QUESTIONS質問主意書

第147回国会 「東京電力MOX燃料の品質保証確認に関する質問」(2000年5月30日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)

質問主意書

質問第四七号

東京電力MOX燃料の品質保証確認に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十二年五月三十日

福島 瑞穂   

       参議院議長 斎藤 十朗 殿

   東京電力MOX燃料の品質保証確認に関する質問主意書

 BNFL社のMOX燃料の品質管理データ捏造事件では、関西電力株式会社(以下「関電」という。)が、調査、確認の結果、一九九九年十一月一日に高浜4号機用燃料に不正はないとした調査報告書(以下「最終報告書」という。)を通産省に提出し、通産省もこれを妥当と判断したにもかかわらず、その後の英国原子力施設検査局(以下「NII」という。)等の調査により、新たな不正と不正方法が判明した。これらの経緯により、日本の原子力安全行政の信頼性がますます疑われる結果となっている。

 この問題を受け、東京電力株式会社(以下「東電」という。)は、同じMOX燃料の加工委託先であるベルゴニュークリア社(以下「BN社」という。)において同様のことがないことを調査及び確認するよう、通産省から二度の指示を受け、二〇〇〇年二月二十四日に調査結果をまとめ、報告書(以下「東電報告書」という。)を通産省に提出した。東電の調査及び確認は、BNFL社の不正方法と関電の調査及び確認方法が不十分であったことを学んだものでなければならないが、東電報告書の内容は調査方法と確認内容ともに不十分であり、データ整理及びデータの公開においては関電の最終報告書よりもはるかに劣るものといわざるを得ない。

 東電報告書における調査方法、確認内容、データの公開には疑義があり、MOX燃料の健全性が確認できるとは考えられない。政府は、より厳密な品質確認をする必要があると考えるので、以下質問する。

一、不正の方法の可能性について

 通産省の二度にわたる東電に対する調査指示は、BNFL社における品質管理データの改ざんと捏造を受けたものである。したがって、関電の最終報告書を妥当とした誤りの反省に立ち、調査、分析がなされねばならない。通産省は、電気事業審議会基本政策部会が設けたBNFL社製MOX燃料データ問題検討委員会(以下「BNFL委員会」という。)において、関電の調査が「検査時間の短縮を目的とした単純なコピーに絞って調査を進めたため、BNFL社の品質管理状況を深く追求する等の点で調査が不十分なものとなった」(BNFL委員会第一回資料7)と反省点を挙げている。

 東電報告書はペレット外径抜取検査データについて、コンピュータに入力されたデータは加工できないようになっているとしている。しかし、入力に際しては検査員が手でペレットをセットし、足でペタルを踏み、入力をするのであるから検査員の作意の入る余地はある。

1 BNFL社での不正問題について今年三月一日に関電が発表した報告書で新たに発覚した不正は、合格範囲を超えるペレットを、九十度回転させて測り直し、合格させていたというものであった。BN社においてもペレットの位置を変えて不正測定をすることができるのではないか。できないとすれば、どのような防御システムになっているのか。

2 測定するペレットを動かせないとしても、不合格値を測定したらペタルを踏まずに測定点を変えて合格値を探す、また、合格値を測定したらペタルを続けて踏み、入力させることもできるのではないか。できないとすれば、どのような防御システムになっているのか。

3 上・中・下部の三点の測定をする位置はどこか。それは何に規定されているのか。作業員が規定の位置で測定していることはどのように確認するのか。規定の位置でない点で不正に測定することは可能か。できないとすれは、どのような防御システムになっているのか。

4 上・中・下部の三点のデータの一致度合いは確認されているのか。確認されているのであれば、その結果を示されたい。もし確認されていないのであれば、それはなぜか。

5 東電報告書によれば、生産当初の三ブレンダーについては、測定点が上・中・下部の三点と更に九十度回転させて三点の計六点を測定しているとのことであるが、九十度回転前後のデータの一致度合いは確認されているのか。確認されているのであればその結果を示されたい。もし確認されていないのであればそれはなぜか。

二、製造工程におけるペレット外径全数計測について

 東電報告書によれば、ペレットの外径寸法についてBN社は製造工程で全数レーザ計測を行っており、計測したデータの保存義務はないとしている。BNFL社ではペレットの全数上・中・下部の三点を、レーザ自動計測装置により計測し記録して保存している。

