QUESTIONS質問主意書

第186回国会 「集団的自衛権並びに安保法制懇に関する質問主意書」(2014年5月1日) | 社民党 福島みずほ 参議院議員(比例区)

質問主意書

質問第八八号

集団的自衛権並びに安保法制懇に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年五月一日

福島 みずほ   

       参議院議長 山崎 正昭 殿

   集団的自衛権並びに安保法制懇に関する質問主意書

一 第一次の安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(以下「安保法制懇」という。)が二〇〇八年六月に取りまとめた「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書(以下「報告書」という。)は、「公海上において、我が国自衛隊の艦船が米軍の艦船と近くで行動している場合に、米軍の艦船が攻撃されても我が国自衛隊の艦船は何もできないという状況が生じてよいのか」としている。しかし、はたして逆に、米軍が自衛隊を防護する保証があるのか、政府の見解を明らかにされたい。

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(以下「安保条約」という。)に関しては、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」を対象としており、公海上の自衛隊に対して武力攻撃が行われた場合、安保条約「五条によって日米が共同して対処するということになりますと、防衛出動の下令の前提条件である七十六条の武力侵略の場合に限られる。したがって、(中略)日米の共同対処ということはあり得ない」(一九七五年十二月十六日の衆議院内閣委員会における丸山政府委員)との答弁がある。すなわち、「日本国の施政下にある領域」の外においては、米国は日本を防衛する機能も義務もないということでよいか。

二 米陸軍の「OPERATIONAL LAW HANDBOOK 2013」では米軍が集団的自衛権を行使し、及び多国籍軍を防護するには、そのための権限が付与されていなければならないとしている。また、米国統合参謀本部議長の文書「STANDING RULES OF ENGAGEMENTS/STANDING RULES FOR THE USE OF FORCE FOR U.S.FORCES(13 June 2005)」にも大統領または国防長官のみが集団的自衛権の行使を認めることができるとの記述がある。米軍であっても集団的自衛権の行使は、現場の判断だけではできない。つまり、現場の判断だけで、攻撃を受けた自衛隊の防護のために直ちに反撃することができないということでよいか。

三 報告書は「米艦が我が国に対するミサイル攻撃を警戒・監視する活動に従事している場合(略)で、米艦がミサイルの飛来する方向にレーダーを集中しているときは、自艦の防衛能力が下がるので、近くにいる自衛隊の艦艇及び航空機が米艦を防護する必要性が大きくなる」としている。政府の見解も同じであるのか、示されたい。

四 米国ミサイル防衛庁の二〇〇七年四月二十六日付けニュースリリースによれば、イージス艦ミサイル防衛巡洋艦レイク・エリーは、SM-3ブロックⅠAとSM-2ブロックⅢAによって模擬弾道ミサイルと模擬対空目標の同時迎撃に成功し、弾道ミサイルと対空目標を同時に処理する能力を有していることが明らかにされている。これは、ミサイルの飛来する方向にレーダーを集中しているときであっても、米国のイージス艦には自艦の防護・防衛能力があるということである。

 また、米艦は、攻撃してきた潜水艦をイージス艦搭載の自前のSH-60ヘリで捜索・攻撃することができ、自衛隊の助けは必須ではない。前記三における報告書の「自艦の防護能力が下がる」という根拠は何か。また、政府も報告書同様「自艦の防護能力が下がる」と考えているのか。

五 報告書は、「同盟国である米国が弾道ミサイルによって甚大な被害を被るようなことがあれば、我が国自身の防衛に深刻な影響を及ぼすことも間違いない。それにもかかわらず、技術的な問題は別として、仮に米国に向かうかもしれない弾道ミサイルをレーダーで捕捉した場合でも、我が国は迎撃できないという状況が生じてよいのか」としている。

