QUESTIONS質問主意書

第169回国会 「出入国管理及び難民認定法第二十六条と市民的及び政治的権利に関する国際規約第十二条の抵触問題に関する質問主意書」(2008年6月20日) | 社民党 福島みずほ 参議院議員(比例区)

質問主意書

質問第一九三号

出入国管理及び難民認定法第二十六条と市民的及び政治的権利に関する国際規約第十二条の抵触問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十年六月二十日

福島 みずほ   

       参議院議長 江田 五月 殿

   出入国管理及び難民認定法第二十六条と市民的及び政治的権利に関する国際規約第十二条の抵触問題に関する質問主意書

 日本国政府が一昨年十二月、国際連合に提出した市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号、以下「規約」という。)第四十条一項(b)に基づく第五回報告書が、規約第二十八条に基づき設置された国際人権規約委員会(Human Rights Committee)の第九十四会期(本年十月十三日~三十一日)で審議される予定である。

 国際人権規約委員会は、規約に基づく日本国政府の第四回報告書を審査した後、平成五年十一月五日に採択した日本に対する最終見解(Concluding Observations)の「主要な懸念事項及び勧告」で、以下のように勧告している。

 「出入国管理及び難民認定法第二十六条は、日本から出国する外国人は、事前に再入国を許可された者のみが、滞在資格を失うことなく日本へ帰ることができるとしており、そのような事前の許可は完全に法務大臣の裁量によって与えられている。この法律の下では、日本における第二、第三世代の永住者や日本にその生活の基盤を置く者は、日本を離れる権利と日本に再入国する権利を奪われるであろう。委員会は、この規定は規約第十二条二項及び同条四項に違反するという意見である。委員会は政府に、『自国』という言葉は『国籍国』と同義ではないことを注意する。委員会はそれゆえに政府が、日本で出生した在日韓国・朝鮮人の人々のような永住者に関しては、事前に再入国許可を取得しなければならないという要件を取り除くよう、強く要求する」。

 政府は第五回報告書の中で、この勧告に対する回答を全く述べていない。

 以下、この点に関し、質問する。

一 私が提出した「国際人権規約委員会『最終見解』についての実施状況に関する質問主意書」に対する答弁書(内閣参質一四七第五十三号、平成十二年八月二五日)(以下「答弁書」という。)には、規約「第十二条四の『自国』については、文理解釈及びその審議経緯から国籍国を指すものと解している」ので、再入国許可制度は「第十二条二及び四条のいずれにも違反するものではない」との見解が示されている。

 しかし規約の最も詳細な解説書であるCCPR Commentary(平成五年)は、国連人権委員会第八会期までの議論をまとめて、「人権委員会の政府代表の多くは、帰る権利は、国籍国以外に、そこで生まれたり、長く生活することによって『家』を確立した人々にも保障されるべきであるから、(帰国権を国民のみに限定したフランス等の草案より)後者(オーストラリア)の提案を支持したのである」と、同じ審議経緯から、日本国政府と全く逆の結論を出している。

 また国際人権規約委員会は平成十一年十月十八日、第六十七会期において、規約第十二条の条文解釈等を示した一般的意見(General Comment)二十七を採択し、規約第十二条四項「自国に戻る(enter one’s own country)権利」について、こう記している。

 「第十二条四項の用語は、『何人も』として、国民と外国人とを区別していない。そのため、この権利の行使を認められる個人は、『自国』という言葉の意味を解釈することによってのみ確認される。『自国』の範囲は『国籍国』という概念より広い。それは、法形式的な意味における国籍-すなわち出生や付与によって取得された国籍-だけに限られるのではなく、少なくとも、彼・彼女のその国との特別なつながり、あるいはその国に対する権利から、ただの外国人だとは見なされない個人を含む。…第十二条四項の用語は、さらに、長期居住者(long‐term residents)というカテゴリーも包含する、広い解釈を認めるものでもある。…締約国は、定期報告書で、永住者の居住国に帰る権利に関する情報を含まなければならない」。

1 政府は、どのような文理解釈、審議経緯から、「自国」は「国籍国」のみを指すとの条文解釈を導き出したのか、根拠と法理論を具体的に示されたい。

2 今でも、その解釈に変わりはなく、入管法二十六条の規定は、規約第十二条二項及び同条四項に違反するという委員会の判断に、反対するか。

3 国際人権規約委員会が一般的意見二十七として採択した条文解釈は、誤っていると考えているか、明らかにされたい。

二 日本の再入国許可制度は、米国の同制度を模したものだといわれるが、米国では、二世以降は出生により市民権を取得できる上、永住者は一年以内なら自由に出国でき、永住権を失うこともない。韓国の出入国管理法は、日本の入管法をモデルに作られたといわれるが、平成十四年の改訂で、第三十条(再入国許可)に、「永住資格を持つ者に対する再入国許可の免除」を追加し、平成十五年、同法「施行規則」に第四十四条の二(永住資格を持つ者の再入国許可免除基準等)を新設し、「永住の資格を持つ者で出国した日から一年以内に再入国しようとする者に対しては、再入国許可を免除する」よう定めた。カナダは、平成十三年十一月制定の「出入国及び難民保護法」第十九条二で、永住者の入国権(right of entry of permanent residents)を定めている。このような国際的潮流の中で、現在において、規約第十二条四項の「自国」は「国籍国のみ」を指し、四世、五世にも至る永住者の居住国への帰国権を認めるものではないと解する国が、日本国以外にあるか。あれば、その国名を、理由とともに列記されたい。

