QUESTIONS質問主意書

第180回国会 「戸籍の続き柄における差別記載に関する質問主意書」(2012年9月3日)

質問主意書

質問第二四三号

戸籍の続き柄における差別記載に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年九月三日

福島 みずほ   

       参議院議長 平田 健二 殿

   戸籍の続き柄における差別記載に関する質問主意書

 二〇〇四年の東京地方裁判所判決を受けて、法務省は戸籍法施行規則を改正し、同年十一月以降の出生届出から、婚外子の戸籍における父母との続き柄は、「女」、「男」から、「長女」、「長男」、「二女」、「二男」等に変更された。しかしながら、既に戸籍に記載されている婚外子の続き柄については、職権による訂正を行わなかったために、今なお差別記載のままになっており、プライバシーの侵害が続いている。

 現行では、本人や母からの申出によって訂正することはできるが、訂正についての十分な広報が行われていない。そのため二百万人から二百五十万人はいるであろうと推察される婚外子の戸籍続き柄の差別記載は、制度改正以降二〇一一年三月までに、わずか二万五千五百七十件しか更正申出がなされておらず、さらに、続き柄変更の痕跡をなくすために行う再製申出に至っては、四千二百四十五件という惨憺たる件数にとどまっている。

 また、戸籍続き柄裁判等においては、婚外子に対して、今なお看過しがたい結婚、就職等の社会的差別が行われていると指摘されている。政府は、このような社会的差別をなくすために様々な人権啓発を行っていくべきであるが、これまでの取組では、それが行われてきていないことも指摘せざるをえない。

 よって、以下、政府の見解を質問する。

一 新たな婚外子続き柄の差別記載について

1 法務省は、二〇〇四年の東京地方裁判所判決を受け、戸籍法施行規則を改正し、同年十一月以降の出生届出からは、戸籍の父母との続き柄は、「長女」、「長男」、「二女」、「二男」等という表記となった。これは一見、婚内子と同じ表記方法に見えるが、実際には、婚外子と婚内子は今なお区別して取り扱われている。これまでは、婚外子、婚内子ともに戸籍法どおり「実父母との続き柄」であったが、制度改正以降は、婚内子についてはこれまでどおり父母との続き柄が表記されるのに対して、婚外子は戸籍法に反して母との続き柄が表記される。その結果、父母との続き柄表記に新たな区別が導入されたのである。婚外子へのこのような区別は戸籍法に反すると考えるが、いかがか。

2 婚外子と婚内子を区別するような新たな表記方法は、政府による戸籍の続き柄記載に関する新たな差別の原因となると考えるが、いかがか。

3 戸籍法施行規則の改正の結果、例えば、婚外子で一女を出産・認知し、同じ父母がその後婚姻した場合、続き柄に「長女」とあるのを抹消線で消し、改めて「長女」と書き直すことになる。これは、政府が婚姻準正によって婚外子から婚内子に変わったことを、あくまでも続き柄に明記せんがためと考えるが、いかがか。

二 戸籍の続き柄変更について

1 戸籍の続き柄の差別記載をされている婚外子は二百万人から二百五十万人はいると推定されるが、戸籍法施行規則の改正以降、二〇一一年三月までの間に、わずか二万五千五百七十件しか更正申出がなされていない。法務省は、このように変更が進んでいない理由は何だと考えるのか。

2 かつて住民票の婚外子続き柄の差別記載を撤廃する際には、全国で一斉に職権で変更された。ところが、戸籍については、本人もしくは母からの申出によってのみ訂正する方法としている。戸籍における婚外子続き柄の差別記載を続けてきたのは政府の責任であるのだから、政府の責任で全国一斉に対象となる戸籍の続き柄を職権で変更すべきと考えるが、いかがか。

三 更正申出・再製申出の一体化について

1 法務省は、続き柄訂正の申出について、変更の履歴が残る「更正申出」と変更履歴の痕跡を消して戸籍を作り直す「再製申出」の二つの方法に分離した。この二つの方法の違いについて法務省の広報が十分ではなく、市民にとっては続き柄の訂正方法が二つあるとは想像もつかないため、更正申出をしさえすれば差別の痕跡を消せるものと思っている。よって、市民は、再製申出をしなければ、差別記載の痕跡が残り、更正申出以前より婚外子だということがより明確になってしまうとは全く認識していない。だからこそ、制度改正から二〇一一年三月までの期間で実施された更正申出件数が二万五千五百七十件であるのに対し、再製申出件数はごくわずかの四千二百四十五件にとどまっているのである。その差、二万一千件については、更正申出以前より戸籍の続き柄の差別記載がより一層明確となってしまっている。法務省は、戸籍続き柄表記の変更方法について、更正申出と再製申出という二つの方法を一体化し、一度の申出で更正と再製が同時に実施されるようにすべきと考えるが、いかがか。

2 法務省の説明によると、更正申出と再製申出を分けたのは、再製申出をしたくない人もいるからとのことだった。しかし、更正申出と再製申出を一体化させた上で、再製申出をしたくない場合には、その旨をその他欄等に記載すればよいと考えるが、いかがか。

