QUESTIONS質問主意書

第169回国会 「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」に関する質問主意書 (2008年6月12日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)

質問主意書

質問第一六四号

「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年六月十二日

福島 みずほ   

       参議院議長 江田 五月 殿

   「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」に関する質問主意書

 ホームレスの自立の支援等に関する施策を総合的に推進するため、二〇〇二年(平成十四年)八月七日に「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(以下「特別措置法」という。)が成立し、それにもとづき二〇〇三年七月三十一日に政府は「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」(以下「基本方針」という。)を定めた。各地方公共団体においては、それらを踏まえ実施計画を定めながら施策を進めているが、様々な問題点も生じている。

 以上のことを前提として、質問する。

一 ホームレスの医療の確保について

 現行の基本方針では、「保健所等は、…医療の必要があると思われるホームレスが、適切な医療を受けられるよう福祉事務所等と密接な連携を図りながら医療機関への受診につなげる。」、「ホームレスに対する医療の確保を図るため、…医師または歯科医師の診察に応じる義務について改めて周知に努め、また、無料低額診療事業を行う施設の積極的な活用を図るとともに、病気等により急迫した状態にある者及び要保護者が医療機関に緊急搬送された場合については生活保護の適用を行う。」(第3の2の(3))としている。

1 家族・親族に連絡されるのが嫌であるなどの理由で生活保護の申請を希望しないホームレスも存在するが、医療機関に緊急搬送されるほどの症状はないが病気の治療を行いたいという場合、無料低額診療所がない地域での当該ホームレスの医療の確保の在り方について、政府の見解を示されたい。

2 医療機関に緊急搬送されるほどの症状がないホームレスが、治療したいという希望をもって福祉事務所等の相談窓口を訪れて生活保護申請をした場合、実施機関は検診命令を行うとともに保護の要件及び要否を十四日以内に調査検討することとなるが、十四日以内の保護決定を待たずして病気治療が必要と判断される場合、医療機関での受診を認めてよいか。特に無料低額診療所がない地域の実施機関について明らかにされたい。

3 急迫した状態にはないが、医療の必要があると思われ、かつ受診費用がないホームレスに適切な医療を受けさせるための方策の在り方について、政府の見解を示されたい。特に無料低額診療所がない地域の実施機関について明らかにされたい。また、その場合の費用分担はどうなるのか。

4 ホームレスは、軽度の疾患にかかった場合でも、その後生存が危うくされたり、その他社会通念上放置しがたいと認められる程度に情況が切迫した状態に陥ったりする危険性が高いので、ホームレスが軽度の疾患にかかった場合でも、原則として急迫状態にあたると認めてよいか。

二 自立支援施策と生活保護との関係について

 現行の基本方針は、「就労の意欲と能力はあるが失業状態にあり、各種就労対策を実施しても就労が困難であると判断される者については当該地域に自立支援センターがある場合には、自立支援センターへの入所を検討する。」としている。

 生活保護法第四条は、「保護は、生活に困窮する者が、その利用しえる資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」とし、同条第二項では、「他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」としている。

1 小山進次郎「改訂増補 生活保護法の解釈と運用」は、第四条第一項の「その他あらゆるもの」について、「現実には資産になっていないが一挙手一投足の労で資産となし得るもの、例えば、確認を受けていない恩給権はこれに当る。」としている。

 自立支援センターなどの施策は、第四条第一項でいう「その他あらゆるもの」に含まれないと解してよいか。

2 小山進次郎「改訂増補 生活保護法の解釈と運用」は、第四条第二項の「他の法律に定める扶助」について、「他の法律に定められている扶助で、この法律による保護として行われるものとその内容の全部または一部を等しくするもの、従って、本法による保護とその内容を全く異にする扶助は含まれない。」としている。

 自立支援センター事業は、その実施の根拠は各地方公共団体において定めるものであり、特別措置法が、直接、同事業による給付を受ける具体的権利を発生させるわけではない。

 また、自立支援センター等の施策は、目的が就労自立支援であって、生活保護制度が最低生活保障を目的とするのとは異なるのであり、給付の水準も、生活水準や住環境などの点で生活保護制度によるそれとは相当な隔たりがある。したがって、生活保護制度とは内容が全く異なるものである。

