に規定された権利内容から、日本政府が「少数民族」であると判断したものだと推測できる。一九九一年に日本政府がアイヌ民族を「少数民族」と判断した経緯を明らかにされたい。

二 圧倒的多数で採択された、その意味で国際的に受け入れられた「先住民族の権利に関する国連宣言」には、前文二四段落、本文四六条にわたって先住民族が享受できる権利が詳細に網羅されている。これらの権利を享受する対象が先住民族であるとすれば、宣言それ自体が最も包括的な先住民族の「定義」にほかならない。なぜこうした形で、アイヌ民族が先住民族であることを判断しようとしないのか、その理由を明らかにされたい。

三 国際的な定義がなくとも、日本政府独自で先住民族の定義を明確にし、アイヌ民族に権利を保障できるかどうかの検討が可能だったはずである。多くの政府において、先住民族に対する権利保障はまず国内的に実施されていることを踏まえれば、定義問題を回避した有識者懇談会を含めて、日本においてこうした検討が存在しなかったことが深刻である。日本の学識経験者の中にも、国連先住民族作業部会の委員を務めた波多野里望委員、横田洋三委員、先住民族問題に関する常設フォーラムの委員を務めた岩沢雄司委員と日本政府が公認する優れた人材が存在している。日本政府は、アイヌ民族が先住民族であるかについて、こうした専門家への聴取を公式・非公式に行ったことがあるか明らかにされたい。

四 日本においても、アイヌ民族を先住民族とする見解は、これまでも公的機関によって提示されてきた。例えば、一九一一年に日本政府が締結した「膃肭獸保護條約」では、アイヌ民族が、北米先住民族、オーストラリア先住民族と同列に並べられ、その特別狩猟権の保護が規定されている。また、一九九七年に札幌地方裁判所が下した「二風谷ダム」判決も、アイヌ民族を先住民族と認定しており、日本政府はこの点に関して異議を申し立てていない。これらの事実は国際社会でも知られているが、日本政府は、これまで日本の行政、司法、立法の場において、アイヌ民族を先住民族であるとした対応をなぜ重視しようとしなかったのか、その理由を明らかにされたい。

五 アイヌ民族の定義問題の解決に関し、この一六年間、アイヌ民族に権利を保障するため日本政府は具体的に何を行ったか、詳細に明らかにされたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第一○五号

内閣参質一六八第一○五号

  平成二十年一月十一日

内閣総理大臣 福田 康夫   

       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員福島みずほ君提出「先住民族の権利に関する国連宣言」の採択とアイヌ民族の法的地位に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出「先住民族の権利に関する国連宣言」の採択とアイヌ民族の法的地位に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の市民的及び政治的権利に関する国際規約第四十条1(b)に基づく第三回政府報告においては、アイヌの人々が、独自の宗教及び言語を有し、文化の独自性を保持していること等から、同規約第二十七条にいう「少数民族」であると判断した経緯がある。

二について

 「先住民族」については、現在のところ、国際的に確立した定義がなく、御指摘の「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(以下「宣言」という。)においても、「先住民族」の定義についての記述はないことから、アイヌの人々が宣言にいう「先住民族」であるかにつき判断することは困難である。

三について

 お尋ねについては、平成七年三月に内閣官房長官の下に設置された「ウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会」(以下「有識者懇談会」という。)における審議の過程において、「民族」をめぐる国際的な動きについて、波多野里望学習院大学教授(当時)からのヒアリングを行ったことがある。

四及び五について

 アイヌの人々が、アイヌ語や独自の風俗習慣を始めとする固有の文化を発展させてきた民族であり、いわゆる和人との関係において、日本列島北部周辺、取り分け北海道に先住していたことについては、歴史的事実として認識しているが、「先住民族」については、現在のところ、国際的に確立した定義がなく、宣言においても、「先住民族」の定義についての記述はないことから、アイヌの人々が宣言にいう「先住民族」であるかについては、お答えすることは困難である。

 政府は、北海道が実施している「アイヌの人たちの生活向上に関する推進方策」に協力している。また、有識者懇談会において具体的施策の在り方等について総合的な検討が行われ、平成八年四月に報告書が提出され、この報告書の提言を受け、内閣が提出し、成立したアイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(平成九年法律第五十二号)に基づき、国土交通省及び文部科学省においてアイヌ文化振興等に関する施策を推進しているところであり、政府としては、このような施策への協力又は施策の推進を着実に実施していくことが肝要と考えている。

MENU