QUESTIONS質問主意書
第187回国会 「自衛隊による住民基本台帳閲覧及び個人情報の収集に関する質問主意書」(2014年11月17日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)
質問主意書
質問第八〇号
自衛隊による住民基本台帳閲覧及び個人情報の収集に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成二十六年十一月十七日
福島 みずほ
参議院議長 山崎 正昭 殿
自衛隊による住民基本台帳閲覧及び個人情報の収集に関する質問主意書
自衛隊による自衛官募集の「ダイレクトメール」が、全国の現役高校三年生等に大量に送付されていることは、住民基本台帳法、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)の趣旨に鑑み問題であると思われる。そこで、以下質問する。
一 自衛隊が、住民基本台帳を利用し、その情報に基づき自衛官募集のためのダイレクトメールを現役高校生に送付し始めた時期を明らかにされたい。
二 住民基本台帳は、①住民の利便の増進、②国及び地方公共団体の行政の合理化のために作成されており、自衛官募集のために利用されることは想定されていない。住民基本台帳の閲覧及び個人情報収集を自衛隊から要請された際に提供してもよいとされる住民基本台帳法の法的根拠を示されたい。
三 自衛隊はこれまで、自衛官募集に関し、必要な氏名などの個人情報について、自衛隊法第九十七条第一項及び同法施行令第百二十条の規定により、防衛大臣が市区町村に提出を求めることができるとの見解を示してきた。自衛隊法第九十七条第一項に個人情報提供の具体的な内容及び手続の明確な規定が存在しないにもかかわらず、同法施行令第百二十条の規定によって市区町村に対して個人情報の収集ができるとする根拠を明らかにされたい。
四 国や地方公共団体が国税や地方税などの租税の滞納整理事務に当たって、市区町村に戸籍や住民基本台帳の情報を請求する場合には、国税徴収法第百四十六条の二に基づき請求が行われている。このような具体的な法律の規定がない限り、自衛隊が市区町村に自治体の個人情報を請求することはできないと考える。国税徴収法と自衛隊法を比較した際に、自衛隊法第九十七条第一項及び同法施行令第百二十条の規定で、市区町村が大量の個人情報を自衛隊に提供することは違法と考えるが、いかがか。
五 個人情報保護法第十六条は、個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで個人情報を取り扱ってはならないとしている。個人情報取扱事業者から国の機関は除かれているが、本人が望まない個人情報が国の機関に提供されるのは問題であると考えるところ、政府の見解を明らかにされたい。問題なしとするならばその根拠を示されたい。
六 自衛隊に市区町村から提供される個人情報は、どのような媒体で提供されているのか。印刷されたリスト、電子磁気媒体かなど、具体的に示されたい。
七 自衛隊が取得した個人情報は、募集業務に利用した後にどのように処理されているのか。個人情報の利用後の処理について、過去に利用した情報も含めて具体的に示されたい。
八 平成二十六年三月二十七日付けで、文部科学省初等中等教育局長と厚生労働省職業安定局長連名で、「平成二十七年三月新規中学校・高等学校卒業者の就職に係る推薦及び選考開始期日等並びに文書募集開始時期等について(通知)」が出されている。この中で、応募の受付については、「学校又は安定所を通じて行うこと」とされている。七月一日に届けられた自衛隊による自衛官募集の「ダイレクトメール」においては、返信先が自衛隊の各地域の「地方協力部」となっている。これは、文部科学省と厚生労働省が出した通知の、応募の受付方法に反すると考えるが、違反の有無及び返信先が自衛隊の各地域の「地方協力部」とされている理由について、明らかにされたい。
九 憲法第十三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とされている。最高裁の判例(昭和四十年(あ)第一一八七号同四十四年十二月二十四日大法廷)において、「憲法十三条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものであり、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有するものと解される」としている。自衛隊による閲覧及び個人情報収集は、この判例に違反していると考えるが、いかがか。違反していないとするならば、その理由を示されたい。
右質問する。
答弁書
答弁書第八〇号
内閣参質一八七第八〇号
平成二十六年十一月二十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三
参議院議長 山崎 正昭 殿
参議院議員福島みずほ君提出自衛隊による住民基本台帳閲覧及び個人情報の収集に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員福島みずほ君提出自衛隊による住民基本台帳閲覧及び個人情報の収集に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねの「自衛隊が、住民基本台帳を利用し、その情報に基づき自衛官募集のためのダイレクトメールを現役高校生に送付し始めた時期」の意味するところが必ずしも明らかではないが、防衛省では、従前から、自衛官及び自衛官候補生の募集に係るダイレクトメールを高校生に対し送付しているものの、当該ダイレクトメールを高校生に送付し始めた時期については、現時点で確認することができないことから、お答えすることは困難である。