 したがって、自立支援センターなどの施策は、四条二項でいう「他の法律に定める扶助」に含まれないと解してよいか。

三 第二種無料低額宿泊施設について

 「特別措置法」制定の頃より、第二種(無料・低額)宿泊所(社会福祉法第二条第三項に規定する生計困難者のために無料又は低額な料金で宿泊所を利用させる事業を行う施設)の数が急激に増大している。

 それらの第二種(無料・低額)宿泊施設の爆発的な増大に伴い、厚生労働省は「社会福祉法第二条第三項に規定する生計困難者のために無料又は低額な料金で宿泊所を利用させる事業を行う施設の設備及び運営について」(平成十五年七月三十一日・社援発第〇七三一〇〇八号。二〇〇四年一月二十日付で一部改正。厚生労働省社会・援護局長通知、以下、「局長通知」という。)を発出した。局長通知では、その指針を示すとともに、各自治体の留意事項として第二種(無料・低額)宿泊施設に対して必要な調査等を実施し、環境改善を働きかけるよう努めること、第二種(無料・低額)宿泊施設に起居する被保護者について生活実態の把握や自立の支援に努めること等を示している。

1 第二種(無料・低額)宿泊施設について、どういった実態にあるのか把握しているものと考えるが、各自治体からの資料や情報提供も含め、どのように把握しているのか。

2 毎年同施設の状況について把握しているようであるが、その結果は公にされているのか。されている場合は、いかなる文書等で、いかなる項目・内容であるか。公表されていない場合は、それは何故か。

3 二〇〇七年六月二十日提出の田嶋要議員の質問主意書に対して、第二種(無料・低額)宿泊施設の施設数と入所者数を答えているが、生活保護受給者数等は承知していないと答えている。

 それらの施設の中には、その地域における生活保護の住宅扶助費の限度額の家賃を徴収した上に、提供されるサービスに見合わない高額な利用料金も徴収しているところも多くあるとも聞く。したがって政府としても早急にそれらの第二種(無料・低額)宿泊施設の実態を把握する調査等を行う必要があると考えるが、今後こういった調査等を行う予定はあるか。

4 また、都道府県知事への届け出をせずに同様の事業を行う施設もあると聞くが、こうした施設等についても状況を把握しておく必要があると考えるが、如何か。また、状況把握の予定はあるか。

5 各都道府県知事および各生活保護実施機関から、第二種(無料・低額)宿泊施設としての届け出のあるなしにかかわらず、こういった施設に関して意見等が寄せられているかどうか。ある場合はその内容は如何か。

6 これらの施設は社会福祉施設に含まれるものであり、その施設や運営の透明性を確保するために苦情受付窓口の設置や第三者評価を義務づける必要性があると考えるが、どうか。

四 「ホームレスとなるおそれのある者」について

 「特別措置法」には、「ホームレスの自立の支援等に関する施策の目標」の一つとして、「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者が多数存在する地域を中心として行われる、これらの者に対する就業の機会の確保、生活に関する相談及び指導の実施その他の生活上の支援により、これらの者がホームレスとなることを防止すること。」が掲げられている。また、この「おそれのある者」について、現行の基本方針では、「一般的には現に失業状態や不安定な就労関係にあり、かつ、定まった住居を喪失し不安定な居住環境にある者等が想定される。」としている。

1 「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者」には、昨今取りざたされている、いわゆる「ネットカフェ難民」のみならず、日雇、臨時などの不安定な雇用形態で就業しながら建設業附属寄宿舎(飯場)やその他の寄宿舎・寮、簡易宿泊所、サウナ等で生活する者も含まれると解してよいか。

2 「ネットカフェ難民」の実態については、「住居喪失不安定就労者」調査などを実施しているようであるが、前記1に例示したような者も含めた「おそれのある者」全体の実態(規模等を含む)について把握しているか。把握しているのであれば、その調査等の方法及び結果について具体的に示されたい。

