QUESTIONS質問主意書

第183回国会 「原子力損害の賠償に関する法律の改正に関する質問主意書」(2013年6月21日)

質問主意書

質問第一三一号

原子力損害の賠償に関する法律の改正に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年六月二十一日

福島 みずほ   

       参議院議長 平田 健二 殿

   原子力損害の賠償に関する法律の改正に関する質問主意書

 原子力損害賠償支援機構法(以下「機構法」という。)が成立した際、その附帯決議及び附則において、原子力損害の賠償に関する法律(以下「原賠法」という。)を改正すること、東京電力の株主その他の利害関係者の負担の在り方等を含め国民負担を最小化する観点から必要な措置を講じること、などが求められていた。

 原賠法は原子力の巨大なリスクと賠償責任について定めており、原子力と社会との接点を規定していると同時に原子力政策の根幹にかかわる法律である。原賠法改正の検討が始まっているとの報道があるが、その方向性及び要点について以下質問する。

一 東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)の最大の教訓の一つは、たった一度の原子力事故が、長期にわたるおびただしい被害を生み、住民に計り知れない苦難を強いてしまうことである。国はこのことを重く受け止め、再発の防止とともに、原賠法の見直しに活かさなければならない。

 原賠法成立時の昭和三十六年には事故も被害者も仮想であったが、現実に多くの被害者が苦しみ、国民の少なくとも過半数が原子力発電を否定している今日、原賠法の見直しにおいて、法の目的は「被害者の保護及び救済を最優先と位置付けること」及び「事故の再発防止」とし、現在の二つ目の目的である「原子力事業の健全な発達」(第一条)は、事故が収束し事故の責任が全て果たされるまで保留とすることが倫理的判断と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 原賠法の運用上、地震リスクは、原子力損害賠償責任保険ではカバーされておらず、原子力損害賠償補償契約でカバーしている。しかし、原発事故の場合、原子力損害賠償責任保険の保険料が三億円余りであったにもかかわらず、地震リスクまでカバーしていた政府補償の原子力損害賠償補償契約の補償料は三千六百万円にすぎなかった。これは言い換えれば、民間保険の負わない地震リスクを、その約十分の一の掛け金で代わりに国(国民、税金)が負っているということであり、著しい不公平がある。

 昨年、補償料率改定が行われてはいるが、それでも地震リスクを負わない民間保険(原子力保険)と比較して明らかに少ない。その根拠は何か。改善の予定はあるか。

三 原発事故の賠償額は、既に三兆円を超え、試算によれば二十兆円を超えるとされている。社債のように債権者が優先されるものと違い、賠償保険金は被害者が優先して受け取れるものであるから、この金額は賠償の全てを担保できるよう手厚く用意されていなければならない。

 しかし、実際、原子力損害賠償責任保険の保険金は千二百億円にすぎず、現在、国民の税金がつぎ込まれている。国民負担最小化と、リスクコストの内部化、汚染者負担の観点から、保険金額の早急な改定(値上げ)が迫られている状況であり、たとえば、原発事故の被害・賠償額を鑑み、過酷事故の被害を補償できる規模にする、または、関連事業者の出資による損害賠償基金の設立などが考えられるが、政府では、どのような対策や制度の変更を検討しているのか示されたい。また、検討していない場合、その理由を示されたい。

四 製造物責任法は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めている。しかし、原子炉は、製造物責任法の対象外となっている。このため、たとえ原子炉その他の機器に欠陥があっても、製造者責任は問われない。なぜ、原子炉だけ対象外としたのか。その理由を示されたい。また、原子力事業で生じるリスクや責任を事業主体や原子力産業が負わないですむ構造こそ、事業者の責任意識やリスク対策の不十分な状況を生み、ひいては安全性を損ない、事故の潜在的原因となってきた。よって、事故再発防止のためには原子炉等の製造業者等にも製造者責任を負わせる必要があるが、対策や制度の変更につき、政府の見解を示されたい。

五 機構法附則においては、東京電力が、「当該原子力事業者の株主その他の利害関係者に対し、必要な協力を求めなければならない」(附則第三条第二項)こと及び「国民負担を最小化する」(附則第六条第二項)ことが定められている。膨大な税金の投入がなされている一方、利害関係者の協力状況については全貌が明らかではない。東京電力は、どの利害関係者に対して具体的にどのような必要な協力をいつ要請したのか。政府はこの状況を把握しているのであれば、その内容を明らかにされたい。把握していない場合、把握する予定はあるか。予定がない場合、その理由を明らかにされたい。