 しかし、一方で政府は、ミサイル迎撃に関する技術的実現性について、「我が国のミサイル防衛システム、これは、あくまでも我が国の領域に飛来する弾道ミサイルに対処し得るように整備をしているものでございます。我が国の領域に飛来しない弾道ミサイルを迎撃することを想定して整備しているものではございません。我が国のミサイル防衛システム、これは基本的に、SM3搭載のイージス艦による上層防衛、宇宙空間における迎撃と、それから、拠点防衛のためのペトリオット、PAC3による下層防衛、この二層から成っております。これによりまして、我が国に飛来する、射程でいいますと、大体千キロから千三百キロ級の弾道ミサイルに対処し得るように整備をしてきているところでございます。したがいまして、御質問のような、アメリカの本土に飛んでいくような長距離の弾道ミサイルを迎撃するということにつきましては、これは、まさにそのようなミサイルでありますと、飛翔の経路、高度を考えましても、千キロなり千三百キロの射程のものと比べますと、極めてより高いところを飛びます、それから極めて速度も速くなります、このようなものと、今我が方が持っております迎撃ミサイルの能力というものを踏まえますと、そのようなものを撃ち落とすということにつきましては、技術的に極めて困難であると考えております。」(二〇一三年五月二十三日の衆議院安全保障委員会における徳地政府参考人)と答弁している。

 実現が不可能ないし極めて困難な事例を基にして集団的自衛権必要論の根拠としており、甚だ不適切と考えるが、いかがか。

六 駆け付け警護について、二〇〇七年一〇月五日の参議院本会議における私の代表質問に対して福田康夫総理は「イラク特措法に基づく人道復興支援活動を行う自衛隊の部隊には、いわゆる駆け付け警護、すなわち自衛隊部隊の活動している場所から遠く離れた場所にまで駆け付け、攻撃を受けている他国の軍隊等を救援するために武器を使用することは現行法上認められていない」と答弁した。この解釈は現在も維持されているということでよいか。

七 これまでの憲法解釈は、我が国の行う後方支援のように、それ自体が武力の行使でなくとも、他国の武力の行使と一体化する場合には、憲法第九条に反するとされてきたということでよいか。

八 イラク戦争において、日本の自衛隊は、米軍の兵士や弾薬を運んだ。この行為は、武力の行使と一体化したという場合に当たると考えるか、政府の見解を明らかにされたい。

九 報告書は、米軍に対する自衛隊の後方支援が米軍の武力の行使と一体化する場合には、当該後方支援は憲法上許されないという考え方を「論理的に突き詰める場合」、「極東有事の際に同条約第六条の下で米軍が我が国の基地を戦闘作戦行動に使用すれば、我が国による基地の提供とその使用許可は、米軍の「武力の行使と一体化」することになるので、安保条約そのものが違憲であるというような不合理な結果になりかねない」とする。しかし、政府は、米軍基地の使用形態として、「その基地から直接、戦闘作戦行動のために飛び立つということも予定しております(略)。このような形で使われる基地の提供と憲法との関係につきましては、たとえこれが米国の軍事行動への協力として行われましても、施設・区域の米軍による使用の応諾という行為にとどまりまして、私どもが常に問題にいたします一体化の問題が生じる活動の類型には該当せず、また、それは実力行使の概念、応諾するというのは実力行使の概念には当たらないと思いますから、我が国として武力の行使等をしているとの評価には当たらないのではないか」(一九九九年一月二十八日の衆議院予算委員会における大森政府委員)と答弁している。報告書の見解と政府見解は異なるということでよいか。

十 集団的自衛権の行使を、時の政府が、認めることができるとなれば、いくらでも恣意的に認められるのではないか、歯止めがかけられなくなると考えるが、いかがか。

十一 我が国の領海にある外国軍艦あるいは外国政府所属の非商業的目的のための船舶に対しては、国際法上、我が国の管轄権が及ばないという点について、二〇〇二年四月四日の衆議院安全保障委員会において柳澤政府参考人は、「退去を命じるという以上のことは国際法上、不可能」と答弁している。したがって、退去を「強制するために当該潜水艦に対して武器を使用することはできない」(二〇〇四年十一月十二日の衆議院外務委員会における伊藤政府参考人)とも答弁している。政府は、この解釈を維持するのか。すなわち、武力攻撃をしていない外国の潜水艦に対して我が国が武力攻撃をすることはできないということでよいか。

