QUESTIONS質問主意書

第168回国会 「ビルマへのODAと民主化の促進に関する質問主意書」(2007年11月7日) | 社民党 福島みずほ 参議院議員(比例区)

質問主意書

質問第四七号

ビルマへのODAと民主化の促進に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十九年十一月七日

福島 みずほ   

       参議院議長 江田 五月 殿

   ビルマへのODAと民主化の促進に関する質問主意書

 ビルマでは、本年八月に軍事政権が燃料価格を突然大幅に上げ、最大の都市ラングーンなどで市民生活が混乱した。値上げへの抗議として始まったデモ行進が九月に入り次第に軍事政権に対する大規模な抗議行動に形を変え、全国に広がり、九月下旬に軍政が軍を投入して鎮圧した結果、発砲などにより最低百十人が死亡し、数千人が拘束されたと見られている。一九八八年にも今回のような全国規模の民主化蜂起があった。当時も軍事政権は国軍部隊を動員してデモ参加者への無差別発砲を行い、数千人が死亡したとされる。二〇〇三年にも遊説旅行中だったアウンサンスーチー氏一行が軍政関係者の一団に襲撃され、数十人が死亡するという事件もあった。

 こうした中、日本は一九七九年度から二〇〇四年度まで毎年、ビルマにとって最大の援助供与国であり続けた。日本政府は一九八八年の弾圧以後も既存の貸付案件の支払の実行は継続していたほか、一九九八年にはヤンゴン国際空港改修工事に対し円借款を供与している。無償資金協力も多数行っており、その中には軍政の翼賛組織や、軍政首脳の親族が会長を務める団体への資金供与もあった。

 日本政府は、人権状況を改善せず民主化もなかなか進めないビルマに対し多額のODAを供与してきたこと、そして今年ビルマで一九八八年の悲劇が繰り返され、多数の市民が犠牲となったことを重く受け止めるべきである。我が国のODA大綱は「民主化の促進は(中略)、国際社会の安定と発展にとっても益々重要な課題」だとし、援助を行う際は相手国の民主化の促進や基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払うとしている。日本は、国家予算の半分以上を軍事費に充て抑圧政治を行うビルマ軍政に多額の援助を行ってきたが、その援助が民主化を促進したとは言えない。

 こうした状況を踏まえ、以下質問する。

一 日本政府は二〇〇六年十月に「連邦連帯開発協会ヤンゴン管区支部」に三件の草の根・人間の安全保障無償資金協力を供与する約束をし、また二〇〇六年三月には「ミャンマー母子福祉協会」にも草の根・人間の安全保障無償資金協力を供与する約束をしている。連邦連帯開発協会(連邦団結発展協会とも呼ばれる。以下「USDA」という。)とミャンマー母子福祉協会(以下「MMCWA」という。)は双方とも軍政の翼賛・大衆動員組織であり、特にUSDAは普段から民主化運動家の脅迫や拘束などを行っている。USDAは二〇〇三年のスーチー氏襲撃事件への関与が指摘されているほか、本年九月の抗議行動に際しても、協会員がデモ参加者を殴打、逮捕しており、MMCWAは最近新たに首相に任命されたテインセイン将軍の妻キンキンウィン氏が会長を務めている団体である。こうしたUSDAの活動や問題点については数年前から米国国務省や国際人権団体などの報告書が詳述しているが、日本政府はUSDAを「ローカルNGO」と分類して無償資金協力を供与した。

1 日本政府はUSDAの団体の性質や活動の実態についてどのような認識を持って同団体を「ローカルNGO」と分類し、また、無償資金協力供与の決定を下したのか明らかにされたい。

2 日本政府が、軍政にごく近く、民主化運動家の弾圧を積極的に行うような団体を援助することによって、軍政や国際社会に伝えるメッセージについて、政府内でどのような検討がなされたのか明らかにされたい。

二 本年度を含め、二〇〇二年からほぼ毎年「人材育成奨学計画」に対する無償資金協力が供与されている。同計画の下、ビルマから主に行政官を奨学生として日本の大学院に受け入れている。日本政府は来日する奨学生の選考に関与していないようだが、選考がビルマ軍政に一任されていると軍政に近しい人が選ばれる可能性が高く、逆に民主化運動に携わっている人はもちろん、軍政に少しでも批判的な人などが選ばれる可能性は小さいのではないかと思われる。また、奨学生が自らの研究テーマを選ぶ自由がないことや、帰国後に日本で学んだ分野をいかせないことが多いという情報もある。

 本計画の実施をより効果的なものにし、民主的な国造りにつながるような人材育成をしていくためには、同計画の必要性や目的、求められる効果について派遣する側のビルマ軍政と受け入れる側の日本政府とが共通の認識を持ち、共に努力していくことが重要である。日本政府は今後、より多様な奨学生を受け入れるために選考手続に積極的に関与すると同時に、奨学生の帰国後の進路・配属先に配慮するようビルマ軍政に働きかけていくべきである。