六 現行の原賠法では「その損害が第三者の故意により生じたものであるときは、同条の規定により損害を賠償した原子力事業者は、その者に対して求償権を有する」(第五条第一項)となっている。つまり、第三者の過失の有無は問われていない。しかし、原子力事業のように巨大なリスクのある事業において、第三者の過失を除外することは注意義務の軽視を招きかねず、この注意義務違反が重大な事故につながる恐れもある。よって、事故防止の観点からも、また、責任負担の観点からも、第三者に過失がある場合も求償権を認めるべきと考えるが、いかがか。

 また、第五条第二項では「前項の規定は、求償権に関し特約をすることを妨げない」とある。政府は、東京電力が、求償権に関し、第三者と特約を結んでいるか把握しているか。把握していない場合には、把握し明らかにされたい。

七 機構法附則第六条第一項に「原子力損害の賠償に係る紛争を迅速かつ適切に解決するための組織の整備について検討を加え、これらの結果に基づき、賠償法の改正等の抜本的な見直しをはじめとする必要な措置を講ずるものとする」とある。政府はどのような検討を行ったのか。また、その検討に基づき、必要な措置とはどのような措置と考えているか。原賠法の改正は、どのような段階にあるのか。

 また、同条第二項で「賠償の実施の状況、経済金融情勢等を踏まえ、(略)原子力事業者と政府及び他の原子力事業者との間の負担の在り方、(略)株主その他の利害関係者の負担の在り方等を含め、国民負担を最小化する観点から、この法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする」となっている。

 下村博文文科大臣は、二〇一三年三月二十九日の参議院予算委員会において、「原子力損害賠償制度を考える上で大前提となる電力システム改革を始めとした今後の原子力事業体制についての検討等を踏まえる必要があることと、当面、被害者への賠償支払が継続する見込みであり、損害賠償の全体像がいまだ明確になっていない状況にあるということから、当分の間は現行の枠組みの中で被害者の方々に対する適切な賠償支払を着実に実施していくことを最優先したいと考えております。同時に、現在進行中の福島の賠償の実情を踏まえながら、現行制度や賠償実務上の課題の抽出を行い、原子力損害賠償制度の見直しに資する情報の収集、整理などを関係省庁と連携して引き続き行ってまいります」と答弁した。損害賠償の全体像の把握の方法として、除染を含む損害賠償額を推定することが考えられるが、これまでにどのような推定が行われているか。また、これまでに、見直しに関するどのような情報が収集され、どのような整理が行われ、どのような課題が抽出されたか。さらに、その作業に期限はあるのか、明らかにされたい。

八 現在、原子力損害賠償支援機構から東京電力への資金援助が行われており、同時に、原子力事業者は、負担金を納付している。援助金(資金交付と株式の引受け)と、原子力事業者の負担金は、最終的に同額となるのか。負担金の納付には、完納時期はあるか(いつまで続くのか)、明らかにされたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第一三一号

内閣参質一八三第一三一号

  平成二十五年七月二日

内閣総理大臣 安 倍 晋 三   

       参議院議長 平 田 健 二 殿

参議院議員福島みずほ君提出原子力損害の賠償に関する法律の改正に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出原子力損害の賠償に関する法律の改正に関する質問に対する答弁書

一、三、四の後段、六の前段及び七について

 原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号。以下「原賠法」という。)の目的並びに原子力損害の賠償に係る原子力事業者による措置の内容、原子炉の製造業者等の責任の在り方及び原子力事業者の第三者に対する求償権の在り方については、原子力損害の賠償に係る紛争を迅速かつ適切に解決するための組織の整備を含め原子力損害賠償支援機構法(平成二十三年法律第九十四号。以下「機構法」という。)附則第六条第一項において検討を加えることとされている事項に関する検討結果に基づき、同項において講ずるものとされている措置に関する議論の中で検討していくこととなるが、同項において検討を加えることとされている事項に関する検討は、我が国のエネルギー政策における原子力の位置付け等の検討状況や現在進行中の平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故(以下「平成二十三年原子力事故」という。)の賠償の実情等を踏まえながら、総合的に検討を進めることとしており、現在、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)による賠償の進捗状況を含め、必要な情報の収集、整理に当たっているところであるため、なお途上にある。

 政府としては、今後とも、平成二十三年原子力事故に係る原子力損害の賠償が適切かつ迅速に実施されることを最優先としつつ、できるだけ早期に同項において講ずるものとされている措置に関する議論の結論を得られるよう、必要な検討等を進めてまいりたい。

