QUESTIONS質問主意書

第180回国会 「八ツ場ダムが利根川の水位を低下させる効果に関する質問主意書」(2012年9月7日)

質問主意書

質問第二六〇号

八ツ場ダムが利根川の水位を低下させる効果に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年九月七日

福島 みずほ   

       参議院議長 平田 健二 殿

   八ツ場ダムが利根川の水位を低下させる効果に関する質問主意書

 八ツ場ダムの効果について様々な疑問が呈されてきた。とりわけ治水の効果については、河川管理者である国土交通省が説明責任を果たしていない。また、その上位計画である利根川水系河川整備計画は、一九九七年の河川法改正以来、二〇〇六年に一度策定作業が始まったものの、現在は中断している。十五年が経過してなお未策定のまま、一九九七年の改正河川法附則に設けられた経過措置によって旧法に基づき治水計画を進めてきたことは、河川管理者の怠慢に他ならない。

 国土交通省は旧自民党政権下と同様、八ツ場ダムの事業継続を求めているが、現政権下では、二〇一一年十二月二十二日に行われた藤村修官房長官の裁定により、その本体着工の要件として「現在作業中の利根川水系に関わる『河川整備計画』を早急に策定し、これに基づき基準点(八斗島)における『河川整備計画相当目標量』を検証する」ことが求められている。これは防災に関わることであり、一九九七年の改正河川法が要請する関係住民の意見の反映が行われるためには、これまでに呈されてきた疑問について、関係住民に対して、分かりやすく説明される必要がある。

 よって、以下、政府の見解等を質問する。

一 衆議院予算委員会での議論について

 二〇〇九年二月十九日、衆議院予算委員会第八分科会において、永岡桂子議員は「国民の不安を解消するべく、利根川の治水対策には万全を期すべき」と指摘した。それに対して、当時の甲村謙友国土交通省河川局長(現独立行政法人水資源機構理事長)は、「国土交通省といたしまして、現在建設中の八ツ場ダムを初め、上流ダム群の洪水調節により洪水時の水位を低下させるとともに、左岸、右岸ともに堤防を拡幅いたしまして、切れにくい堤防を現在つくっているところでございます」と答弁している。

1 国土交通省は、本答弁当時、具体的にどのような条件の下で、どの程度の「水位の低下」が起きるかについて、具体的な数値を把握していたか。また、その内容は国土交通省内で共有されていたか。

2 具体的な数値が国土交通省内で共有されていたとすれば、それはどのような根拠に基づくものか、その詳細を示されたい。

二 今後の治水対策のあり方に関する有識者会議での議論について

 二〇一一年十二月一日、国土交通省は、八ツ場ダムの検討結果を検証する「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」を開いた。この会議における委員の質問に対し、利根川が江戸川と利根川に分岐する、いわゆる「江戸川の分岐点」よりも上流で水位を下げる効果について、「河床の形状によってもそれぞれ水面形が変わってきますから一律に何センチということはありませんが、大体の幅で申し上げると一番小さいところで三十二センチから三十三センチ、一番大きいところで六十五センチぐらいの水位低下量がある」と答弁している。

 この答弁を受けて、塩川鉄也衆議院議員が「八ツ場ダムの検証における治水に関する質問主意書」の中で、江戸川の分岐点よりも下流において水位を下げる効果について尋ねたところ、これに対する答弁書では「利根川本川の江戸川分派地点より下流の部分及び一級河川利根川水系江戸川については、算出していない」としている。

1 利根川本川の江戸川分派地点より下流の部分及び一級河川利根川水系江戸川について、江戸川分岐点よりも下流における水位を下げる効果について、算出の上、明らかにされたい。

2 前記1を算出できないのであれば、その理由を示されたい。

三 衆議院国土交通委員会参考人質疑における水源開発問題全国連絡会・嶋津暉之共同代表の議論について

 二〇一〇年三月十六日の衆議院国土交通委員会で、八ツ場ダム問題に関する参考人質疑が行われた。その際、水源開発問題全国連絡会の嶋津氏が「最近五十年間で最大の洪水(中略)があるのか、利根川に対してどれくらい効果を発揮するのかということを国交省の開示資料に基づいて計算をしてみました。その結果、八斗島、これは群馬県の伊勢崎市、ここが利根川の治水基準点ですけれども、そこでの効果は、最大で見て十三センチメートルの水位低下であります。これが大きいか小さいかということですけれども、このときの最高水位は、堤防の一番てっぺんから四メーター以上下を流れておりました」と指摘している。