三 私は平成十一年五月十三日の参議院法務委員会で、国際人権規約委員会の解釈に従って永住者の再入国を権利として認めると、実社会上何か問題が生じるのかと質問したが、平成三年の入管特例法以降、特別永住者からの再入国許可申請を不許可にした例はあるか。もしあれば、平成三年以降各年の、特別永住者からの再入国許可申請件数と、不許可件数を示されたい。

四 答弁書は、「入管法第二十六条に定める再入国許可制度は、永住者及び特別永住者を含め、我が国に在留する外国人が一時的に出国して再び我が国に入国する場合に、上陸の手続等を簡略化し、当該外国人の利便を図る」ものであり、同制度は「必要かつ合理的なものである」と記している。しかし、EU(欧州連合)駐日代表部は、平成十七年十月の「日本の規制改革に関するEU提案」で、「EUは、この制度は不必要な負担を強いるもので、他のほとんどの国にはない特異なものと考える」として、再入国許可制度の廃止を提案・要求した。翌平成十八年の「提案」では、「この問題の根本的原因は、外国人居住者が日本の領土を離れるたびに、その在留資格が自動的に喪失する点にある」、「この在留資格の喪失が、なぜ永住資格を持った外国人に適用されるのか、また外国人の入国管理を有効に行うために、既存の数次ビザ制度でなぜ十分でないのか明らかでない」などの批判点を加え、「人的資源」の要求事項六項目の筆頭に「再入国許可制度の廃止」を掲げている。平成十九年の同「提案」でも、「日本は先進工業国で唯一、ビザと再入国許可の二重制度を通して在留外国人の移動を規制している」として、その特異性を強調し、三度「再入国許可制度の廃止」を求めている。規制改革・民間開放推進会議も、平成十八年十二月の第三次答申で、再入国許可制度は、在留外国人の「円滑な移動を妨げている」との認識を示し、「再入国許可制度の見直し」を提言した。

1 政府が「外国人の利便を図る」ための「必要かつ合理的な制度」だとする同制度が、なぜEU駐日事務所から「不必要な負担を強いる」、「他のほとんどの国にはない特異なもの」として廃止を求められ、規制改革・民間開放推進会議からも、在留外国人の「円滑な移動を妨げている」とみなされたのか、その原因について、政府はどのように分析しているか、見解を示されたい。

2 これらの指摘及び要請を受けて、以前示した、同制度は「外国人の利便を図る」ための「必要かつ合理的な制度」だとの見解を、今は改めたのか、それとも、今でもその見解に変わりはないのか、明らかにされたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第一九三号

内閣参質一六九第一九三号

  平成二十年六月二十四日

内閣総理大臣 福田 康夫   

       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員福島みずほ君提出出入国管理及び難民認定法第二十六条と市民的及び政治的権利に関する国際規約第十二条の抵触問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出出入国管理及び難民認定法第二十六条と市民的及び政治的権利に関する国際規約第十二条の抵触問題に関する質問に対する答弁書

一について

 市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号。以下「規約」という。)の解釈については、条約文等の文脈により、かつ、その趣旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味に従い、誠実に行っており、我が国としては、規約第十二条2及び4にいう「自国」は、国籍国を指すものと考えている。したがって、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第二十六条が規約第十二条2及び4の規定に違反するものではないと考えている。

 また、御指摘の最終見解及び一般的意見は、法的拘束力を持つものではなく、規約の締約国に対し、それに従うことを義務付けているものではないと理解している。

二について

 お尋ねについては承知していない。

三について

 現在法務省として資料を有している平成十六年から平成十九年までの特別永住者からの再入国許可申請について調査した結果、不許可とした例は見当たらなかった。

四について

 法務省としては、現行の出入国管理及び難民認定法の下においては、再入国許可制度は必要かつ合理的なものであると考えているが、御指摘の答申等がなされたのは、外国人が再入国許可を申請するためには原則として地方入国管理局に出頭する必要があり、急な出張や一時帰国等に必ずしも十分対応できていない面があると指摘されていること等が一因となっているものと考えており、今後、「規制改革推進のための三か年計画」(平成十九年六月二十二日閣議決定)等を踏まえ、外国人の利便性向上の観点から、再入国許可制度の見直しについて措置することとしている。

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