1 BN社の製造ペレットは全数、上・中・下部の三点をレーザ自動計測装置により計測しているのか。違うとすれば、どのような計測をしているのか。

2 BN社はペレット全数の計測データを記録し、保存しているのか。通産省は保存の有無は確認したのか。確認していないとすればそれはなぜか。

3 保存していたとすれば、その記録内容を確認したのか。確認していないとすればそれはなぜか。

4 保存していないとすれば、なぜ保存しなかったのか。不正の有無を確認するための抜取検査データとの比較検討、あるいは製造されたペレットの品質水準が恒常的に維持されているかどうかの確認、計測の実証や不良率のチェックには必要なのではないか。

5 記録を部分的に保存したものはないのか。あるとすればそれはどのようなものか。

6 平均値、標準偏差、分布のヒストグラム等が記された二次データは保存されているのか。それはどのようなものか。それを確認、検討したのか。どのような検討を行ったのか。

7 レーザ計測装置認定報告書には、全数の計測に関し、どのようなデータが添付されているのか。それを確認、検討したのか。どのような検討を行ったのか。確認、検討をしていないとすればそれはなぜか。

8 BNFL社では「植木鉢型」の形状をしたペレットが製造されていたために、上・中・下部の三点の計測で上下二点を中心点にずらし計測をしていた。

(1) BN社では「植木鉢型」の形状をしたペレットは製造されなかったのか。

(2) BN社での計測は、上・中・下部三点が計測され、上下二点はペレットの端を計測していたことを確認しているのか。

9 BN社で製造された福島第一原発用ペレット及び柏崎刈羽原発用ペレットは製造工程ですべてが外径の全数計測を行っているのを東電が知ったのはいつか。通産省はいつか。なぜ最近まで知らなかったのか。品質管理計画書等には記されていないのか。不合格ブレンダーの扱いを協議した中で問題にならなかったのはなぜか。

三、抜取検査について

 東電報告書によればBN社の品質保証の観点から、抜取率はMIL-STD-一〇五D(JISZ九〇一五に相当)に基づき、ゼロイチ判定を採用し、抜取検査はAQL(合格品質水準)〇・一五%に相当だとのことである。

1 BN社の抜取検査は、抜取率の設定のみがMIL-STD-一〇五D(以下「MIL規格」という。)に基づいているのか。それともMIL規格の抜取検査規定にすべて基づいて行われているのか。

2 東電報告書と東電によれば、寸法検査の方法は、燃料品質管理計画書(以下「計画書」という。)に記載されており、これに基づき作業指示書が発行される。ブレンダーごとの抜取個数は、作業指示書に基づき三十二個以上とブレンダーによって抜取個数が異なるとのことである。

(1) 通産省はブレンダーごとの抜取個数を確認しているのか。

(2) 抜取個数の種類は何種類あり、その個数はそれぞれ何個か。

(3) なぜ、ブレンダーごとに抜取個数が異なるのか、その理由は何か。

(4) MIL規格及びJISZ九〇一五の抜取検査規定では、三十二個以上であれば何個でもブレンダーごとに抜取個数が一定でなく、不特定数で異なってもよいことになっているのか。

(5) 計画書等には抜取個数と不特定数の抜取であることの理由は記載されていないのか。通産省は計画書を確認しているのか。

(6) 作業指示書に抜取個数は記載されているのか。通産省は作業指示書を確認しているのか。

(7) 一定でない抜取個数は、誰により何を基準にして抜取個数が決まるのか。

3 東電によれば、生産当初の三ブレンダーの抜取個数は八十個以上であるとのことである。生産当初三ブレンダーの抜取検査での抜取個数を八十個以上としたのはなぜか。MIL規格に基づいてのことか。

四、不合格ブレンダーについて

1 東電によれば、不合格ブレンダーがあるとのことだが、不合格ブレンダーは何ブレンダーあるのか。不合格ブレンダー数を言えないとすれば、言えない理由は何か。

2 不合格となったブレンダーのペレットは、すべてつぶされ製造工程へ戻されたのか、全数レーザ計測の工程へ戻されたのか、そのまま再び抜取検査をしたのか。それはMIL規格に基づくものか。