 国土交通省は、嶋津氏の計算を否定する根拠があるか。あるのであれば、その根拠の詳細を示されたい。

四 衆議院国土交通委員会参考人質疑における虫明功臣法政大学客員教授の議論について

 前記三と同じく二〇一〇年三月十六日の国土交通委員会の参考人質疑において、虫明功臣法政大学客員教授は「ダムは、全川にわたって水位を下げるということが非常に重要な役割を持っている」、「八ツ場ダムの流域に大きな洪水があれば、数十センチ、三十センチから四十センチの水位を下げることができます。」と指摘している。

1 国土交通省は、虫明功臣教授が指摘する計算は、利根川のどの地点のことを指していると考えるか。

2 国土交通省は、虫明功臣教授の指摘する計算が、どのような条件のもとで算出されたものと考えるか。

3 虫明功臣教授の指摘する計算では、「全川」にわたって三十センチから四十センチの水位を下げるかのような印象を与えるが、ある地点で「三十センチから四十センチ」の効果があっても、より下流に行けば行くほど水位を下げる効果は減じると考えられるが、いかがか。

五 参議院国土交通委員会での議論について

 二〇一〇年四月十三日の参議院国土交通委員会で、山内俊夫議員が「都市部の、首都圏の外郭放水路、これ大臣行かれましたか。行っていないですね。これ、是非見ていただきたい。これは江戸川区、そして埼玉、千葉、この一帯の人たちの財産を守っている、この水位調節が大変なやはり財産を助けています、命も助けています。この辺りを御覧になって、現場へ入っていただければ、多分八ツ場ダムの効能、ここらも分かってくると思うんですね」と述べている。

 江戸川区と千葉県の区間において、八ツ場ダムがあることによって最大何センチメートルの水位を下げる効果があるかを示す、具体的な計算結果はあるか。あるのであれば、その詳細を示されたい。

六 群馬県議会における土屋信行江戸川区土木部長(当時)の議論について

 二〇〇九年十二月十一日、群馬県議会において、土屋信行江戸川区土木部長(現公益財団法人えどがわ環境財団理事)が意見聴取を受けた。この中で、土屋氏は、「治水面からみた八ツ場ダムについて」と題して、「八ツ場ダムでは二千四百立法メートルの水をもつ」と述べている。

1 国土交通省は、土屋氏が言う「八ツ場ダムでは二千四百立法メートルの水をもつ」とは、一年間を通して、どのような条件の下で可能になると考えるか。

2 土屋氏は、本意見聴取において、「八斗島から下でダムの無い分を河道で全て流そうとすると、引き堤の用地買収、そして家屋補償等ありますので、利根川本川で一兆三千億円。江戸川では七千五百億円。あわせて二兆五百億円が必要です。ダム一箇所で守ればポイントで守れるんです」と述べている。「ダムの無い分を河道で全て流す」とは、引き堤により水位を下げることを指すとの印象を受けるが、国土交通省は、この計算を裏付ける根拠や資料について、江戸川区から提供されたことがあるか。

3 国土交通省は、土屋氏の主張の根拠となる資料を所有しているか。

4 土屋氏は、「ダム一箇所で守ればポイントで守れるんです」と述べたが、国土交通省は江戸川区に対して、八ツ場ダムが江戸川区において水位を具体的に何センチメートル下げる効果をもつと説明したことがあるか。あるならば、その内容を具体的に示されたい。

七 群馬県議会における宮村忠関東学院大学工学部教授(当時)の議論について

 宮村忠関東学院大学工学部教授(当時)は、群馬県議会での意見聴取の際に、昭和二十二年のカスリーン台風について言及し、「利根川は、もちろん洪水の流れで非常に多くの流木が流れたそうです。これが橋に引っかかると、水位が一メートルから二メートル位すぐに上がってしまいます。これが原因ではないかという説もある。これは分からないですよ。利根川の堤防が切れたことの理由は。だけど、他で、至る所で、橋に引っかかった。橋が流れてくれれば助かった、ということなんです。」と述べている。

1 国土交通省は、宮村教授が指摘する、カスリーン台風で堤防が切れた原因が流木が橋に引っかかったことにあるという説を検証したことがあるか。あるとすれば、どのように検証し、どのような結論を得たのか、その詳細を示されたい。

2 前記1で指摘した検証を行っていないならば、なぜ検証しないのか、その理由を示されたい。

3 八ツ場ダム計画が誕生して、約半世紀が経つ。この間、流木が橋に引っかかったことが破堤の原因であった可能性を国民に説明したことがあるか。

4 八ツ場ダムの効果について尋ねられた宮村教授は、「少しでも水位が下がることは、ものすごいよいことです。これが四センチメートルだろうが、五センチメートルだろうが、十センチメートルだろうが、下がるということが、どのくらい水防活動で有利になるか。そこの評価が非常に低いのです。」と述べている。国土交通省は、宮村教授と同じように、水位が下がることは、それが何センチメートルであっても重要だと考えているのか。

