QUESTIONS質問主意書

第193回国会 「子宮頸がんワクチンに関する質問主意書」(2017年5月22日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)

質問主意書

質問第一一五号

子宮頸がんワクチンに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年五月二十二日

福島 みずほ   

       参議院議長 伊達 忠一 殿

   子宮頸がんワクチンに関する質問主意書

 二〇一七年五月十一日の参議院厚生労働委員会において、厚生労働省の福島靖正健康局長は、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の接種者総数は二〇一六年三月までで二百六十二万人、副反応の報告数は二〇一六年十一月までで三千二十六件、このうち重篤なものは千六百七十五件である旨答弁した。

 また、これに先立ち厚生労働省は、厚生労働科学研究事業「青少年における「疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状」の受療状況に関する全国疫学調査」を実施し、二〇一六年十二月二十六日に調査結果(以下「本調査」という。)を発表し、その後、本年四月十日には本調査の「追加分析結果」を発表した(以下本調査と追加分析結果をあわせて「全国疫学調査」という。)。

一 子宮頸がんワクチンの接種により、重篤なものを含む副反応がこれほど多数報告されていることについて、厚生労働省はどう受け止め、対策を講じているのか。

二 全国疫学調査は、子宮頸がんワクチンの接種による副反応被害者らがこれまで要求してきた同ワクチンの接種者全員を対象とした追跡調査ではなく、限られた件数しか把握できない自発報告(副反応報告)に基づくきわめて不十分な調査と言わざるを得ない。あらためて、同ワクチンの接種者全員を対象とした追跡調査を行うべきではないか。

三 本調査の結論には「本調査によって、HPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係は言及できない」と記載されているが、追加分析結果の結論ではその文言が削除されているのはなぜか。

四 全国疫学調査における子宮頸がんワクチンの接種による副反応症状の具体的定義は何か。また、全国疫学調査において、子宮頸がんワクチンの接種後に生じた症状が子宮頸がんワクチンの接種による副反応症状であると認定する具体的基準は何か。

五 全国疫学調査の調査件名に「多様な症状」とあるにもかかわらず、調査対象症例基準では、調査対象となる症状が「少なくとも一つ以上ある」とされているのはなぜか。ワクチン接種による副反応症状の研究者によって提唱されているHANS診断予備基準は、異なる系統の症状が一人の患者に現れる、まさに「多様な症状」を呈するという子宮頸がんワクチンによる副反応症状の特徴を捉えることを意図して作られている。これに対して、全国疫学調査は、「ただ一つの症状しか現れていない人」と「「多様な症状」を呈する者」を同様に扱っている。この取扱いは、「多様な症状」を呈するという特徴を有する子宮頸がんワクチンによる副反応症状の実態を明らかにする全国疫学調査の目的と矛盾しているのではないか。

六 全国疫学調査においては、「「多様な症状」を呈する者」の判断を、「取り扱い①」と「取り扱い②」の二つの方法で行い、より大きな推計値が得られた「取り扱い②」による推計値を結論であるかのように記載しているが、「取り扱い②」をより正しい推計値とする根拠は何か。

七 全国疫学調査において「多様な症状」を有するとされた女子の個別症状の割合を見ると、子宮頸がんワクチンの接種歴あり群の方が接種歴なし群よりも各症状の有症率が全体的に高く、特に、「光に対する過敏」、「脱力発作」、「月経異常(本人の訴え)」、「記銘力の低下」など、子宮頸がんワクチンの接種による副反応患者に特徴的な症状において接種歴あり群の方が著しく高い有症率を示している。これは子宮頸がんワクチンとその接種による副反応症状の因果関係を示唆するものというべきではないのか。

  右質問する。

答弁書

答弁書第一一五号

内閣参質一九三第一一五号

  平成二十九年五月三十日

内閣総理大臣 安倍 晋三   

       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員福島みずほ君提出子宮頸がんワクチンに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出子宮頸がんワクチンに関する質問に対する答弁書

一について

 ワクチン接種後の副反応であることが疑われる症状については、厚生労働省において、予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第十二条第一項並びに医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第六十八条の十第一項及び第二項の規定に基づき、医師等からその情報の収集(以下「副反応疑い報告」という。)を行っている。お尋ねは、子宮頸がん予防ワクチン(以下「HPVワクチン」という。)接種と御指摘の「重篤なものを含む副反応」との因果関係及び当該「重篤なものを含む副反応」に対する「対策」について問うものと考えるが、HPVワクチン接種に係る副反応疑い報告においては、HPVワクチン接種との因果関係は必ずしも明らかではない症状を含めた、HPVワクチン接種後の副反応であることが疑われる症状が幅広く報告されており、当該副反応疑い報告の結果が、HPVワクチン接種とHPVワクチン接種後に生じた症状との因果関係を示すものではない。また、政府としては、HPVワクチン接種後に症状が生じた方への対応として、厚生労働省が平成二十七年九月十七日に公表した「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する当面の対応」に基づき、健康被害の救済に係る速やかな審査、広範な疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状を呈する者に対して、より身近な地域において適切な診療を提供するために都道府県知事が指定した協力医療機関の医師向けの研修の実施等に取り組んでいるところである。

