QUESTIONS質問主意書

第192回国会 「反対票を投じた国連「多国間核軍縮交渉の前進」決議案に関する質問主意書」(2016年11月17日)

質問主意書

質問第三四号

反対票を投じた国連「多国間核軍縮交渉の前進」決議案に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十一月十七日

福島 みずほ   

       参議院議長 伊達 忠一 殿

   反対票を投じた国連「多国間核軍縮交渉の前進」決議案に関する質問主意書

 日本政府は本年十月二十七日(ニューヨーク現地時間)、国連総会第一委員会にて、「多国間核軍縮交渉の前進」決議案(決議番号A/C.1/71/L.41 以下「本決議案」という。)に反対投票をした。本決議案は、核兵器を法的拘束力のある形で禁止する文書(以下「核兵器禁止条約」という。)の制定に向けた交渉を行う国連会議を二〇一七年に開催することを定めている。本決議案は、百二十三カ国の賛成によって採択された。

 本決議案に基づき、二〇一七年三月より、核兵器禁止条約の交渉会議が国連で開始されることになる。これに関連して、以下の通り質問する。

一 日本の投票行動について

1 日本政府が本決議案に反対投票をした理由は何か。日本政府が国連総会第一委員会で行った投票説明演説の内容と併せて説明されたい。

2 日本政府はこれまで、核兵器禁止条約に関する多くの国連決議案については棄権するのが通例であった。例えば、例年の「核兵器の違法性に関する国際司法裁判所勧告的意見のフォローアップ」決議案(本年の決議番号はA/C.1/71/L.42)や昨年の「多国間核軍縮交渉の前進」決議案(A/C.1/70/L.13/Rev.1)などに対してである。

 これまでの棄権の際に日本政府は、核兵器国を適切に関与させる必要性、安全保障上の考慮の必要性などから、核兵器禁止条約の交渉をただちに開始することは現実的でないとの説明をくり返してきた。こうした前例があるにもかかわらず、本決議案について、棄権ではなくあえて反対投票をした特段の理由は何か。

3 唯一の戦争被爆国である日本が本決議案に反対投票をしたことに対して、広島市長や長崎市長からは「遺憾」や「被爆地として看過できない」との表明があり、また、日本原水爆被害者団体協議会からは政府に抗議文が送付されている。本年十二月に国連総会本会議で本決議案が投票に付される際には、日本政府は投票態度を改めるべきではないか。

二 核兵器禁止条約の交渉会議への日本の参加について

 岸田文雄外務大臣は、本年十月二十八日の記者会見において「私としては、現段階では、交渉に積極的に参加」していきたいと発言している。

 日本政府としては、二〇一七年三月に始まる核兵器禁止条約の交渉会議に参加することを前提に準備を進めているものと理解してよいか。

三 核兵器禁止条約において想定される禁止項目について

 本決議案の前提となった多国間核軍縮交渉の前進に関する国連総会オープン・エンド作業部会の報告書(本年八月十九日付)には、その附属文書二において、核兵器禁止条約において禁止対象の候補として想定される二十一項目が列挙されている。この項目に関連して、以下の通り質問する。

1 核兵器の使用または使用の威嚇について(附属文書二・項目3)

① 日本政府はこれまで「核兵器の使用が今日の実定国際法に違反するという判断が国際社会の法的認識として確立するまでに至っていない」(一九九四年六月十三日、参議院予算委員会における羽田孜内閣総理大臣の答弁)との見解を示している。この見解は、今日においても変わっていないか。

② 国際司法裁判所は、一九九六年七月八日の勧告的意見において、「核兵器による威嚇またはその使用は、武力紛争に適用される国際法の諸規則、そしてとくに人道法の原則および規則に、一般に違反するだろう。しかしながら(中略)裁判所は、核兵器による威嚇またはその使用が、国家の存亡そのもののかかった自衛の極端な状況のもとで、合法であるか違法であるかについてはっきりと結論しえない」と判断している。日本政府は、この判断を是認するものであるか。

③ 日本政府は、前記②で引用した「国家の存亡そのもののかかった自衛の極端な状況」とは具体的にどのような状態であると認識しているか。とりわけ、一般的な自衛の状況と、「極端な」状況とを区別する判断基準は何かについて説明されたい。

④ 日本政府は、附属文書二・項目3にいう核兵器の使用の威嚇とは、どのような行為を指すものと理解しているか。

⑤ 日本政府は、二〇一三年十二月十七日に閣議決定した国家安全保障戦略において、「核兵器の脅威に対しては、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止が不可欠であり、その信頼性の維持・強化のために、米国と緊密に連携していく」と述べている。核抑止力への依存とその「維持・強化」を公言することは、他国に対して附属文書二・項目3にいう核兵器の使用の威嚇を他国に対して行っていることに当たるのではないか。もし当たらないとするならば、核抑止力を公言することと、附属文書二・項目3にいう核兵器の使用の威嚇との違いを説明されたい。

2 「核戦争の計画への参加」、「核兵器の標的設定への参加」(附属文書二・項目3)について

 日米両政府は、二〇一〇年以降定期的に日米拡大抑止協議を開催している。これは「米国から抑止力の提供を受けている我が国が、米国の抑止政策について理解を深め、我が国の安全を確保する上で必要な政策調整を行う場」であると外務省ホームページにおいて説明されている。この協議の一環として、日本の外務・防衛当局者らは、米海軍基地内において原子力潜水艦や潜水艦発射型弾道ミサイルの見学をしたり、核兵器研究施設を訪問したりしている。このような見学や訪問を含む日米拡大抑止協議は、日本が米国との間で附属文書二・項目3にいう「核戦争の計画への参加」や「核兵器の標的設定への参加」をしていることに当たるのではないか。もし当たらないとするならば、理由と併せて説明されたい。

