QUESTIONS質問主意書
第187回国会 「川内原発火山審査に関する質問主意書」(2014年11月18日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)
質問主意書
質問第九二号
川内原発火山審査に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成二十六年十一月十八日
福島 みずほ
参議院議長 山崎 正昭 殿
川内原発火山審査に関する質問主意書
九州電力株式会社(以下「九電」という。)川内原子力発電所(以下「川内原発」という。)の火山影響に関する新規制基準適合性審査については、火山活動のモニタリングと巨大噴火の兆候を把握した場合の対処方針の具体的な内容等について、現在、原子力規制委員会において、保安規定変更申請(補正)及び工事計画認可申請(補正)の審査が行われている。また、日本火山学会原子力問題対応委員会は、平成二十六年十一月二日に「巨大噴火の予測と監視に関する提言」(以下「火山学会提言」という。)をまとめ、噴火の予知・予測が可能であることを前提とした火山影響評価ガイドについて、噴火予測の可能性、限界、曖昧さを考慮し、見直すよう要請した。原子力規制委員会は、原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム(以下「火山モニタリング検討チーム」という。)を設置し、平成二十六年八月二十五日に第一回会合、九月二日に第二回会合を開いた。会合に招へいされた火山の専門家は、川内原発の火山審査における、運用期間中の破局的噴火の可能性についての原子力規制委員会の判断内容に疑義があること、モニタリングにより噴火の予知・予測は可能であるとする九電の主張に根拠がないこと、マグマ供給の変化が地表のモニタリングでは把握できない可能性があり、地下のモニタリングが必要であること、カルデラ火山のモニタリングが事業者の手に負えるものではないこと、前兆が現れるのはせいぜい数ヶ月から数年前であり、核燃料搬出の時間的余裕をもって予測することは不可能であること等々の指摘を行った。川内原発の火山審査は、モニタリングの在り方、兆候の把握と核燃料搬出方針の具体的中身について、暗礁に乗り上げているといってもよい。原子力規制委員会は、改めて火山の専門家から意見を聴き、川内原発の火山審査を一旦止めた上で、火山影響評価ガイドの見直しに着手すべき状況にある。こうした状況を踏まえて、以下質問する。
一 川内原発の火山影響評価におけるドルイット論文(Druitt et al(2012))(以下「本件論文」という。)の知見は、九電による、①運用期間中にカルデラ噴火が発生する可能性が十分に小さい、②モニタリングにより巨大噴火の前兆を捉えることができ、その判断基準を定めることができる、③前兆は数十年前に現れるので核燃料の搬出には十分間に合う、との主張の根拠になっている。②、③については、本件論文が唯一の根拠となっている。
火山モニタリング検討チーム会合において、藤井敏嗣東大名誉教授は、「Druittのこの論文は、三千五百年前のサントリーニ火山のミノア噴火では準備過程の最終段階の百年間に数~十立方キロメートルのマグマ供給があったということを述べただけで、カルデラ一般について述べたものではない。これは本人にも確認をしましたけれども、これ、一般則を自分は述べたつもりはないというふうに言っています」、「Druittの論文というのは、これは一般化されたものではないので、姶良にそのまま使えない」などと指摘し、本件論文がカルデラ一般に適用するものではないことを論文の著者にも確認したことを明らかにした。本件論文の適用の仕方については、原子力規制委員会も、「審査書(案)に対する御意見への考え方」において、「一つの知見がすべての火山に適用可能とは考えていません。」と回答している。以上から、本件論文にある事例を、南九州のカルデラに、根拠もなしにそのまま用いることはできないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
二 運用期間中のカルデラ噴火の可能性について
1 運用期間中のカルデラ噴火の可能性は十分に小さいとの判断について、運用期間は何年と想定して判断したのか。
2 火山モニタリング検討チーム会合において、藤井敏嗣東大名誉教授が、カルデラ噴火の可能性について、原子力規制委員会の判断内容にいくつか疑義があるとしているが、意見を聴いて検討したのか。意見を聴いていない場合には、その予定はないのか示されたい。