5 前記4について、国土交通省は、水位が下がることは、たとえ何センチメートルでも重要だと考えているならば、その考えを流域住民や水防活動を行っている人々に説明したことがあるか。

6 前記5について、説明したことがないとすればなぜか、その理由を示されたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第二六〇号

内閣参質一八〇第二六〇号

  平成二十四年九月十八日

内閣総理大臣 野田 佳彦   

       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員福島みずほ君提出八ツ場ダムが利根川の水位を低下させる効果に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出八ツ場ダムが利根川の水位を低下させる効果に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の平成二十一年二月十九日の衆議院予算委員会第八分科会における永岡桂子衆議院議員に対する国土交通省河川局長(当時)の「水位を低下させる」旨の答弁は、同議員の「利根川の治水対策には万全を期すべきと考えますが、国土交通省のお考えをお聞かせ願えればと思います。」との一般的な御質問に対し、一般論として、一級河川利根川水系の治水対策についての当時の考えをお答えしたものである。

二について

 衆議院議員塩川鉄也君提出八ッ場ダムの検証における治水に関する質問に対する答弁書(平成二十四年四月六日内閣衆質一八〇第一六〇号)七についてで「算出していないことからお答えすることは困難である。」と述べた八ッ場ダムの洪水調節による一級河川利根川水系「利根川本川の江戸川分派地点より下流の部分及び一級河川利根川水系江戸川」の「水位低下量」については、その計算に係る作業等に時間を要するため、お答えすることは困難である。

三について

 御指摘の「嶋津氏の計算」については、その算出方法等の具体的内容について承知していないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

四について

 御指摘の「虫明功臣教授が指摘する計算」については、その算出方法等の具体的内容について承知していないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

 なお、一般的に、ダム地点からの距離が長くなるに従って、洪水時のピーク流量の低減効果が徐々に小さくなるとされているが、水位の低下量については、河道の形状等による影響も考慮する必要があるため、「より下流に行けば行くほど水位を下げる効果は減じる」とは一概に言えないものと考える。

五について

 お尋ねの「具体的な計算結果」の意味するところが必ずしも明らかではないが、八ッ場ダムの洪水調節による一級河川利根川水系利根川本川の江戸川分派地点より下流の部分及び一級河川利根川水系江戸川における水位低下量について、国土交通省として算出した結果を示す資料は、現時点において確認されていない。

六の1について

 御指摘の「八ツ場ダムでは二千四百立法メートルの水をもつ」の意味するところが必ずしも明らかでないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

六の2について

 国土交通省が現時点で把握している限りにおいては、御指摘の東京都江戸川区土木部長(当時)の陳述に係る計算を裏付ける根拠や資料について、同省が同区から提供された事実はない。

六の3について

 御指摘の「主張の根拠となる資料」が何を指すのか必ずしも明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

六の4について

 国土交通省が現時点で把握している限りにおいては、一級河川利根川水系江戸川の東京都江戸川区の区間における八ッ場ダムの洪水調節による水位低下量について、同省職員が同区に対して説明した事実はない。

七の1から3までについて

 御指摘の「検証」の意味するところが必ずしも明らかではないが、昭和二十三年一月に建設院関東地方建設局(当時)が取りまとめた「カスリーン洪水(昭和二十二年九月)と利根川本川東村堤防決潰について」においては、利根川の堤防決壊について、「合流点における水位の異常なる上昇に加えて更に栗橋における国道四号線の橋梁およびこれに平行する東北本線鉄道橋ならびにその二・二キロメートル上流にある東武線橋梁の三橋がいずれも桁を洗いこれらが多少堰上げたことも手伝って決潰地点附近の水位は堤防高を超え、おおよそ延長千三百メートルにわたって溢流をはじめ最大水深は〇・五メートルに達したと推定せられている。かくして溢流した水は除々に堤防の裏小段を崩壊し、次第にこれが拡大しついに幅二百~三百五十メートルにおよぶ大決潰口を生ずるにいたったのである。」と記録されている。

七の4から6までについて

 御指摘の「宮村教授と同じように、水位が下がることは、それが何センチメートルであっても重要だと考えている」の意味するところが必ずしも明らかではないが、洪水時の河川の水位を下げて洪水を安全に流すことが治水の原則であると考えており、この原則について、様々な機会を通じて周知してきたところである。

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