QUESTIONS質問主意書

第184回国会 「集団的自衛権の行使に関する内閣法制局の見解についての質問主意書」(2013年8月6日)

質問主意書

質問第九号

集団的自衛権の行使に関する内閣法制局の見解についての質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年八月六日

福島 みずほ   

       参議院議長 山崎 正昭 殿

   集団的自衛権の行使に関する内閣法制局の見解についての質問主意書

 安倍総理が七月に東南アジア三か国を歴訪した際に、集団的自衛権の行使容認について言及し、理解を求めたとの報道がなされた。また、七月二十七日に行われた総理記者会見では、「国際社会全体の安全保障環境の変化を踏まえ、日本の安全を確保し、日米同盟そして地域の平和と安定に貢献していくとの観点から、防衛大綱の見直しを行い、「国家安全保障会議」の設置、集団的自衛権の行使に関する検討等を進めていく考えである。」とも発言している。

 これまで、集団的自衛権の行使に関しては、内閣法制局は憲法第九条の観点から許されないとの立場を堅持してきた。そこで、集団的自衛権の行使について、内閣法制局の見解と安倍総理が推し進める検討について、以下質問する。

一 二〇〇七年、当時の安倍総理の諮問を受けた政府の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更に関する報告書をまとめ、二〇〇八年に提出した。同報告書の二十二ページでは、自衛隊による「公海における米艦の防護」と「米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃」に関して、集団的自衛権の行使を提言している。政府の一つの懇談会にすぎない「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」による集団的自衛権に関する報告書の見解と、従来の内閣法制局によって積み重ねられてきた集団的自衛権に関する国会及び質問主意書での答弁に差異がある。集団的自衛権と憲法第九条との関係について、内閣法制局の見解を改めて明らかにされたい。また、内閣法制局の見解が政府の唯一の公式見解との理解でよいか。

二 前記一の報告書二十二ページでは、自衛隊による「公海における米艦の防護」と「米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃」に関して、いずれも集団的自衛権の行使を提言しているが、内閣法制局としては、右記二類型は集団的自衛権の行使に該当するとの見解か。該当するとの見解であれば、この二類型に関して、集団的自衛権の行使に当たり憲法違反となるため、容認できないとの見解で間違いないか。

三 前記二の「米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃」に関して、そもそも現在の日米の防衛能力において、弾道ミサイルを撃ち落とす技術は確立されているのか。その技術の精度、あるいは裏付けとなる実験結果などについて明示されたい。

四 前記一の報告書十八ページでは、憲法第九条に関して、「個別的自衛権しか認めていないというこれまでの政府の解釈は、(中略)激変した国際情勢及び我が国の国際的地位に照らせばもはや妥当しなくなってきている。」と指摘しているが、同指摘に関する内閣法制局の見解を明らかにされたい。

五 内閣法制局の集団的自衛権に関する見解は、二〇一三年五月十四日の参議院予算委員会で、私の質問に対して、山本庸幸内閣法制局長官がこれまでの答弁を踏襲した内容で答弁したが、改めて安倍政権の方針により検討を加え、集団的自衛権の定義変更や、憲法第九条の下に集団的自衛権の行使ができるように解釈を変更することが可能であるのか。可能であるならば、その手続や法的裏付けについて明示されたい。

六 内閣法制局の集団的自衛権に関するこれまでの見解は、将来とも不変のものなのか。変更をする場合、どのような理由、背景があれば見解が変更されることがあるのか。加えて、内閣法制局の見解を変更する場合、閣議決定が必要なのかなど、手続はどのようなものになるのか明示されたい。

七 過去において、内閣法制局の見解が変更された事案があれば、その代表的な事案を明らかにされたい。

八 戦後、長きにわたり自民党が政権を担ってきた間、歴代内閣は集団的自衛権の行使は認めてこなかった。これまで積み上げられてきた国会における政府との議論の前提を、解釈変更で容易に変更できるのであれば、議論の前提が崩れることになり、議会制民主主義と法治国家の根幹を揺るがすことになると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第九号

内閣参質一八四第九号

  平成二十五年八月十三日

内閣総理大臣 安倍 晋三   

       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員福島みずほ君提出集団的自衛権の行使に関する内閣法制局の見解についての質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出集団的自衛権の行使に関する内閣法制局の見解についての質問に対する答弁書

一、二及び四について

 現時点で、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈は従来どおりである。

 御指摘の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書において述べられている見解に対しては、内閣法制局として意見を述べる立場にない。

三について

 我が国が現在導入している弾道ミサイル防衛システムは、スタンダード・ミサイルSM―三搭載イージス艦とペトリオット・ミサイルPAC―三により、我が国に飛来する射程約千キロメートル級の弾道ミサイルに対処し得るよう設計されている。イージス艦による迎撃については、我が国の発射による迎撃試験において、四回中三回命中しているほか、米国の発射による迎撃試験において、二十四回中十九回命中しているものと承知している。ペトリオット・ミサイルPAC―三については、我が国の発射による迎撃試験において、二回中二回命中しているほか、平成十五年の米国等によるイラクに対する武力行使の際に現地に展開し、迎撃範囲内の全ての弾道ミサイルの迎撃に成功したとの発表が米国政府によりなされたと承知している。さらに、弾道ミサイル防衛システムについては、我が国としても独自に分析を行っており、これら過去の試験等の結果に鑑みれば、当該システムの技術的信頼性は高く、我が国の領域に飛来する弾道ミサイルの迎撃に成功する確率は相当に高いものと考えている。

 他方、米国などの我が国から遠距離にある地域へ向かうような弾道ミサイルは、高々度を高速度で飛翔するため、我が国が現在導入している弾道ミサイル防衛システムで、このような弾道ミサイルを迎撃することは技術的に極めて困難である。

五、六及び八について

 現時点で、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈は従来どおりであり、お尋ねについては、仮定の質問であることから、お答えすることは差し控えたい。

七について

 お尋ねの「内閣法制局の見解が変更された事案」の意味するところが必ずしも明らかでないが、政府として憲法第六十六条第二項に規定する「文民」と自衛官との関係に関する見解を改めたことがある。すなわち、同項は、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」と定めているが、ここにいう「文民」については、その言葉の意味からすれば「武人」に対する語であって、「国の武力組織に職業上の地位を有しない者」を指すものと解されるところ、自衛隊が警察予備隊の後身である保安隊を改めて設けられたものであり、それまで、警察予備隊及び保安隊は警察機能を担う組織であって国の武力組織には当たらず、その隊員は文民に当たると解してきていたこと、現行憲法の下において認められる自衛隊は旧陸海軍の組織とは性格を異にすることなどから、政府としては、当初は、自衛官は文民に当たると解していた。その後、自衛隊制度がある程度定着した状況の下で、憲法で認められる範囲内にあるものとはいえ、自衛隊も国の武力組織である以上、自衛官がその地位を有したままで国務大臣になるというのは、国政がいわゆる武断政治に陥ることを防ぐという憲法の精神からみて、好ましくないのではないかとの考え方に立って、昭和四十年に、自衛官は文民に当たらないという見解を政府として示したものである。

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