3 不合格ブレンダーの処理手順はどこに明記されているのか。通産省はこれを確認しているのか。確認していないとすればなぜか。

4 そのまま抜取検査をしたとすれば、ゼロイチ判定の意味はないのではないか、MIL規格に反するのではないのか。

5 不合格となったブレンダーのペレットの処理について明記している書類等は何か。通産省はこれを確認していないとすればなぜか。

6 MIL規格によれば不合格ブレンダーの判定があった場合、それ以降の抜取検査は「ゆるい検査」から「なみ検査」に強化されなければならないはずである。

(1) 不合格ブレンダーの初検査における抜取個数はいくつか。

(2) 不合格ブレンダーを再検査した際の抜取個数はいくつか。

(3) BN社の場合、不合格ブレンダー以降の抜取検査は強化されたのか、それまでと同じだったのか。

(4) それまでの抜取検査と同じだとすればなぜ、そのままなのか、MIL規格に反するのではないか。

(5) 不合格ブレンダー以降の抜取検査について明記している書類等は何か。通産省はこれを確認しているのか。確認していないとすればなぜか。

7 前述のようなBN社の抜取検査における検査方法で、AQLが〇・一五%であるといえるのか、その根拠は何か。

五、規格に従わない抜取検査と安全審査指針について

 発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針(以下「安全審査指針」という。)では従うべき規格について、指針1の「準拠規格及び基準」において、「安全機能を有する構築物、系統及び機器は、設計、材料の選定、製作及び検査について、それらが果たすべき安全機能の重要度を考慮して適切と認められる規格及び基準によるものであること。」と定めており、この指針に対応して、福島第一原発3号炉及び柏崎刈羽原発3号炉の原子炉設置許可変更申請書(以下「申請書」という。)では、準拠すべき規格の(4)に「日本工業規格(JIS)」を挙げている。

1 東電が「基づいた」とするMIL規格は、申請書の中には挙げられておらず、東電はこれがJIS規格に相当する根拠を示さなくてはならないが、通産省は報告を受けているのか。

2 BN社では、(1)不合格ブレンダーが存在してもその後の検査を「なみ検査」にせず、「ゆるい検査」を継続した、(2)抜取の数がブレンダーごとにまちまちであった、(3)始めから「ゆるい検査」を行っていた、といった、MIL規格に違反するようなやり方を、事業者と製造会社間の協議で定めて運用していた。これは、規格に準拠するよう求めた安全審査指針及び申請書で定めた内容に抵触するのではないか。

六、東電の立会検査について

 東電報告書では、BN社の抜取検査測定データと東電の立会検査測定データとの比較分布図から、分布形状が同じであり、仕様値を満足していることを理由にBN社の信頼性を確認したとしている。

1 東電が立会検査を行ったブレンダー数、ブレンダーごとの抜取数、測定点数はいくらか。

2 東電立会検査でのペレット測定は、上・中・下部三点のうち一点以上の測定であるとのことだが、通産省はこれを承知しているか。また、この立会測定データを通産省は調査、確認をしているのか。

3 なぜ、東電は三点を測定せずに一点以上の不特定数測定にしたのか、知らないとすれば、通産省はなぜ確認をしなかったのか。

4 一点以上では、上・中・下部三点が規定の位置で測定されていたかを確認することはできない。これをどのように確認するのか。

5 三点測定、二点測定、一点測定とする選択基準は何か、誰が決め、どこに明記されているのか。

6 一点以上の値と三点の値という条件の異なるものの比較をするのに、どのように比較値を取ったのか。

7 東電立会検査とBN社抜取検査の測定データの比較分布図は、東電がBN社の信頼性を確認した重要な分布図であるにもかかわらず、比較する前提条件の異なるものを無理に比較したものではないのか。通産省は、このような分布比較を妥当だとして認めるのか。認めるとすれば、その根拠は何か。

七、基本的な数値の確認

1 ロットとブレンダーの意味と関係は何か。

2 製造ロット数、ブレンダー数、ペレット数は、福島第一原発3号機向け(以下「1F3」という。)、柏崎刈羽原発3号機向け(以下「KK3」という。)それぞれでいくらか。

3 そのうち合格して使用したロット数、ブレンダー数、ペレット数は、1F3、KK3でそれぞれいくらか。

4 製造したが使用しないロット数、ブレンダー数、ペレット数は、1F3、KK3でそれぞれいくらか。

5 抜取検査で合格したロット数、ロットごとのブレンダー数、ブレンダーごとのペレット数、ペレットごとの測定点数は、1F3、KK3でそれぞれいくらか。

八、外径測定データの分布図について

 BNFL社の抜取検査の測定データ、全数計測データはほとんど公開された。しかし、調査方法と分析に問題があったために不正があったにもかかわらず、疑義なしとの結論となった。NII、市民団体の抜取検査の不正、疑義の指摘は、抜取検査測定データと全数計測データの分布図比較などの分析によるものである。通産省はBNFL委員会において、関電が行ったデータの分析が不十分なものであることを指摘した上で、「関西電力に対しより広範な分析を行うよう求めていく必要があり…独自の分析を行うことも考えられた」(BNFL委員会第一回資料7)としている。