十二 一九六八年、北朝鮮巡視船が公海上において無抵抗の米海軍情報収集用補助艦プエブロ号に対し銃撃・拿捕を行ったが、これに対し、「仮にプエブロ号が領海で情報収集活動を行っていたとしても、軍艦は主権免除をもっており、拿捕が国際法上違反であることは明白」(坂本茂樹「排他的経済水域における軍事活動」栗林忠男・秋山廣編「海の国際秩序と海洋政策」東信堂、二〇〇六年)というのが主流的学説であるが、政府の解釈も同様か示されたい。

十三 自衛隊による在外邦人救出について、第二次安保法制懇は二月四日、当該外国政府が同意する場合に「今は輸送しかできないがそれで良いのか」(議事要旨三ページ)などと言及している。しかし、在外邦人救出のための武力の行使は自衛権発動の要件を欠いており、許されないと考えるが、いかがか。

十四 日本が、他国防衛のために武力行使をした場合、日本は戦争の当事国になるとの理解でよいか、政府の見解を明らかにされたい。

十五 第二次安保法制懇のメンバーの中には、集団的自衛権の行使は日本国憲法の下では容認できないという立場を取るメンバーが一人も入っていない。このようなメンバーだけで議論することは、公平か。総理の私的諮問について、このように偏ったメンバーによって議論された中味を基にして閣議決定を目指すことが妥当と考えるのか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第八八号

内閣参質一八六第八八号

  平成二十六年五月十三日

内閣総理大臣 安倍 晋三   

       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員福島みずほ君提出集団的自衛権並びに安保法制懇に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出集団的自衛権並びに安保法制懇に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、我が国及び米国は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)第五条に基づき、我が国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が発生した場合、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処することとなる。

二について

 お尋ねについては、政府としてお答えする立場にない。

三から五までについて

 御指摘の報告書は、平成十九年に開催された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」における有識者の意見を取りまとめたものであり、その記述の根拠等について、政府としてお答えする立場にない。

 米国艦艇の能力の詳細について、政府としてお答えすることは困難であるが、一般に、イージス・システムを搭載した艦艇が弾道ミサイルを追尾している場合には、弾道ミサイル以外の対艦ミサイルから自艦を防御するための能力が相対的に低下するものと承知している。

六について

 御指摘の答弁は、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(平成十五年法律第百三十七号。以下「イラク特措法」という。)の解釈を述べたものであるが、イラク特措法は既に失効している。

七、九、十及び十三について

 現時点で、憲法第九条に関する政府の解釈は従来どおりである。

 他方、集団的自衛権等の問題については、現在、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下「懇談会」という。)において、前回の報告書が出されて以降、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることを踏まえ、我が国の平和と安全を維持するためどのように考えるべきかについて検討が行われているところであり、政府としては、懇談会から報告書が提出された後に、対応を改めて検討していく考えである。

八について

 政府としては、自衛隊のイラクでの活動は、憲法の範囲内でイラク特措法に基づき適法に行われたものと認識している。

十一について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の答弁は、国際法上、一般に、軍艦及び非商業的目的のために運航するその他の政府船舶は、旗国以外の国の管轄権からの免除を有しているとの認識を踏まえたものであり、このような認識に変わりはない。

十二について

 お尋ねの事案の当事国ではない我が国としては、事実関係を十分把握することが困難なこともあり、お答えすることは差し控えたい。

十四について

 御指摘の「他国防衛のために武力行使をした場合」及び「戦争の当事国」の意味するところが必ずしも明らかではなく、お尋ねについてお答えすることは困難である。

十五について

 懇談会は、憲法と安全保障に関する法制度との関係について検討していただくため、それにふさわしい深い見識を有する者から構成しており、「偏ったメンバー」によって議論されているとの御指摘は当たらない。

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