3 神戸大学の巽好幸教授と鈴木桂子准教授が平成二十六年十月二十二日に「巨大カルデラ噴火のメカニズムとリスク」について発表し、この内容について、原子力規制委員会田中俊一委員長も、平成二十六年十一月五日の記者会見において言及している。理学研究科による研究成果の要旨には、「日本列島で今後百年間に巨大カルデラ噴火が起こる確率は約一パーセントです」とある。百年に一パーセントは一万炉年に一回であり、日本におけるカルデラ火山が九州に集中していることを考慮すると、決して小さい可能性とは言えない。この研究成果について、原子力規制委員会は検討したのか、示されたい。検討していない場合、検討する予定はあるのか、示されたい。
4 九電は、「阿多カルデラ以北、加久藤・小林カルデラ以南の鹿児島地溝帯において、約六十万年前以降に破局的噴火が複数回発生しており、その活動間隔は九万年の周期性を有している。」とし、これを、運用期間中のカルデラ噴火の可能性が十分に小さい根拠に用いている。しかし原子力規制委員会の審査書では、平均間隔九万年とあるだけで、周期性は認めていない。また原子力規制委員会の「審査書(案)に対する御意見への考え方」では、「個々のカルデラでは、必ずしも明確な周期性は確認されていません」としている。九万年というのは、三つのカルデラの噴火履歴をまとめて平均しただけのものであり、運用期間中のカルデラ噴火の生じる可能性が十分に小さい根拠にはならないと考えるが、いかがか。
三 火山影響評価ガイドについて
1 火山学会提言の中で、「巨大噴火については、国(全体)としての対策を講じる必要があるため、関係省庁を含めた協議の場が設けられるべきである。」、「噴火警報を有効に機能させるためには、噴火予測の可能性、限界、曖昧さの理解が不可欠である。火山影響評価ガイド等の規格・基準類においては、このような噴火予測の特性を十分に考慮し、慎重に検討すべきである」と指摘している。
原子力問題対応委員会委員長の石原和弘京大名誉教授は、記者会見において、これは火山影響評価ガイドの見直しを要請するものと説明し、さらに川内原発の火山審査について「疑問が残る」と言明し、「今後も噴火を予測できる前提で話が進むのは怖い話だ」とも述べている。
火山学会提言について、政府としてどのように受け止め、どのように対処するつもりか、明らかにされたい。直ちに火山の専門家からヒアリングを行い、火山影響評価ガイド見直しの作業にとりかかるべきだと考えるが、いかがか。
2 火山影響評価ガイドができる以前、内閣府が設置した広域的な火山防災対策に係る検討会が平成二十五年五月十六日にまとめた「大規模火山災害対策への提言」(以下「内閣府検討会提言」という。)は、「巨大噴火のメカニズム及び巨大噴火に対する国家存続の方策等の研究を行う体制の整備」の必要性を指摘していた。火山影響評価ガイドの策定に当たり、内閣府検討会提言は検討されたのか。また、原子力規制委員会は、内閣府検討会提言を改めて検討した上で、火山の専門家を交えて、火山影響評価ガイドの見直しを行うべきだと考えるが、いかがか。
四 巨大噴火の兆候と対処の判断基準について
九電は平成二十六年十月二十一日の新規制基準適合性審査会合において、火山活動のモニタリングに係る資料(「川内原子力発電所保安規定変更認可申請(補正)の概要について」十頁)を示した。そこには、マグマの供給速度が、現状の五倍以上になったら警戒レベルとし、詳細観測の実施と破局的噴火に至る可能性について評価を行う、噴火までは数十年の期間がある旨記載されている。九電は、この判断基準をモニタリングの対象としている五つのカルデラ全てに適用すると説明した。
これは、本件論文の事例をそのまま姶良カルデラにあてはめたものであるが、それで間違いないか。
1 火山検討チーム会合において、本件論文に基づき、「マグマ供給に相当する地殻の膨張や隆起が起きたとは述べていない」、「場合によっては地殻変動として現れないこともあり得る」(原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム第一回会合チーム員からの主な意見。以下「第一回会合チーム員からの主な意見」という。)との指摘があった。藤井敏嗣東大名誉教授は「マグマ供給に見合うだけの隆起が起こるとは限りません。特に地溝帯のようなところでマグマ供給があるときには、既に全体として広がるようなところ、むしろ沈降気味のところにマグマは陥入するわけですから、地表に隆起として、たとえマグマ貫入があったとしても、隆起として現れない可能性もあります。」と指摘している。九電は、地表面の変化を捉えるGNSSの変化を判断基準に用いており、その妥当性について検証が必要だと思われるが、いかがか。