1 BNFL社のデータは、千分の一ミリ単位であったので分布図の比較が有効であった。ところが、東電報告書は千分の四ミリ単位のデータしかない。千分の四ミリ単位では有効性が無くなり統計的分析はできない。

(1) なぜ、千分の四ミリ単位なのか。

(2) なぜ、千分の一ミリ単位のデータとするように指導しないのか。これで統計的分析ができるとの認識か。

2 東電報告書に添付されているBN社の抜取データ分布図は、母集団であるブレンダーごとではなくブレンダーの集まりであるロットごとになっている。

(1) なぜ、ブレンダーごとの分布図ではなくロットごとなのか。

(2) ブレンダーごとの抜取データを通産省は調査、確認をしているのか。

3 東電報告書には、全数計測データの分析について全く触れておらずデータ分布図も添付されていない。

(1) なぜ、母集団である全数計測データの分布図を付けないのか。分布図は存在しないのか。

(2) BNFL社の不正は、母集団であるロットごとの全数計測データの分布図と抜取検査データの分布図との比較により発覚したものもある。ブレンダーごとの全数計測データの分布図がなければ、抜取検査データの疑義を統計的に分析できないのではないのか。

4 このような加工した資料で、BN社の抜取検査データには不正がなかったと言い切れるのか。言い切れるとすれば、その根拠は何か。

九、東電向けMOX燃料の輸入燃料体検査について

1 福島第一原発3号機向けMOX燃料の輸入燃料体検査において、通産省はどのような客観的データに基づいて、その品質保証の妥当性を検討しているのか。

2 輸入燃料体申請書類及びその添付書類にはどのような資料があるのか。その中に抜取検査の元データは存在するのか。もしないとすれば、どのように品質保証の妥当性を検討するのか。

十、逆委託加工貿易について

1 東電の海外MOX燃料加工委託契約の締結に際し、逆委託加工貿易に基づく変更申請の申請年月日はいつか。また、変更申請認可の年月日はいつか。

2 変更申請に際しMOX燃料加工委託契約書の添付はあったのか。ないとすれば、契約書の内容を確認、審査せずに認可したのか、なぜ、確認と審査をせずに認可したのか。

十一、データ、情報の公開について

1 通産省が妥当と判断し、その後不十分であったことを認めた関電最終報告書よりも東電報告書は添付データ、分析ともに劣る。所管官庁として同じ過ちをせず、東電に対してデータの開示を指導するつもりはないのか。

2 関電のこれまでの報告書に比べて、東電報告書の公開データはあまりにも少なく、しかも加工されている。このような報告書で通産省はBN社の品質管理に疑義はないと判断できるのか。

3 東電、通産省の説明では、BN社の占有情報だからBN社の許可がないと言えないという事項があまりにも多い。たとえ民間契約であっても原子力の安全性の問題であり、プルトニウムを扱う事業において所管する官庁の指導が及ばないとすれば問題ではないか。

(1) なぜ、BN社の占有が優先されるのか。

(2) 関電でなされているデータと情報の公開が、東電ではなされないのは契約条項に違いがあるからなのか。

(3) 契約によるとすれば、なぜそのような契約を通産省は許可をしたのか。

十二、仏国コジェマ社製MOX燃料の品質管理状況については、どのような調査を行うのか。

  右質問する。

答弁書

第百四十七回国会答弁書第四七号

内閣参質一四七第四七号

  平成十二年七月十八日

内閣総理大臣 森 喜朗   

       参議院議長 斎藤 十朗 殿

参議院議員福島瑞穂君提出東京電力MOX燃料の品質保証確認に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島瑞穂君提出東京電力MOX燃料の品質保証確認に関する質問に対する答弁書

一の1及び2について

 通商産業省においては、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)から、ベルギーのベルゴニュークリア社(以下「ベルゴ社」という。)においては、御指摘のようにウラン・プルトニウム混合酸化物(以下「MOX」という。)燃料ペレットの位置を変えるなどしてその外径を不正に計測することを防止するための機械的なシステムは備わっていないと聞いている。

