QUESTIONS質問主意書

第175回国会 「菅直人内閣における死刑執行に関する質問主意書」(2010年8月4日) | 社民党 福島みずほ 参議院議員(比例区)

質問主意書

質問第一九号

菅直人内閣における死刑執行に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年八月四日

福島 みずほ   

       参議院議長 西岡 武夫 殿

   菅直人内閣における死刑執行に関する質問主意書

 二〇〇九年八月の衆議院選挙で政権与党となった民主党は、その選挙の際に発表した「政策集INDEX二〇〇九」において、「死刑存廃の国民的議論を行うとともに、終身刑を検討、仮釈放制度の客観化・透明化をはかります」と明記していた。鳩山内閣及び菅内閣において法務大臣に任命された千葉景子法務大臣は、その就任記者会見で死刑制度について、「人の命ということなので、慎重に取り扱っていきたい」とし、「広い国民的な議論を踏まえて、道を見いだしていきたい」と表明していた。これは、政権を支える民主党の政策方針に合致したものと考える。

 しかし、なんらこうした国民的議論が行われないまま、二〇一〇年七月二十八日に東京拘置所において二人の死刑囚に対し死刑が執行された。

 これは、国民と約束した政策集にある死刑の存廃を議論していくことと、大きくかけ離れるだけでなく、千葉大臣が記者会見で発言していた死刑執行には慎重な姿勢を堅持するとの方針にも反すると考えられるので、以下質問をする。

一 千葉大臣は、七月二十八日の記者会見において、「残忍な事件であること、裁判所の十分な審理を経て死刑が確定したものであることを踏まえて慎重に検討した結果、死刑執行を命令した」と述べたが、では今回、百九人の確定死刑囚の中から尾形英紀さん、篠澤一男さんの両名を選択して執行した理由は何か。明確に回答されたい。

二 また、前回の死刑執行からちょうど一年目である七月二十八日に執行した理由は何か。執行停止の状態が一年を超えてはいけないという政治的な理由によるものか。

三 千葉大臣は、七月三十日の記者会見で、七月二十八日の死刑執行が法務官僚から説得された結果なされたものであることを否定しているが、法務官僚からの働きかけは一切なかったのか。働きかけの結果でないとすれば、死刑執行命令書に署名を行うことは、民主党政権のいう「政治主導」の政策実行であるということなのか。

四 刑罰の執行指揮は、刑事訴訟法第四百七十二条第一項に基づき検察官がこれを行うものとされているところ、刑事訴訟法第四百七十五条第一項は、「死刑の執行は、法務大臣の命令による。」として、政治家たる法務大臣の関与を特に定めている。これは、死刑が生命を奪う刑罰であり、他の刑罰と異なって、その執行に際しては極めて慎重に判断されなければならず、検察官の判断のみで執行しえないものであることを規定しているものと考えられる。千葉大臣の今回の死刑執行命令書への署名は、このような刑事訴訟法の規定の趣旨を踏まえた上での判断であるのか。

五 枝野民主党幹事長が、「千葉大臣が執行命令書に署名をしたのは七月二十四日だ」と述べているが、七月二十四日に署名したことは事実か。また、枝野幹事長は、なぜそのような事実を知っていたのか。千葉大臣が枝野幹事長に署名した事実を執行前に漏らしていたのなら、法務大臣が職務上知り得た秘密事項を漏らしたことになり、大臣の守秘義務違反にあたるのではないか。この点についての見解はいかがか。

六 七月二十四日の署名は、先の参議院選挙で落選した千葉大臣が議員資格を失う前にということで行われたと報道等で解説されているが、そのとおりか。

七 千葉大臣が記者会見で表明した、死刑のあり方について検討するための勉強会について現段階で決まっていることを示されたい。「死刑制度の存廃を含めた死刑制度のあり方を検討する」とのことであるが、いつ発足するのか。「幅広く外部の様々な方々から意見を聞き、議論に加わって貰いたい」とのことであるが、どのような参加メンバーを考えているのか。死刑制度に対して賛成の立場、反対の立場からそれぞれ平等になるよう公平な勉強会の委員構成にすると確約できるか。また、「開かれた場で」とのことであるが、どのような形で公開されるのか。「勉強会の成果を公表し、死刑のあり方について広く国民的議論が行われる契機にしたい」とのことであるが、成果発表は、いつを目途としているか。

 もし、詳細な計画や制度設計は検討中ということならば、それをいつ公表するかも示されたい。

八 通常どこの国でも死刑のあり方について検討する際には、死刑の執行をいったん停止して行うものと考えるが、今回、死刑制度に関する議論及び検討を実施するのに先立って死刑執行を行った理由は何か。死刑の存続を結論づけるために意図的に執行を行ったのではないか。

九 千葉大臣は、「東京拘置所の刑場についてマスメディアの取材の機会を設けるよう指示した」と七月二十八日の記者会見で発表したが、このマスメディアへの公開はいつ、何回、テレビ局、新聞社、ラジオ局、雑誌社、インターネット通信社、NGOなど、法務省内の記者クラブ以外にどのようなメディアに対して、取材の機会を提供するのか、その計画内容を示されたい。

 また、東京拘置所以外の刑場についても公開する考えはあるか。

十 米国や韓国では確定死刑囚に対する取材を認めているが、国民的な議論のためには必要なことと考える。我が国でも確定死刑囚に対する取材を認める考えはないか。

十一 千葉大臣は、自ら処刑に立ち会ったとのことだが、その具体的な様子を詳しく公表されたい。

 二〇〇七年十二月十一日、参議院法務委員会において、当時の鳩山邦夫法務大臣が社民党の近藤正道議員の質問に対して、死刑執行に立ち会う際は、きちんと執行の瞬間を見るべきとの主旨の答弁をしており、カーテンで遮ることがないようにとの改善を指示している。千葉大臣は今回の処刑立会いの際にも、カーテンで仕切ることなく、処刑の瞬間を見たということで間違いないか。