2 火山検討チーム会合において、火山の専門家から、「モニタリングで異常が認められたとしても、バックグラウンドの情報が無いためゆらぎの範囲と判断してしまうおそれがある」(第一回会合チーム員からの主な意見)との指摘があった。姶良カルデラの場合、現状でマグマの供給速度が年〇・〇一立方キロメートルとされているが、これが、およそ百年周期で比較的小さい噴火とマグマの蓄積を繰り返す「ゆらぎ」であり、巨大噴火を準備するマグマの供給速度は年間〇・〇〇一六立方キロメートルであるとの研究結果があり、九電も平成二十六年五月十六日の新規制基準適合性審査会合の中で説明に用いている(川内原子力発電所カルデラを対象とした火山活動のモニタリングについて(コメント回答)(参考一)姶良カルデラのマグマ供給率に関する知見)。この場合、巨大噴火を準備するマグマの供給速度が五倍になったとしても、ゆらぎの範囲と判断してしまうことになる。九電の判断基準は実際には機能しないと考えるが、いかがか。
3 姶良カルデラ以外のカルデラについては、GPSによる変動が認められず、五倍の元となる供給速度や地殻変動も不明である。九電は、変動があればそれをベースにすると説明しているが、それでは、現状では巨大噴火を準備するマグマの供給は全くないことになる。この点について何か根拠は示されているのか。また、政府の見解を併せて明らかにされたい。
4 火山モニタリング検討チーム設置の趣旨については、「原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チームについて」(平成二十六年八月二十日原子力規制委員会)に、「原子力規制委員会としての対応に資する火山学上の知見や考え方を整理する」とある。しかし、火山モニタリング検討チーム会合では、川内原発の火山審査に直接関わる指摘が相次いだ。また、兆候把握と対処の判断基準について、原子力規制委員会としての判断基準が明らかでない状況で、九電の判断基準の妥当性について判断することは困難だと思われる。よって、火山モニタリング検討チームにおいて、川内原発の火山影響評価の一環として、噴火の兆候把握と対処の判断基準について検討すべきだと思われるが、いかがか。
五 カルデラ火山のモニタリングについて
1 火山検討チーム会合では、GPSやGNSSの限界が指摘され、地下のマグマ溜まりのモニタリングの必要性が強調された。他方で、マグマが「百立方キロメートルたまっているということをいまの時点で推定する手法というのは、ほとんどない」(藤井敏嗣東大名誉教授)、「実際マグマ溜まりがどの辺にあるのか(中略)いくつかの物理探査の方法を検討して、幾つかのカルデラについて(中略)調査しようとしております。(中略)準備段階ですけれども」(原子力規制庁安池専門職)といった指摘もなされており、まだまだこれからというのが実状である。マグマ溜まりのモニタリングを精度よく行うことができない現状では、川内原発の安全確保は図れないと考えるが、いかがか。
2 火山モニタリング検討チーム会合において、専門家は、カルデラ火山のモニタリングについては、地下のマグマ溜まりの直接のモニタリングの必要性を強調しながら、これは国を挙げて実施すべきものであり、一電力事業者に担えるものではないとの発言が相次いだ。内閣府検討会提言や火山学会提言にも同趣旨の文言がある。他方で九電は、モニタリングについては、既存のGPS、GNSS、地震観測データを収集し、時々チェックをすればよいという程度の対応を行う方針であり、大きなギャップが存在する。カルデラ火山のモニタリングの在り方については、専門家の意見を重視し、事業者による対応を前提とした体制を改めるべきだと考えるが、いかがか。
3 火山モニタリング検討チームにおいて、川内原発におけるモニタリング活動についても検討すべきだと思われるが、いかがか。その場合、結論が出るまでは、川内原発の火山に関する審査につき、結論を出すべきではないと考えるが、いかがか。
六 噴火の兆候把握時の核燃料搬出の方針について
1 核燃料の搬出にはどの程度の期間がかかると想定しているのか。また、その想定の根拠を示されたい。
2 噴火の兆候把握時の核燃料搬出計画について、九電が平成二十六年十月八日に提出した川内原発一・二号機保安規定変更認可申請の補正書添付資料には、「破局的噴火への発展の可能性がある場合」に計画を策定するとしており、別に「事前に検討しておく項目」があるが、搬出手段や搬出先、貯蔵方法などの具体的中身については、「破局的噴火への発展の可能性がある場合」に検討して決めるのか、それとも事前に決めておくのか、明らかにされたい。
3 搬出手段や搬出先、貯蔵方法などについては事前に決めておかなければ機能せず、火山影響評価ガイドの要求にも反すると思われるが、いかがか。
4 平成二十六年八月二十八日の事業者ヒアリングの議事概要に「原子炉停止計画及び燃料体等の搬出等のための計画は、あらかじめ作成する必要があることから、考え方を整理して提示するとともに、二次文書において記載する同計画に関する実現性の詳細な内容を説明すること。」とあるが、九電からどのような説明を受けたのか。二次文書(社内規定)にはどう記載され、それにどう対応したのか。