 しかしながら、平成十二年二月二十四日に公表された東京電力の作成に係る「福島第一原子力発電所三号機並びに柏崎刈羽原子力発電所三号機用MOX燃料に関する品質管理状況の再確認結果について」と題する報告書(以下「東電報告書」という。)によれば、ベルゴ社においては、品質部門が製造部門から独立していること、MOX燃料ペレットの外径測定とその評価が別の人間によって行われていること、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定が行われていること、内部監査が計画的に実施されていること並びに従業員の教育及び訓練が適切に行われていることが確認されており、不正に対する抑止効果が働いていると考えている。

 なお、東電報告書は、ブリティッシュ・ニュークリア・フュエル・ピーエルシー社(以下「BNFL社」という。)におけるMOX燃料の品質管理に係るデータの不正問題にかんがみ、通商産業省から、東京電力に対し、念のためベルゴ社の品質管理状況を再確認するよう指示した結果作成されたものであり、そもそも、ベルゴ社に具体的な不正の疑義があるとして作成されたものではない。

一の3について

 通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社においては、福島第一原子力発電所三号機(以下「福島三号機」という。)用及び柏崎刈羽原子力発電所三号機(以下「柏崎刈羽三号機」という。)用MOX燃料ペレットについて、上・中・下部の三か所で外径を測定することは品質管理計画書に規定されているが、その具体的な測定位置を規定している文書はないと聞いている。

一の4及び5について

 通商産業省においては、東京電力から、御指摘の各データの一致度合いについては確認していないが、その理由は、東京電力としては、ベルゴ社においては、品質部門が製造部門から独立していること、MOX燃料ペレットの外径測定とその評価が別の人間によって行われていること、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定が行われていること、内部監査が計画的に実施されていること並びに従業員の教育及び訓練が適切に行われていることが確認されており、不正に対する抑止効果が働いていると考えられることから、御指摘の各データの一致度合いまで確認する必要がないと考えているからであると聞いている。

二の1について

 通商産業省においては、東電報告書によれば、ベルゴ社においては、MOX燃料ペレット製造時の外径の全数計測データは、製造工程における研削機の調整のために用いるデータであり、MOX燃料ペレットの品質保証のために用いるデータではないとされていることから、レーザ自動測定装置による具体的な計測方法については確認していない。

二の2から4までについて

 通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社においては、MOX燃料ペレット製造時の外径の全数計測データは、製造工程における研削機の調整のために用いるデータであり、MOX燃料ペレットの品質保証のために用いるデータではないので、保存されていないと聞いている。

二の5及び6について

 通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社においては、MOX燃料ペレットの外径の全数計測データの部分的記録及び平均値、標準偏差、分布のヒストグラム等が記された二次データについては、いずれも保存されていないと聞いている。

二の7について

 通商産業省においては、東京電力から、レーザ計測装置認定報告書は、ベルゴ社が、レーザ計測装置を設置するに当たり、その機能等を確認するための社内文書であり、当該装置により計測された福島三号機用及び柏崎刈羽三号機用MOX燃料ペレットの外径の計測データが記載又は添付されたものではないと聞いていることから、その内容を確認、検討していない。

二の8の(1)について

 通商産業省においては、いわゆる「植木鉢型」の形状をしたペレットが製造されたか否かについては確認していない。

二の8の(2)について

 通商産業省においては、東電報告書によれば、ベルゴ社においては、MOX燃料ペレット製造時の外径の全数計測データは、製造工程における研削機の調整のために用いるデータであり、MOX燃料ペレットの品質保証のために用いるデータではないとされていることから、レーザ自動測定装置による具体的な計測方法については確認していない。

二の9について

 通商産業省においては、東京電力から、東京電力は、柏崎刈羽三号機用MOX燃料ペレットについては、その製造開始時である平成十年六月以前に、また、福島三号機用MOX燃料ペレットについては、MOX燃料に関する品質管理状況の再確認を行う中で、平成十二年一月に、それぞれ、製造工程で外径の全数レーザ自動計測が行われていることを知ったと聞いている。通商産業省においては、東京電力から、柏崎刈羽三号機用MOX燃料ペレットについては平成十一年九月に、福島三号機用MOX燃料ペレットについては平成十二年一月に、それぞれ、製造工程で外径の全数レーザ自動計測が行われていることを聞いている。