3 準正となって続き柄が変更された場合にも、再製申出ができるようにすべきと考えるが、いかがか。できないというのであれば、その理由を示されたい。

四 戸籍の続き柄の記載方法について

1 そもそも、戸籍の続き柄とは、戦前において家督相続の順位を確定するためのものであった。戦後、そのような家督相続の制度は廃止されたのであるから、兄弟姉妹の間の序列は意味がなく、不要である。

 父母欄に父母の氏名が記載されているのであるから、その父母の子どもであることは明らかである。よって、続き柄を表示することに意味はない。続き柄欄を撤廃すべきと考えるが、いかがか。

2 現行の戸籍では、続き柄が性別の記載を兼ねている。よって、戸籍法を改正し、続き柄欄をなくし、性別欄を設けるべきと考えるが、いかがか。

3 戸籍法改正までは、まず現状のような婚外子と婚内子との区別をやめた上で、婚外子の続き柄であり続けている「女」・「男」のみの記載で足りると考えるが、いかがか。

五 婚外子差別をなくすための人権啓発の実施状況について

1 法務省人権擁護局は、婚外子に対する就職や結婚等の差別について、これまでどのような人権啓発活動を行っているか。その実施時期と内容を明らかにされたい。

2 法務省と全国人権擁護委員連合会は、世界人権宣言の採択を記念して、毎年十二月に人権週間を行っている。この人権週間において、これまで婚外子差別を取り上げたことがあるか。あれば、その実施年とその内容について明らかにされたい。

3 国は「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画とその後継計画における国の人権教育及び人権啓発施策において、婚外子に対する社会的差別を個別の人権課題として取り上げたことがあるか。あるのであれば、その実施年と内容について明らかにされたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第二四三号

内閣参質一八〇第二四三号

  平成二十四年九月十一日

内閣総理大臣 野田 佳彦   

       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員福島みずほ君提出戸籍の続き柄における差別記載に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出戸籍の続き柄における差別記載に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、民法(明治二十九年法律第八十九号)及び戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の規定によれば、嫡出子は父母の氏を称して父母の戸籍に入り、嫡出でない子は母の氏を称して母の戸籍に入ることから、嫡出でない子の続柄については、母を基準として、長男、長女、二男、二女等と記載することとしたものであり、このような取扱いは、戸籍法に反するものではなく、また、合理的なものであると考える。

一の3について

 戸籍は、法律上の親族関係を正確に登録・公証することを目的としていることから、準正による法律上の効果が生じたことを戸籍に反映する必要があるため、御指摘のような取扱いをしているものである。

二の1について

 御指摘の「更正」の申出をするか否かは、母又は子の判断によるものであり、更正の申出がされていない理由については、事案ごとに異なるものと思われるため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

二の2について

 御指摘の「戸籍における婚外子続き柄の差別記載」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘のように職権により全国の市区町村において一斉に戸籍の続柄の記載を改めることとする場合には、市区町村の戸籍事務担当者において、戸籍に記載されている者全てについて、嫡出子であるか嫡出でない子であるかを確認するとともに、嫡出でない子の続柄を逐一認定して続柄の記載を改めることが必要となるが、このような作業を行うことは著しく困難であるため、お尋ねのように「戸籍の続き柄を職権で変更」することは考えていない。

三の1及び2について

 更正は後発的原因により戸籍の記載が事実に反するに至った場合等にこれを改めるものであり、再製は戸籍をそのままにしておくことが相当でない場合等に再度編製するものであって、それぞれの手続の趣旨が異なるところ、御指摘の「更正」の申出に加えて御指摘の「再製」の申出をもするか否かは、申出人各自の判断によるべきものであるから、これらの申出を御指摘のように「一体化」することは相当でないと考える。

 なお、戸籍の続柄を御指摘のように「更正」する場合に、更正の申出をする方法とこれに加えて再製の申出をもする方法の二つの方法があることについては、法務省ホームページ等を通じて広報しているところである。

三の3について

 お尋ねの「準正となって続き柄が変更された場合」については、一の3についてで述べた戸籍の公証機能に鑑みれば、戸籍をそのままにしておくことが相当でない場合等に当たるとはいえず、戸籍法が定める再製に係る規定を適用し、又は準用することはできないため、再製の申出をすることはできないと考える。

四について

 戸籍における子の続柄の記載方法は、現在の取扱いが社会における国民の意識を反映して定着しているものと認識しており、お尋ねのような取扱いをすることは考えていない。

五の1及び2について

 法務省の人権擁護機関は、これまでも、あらゆる差別は許されないとの観点から、人権週間(毎年十二月四日から同月十日までの一週間)のみならず、年間を通じて、積極的に人権啓発活動を行ってきたところであり、今後とも、国民の間に人権尊重の理念を普及させるとともに、それに対する国民の理解を深めることに資するよう、人権啓発活動の一層の推進を図っていくこととしているが、お尋ねの「婚外子に対する就職や結婚等の差別」及び「婚外子差別」について個別に取り上げた人権啓発活動は実施していない。

五の3について

 御指摘の「その後継計画」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成七年から平成十六年までにかけて実施された御指摘の「「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画」や、「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成十四年三月十五日閣議決定)において、お尋ねの「婚外子に対する社会的差別」は「個別の人権課題」として明示的には取り上げていない。

 なお、平成十六年に第五十九回国際連合総会において採択された「人権教育のための世界計画」においても「婚外子に対する社会的差別」は「個別の人権課題」として明示的に取り上げられてはいない。

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