QUESTIONS質問主意書

第193回国会 「「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」に関する質問主意書」(2017年4月3日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)

質問主意書

質問第七五号

「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年四月三日

福島 みずほ   

       参議院議長 伊達 忠一 殿

   「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」に関する質問主意書

 政府は、今年三月二十一日に「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「本改正案」という。)を閣議決定した。本改正案について、次の通り質問をする。

一 政府は、「テロ等準備罪」の創設が必要であると説明してきたが、本改正案による改正後の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「改正組織的犯罪処罰法」という。)の第一条の目的規定に「テロ対策」が盛り込まれていないのはなぜか。そもそも、政府が締結しようとしている国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「国際組織犯罪防止条約」という。)がテロ対策を目的とした条約ではないからではないか。

二 「テロリズム」の定義が本改正案にないのはなぜか、その理由を説明されたい。

三 改正組織的犯罪処罰法第六条の二にある「組織的犯罪集団」の定義に「テロ」の文言がないのはなぜか、その理由を明示されたい。国際組織犯罪防止条約がテロ対策を目的とした条約ではないからではないか。

四 「テロ等準備罪」の対象となる二百七十七の犯罪のなかに、収賄罪と贈賄罪が入っているが、収賄について「テロ等準備罪」が成立した段階で贈賄が存在していない場合、贈賄についての「テロ等準備罪」は成立しない。このことは、収賄と贈賄が必要的共犯であることに反する結果となるのではないか。

五 事前収賄も「テロ等準備罪」の対象となる犯罪である。選挙の際、事前収賄について「テロ等準備罪」が成立した一方、事前収賄した候補者は落選したとする。この場合、候補者が落選したため事前収賄罪は成立しないにもかかわらず、事前収賄についての「テロ等準備罪」は成立することになる。これは、極めて不公平あるいは不均衡な結果となるのではないか。政府の見解を示されたい。

六 沖縄の辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前にブロックを積み、工事車両の進入を阻む目的で集まった団体が、ブロックを積むことを共謀し、その団体の構成員の一人がブロックの購入等のためATMでお金をおろしたというケースを想定した場合、組織的威力業務妨害について「テロ等準備罪」が成立するということでよいか。

七 ある組織的犯罪集団において、その実行を共同の目的とする犯罪と、当該組織的犯罪集団が実際に計画した犯罪とが異なることはあり得るのか。異なることがある場合、当該組織的犯罪集団の共同の目的が何の犯罪を実行することであるのかの認定はどのようになされるのか、説明されたい。

八 計画した犯罪を実行するための準備行為についてお聞きする。犯罪を計画する者が、第三者にその計画について話すことも準備行為と言えるか。また、関係場所の下見をすることと散歩とは、その行動の外見上、何ら差異はない。これをどのように区別し、その行動が関係場所の下見であると判断するのか。また、ATMでお金をおろすことは、生活費のためにおろすのか、犯罪の実行のためにおろすのかは外見上は判別ができない。これをどのように準備行為と区別をするのか、それぞれ具体的に明示されたい。

答弁書

答弁書第七五号

内閣参質一九三第七五号

  平成二十九年四月十一日

内閣総理大臣 安倍 晋三   

       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員福島みずほ君提出「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」に関する質問に対する答弁書

一から三までについて

 今国会に提出している組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案による改正後の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号。以下「改正後組織的犯罪処罰法」という。)第一条においては、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を実施するため」と規定しているところ、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を採択した平成十二年の国際連合総会決議第二十五号には、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約が、とりわけ、マネー・ローンダリング、腐敗、絶滅危惧種の野生動植物の不正な取引、文化財に対する犯罪等の犯罪活動及び拡大している国際的な組織犯罪とテロリストによる犯罪活動とのつながりとの戦いのための有効な手段であるとともに国際協力のために必要な法的枠組みとなることを強く確信し」との趣旨の記載があるように、同条約が「テロ対策を目的とした条約ではない」との御指摘は当たらない。

 また、「テロリズム」とは、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受入れ等を強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうと承知しているところ、改正後組織的犯罪処罰法第六条の二における「テロリズム集団」は、同条第一項において定義している「組織的犯罪集団」すなわち「団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるもの」の典型として分かりやすいものを例示したものであり、この「テロリズム」の語は、右に述べた「テロリズム」の一般的な意味を前提として用いているものである。

四及び五について

 改正後組織的犯罪処罰法第六条の二の罪は、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」が関与する一定の犯罪が実行されることによる重大な法益侵害を未然に防止するために、当該実行の前段階の行為を処罰の対象としているものであるところ、御指摘の収賄罪及び事前収賄罪は、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の資金源となり得る犯罪であることから、これらの罪を同条の罪の対象犯罪としていることには十分な合理性があり、お尋ねの各場合において同条の罪が成立し得ることは、刑罰法規の在り方として妥当性を欠くものではないと考える。

六について

 犯罪の成否は収集された証拠に基づき個別具体的に判断されるべきものであるが、改正後組織的犯罪処罰法第六条の二の罪は、同条第一項各号に掲げる罪に当たる行為で、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもの」又は「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団に不正権益を得させ」若しくは「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるもの」の遂行を二人以上で計画し、「その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為」が行われた場合でない限り、成立しない。

七について

 お尋ねの「その実行を共同の目的とする犯罪」は、収集された証拠に基づき個別具体的に判断されるべきものであるところ、例えば、薬物密売の構成員らが組織的殺人を実行する場合のように、お尋ねの「計画した犯罪」が「その実行を共同の目的とする犯罪」とは異なる場合もあり得る。

八について

 個々の事例が改正後組織的犯罪処罰法第六条の二の規定による処罰の対象となるか否かについては、同条の規定及び収集された証拠に基づき個別具体的に判断されるべきものであるが、実行準備行為は、同条に規定する計画行為とは別の行為であって、「計画をした犯罪を実行するため」の行為であるものに限られる。

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