 通商産業省においては、東京電力から、MOX燃料ペレットの外径の全数レーザ自動計測は、ベルゴ社の製造工程においてMOX燃料ペレットの研削機の調整のために行われているものであるところ、このような研削機の調整方法については、ベルゴ社内で決定する事項であり、その決定に当たり東京電力の了解を得る必要がないことから、福島三号機用MOX燃料ペレットについては、再確認の時点までこれを把握できなかったと聞いている。

 通商産業省においては、東京電力から、品質管理計画書は、当事者間における品質管理上の取決めを記載した文書であり、御指摘の点については記載されていないと聞いている。

 通商産業省においては、東京電力から、不合格ブレンダーは柏崎刈羽三号機用MOX燃料ペレットの製造時に発生していたが、それ以前から柏崎刈羽三号機用MOX燃料ペレットについては全数レーザ自動計測が実施されていることを知っていたと聞いている。

三の1について

 通商産業省においては、東京電力から、MOX燃料ペレットの抜取検査に係る規定はベルゴ社と東京電力の間で協議の上決めたものであり、その中のペレットの外径の検査方法については、抜取率についてのみMIL-STD-一〇五D(以下「MIL規格」という。)を参考に定めたと聞いている。

三の2の(1)について

 通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社の抜取検査におけるブレンダーごとのMOX燃料ペレットの抜取個数は三十二個以上と聞いているが、個々のブレンダーから実際に何個のMOX燃料ペレットが抜き取られて検査をされたかについては確認していない。

三の2の(2)及び(3)について

 通商産業省においては、ベルゴ社の抜取検査における抜取個数の種類及びその個数並びにブレンダーごとに抜取個数が異なる理由については、いずれも確認してない。

三の2の(4)について

 MIL規格及び日本工業規格Z九〇一五は、その規定と異なる検査方法を禁止しているものではなく、同一の判定基準を用いる限り、より多くの個数を抜き取り検査することは、より厳しい検査を行うことになると考えている。

三の2の(5)及び(6)について

 通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社の品質管理計画書には、ブレンダーごとのMOX燃料ペレットの抜取個数は三十二個と記載されているが、ベルゴ社においては、実際には、三十二個以上のMOX燃料ペレットを抜き取り検査していると聞いている。

 また、通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社の作業指示書には、各ブレンダーごとのMOX燃料ペレットの抜取個数が記載されていると聞いている。

 なお、通商産業省においては、ベルゴ社の品質管理計画書及び作業指示書については、いずれも直接は確認していない。

三の2の(7)について

 通商産業省においては、東京電力から、具体的な抜取個数についてはベルゴ社が決定しているが、その基準は承知していないと聞いている。

三の3について

 通商産業省においては、東京電力から、生産当初は、念のため、一ブレンダーから八十個以上のMOX燃料ペレットを抜き取り検査したが、これはMIL規格に従ったものではないと聞いている。

四の1について

 不合格ブレンダーの数については、これを公にすることにより、ベルゴ社の競争上の地位を害するおそれがあり、また、ベルゴ社に具体的な不正の疑義があるわけでもないことから、答弁を差し控えたい。

四の2及び4について

 通商産業省においては、東京電力から、一般に、ベルゴ社においては、不合格ブレンダーが発生した場合、必要に応じて原因調査及び是正措置を実施した後、当該ブレンダーのMOX燃料ペレットすべてを製造部門に戻し、再研削が必要と判断されたMOX燃料ペレットについては、再研削及び全数レーザ自動計測を実施した後、これを品質部門に引き渡し、再研削の必要がないと判断されたMOX燃料ペレットについては、全数レーザ自動計測を実施した後、品質部門に引き渡し、その上で、品質部門が再度抜取検査を行い、改めて合否判定を行うこととしており、柏崎刈羽三号機用の不合格ブレンダーの扱いについてもこれに従ったが、これはMIL規格に従ったものではないと聞いている。

四の3及び5について

 通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社においては、不合格ブレンダーが発生した場合の一般的処理手順を記載した書類はないが、具体的に不合格ブレンダーが発生した場合には、当該ブレンダーの処理手順及び結果を不適合報告書に記載していると聞いている。

 なお、通商産業省においては、ベルゴ社の不適合報告書については、これを直接確認する必要がないと考えている。

四の6の(1)及び(2)について

 通商産業省においては、東京電力から、御指摘の初検査及び再検査共に、その抜取個数は三十二個以上と聞いている。

四の6の(3)及び(4)について

 通商産業省においては、東京電力から、不合格ブレンダー発生以降の抜取検査の方法は、発生以前と同一であるが、これは、ベルゴ社と東京電力が協議の上でこのように取り決めたことによるものであり、MIL規格に従ったものではないと聞いている。