3 「核兵器を搭載した艦船の寄港ならびに領海通過」、「核兵器を搭載した航空機の領空通過」、「核兵器の領土内通過」(附属文書二・項目6)について

① 日本政府は、右に掲げた三行為が日本の領海、領空及び領土(以下「日本の領海等」という。)において行われることは現存するいかなる国内法や国際法によっても禁止されていないとの認識であるか。

② 日本政府は、右に掲げた三行為が米国により日本の領海等で行われることを日本政府が許可することは、非核三原則に抵触しないとの見解であるか。

4 核兵器禁止条約によって禁止される事項の「援助、奨励、誘導」(附属文書二・項目9)について

 国家安全保障戦略にいう米国の核抑止力の「信頼性の維持・強化」のための一連の行為(前記三の2で指摘した日米拡大抑止協議を含む)が、附属文書二・項目3にいう核兵器の使用または使用の威嚇に対して附属文書二・項目9にいう「援助、奨励、誘導」を行うことに当たるのではないか。もし当たらないとするならば、その理由を明らかにするとともに、附属文書二・項目3にいう核兵器の使用または使用の威嚇に対して附属文書二・項目9にいう「援助、奨励、誘導」を行うこととは、具体的にどのような行為を指すとの見解であるか示されたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第三四号

内閣参質一九二第三四号

  平成二十八年十一月二十五日

内閣総理大臣 安倍 晋三   

       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員福島みずほ君提出反対票を投じた国連「多国間核軍縮交渉の前進」決議案に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出反対票を投じた国連「多国間核軍縮交渉の前進」決議案に関する質問に対する答弁書

一の1について

 核軍縮に関する我が国の基本的立場は、核兵器のない世界の実現のためには、核兵器の非人道性に対する正確な認識及び厳しい安全保障環境に対する冷静な認識に基づき、核兵器国と非核兵器国との間の協力による現実的かつ実践的な措置を積み重ねていくことが不可欠であるというものである。御指摘の本決議案は、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発が我が国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっている中で、このような我が国の基本的立場に合致せず、また、核兵器国と非核兵器国との間の対立を一層助長し亀裂を深めるものであるとの理由から、慎重な検討を重ねた結果、反対したものである。我が国の投票理由説明においても、この趣旨を述べている。

一の2について

 御指摘の本決議案に反対した理由は、一の1についてで述べたとおりである。その上で申し上げれば、御指摘の本決議案は、二千十七年にいわゆる核兵器禁止条約の交渉を開始することを決定するものであり、一般的な形で核兵器の法的禁止を目指すことに言及したこれまでの決議とは異なるものである。

一の3について

 御指摘の本決議案は、今後、国際連合総会本会議において採決が行われるものと承知するが、国際連合総会第一委員会における我が国の投票態度及びその理由は一の1についてで述べたとおりであり、かかる立場を踏まえて投票を行う。

二について

 御指摘の交渉に参加するか否かについては、外務省のホームページにおいてその会見記録を公開している御指摘の記者会見において、岸田外務大臣が「交渉への参加・不参加を含め、今後の対応ぶりについては、交渉のあり方の詳細に関する今後の議論も踏まえ、また、これまで連携してきた豪、独など中道諸国の動向も見極めつつ、政府全体で検討していくことになりますが、私(大臣)としては、現段階では、交渉に積極的に参加をし、唯一の被爆国として、そして核兵器国、非核兵器国の協力を重視する立場から、主張すべきことはしっかりと主張していきたいと考えております」と述べたとおりである。

三の1の①及び②について

 政府としては、かねてから明らかにしてきたとおり、核兵器の使用は、その絶大な破壊力、殺傷力のゆえに、国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないと考えており、人類に多大な惨禍をもたらし得る核兵器が将来二度と使用されるようなことがあってはならず、核兵器のない平和で安全な世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮努力を重ねていくことが重要であると考えている。

 国際司法裁判所が千九百九十六年七月八日に発表した勧告的意見は、核兵器による威嚇又はその使用は、武力紛争時に適用される国際法の規則、特に人道法の原則と規則に一般的には反するが、国家の存続自体が問題となるような自衛の究極的状況における核兵器による威嚇又はその使用が合法か違法かについて最終的な結論を出すことはできない等と述べているところであり、政府としては、国際連合の主要な司法機関である国際司法裁判所が同意見の中で示した見解について、厳粛に受け止めるべきものと考えている。

三の1の③について

 御指摘の「国家の存亡そのもののかかった自衛の極端な状況」については、個別具体的に判断されるものであり、一概にお答えすることは困難である。

三の1の④及び⑤並びに2から4までについて

 御指摘の多国間核軍縮交渉の前進に関するオープン・エンド作業部会の報告書の附属文書二の内容は、同作業部会において必ずしも議論が行われたものではなく、同作業部会に参加した国際連合加盟国、国際機関及び市民社会の提案を一覧にしたものであると理解しており、また、我が国の提案ではないことから、御指摘の「核兵器の使用の威嚇」、「核戦争の計画への参加」、「核兵器の標的設定への参加」、「核兵器を搭載した艦船の寄港ならびに領海通過」、「核兵器を搭載した航空機の領空通過」、「核兵器の領土内通過」及び「援助、奨励、誘導」の意味するところが必ずしも明らかではなく、お答えすることは困難である。

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