3 前記2について把握していないのであれば、「おそれのある者」全体についての実態把握の調査等を行う予定はあるか。ないのであれば、実態把握を行う必要があるのではないか。実態把握の必要性についての認識を示されたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第一六四号

内閣参質一六九第一六四号

  平成二十年六月二十日

内閣総理大臣 福田 康夫   

       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員福島みずほ君提出「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」に関する質問に対する答弁書

一の1について

 御指摘のような場合には、地方公共団体において、ホームレスに対する相談支援を行う際に、適切な医療機関を紹介するとともに、費用の支払いが困難である者に対しては、生活保護の申請を促すなどの措置をとることが適当であると考える。

一の2について

 御指摘のような場合には、福祉事務所においてホームレスに対して医療機関の受診を促すこととなると考えられるが、医療機関の受診後であっても、生活保護が適用されることとなった場合には、申請時にさかのぼって生活保護が適用されるものである。

一の3について

 御指摘のようなホームレスに対しては、地方公共団体が相談支援を行う際に、個々の事情に応じて、生活保護の申請や医療機関の受診を促すなどの措置をとることが適当であると考える。

 お尋ねの費用分担については、生活保護の適用がある場合は、医療扶助に係る費用について、国が四分の三、地方公共団体が四分の一を負担することとなり、それ以外の場合には、当該ホームレスについては、公的医療保険の適用対象となると考えられることから、当該ホームレスが患者負担部分を、それ以外の費用を保険者が負担することとなると考える。

一の4について

 お尋ねについては、ホームレスが軽度の疾患にかかったとしても、実際に生命に危険が生じていると認められる状態になければ、ホームレスであることのみをもって急迫状態にあるとは言えないと考える。

二の1について

 御指摘の自立支援センターにより提供されるサービスは、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第四条第一項の「その他あらゆるもの」に含まれない。

二の2について

 御指摘の自立支援センターにより提供されるサービスは、生活保護法第四条第二項の「他の法律に定める扶助」に含まれない。

三の1及び2について

 厚生労働省としては、都道府県等からの報告により、社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二条第三項に規定する生計困難者のために無料又は低額な料金で宿泊所を利用させる事業を行う施設(以下「無料低額宿泊所」という。)の実態について把握しているところであるが、当該報告は、公表を前提として都道府県等に対して求めているものではないため、公表していないものである。

三の3について

 無料低額宿泊所の実態については、三の1及び2についてでお答えしたとおり、都道府県等からの報告により把握しているところであり、新たな調査等を行うことは考えていない。

三の4について

 社会福祉法第六十九条第一項の規定に違反して届出を行っていない無料低額宿泊所については、各地方公共団体においてその実態を把握し、必要な措置を講ずるべきものであると考える。

三の5について

 お尋ねについては、例えば、無料低額宿泊所の設置運営等に関する法令の整備等の要望が寄せられているところである。

三の6について

 厚生労働省としては、無料低額宿泊所の事業の透明性を確保するため、「社会福祉法第二条第三項に規定する生計困難者のために無料又は低額な料金で宿泊所を利用させる事業を行う施設の設備及び運営について」(平成十五年七月三十一日付け社援発第〇七三一〇〇八号厚生労働省社会・援護局長通知)において「無料低額宿泊所の設備、運営等に関する指針」を示し、当該指針に基づいて適正に経営を行うよう指導監督を行っているところであり、御指摘のような義務付けを行うことは考えていない。

四の1について

 ホームレスの自立の支援等に関する基本方針(平成十五年厚生労働省・国土交通省告示第一号)においては、「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者としては、一般的には現に失業状態や不安定な就労関係にあり、かつ、定まった住居を喪失し不安定な居住環境にある者等が想定される。」としており、お尋ねの者がこのような状況にあるのであれば、ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(平成十四年法律第百五号)第三条第一項第二号に規定する「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者」に該当するものである。

四の2及び3について

 お尋ねの「おそれのある者」全体の実態については、把握していない。そもそも、そのような者の状況は様々であり、その実態を網羅的に把握することは困難であると考えられるところ、その調査を行うことも考えていないが、「おそれのある者」の個々の状況についてであれば、地方公共団体において相談支援を行う際に把握しているところである。

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