四の6の(5)について

 通商産業省においては、東京電力から、不合格ブレンダーの発生の前後で抜取検査の方法が同一であることは、品質管理計画書に記載されていると聞いている。

 なお、通商産業省においては、ベルゴ社の品質管理計画書については、直接確認する必要はないと考えている。

四の7について

 通商産業省においては、東京電力から、MOX燃料ペレットの抜取検査については、ベルゴ社との間で、一ブレンダー当たり三十二個以上を抜き取り、仕様を外れたペレットが一つでもあった場合には当該ブレンダーのすべてのMOX燃料ペレットを不合格とする、いわゆるゼロイチ判定を行うことを協議の上決めているところ、MIL規格の水準Iのゆるい検査の一回抜取方式においては、三十二個を抜き取ってゼロイチ判定を行った場合に対応するAQL(合格品質水準)が〇・一五%とされていることから、東電報告書において、「この抜取検査はAQL〇・一五%に相当」すると記載していると聞いている。

五について

 発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針(平成二年八月三十日原子力安全委員会決定)の指針一が対象としているのは、「安全機能を有する構造物、系統及び機器」であって、MOX燃料ペレットは対象ではない。

六の1について

 通商産業省においては、東京電力から、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定を行ったブレンダーの数は、福島三号機用が十四ブレンダー、柏崎刈羽三号機用が十九ブレンダーであったと聞いている。また、一ブレンダー当たりのMOX燃料ペレットの抜取個数は三十二個以上で、一ペレット当たりの測定点は一か所以上であったと聞いている。

六の2について

 通商産業省においては、東京電力から、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定における一ペレット当たりの測定点は一か所以上であったと聞いているが、この検査データについては、東電報告書の五十九ページに記載されているヒストグラムを確認している。

六の3及び4について

 通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社においては、製造確認試験が実施され、設計基準を満足するMOX燃料ペレットを製造できることが確認されているため、東京電力としては、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定においては、少なくとも一か所を測定すれば品質の確認を行うことができると考えられること及び立会いによる外径の再検査は一か所の測定でも不正に対する十分な抑止力があると考えられることから、一か所以上の不特定測定で足りると判断したと聞いている。

 なお、通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社においては、福島三号機用及び柏崎刈羽三号機用MOX燃料ペレットについて、上・中・下部の三か所の具体的な測定位置を定めた規定はないと聞いている。

六の5について

 通商産業省においては、東京電力から、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定に際しては、東京電力とベルゴ社が協議の上で測定点数を決定しているが、特段の選択基準は定めていないと聞いている。

六の6及び7について

 通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社の抜取検査と東京電力の社員等の立会いによる再検査とは、抜取個数及び一ペレット当たりの測定点数が異なることから、それぞれの検査により得られたデータについて、外径の長さの一定の区分ごとに、検査の対象となったMOX燃料ペレットが占める割合を算出した上で、両者を比較したものであると聞いており、その手法は妥当なものと考えている。

七の1について

 ロットとは、同一組成の粉末から同一の焼結工程により生産されたペレットの集まりのことを意味する。ブレンダーとは、同一の焼結工程により生産されたペレットの集まりのうち、品質管理を行う単位(一つにつきペレット数約七〇〇〇個)である。ロットは複数のブレンダーから構成される。

七の2から4までについて

 通商産業省においては、東京電力から、製造され、合格して燃料棒の製造に使用されたロットの数については、福島三号機用が十六、柏崎刈羽三号機用が十八であり、ブレンダーの数については、福島三号機用が七十、柏崎刈羽三号機用が、再検査によって合格したものを含め、六十二であり、製造したが最終的に合格又は使用しなかったものはなかったと聞いている。

 MOX燃料ペレットの数については、通商産業省においては、東京電力から、合格して燃料棒の製造に使用された数及び製造されたが使用されなかった数は承知していないが、製造された数については、原料となったウラン酸化物及びプルトニウム酸化物の粉末の重量から計算すると、福島三号機用は約四十三万個、柏崎刈羽三号機用は約四十一万個であったと考えられると聞いている。

七の5について

 通商産業省においては、東京電力から、抜取検査で合格したロットの数については、福島三号機用が十六、柏崎刈羽三号機用が十八であり、ブレンダーごとの合格したMOX燃料ペレットの数については、分からないと聞いている。