5 平成二十六年九月十一日の事業者ヒアリングの議事概要に「事前の検討作業も含めて燃料集合体の搬出に係る必要な業務を整理し提示すること。その際、対象火山に軽微な変化があった場合等の外部専門家による評価の実施等についても整理し提示すること。」とあるが、九電からどのような説明を受けたのか。二次文書(社内規定)にはどう記載され、それにどう対応したのか。
6 平成二十六年九月十一日の事業者ヒアリングの議事概要に「原子炉停止計画及び燃料集合体等の搬出等の計画について、作成を開始する時期を記載するのではなく、記載可能な項目については、あらかじめ計画として策定すること。」とあるが、九電からどのような説明を受けたのか。二次文書(社内規定)にはどう記載され、それにどう対応したのか。
7 火山モニタリング検討チーム第一回会合において、火山の専門家らは、「巨大噴火には何らかの前駆現象が数年前~数ヶ月前に発生する可能性が高い」、「現状のモニタリングで、巨大噴火の時期や規模を予知することは困難である」、「核燃料の搬出等に間に合うだけのリードタイム、数年とかの単位では明らかに大きな変動が出るとは限らない」(第一回会合チーム員からの主な意見)と指摘している。他方で、核燃料を移動するためには五年は冷却しなければならないと田中俊一原子力委員会委員長も平成二十六年十月一日の定例記者会見等で指摘している。巨大噴火の前駆現象を捉えたとしても、核燃料の搬出が噴火に間に合わない可能性が高いと考えられるが、いかがか。
8 九電は、前兆現象は数十年前に現れるので、核燃料の搬出には間に合うとの説明を、平成二十六年九月三十日の鹿児島県議会原子力安全対策等特別委員会の場で行っているが、政府の見解も同様か、示されたい。九電の説明内容が、現在の火山学上の知見やそれに基づく政府の見解と異なるのであれば、九電に対し、正しい説明を行うよう指導すべきと考えるが、いかがか。
9 本件論文で用いられた岩石調査について、九電が対象のカルデラで同様の調査を実施するとしたが、その後の経過を示されたい。この調査結果が出るまでは、審査の結論を出すべきではないと考えるが、いかがか。
10 「十一月五日(火)田中原子力規制委員長会見発言補足及び訂正資料」(以下「会見補足資料」という。)に、会見での「三カ月前と言うことが分かれば三カ月前にすぐ止めて、準備をして容器に少しずつ入れて、遠くに運ぶことができますよ。」との発言につき、「発言の趣旨は、仮に噴火までに三ヵ月しかないという時には、原子力発電所では、急いでいろいろな方法を考えていかなければならないという認識を示しています。」とあるが、結局三ヶ月で核燃料の搬出はできるということか、できないということか。
11 会見補足資料には、「放射能の漏洩に対処する方法については、遠くに運ぶということに限らず、様々な工夫ができると思っています。」とあるが、これは、核燃料搬出の方針を定めることを要求する火山影響評価ガイドの考え方に反すると思われるが、いかがか。
七 火山灰等の影響評価について
1 火山灰等の影響評価で用いる火山噴火について、九電は、「薩摩桜島噴火」(噴出量十一立方キロメートル)の規模による火山灰十五センチメートルを想定している。しかし、火山モニタリング検討チームにおいて、石原和弘京大名誉教授は、九電の見積りでも二十から五十立方キロのマグマが地下に溜まっていると指摘している。その場合、火山灰の厚さはさらに増すと考えられるが、いかがか。
2 静岡大学防災総合センターの小山真人教授は、姶良福山噴火や姶良岩戸噴火を想定すると、川内原発における火山灰は一から二メートルとなる可能性があると指摘している。安全側に立てばそのような想定が必要だと思われるが、いかがか。
3 政府も認めているように、巨大噴火の規模や時期を予測することは困難である。これは、噴火が始まった後も、いつ収束するのか、あるいは拡大するのかも分からないということである。そうであれば、薩摩桜島噴火のレベルであっても、いつこれが拡大し、火砕流が原子力発電所に届くかもしれないという状況に置かれることになる。この場合、作業員の避難はどうするのか、火山灰の除灰作業とどちらを優先するのかとの点について、どのような検討がされているのか、明らかにされたい。
八 保安規定変更申請の審査及び火山影響評価ガイドの見直しについて
1 噴火の兆候把握時の対処方針の具体的な中身がなぜ九電の社内規定に記載されるのか。原子炉施設の安全上重要な問題であり、保安規定に記載させるべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。
2 社内規定案については、全てを公開させ、その審議も全て公開させるべきと考えるが、いかがか。
