QUESTIONS質問主意書
第176回国会 「新卒者就職支援プロジェクトにおける実習生の保護等に関する質問主意書」(2010年12月1日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)
質問主意書
質問第一五三号
新卒者就職支援プロジェクトにおける実習生の保護等に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成二十二年十二月一日
福島 みずほ
参議院議長 西岡 武夫 殿
新卒者就職支援プロジェクトにおける実習生の保護等に関する質問主意書
深刻な雇用情勢が続く中、大卒予定者の就職内定率(本年十月一日時点)が、一九九六年(調査開始時)以降最悪の五十七・六%を記録したことに対し、就職を希望する若年者への国の支援は急務であり、効果的かつ効率的な諸施策を速やかに実施していくことが求められている。
その際、求職者は権利を侵害されやすい立場にあることから、その権利保障に十分な措置が講じられることが必要である。折しも、事実上、労働に従事していながら、労働者保護法規(労働基準法等)の適用を受けることのできない「名ばかりインターンシップ」が広く存在することが報じられており、インターンシップ制度を活用した施策の立案にあたっては、慎重かつ十分な検討が求められる。
以上の観点から、政府が実施している新卒者就職支援プロジェクト(以下「本プロジェクト」という。)の対象となる実習生の保護等について懸念があるので、以下質問する。
一 本プロジェクトの対象となる実習生について、雇用契約を締結せず、労働者保護法規の適用のないまま、「原則六か月」という長期間にわたり、生産現場等での就労を容認しなければならない理由は何か。
二 実習生が労働基準法、労働安全衛生法等に規定する「労働者」であるか否かを判断する基準を具体的に示されたい。本プロジェクトの実施にあたって、その判断を各実習生について行う者は誰か。
三 任意の実習日における実習生の就労内容が当該事業場で働く労働者の就労内容と同一であった場合、当該実習生は労働者保護法規の適用を受けるか。
四 実習生が労働安全衛生規則第三十六条所定の業務(危険有害業務)に就くことはあり得るか。実習生にする労働安全衛生規則第三十五条所定の雇入れ時教育(安全衛生教育)や労働安全衛生規則第四十三条所定の雇入れ時健康診断等は、受入企業の責任で確実に実施されるか。また、受入企業は使用する労働者と同様の安全配慮義務を実習生に対して負うと解するか。
五 実習生が実習中又は自宅と受入企業の間を移動中に被災し、負傷等した場合に支給される見舞金について、以下質問する。
1 労働者災害補償保険法所定の休業(補償)給付、療養(補償)給付、障害(補償)給付、介護(補償)給付、遺族(補償)給付、傷病(補償)年金等の支給要件、支給期間及び給付額と比較し、これらを下回ることがあるか。あるとすれば、実習生の保護に欠けることになると考えないか。
2 過失相殺はあるか。あるとすれば、無過失責任主義に立つ労働者災害補償保険法と比較し、実習生の保護に著しく欠けることになると考えないか。
3 受入企業が設置する機械等に法令違反があり、当該機械等を取り扱う作業に従事する実習生が被災した場合、見舞金が一部支給されない場合があるか。あるとすれば、実習生の保護に著しく欠けることになると考えないか。
六 実習生が実習中に有害物(石綿、有機溶剤等)に一定期間暴露し、実習期間中又は実習期間終了後に職業性疾病を発症した場合、何らかの救済措置はあるか。ないとすれば、実習生の保護に欠けることになると考えないか。
七 本プロジェクトで重要な役割を果たす「コーディネート機関」は、受入企業と商取引があるなど、受入企業と利害関係を有する場合があり得るか。また、コーディネート機関による「職場訪問」は、事前に予告した上で実施するのか。
八 実習生及び受入企業等の間で交わされる「職場実習の実施に関する確認書」に受入企業が違反し、実習生を労働に従事させる等の行為を行った場合の罰則はあるか。本プロジェクトの適正な運営を確保するため、労働基準監督機関が行う具体的な措置は何か。
右質問する。
答弁書
答弁書第一五三号
内閣参質一七六第一五三号
平成二十二年十二月十日
内閣総理大臣 菅 直人
参議院議長 西岡 武夫 殿
参議院議員福島みずほ君提出新卒者就職支援プロジェクトにおける実習生の保護等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員福島みずほ君提出新卒者就職支援プロジェクトにおける実習生の保護等に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねの「新卒者就職支援プロジェクト」とは、経済産業省で実施している「新卒者就職応援プロジェクト」(以下「本事業」という。)を指すものと思われるが、本事業は、新卒者の就職支援と中小企業の人材確保を目的として、就職先が決まっていない新卒者に、中小企業の職場に触れる機会を提供し、中小企業で働く上で必要とされる知識等を習得させるために、職場実習の機会を提供するものである。このため、職場実習の実施期間については、実習生が十分な知識等を習得できるよう考慮して、原則六か月間としている。
二について
労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)等に規定する労働者とは、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいい、お尋ねの実習生がこれに該当するか否かの具体的な事案における判断は、これらの法律の施行に関する事務をつかさどる労働基準監督署長、労働基準監督官等において、労務提供の形態や報酬の労務対償性及びこれらに関連する諸要素も勘案して総合的に行われるものである。