二について

 御指摘の「青少年における「疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状」の受療状況に関する全国疫学調査」(以下「全国疫学調査」という。)は、厚生労働科学研究費補助金新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業の研究班(以下「研究班」という。)により実施されているものであるが、全国疫学調査の目的は、HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に生じたと報告されている多様な症状に含まれるものと同様の症状を有する者が、一定数存在するかどうかを確認することであると承知している。

 他方、副反応疑い報告においては、ワクチン接種後一定期間内に生じた当該接種を受けたことによるものと疑われる一定の症状等を医師等が知ったときは、厚生労働大臣に報告しなければならないとされている。加えて、HPVワクチン接種に係る副反応疑い報告においては、HPVワクチン接種後に広範な慢性の疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状が発生した場合においても、確実に医師等から報告されるよう、平成二十六年九月二十六日付けで、「定期の予防接種等による副反応の報告等の取扱いについて」(平成二十五年三月三十日付け健発〇三三〇第三号・薬食発〇三三〇第一号厚生労働省健康局長・医薬食品局長通知)を改正し、都道府県知事及び公益社団法人日本医師会会長に対して、必要な協力要請を行っているところである。

 こうした取組等を通じて、できる限り多くのHPVワクチンによる副反応であることが疑われる症状が報告される仕組みを設けているところであり、政府としては、御指摘の「接種者全員を対象とした追跡調査」を実施することは考えていない。

三について

 全国疫学調査の目的については、二についてでお答えしたとおりであり、平成二十八年十二月二十六日に開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会及び薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議(以下「合同会議」という。)での研究班による報告(以下「二十八年十二月報告」という。)に際しては、全国疫学調査がHPVワクチン接種とHPVワクチン接種後に生じた症状との因果関係について言及することを目的とする調査ではないことを入念的に示すため、その「結論」の部分において御指摘の「本調査によって、HPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係は言及できない」と記載されたものと承知している。また、平成二十九年四月十日に開催された合同会議での追加分析結果の研究班による報告(以下「二十九年四月報告」という。)に際しては、二十八年十二月報告において既に全国疫学調査がHPVワクチン接種とHPVワクチン接種後に生じた症状との因果関係について言及することを目的とする調査ではないことが示されていたため、二十九年四月報告の「結論」の部分ではなく「調査実施にあたっての前提」の部分において「HPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係について言及する調査ではない」と記載されたものと承知している。

四について

 御指摘の「子宮頸がんワクチンの接種による副反応症状の具体的定義」及び「子宮頸がんワクチンの接種後に生じた症状が子宮頸がんワクチンの接種による副反応症状であると認定する具体的基準」については、全国疫学調査においていずれも定められていないものと承知している。

五について

 HPVワクチン接種後に生じたと報告されている多様な症状及びHPVワクチン接種歴のない者において生じた当該多様な症状に含まれるものと同様の症状については、一つ又は二つ以上の症状が出現及び消失を繰り返すなど患者によって出現する症状の種類及び出現の状況が多様であることから、全国疫学調査において、研究班は、調査対象となる症状が少なくとも一つ以上あること、当該症状が三か月以上持続していること、通学又は就労に影響があること等を「調査対象症例基準」としたものと承知している。

 また、全国疫学調査の目的は、二についてでお答えしたとおりであり、御指摘の「子宮頸がんワクチンによる副反応症状の実態を明らかにする」ことが、全国疫学調査の目的ではないと承知している。

六について

 合同会議では、HPVワクチン接種後に生じたと報告されている多様な症状は、本人の訴えにより何らかの症状があると考えられるが、画像診断等ではその症状に見合うだけの異常所見が見られない病態(以下「機能性身体症状」という。)であるとの前提で、HPVワクチン接種による副反応に関する重要事項等についての議論を進めているところであると承知している。全国疫学調査において、研究班は、こうした機能性身体症状等を当該多様な症状に相当するものとして取り扱った御指摘の「取り扱い②」による推計値を当該多様な症状を有する者の数の推計値としたものと承知している。

七について

 全国疫学調査の目的は、二についてでお答えしたとおりであり、また、全国疫学調査では、HPVワクチン接種歴のない者とHPVワクチン接種歴のある者の年齢分布が極端に異なること等により、HPVワクチン接種歴の有無別に、HPVワクチン接種後に生じたと報告されている多様な症状とHPVワクチン接種歴のない者において生じた当該多様な症状に含まれるものと同様の症状との間で有訴率及び内容を比較することは困難であるとされていることから、御指摘の「光に対する過敏」、「脱力発作」、「月経異常(本人の訴え)」、「記銘力の低下」等の「有症率」の違いが、御指摘の「子宮頸がんワクチンとその接種による副反応症状の因果関係を示唆するもの」であるとすることは困難であると考えている。

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