3 火山学会提言を踏まえ、火山影響評価ガイドの見直しを優先して行うべきではないか。その変更内容は、バックフィットの対象とすべきであり、そのためにも川内原発の火山審査は一旦止め、火山影響評価ガイドの見直しと、それに基づく再審査を行わない限りは、再稼働の前提となる許可を下すべきではないと考えるが、いかがか。
4 保安規定変更申請や工事計画認可申請の審査についても、パブリックコメントや公聴会を開催すべきだと考えるが、実施する予定はあるのか示されたい。
右質問する。
答弁書
答弁書第九二号
内閣参質一八七第九二号
平成二十六年十一月二十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三
参議院議長 山崎 正昭 殿
参議院議員福島みずほ君提出川内原発火山審査に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員福島みずほ君提出川内原発火山審査に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の「審査書(案)に対する御意見への考え方」に記載されているとおり、「一つの知見がすべての火山に適用可能とは考えて」おらず、「様々な知見に基づいて総合的に評価していくことが重要と考えて」いる。
二の1について
原子力発電所の火山影響評価ガイド(平成二十五年六月十九日原子力規制委員会決定。以下「火山影響評価ガイド」という。)において、「原子力発電所の運用期間とは、原子力発電所に核燃料物質が存在する期間とする。」と定義されている。原子力発電所に核燃料物質が存在する期間については、核燃料物質を搬出する期間を一概に見積もることはできないため、九州電力株式会社川内原子力発電所(以下「川内原子力発電所」という。)の発電用原子炉の設置変更許可に係る申請(以下「設置変更許可申請」という。)に関する審査では具体的な数値を置いていないが、一般論としては、原子力発電所に核燃料物質が運び込まれてから、原子力発電所の運転を終了し、核燃料物質の搬出の完了までに要する期間は数十年程度であると考えられる。
二の2、四の4及び五の3について
「原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム」は、平成二十六年八月二十日に原子力規制委員会で了承された「原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チームについて(案)」で示しているとおり、「原子力規制委員会としての対応に資する火山学上の知見や考え方を整理するため」に設けているものであり、川内原子力発電所固有の事項について検討を行うためのものではない。
二の3について
お尋ねの「この研究成果について、原子力規制委員会は検討したのか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の研究成果については承知している。なお、御指摘の研究成果は、日本全国における巨大カルデラ噴火の発生確率を算出しているものであり、個別の火山の噴火確率について言及しているものではない。
二の4及び五の1について
川内原子力発電所の設置変更許可申請に係る審査において、九州電力株式会社(以下「九州電力」という。)は、地下のマグマの状況や過去の噴火履歴等を検討し、川内原子力発電所の運用期間中において、噴火の規模を噴出物の総体積に基づき指数化した火山爆発指数七以上の噴火が生じる可能性は十分小さいと評価しており、原子力規制委員会はこれを妥当であると判断している。
三の1及び八の3について
日本火山学会の提言は、直ちに火山影響評価ガイドの見直しを求める内容ではないと理解している。
三の2について
「大規模火山災害対策への提言」(平成二十五年五月十六日広域的な火山防災対策に係る検討会)が公表されたのは、火山影響評価ガイドに対する意見募集の意見提出期間終了後であり、火山影響評価ガイドの策定に当たり当該提言についての検討は行っていない。当該提言を踏まえて火山影響評価ガイドを見直す必要があるとは考えていないが、原子力規制委員会としては、安全性の追求に終わりはなく、継続的な安全性の向上が重要であり、安全研究の推進による新たな知見の収集と火山影響評価ガイド等の継続的な改善に努めていく必要があると考えている。
四及び四の1から3までについて