 お尋ねの「除染を含む損害賠償額を推定すること」については、政府が平成二十五年六月二十五日に機構法第四十六条に基づき変更の認定を行った東京電力の認定特別事業計画において、「除染作業やそれに伴う中間貯蔵施設等の建設等の作業は、国の予算措置に基づいて進められるが、現段階では、具体的な実施内容等を把握できる状況になく、国からの請求又は求償を踏まえるなど合理的な見積りが可能になった段階で見積もる予定である。」とされており、東京電力において、国からの請求又は求償を踏まえるなど合理的な見積りが可能になった段階で行われるものと承知している。

二について

 原子力損害賠償補償契約(以下「補償契約」という。)は、原子力損害賠償責任保険契約(以下「責任保険契約」という。)により填補されない地震又は噴火等により生じた原子力損害を原子力事業者が賠償することにより生ずる損失を填補するものである。補償契約と責任保険契約とでは、填補される損失の発生の見込み等、それぞれ補償料と保険料の算出の根拠が異なることから、補償料と保険料は、単純に比較できるものではないと考えている。いずれにしても、現在の補償料は適切な額であると考えているが、補償料の更なる見直しについては、必要に応じて適切に対応してまいりたい。

四の前段について

 原賠法においては、原子力損害の被害者が容易に賠償請求の相手方を特定できるようにし、被害者の救済を促進する等の観点から、原賠法第四条第一項の規定により、原賠法第三条の規定により原子力損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じないこととするとともに、原賠法第四条第三項の規定により、製造物責任法(平成六年法律第八十五号)の規定は、御指摘の「原子炉その他の機器」の欠陥による原子力損害を含め、原子炉の運転等により生じた原子力損害には適用しないこととしている。

五について

 東京電力は、平成二十三年原子力事故に係る原子力損害の迅速かつ適切な賠償の実施のため、平成二十三年十一月以来、機構法第四十五条の規定による認定特別事業計画を着実に履行してきているところである。東京電力は、当該認定特別事業計画に基づき、取引金融機関に対しては、貸付金について借換えによる与信を保つこと、被害者に対する賠償金の支払等のための短期の融資枠を設定すること等の要請を、株主に対しては、東京電力の財務基盤を強化するための原子力損害賠償支援機構(以下「機構」という。)による東京電力の株式の引受け等について株主総会において賛成するよう協力することや、国民負担の最小化の観点から、当面の間、無配当を継続することの要請を、それぞれ随時行っている。

六の後段について

 原賠法第五条第二項に規定する特約については、民間企業間の契約に係るものであり、政府としてお答えする立場にない。

八について

 平成二十三年原子力事故に係る原子力損害の迅速かつ適切な賠償の実施のため、機構は、機構法第四十五条の規定による認定特別事業計画に基づく東京電力に対する資金援助を行っている。このうち、東京電力の株式の引受けによるものについては、機構は、当該引受けの原資とした金融機関からの借入れを、機構法第三十八条第一項、第三十九条第一項及び第五十二条第一項の規定に基づき東京電力及びその他の原子力事業者が納付する負担金(以下「負担金」という。)によることなく、当該株式の売却等により弁済することが予定されている。他方で、機構法第四十九条の規定により国債の償還を受けて行っている資金交付については、機構は、機構法第五十九条第四項の規定により、国債の償還を受けた額の合計額を国庫に納付しなければならないとされており、機構による当該国庫納付は、負担金を原資として行われているが、負担金は、原子力損害賠償に必要な資金の交付その他の業務に要する費用に充てるものであるから、国債の償還を受けた額の合計額と納付される負担金の合計額とは一致するものではなく、また、お尋ねの「完納時期」は想定していないが、負担金のうち、機構法第五十二条第一項の規定により算定される追加的に負担させることが相当な額に係るものについては、機構法第五十九条第四項の規定により機構が国庫に納付した額の合計額が機構法第四十九条第二項の規定により国債の償還を受けた額の合計額に達していることなど、機構法第四十七条第一項各号に掲げる条件が全て満たされたことにより定められる同項の特別期間内にその全部又は一部が含まれる機構の事業年度のうち最終の事業年度が納付の終期となる。なお、平成二十三年原子力事故に係る原子力損害の迅速かつ適切な賠償の実施に当たり、東京電力に係る機構法第五十二条第一項の規定により算定される負担金の額は、現在までの間、零である。

MENU