1 奨学生の選考が現在どのように行われ、日本政府は選考手続に直接関与しているのか。詳細に示されたい。

2 奨学生の所属する大学院や研究テーマはどのように決定されるのか。日本政府がこのことについて実情を把握しているかも含めて明らかにされたい。

3 日本政府は、奨学生の帰国後の進路や、日本で取得した学位をいかせているかを確認する追跡調査を行っているのか、明らかにされたい。

三 ビルマは天然資源に恵まれており、軍政はこれらの資源を積極的に開発、輸出して外貨を稼いでいる。中でも天然ガス輸出は数年前から同国の輸出総額の約二十五パーセントを占めており、軍政にとって重要な外貨獲得源となっている。ビルマでの天然ガス開発に日本政府もかかわり、出資もしている。日石ミャンマー石油開発(日本政府と新日本石油開発とが五十パーセントずつ出資)はビルマ沖天然ガス田(イェタグン田)の権益(約十九・三パーセント)を保持している。権益取得や拡大に際しては国際協力銀行や石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が支援してきた。日本企業がガス田権益を保持することはODAではない。しかし、ビルマの経済を支えているとされる天然ガス開発に日本政府がかかわるという実態は、ODA大綱の精神や日本政府のビルマに対する援助方針との整合性が取れていないのではないか。この件について本年十月五日、参議院本会議において、福田内閣総理大臣は政府として「適切な対応を検討」していく旨、答弁しているが、具体的にどのような対策を講じるのか明らかにされたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第四七号

内閣参質一六八第四七号

  平成十九年十一月十六日

内閣総理大臣臨時代理           

国務大臣 町村 信孝   

       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員福島みずほ君提出ビルマへのODAと民主化の促進に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出ビルマへのODAと民主化の促進に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 政府としては、連邦連帯開発協会が、その綱領において連邦の分裂阻止、国民の間の連帯崩壊阻止、国家主権の堅持等を目的としつつも、具体的な活動において、基礎教育、保健、安全な水の確保、村落部の道路建設等経済・社会分野全般を対象とし草の根レベルの住民に対して事業を実施するミャンマー内務省団体設立法にのっとって設立及び登録された社会団体であって、草の根・人間の安全保障無償資金協力(以下「本無償資金協力」という。)が対象とする被供与団体の基準に該当するとともに、本案件が貧困層児童の小学校教育の環境改善に直接寄与する人道支援であることを踏まえ、実施を決定したものである。

 連邦連帯開発協会については、民主化運動家の弾圧を積極的に行う団体であるとは承知していない。

 これらの案件を含め、ミャンマー連邦(以下「ミャンマー」という。)に対する本無償資金協力の実施に当たっては、支援案件が貧しいミャンマー国民に直接裨益することを特に勘案しつつ行っているものである。

二の1及び2について

 ミャンマー政府に対する無償資金協力「人材育成奨学計画」は、我が国における学位の取得を通じて、将来ミャンマーの社会・経済開発計画政策の企画・立案・実施にかかわることが期待される行政官等の人材育成を行うことを目的としている。その実施に当たっては、ミャンマー政府、在ミャンマー日本国大使館及び独立行政法人国際協力機構(以下「JICA」という。)の現地事務所により構成される調整委員会が、同計画の目的にかんがみ、同計画により我が国に留学する者(以下「対象者」という。)に学位を取得させる分野を決定した後、JICAが当該分野について対象者を受入れ可能な我が国の大学を選定し決定する。具体的な対象者については、書類選考や語学試験等を経て、調整委員会が、当人の希望する研究テーマを踏まえた上で、最終的に決定している。

二の3について

 対象者が我が国の留学より帰国した後の追跡調査については、JICAがアンケート調査やモニタリング調査を実施しており、同計画の成果を確認している。

三について

 現在、政府としては、国際社会の様々な取組とも連携しつつ、ミャンマーにおける民主化の推進及び人権状況の改善を働きかけているところである。国際的にもミャンマーにおける天然ガス生産事業への他国の既存の出資の引揚げは行われていない現状を踏まえると、ミャンマーにおける民主化及び人権の状況や資源開発に関する他国の動向を注視しながら、本件事業にかかわる既存の政府出資の取扱いについては、慎重に検討していく考えである。なお、政府は、御指摘の日石ミャンマー石油開発株式会社の株主であり、出資基本契約においては、同社の資産又は事業経営に重大な影響を及ぼす事項については政府の事前の同意が必要とされていることから、当面、国際協力銀行又は独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構による新規の支援の求めがあったとしても、現下の情勢にかんがみ、これに同意しない方針である。

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