御指摘の「本件論文の事例をそのまま姶良カルデラにあてはめたものである」の意味が必ずしも明らかではないが、九州電力から平成二十六年十月八日に提出のあった「川内原子力発電所原子炉施設保安規定変更認可申請書の補正について」(以下「保安規定変更認可申請書の補正」という。)によれば、九州電力は、対象火山の選定、対象火山の状態に応じた監視レベルの設定、監視レベルの移行判断基準の設定、評価方法等を含めた火山活動のモニタリングのための活動の手順を策定するとしている。現在、それらについて説明を受け、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第四十三条の三の六第一項第四号の規定に基づき定められている実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(平成二十五年原子力規制委員会規則第五号)等(以下「新規制基準」という。)に係る適合性審査を実施中である。
五の2について
火山活動のモニタリングを含む原子力発電所の安全性については、第一義的には原子力事業者が責任を負うべきである。
六の1、7及び10について
原子力発電所内の核燃料の搬出に要する具体的な期間については、例えば、輸送するために必要な使用済燃料の冷却期間は燃料体の種類、燃料体の状態、輸送容器の仕様等により異なり、また、どのような仕様を選択するかは事業者の判断によるため、一概にお答えすることは困難である。
六の2及び4から6までについて
保安規定変更認可申請書の補正によれば、九州電力は、破局的噴火への発展の可能性がある場合に備え、燃料体等の搬出等に係る貯蔵方法に関すること、輸送方法に関すること及び体制に関することについて事前に検討を行うとしており、また、破局的噴火への発展の可能性があると評価された場合において、燃料体等の搬出優先順位、貯蔵方法の選定・調達、輸送方法の選定・調達及び体制の確立を含めた燃料体等の搬出等の計画を策定するなどとしている。現在、それらについて説明を受け、新規制基準に係る適合性審査を実施中である。
六の3について
火山影響評価ガイドでは、「個別評価により運用期間中の火山活動の可能性が十分小さいと評価した火山であっても、設計対応不可能な火山事象が発電所に到達したと考えられる火山に対しては、噴火可能性が十分小さいことを継続的に確認することを目的として運用期間中のモニタリングを行う。」こととしており、モニタリングにより、火山活動の兆候を把握した場合の対処方針等を定めることとしている。また、川内原子力発電所の設置変更許可申請では、九州電力は、そのような場合の対処として、原子炉の運転の停止、燃料体等の搬出等を実施する方針としており、火山影響評価ガイドを踏まえていることを確認している。したがって、「火山影響評価ガイドの要求にも反する」との御指摘には当たらない。
六の8について
平成二十六年九月三十日の鹿児島県議会原子力安全対策等特別委員会における九州電力の説明の内容については承知をしていないため、お答えすることは困難である。
六の9について
九州電力による岩石学的調査について、具体的な進捗状況は把握していないが、新しい知見の収集の一環として検討を行っていくものと認識しており、新規制基準に係る適合性審査の一環として行われるものではない。
六の11について
御指摘の「会見補足資料」のとおり、「放射能の漏洩」に対処する方法については、遠くに運ぶということに限らず、様々な工夫ができる旨を述べたものであり、火山影響評価ガイドに反していることを述べたものではない。
七の1及び2について
姶良カルデラの現在の活動状況を踏まえ、火山灰については、桜島薩摩噴火によるものが川内原子力発電所の敷地において最も影響が大きいと評価している。その上で、地質調査では、敷地に火山灰が認められないが、シミュレーション結果よりも保守的に降灰量を十五センチメートルと設定している。
七の3並びに八の1及び2について
九州電力は、川内原子力発電所の設置変更許可申請において、モニタリングにより火山活動の兆候を把握した場合の対処として、原子炉の運転の停止、燃料体等の搬出等を実施する方針としている。また、保安規定変更認可申請書の補正によれば、九州電力は、破局的噴火への発展の可能性がある場合に備え、燃料体等の搬出等に係る貯蔵方法に関すること、輸送方法に関すること及び体制に関することについて事前に検討を行うとしており、また、破局的噴火への発展の可能性があると評価された場合において、燃料体等の搬出優先順位、貯蔵方法の選定・調達、輸送方法の選定・調達及び体制の確立を含めた燃料体等の搬出等の計画を策定するなどとしている。現在、それらについて説明を受け、新規制基準に係る適合性審査を実施中である。
御指摘の「社内規定」の公開については、政府としてお答えする立場にない。
八の4について
工事の計画の認可に係る申請及び保安規定の変更の認可に係る申請に関する処分にあたり、意見募集の実施及び公聴会の開催は、現時点において予定していない。
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