三について
二についてで述べたとおり、労働基準法、労働安全衛生法等に規定する労働者に該当するか否かの具体的な事案における判断は、労務提供の形態や報酬の労務対償性及びこれらに関連する諸要素も勘案して総合的に行われるものであり、これにより実習生が労働者に該当するとされる場合は、労働基準法等の適用を受けるものである。
四について
本事業は、一についてで述べたとおり、実習生に中小企業の職場に触れる機会を提供し、中小企業で働く上で必要とされる知識等を習得させるために、職場実習の機会を提供するものであり、実習生、受入企業及びコーディネート機関(職場実習を行う実習生及び受入企業との調整や、職場実習の実施状況の確認等を行う機関をいう。以下同じ。)の三者間で「新卒者就職応援プロジェクト職場実習の実施に関する確認書」(以下「確認書」という。)を締結した上で、職場実習を実施している。
確認書においては、受入企業は実習生の安全及び衛生に配慮しなければならないことが規定されているところであり、実習生がお尋ねの労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第三十六条に規定する危険又は有害な業務を行うことは想定していない。また、本事業において、受入企業が同規則第三十五条に基づく雇入れ時等の教育や同規則第四十三条に基づく雇入れ時の健康診断を行うことは想定していないが、前述のとおり、確認書においては、受入企業は実習生の安全及び衛生に配慮しなければならないことが規定されているところである。
五の1について
本事業においては、職場実習に参加する実習生の保護を図るため、確認書において、実習生が職場実習に起因して被った負傷等に対して、コーディネート機関から見舞金を支払うことが規定されているところである。本事業の実習期間中に実習生が行う実習内容は、受入企業の労働者の業務内容と同一ではなく、また、確認書に基づく見舞金と労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)に基づく保険給付(以下「労災保険給付」という。)については、それぞれの趣旨及び目的が異なり、給付額の算定方法等も異なることから、一概に比較することは困難である。
五の2について
本事業における見舞金の支払については、実習生が、故意又は重大な過失により、負傷、疾病、後遺障害又は死亡を生じさせた等の場合に、見舞金の支払制限を行うこととなっているが、それ以外の場合には、確認書に定められた所定の額が支払われることとなっている。また、労災保険給付の支給については、労働者が、故意、重大な過失等により、負傷、疾病、障害、死亡等を生じさせた等の場合に、労災保険給付の支給制限を行うことができることとなっているが、それ以外の場合には、労働者災害補償保険法に定められた所定の労災保険給付が行われることとなっている。両制度については、それぞれの趣旨及び目的が異なることから、一概に比較することは困難である。
五の3について
お尋ねの「法令違反」の内容が明らかではないが、本事業において、実習生が受入企業の故意又は重大な過失により負傷等を被った場合においては、コーディネート機関からは実習生に対する見舞金は支払われないが、こうした場合には、受入企業が実習生に対して損害賠償責任を負うことが想定される。なお、四についてで述べたとおり、確認書においては、受入企業は実習生の安全及び衛生に配慮しなければならないことが規定されているところである。
六について
四についてで述べたとおり、確認書においては、受入企業は実習生の安全及び衛生に配慮しなければならないことが規定されているところであり、確認書に沿って行われる本事業の中で、実習生が有害物に長期間暴露するような職場実習を行うことは想定していない。
七について
御指摘の「利害関係」の意味するところが明らかではないが、コーディネート機関については、本事業を実施するために十分な知見又は実績を有していること等を応募資格として、人材育成や就職支援を実施した実績があるかどうかや企画提案の内容が本事業の趣旨を理解したものとなっているか等について外部有識者等による委員会を設置して審査を行った上で、本事業を適切に実施できる者を決定している。
また、コーディネート機関は、職場実習の状況を実際に確認するため、受入企業を定期的に訪問することとなっている。訪問の際には、受入企業の指導担当者や実習生と面談して職場実習の実施状況等について聴取することから、コーディネート機関は、十分な面談時間を確保するため、受入企業に事前に連絡をした上で訪問しているものと承知している。
八について
御指摘の「罰則」の意味するところが明らかではないが、コーディネート機関は、受入企業が関係法令又は確認書の条項に違反したときは、職場実習を終了することができるとともに、受入企業に対して助成金の支払停止や返還請求をすることができることとなっている。
また、労働基準監督機関は、本事業の実習生を受け入れている事業場であるか否かを問わず、労働基準法、労働安全衛生法等に規定する法定労働条件の確保を図るため、臨検監督等を行うとともに、労働者からの申告や相談に応ずる等の対応をしているところであり、本事業の実習生から労働基準法、労働安全衛生法等に違反して使用されているといった相談があった場合等においても的確に対応するものである。
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