二及び九について
自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第二十九条第一項及び第三十五条の規定に基づく自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務については、住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第十一条第一項に規定する「法令で定める事務」の遂行のために必要である場合に該当し、住民基本台帳の一部の写しの閲覧を請求することができるものと考える。
また、お尋ねの「個人情報収集」の意味するところが必ずしも明らかではないが、自衛官及び自衛官候補生の募集に関し必要な資料については、自衛隊法第九十七条第一項及び自衛隊法施行令(昭和二十九年政令第百七十九号)第百二十条の規定により、防衛大臣が市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長に対し提出を求めることができると解される。
御指摘の「自衛隊による閲覧及び個人情報収集は、この判例に違反している」の意味するところが必ずしも明らかではないが、自衛官及び自衛官候補生の募集に関し必要となる個人の氏名、生年月日等の情報は、防衛省において、法令に基づき適法に入手した上で、適正に管理することに努めており、「判例に違反」するなどという問題を生ずるものではないと考える。
三及び四について
御指摘の「個人情報提供の具体的な内容及び手続の明確な規定」及び「具体的な法律の規定」の意味するところが必ずしも明らかではないが、自衛隊法第九十七条第一項及び自衛隊法施行令第百二十条の規定は、自衛官及び自衛官候補生の募集に関し必要となる個人の氏名、生年月日等の情報に関する資料について、防衛大臣が市町村の長に対し提出を求めることができる法令上の根拠であると解される。
五について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、国の行政機関における個人情報の取扱いについては、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号。以下「行政機関個人情報保護法」という。)によって規律されることから、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第二条第三項において国の行政機関は個人情報取扱事業者から除外されているところであり、国の行政機関については、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする行政機関個人情報保護法によって、法令の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、個人情報を保有することとされ、個人情報の保有に当たり、御指摘の「本人の同意」は必要とされていないことから、お尋ねのような「問題」を生ずるものではないと考える。
六について
お尋ねの「自衛隊に市区町村から提供される個人情報」の意味するところが必ずしも明らかではないが、自衛隊法第九十七条第一項及び自衛隊法施行令第百二十条の規定により提出を求めている自衛官及び自衛官候補生の募集に関し必要となる個人の氏名、生年月日等の情報に関する資料については、紙媒体又は電磁的記録によって提出されているものと承知している。
七について
お尋ねの「自衛隊が取得した個人情報」及び「個人情報の利用後の処理」の意味するところが必ずしも明らかではないが、自衛隊地方協力本部が入手した自衛官及び自衛官候補生の募集に関し必要となる個人の氏名、生年月日等の情報は、防衛省において、利用目的の達成に必要な範囲でのみ保有することを徹底することを含め、法令に基づき適正に管理することに努めている。
八について
自衛官及び自衛官候補生の募集については、自衛隊法第二十九条第一項の規定により自衛隊地方協力本部が地方における自衛官及び自衛官候補生の募集事務を行うこととされており、自衛隊地方協力本部は、同項の規定に基づき御指摘の「ダイレクトメール」の「返信」を受けているものである。
これに対して、「平成二十七年三月新規中学校・高等学校卒業者の就職に係る推薦及び選考開始期日等並びに文書募集開始時期等について(通知)」(平成二十六年三月二十七日付け二五文科初第一四二六号・職発〇三二七第四号文部科学省初等中等教育局長及び厚生労働省職業安定局長連名通知)は、学校教育を充実し、就職希望者の適正な職業選択を確保するとともに、求人秩序の確立を図るとの観点から発出されたものであり、文部科学省及び厚生労働省より、関係機関への協力を要請するものであるところ、自衛官及び自衛官候補生の募集については、自衛隊法第二十九条第一項の規定に基づき行われており、お尋ねのような「違反」の問題が生ずるものではないと考える。
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