十二 今後も死刑執行が行われる際には、法務大臣が立ち会うことが望ましいと考えるか。

十三 千葉大臣は、大臣就任前にアムネスティ議員連盟、死刑廃止を推進する議員連盟の両議員連盟に所属し、死刑廃止に積極的な発言及び行動を続けてきた。

 今回、死刑を執行する立場となり自らその執行を検分することで、改めて死刑のあり方について深く考えさせられたとのことであるが、死刑制度に対する考えは変わったか、大臣の所見を示されたい。

十四 二〇〇八年の国連自由権規約委員会で、「日本の死刑について国は、世論の動向にかかわりなく、死刑の廃止を考慮すべきであり、一般世論に対して、死刑を廃止すべきであるということを必要なかぎり説明すべきである。」との勧告を受けているが、これに対してどう考えるか。

十五 菅内閣は、死刑制度についてどのような具体的な方針を持っているのか。国連総会は、二〇〇七年、二〇〇八年と二度にわたりすべての死刑存置国に対し死刑の執行を停止することを求める決議を採択している。今回の執行は、この決議を公然と無視するものであり、国際社会の反発は避け得ない。既に世界の七割以上の国々が死刑を行っておらず、国連決議にみるように国際社会は、たとえ犯罪者といえども生命を奪ってはならないという考えがコンセンサスとなってきている。菅内閣は、国際化が進展する現代社会において、日本や米国(の一部の死刑存置州)、中国などの死刑を存置する国が国際社会から批判を受けていることに対し、今後どのように対応していく考えか、その方針を示されたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第一九号

内閣参質一七五第一九号

  平成二十二年八月二十日

内閣総理大臣 菅 直人   

       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員福島みずほ君提出菅直人内閣における死刑執行に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出菅直人内閣における死刑執行に関する質問に対する答弁書

一、二、六及び八について

 個々具体的な死刑執行の判断にかかわるお尋ねについては、答弁を差し控えたい。

 法務大臣は、法務省の関係部局に関係記録の内容を十分に精査させた上で、刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等につき、慎重に検討し、これらの事由等がないと認めた場合に、死刑執行命令を発しているところであり、御指摘の本年七月二十八日の執行についても、同様の精査・検討を経て、これらの事由等がないと認め、死刑執行命令を発したものであって、御指摘のように、「執行停止の状態が一年を超えてはいけないという政治的な理由」により、「議員資格を失う前にということで」、又は「死刑の存続を結論づけるために意図的に」死刑執行命令を発したものではない。

三及び四について

 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第四百七十五条第一項は「死刑の執行は、法務大臣の命令による。」と規定しており、法務大臣は、その職にある限り、法に定められた職責を誠実に遂行すべきであり、御指摘の本年七月二十八日の執行についても、その職責に基づいて、適切に判断したものである。

五について

 法務大臣が御指摘の死刑執行命令書に署名したのは、本年七月二十四日であるところ、法務大臣が御指摘のように同月二十八日の死刑の執行に先立ち、枝野民主党幹事長に対してこれを告げたという事実はなく、政府としては、同幹事長が御指摘の発言をした根拠については、お答えする立場にない。

七について

 お尋ねの勉強会については、法務大臣を座長とし、法務副大臣及び法務大臣政務官並びに法務省内の関係部局の職員によって構成する法務省内の勉強会であり、本年八月六日に第一回会合を開催した。

 同勉強会は、法務省内部の勉強会であり、その議事については、公開することを予定していないものの、今後、法務省においては、傍聴もできる開かれた場で死刑存置論者や死刑廃止論者を含む様々な立場の方から幅広く意見を聴取することを検討している。

 また、同勉強会の成果を発表する時期については、現時点では未定である。

九について

 東京拘置所の刑場について、本年八月中に、マスメディアの取材の機会を設けるべく法務省の関係部局において検討を進めているところであり、現時点でその計画内容を具体的にお示しすることはできない。

 東京拘置所以外の刑場について、現時点でマスメディアの取材の機会を設ける予定はない。

十について

 死刑確定者に対する取材の可否については、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成十七年法律第五十号)その他の関係法令に基づき、当該死刑確定者を収容する刑事施設の長において適切に判断するものと考えている。

十一について

 個々具体的な死刑執行にかかわるお尋ねについては、答弁を差し控えたい。

十二について

 お尋ねの点については、法務大臣の職にある者それぞれの判断にゆだねられているものと考えている。

十三について

 死刑に関して国民の間で幅広い観点からの議論が行われることが望ましいという法務大臣の考えに変わりはないが、死刑執行命令を発することは法務大臣に課された重要な職責であり、法務大臣の職にある限り、法に定められた職責を誠実に遂行すべきものと考えている。

十四及び十五について

 死刑は、人の生命を絶つ極めて重大な刑罰であるとともに、死刑制度の存廃は、我が国の刑事司法制度の根幹にかかわる重要な問題であるので、国民世論の動向に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等種々の観点から慎重に検討すべき問題であると考えている。

 この問題については、諸外国における動向等も参考にする必要があるものの、基本的には、各国において、当該国の国民感情、犯罪情勢、刑事政策の在り方等を踏まえて慎重に検討し、独自に決定すべきものであると考えているところ、七についてで述べた勉強会においては、この問題に関する国内外の動向にも留意しつつ、検討を行うことといたしたい。

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