 合格したブレンダーの数をロットごとに明らかにすることについては、これを公にすることにより、ベルゴ社の競争上の地位を害するおそれがあり、また、ベルゴ社に具体的な不正の疑義があるわけでもないことから、答弁を差し控えたい。

 MOX燃料ペレットごとの測定点数については、東電報告書によれば、福島三号機用、柏崎刈羽三号機用共に、生産当初の三ブレンダーについては六か所、それ以後は三か所となっている。

八の1について

 通商産業省においては、東京電力から、東電報告書において、MOX燃料ペレットの外径データの数値を千分の四ミリ単位にしたことは、MOX燃料に関する品質管理状況の再確認を行った際に、ベルゴ社との折衝により決めたことであると聞いている。

 通商産業省においては、東電報告書によれば、ベルゴ社においては、品質部門が製造部門から独立していること、MOX燃料ペレットの外径測定とその評価が別の人間によって行われていること、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定が行われていること、内部監査が計画的に実施されていること並びに従業員の教育及び訓練が適切に行われていることが確認されており、不正に対する抑止効果が働いていると考えていることから、MOX燃料ペレットの外径データの数値を千分の一ミリ単位とするよう指導する必要はないと考えている。

八の2の(1)について

 通商産業省においては、東京電力から、ロットごとの抜取データで分布図を作成することは、MOX燃料に関する品質管理状況の再確認を行った際に、ベルゴ社との折衝により決めたことであると聞いている。

八の2の(2)について

 通商産業省においては、御指摘のブレンダーごとの抜取データは、調査、確認していない。

八の3について

 通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社においては、MOX燃料ペレット製造時の外径の全数計測データは、製造工程における研削機の調整のために用いるデータであり、MOX燃料ペレットの品質保証のために用いるデータではないので、保存されていないと聞いている。

八の4について

 東電報告書によれば、ベルゴ社においては、品質部門が製造部門から独立していること、MOX燃料ペレットの外径測定とその評価が別の人間によって行われていること、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定が行われていること、内部監査が計画的に実施されていること並びに従業員の教育及び訓練が適切に行われていることが確認されており、不正に対する抑止効果が働いていると考えている。

九の1について

 通商産業省においては、福島三号機用の輸入燃料体検査申請書及びその添付書類の書類審査、外観検査等に加え、東電報告書も参考として、発電用核燃料物質に関する技術基準を定める省令(昭和四十年通商産業省令第六十三号)に適合するか否かについて審査している。

九の2について

 福島三号機用の輸入燃料体検査申請書には、燃料の種類、初期濃縮度等が記載されており、その添付書類には、燃料体の耐熱性、耐放射線性、耐腐しょく性その他の性能に関する説明書等があるが、これらの中には御指摘のようなMOX燃料ペレットの外径の抜取検査の結果の元データは含まれていない。

 通商産業省においては、福島三号機用の輸入燃料体検査申請書及びその添付書類の書類審査、外観検査等により、発電用核燃料物質に関する技術基準を定める省令に適合するか否かについて審査している。

十の1について

 東京電力による委託加工貿易契約の内容変更申請の申請年月日は平成七年五月十一日であり、当該申請に係る通商産業大臣の許可年月日は同年六月二日である。

十の2について

 東京電力による委託加工貿易契約の内容変更申請の許可に当たっては、株式会社東芝とフランスのコモックス社との間のMOX燃料加工委託に係る役務取引の許可申請書に添付されていた当該役務取引に関する契約書の内容を参考にしつつ、当時の外国為替及び外国貿易管理法(昭和二十四年十二月一日法律第二百二十八号)に基づき厳格な審査を行った上で、通商産業大臣の許可を与えたところである。

十一の1及び3の(1)について

 通商産業省においては、BNFL社と異なり、ベルゴ社に具体的な不正の疑義があるわけではなく、また、これ以上のデータを公にすることにより、ベルゴ社の競争上の地位を害するおそれがあることから、東京電力に対し更なるデータの開示を指導する積もりはない。

十一の2について

 東電報告書は、BNFL社におけるMOX燃料の品質管理に係るデータの不正問題にかんがみ、通商産業省から、東京電力に対し、念のためベルゴ社の品質管理状況を再確認するよう指示した結果作成されたものであり、そもそも、ベルゴ社に具体的な不正の疑義があるとして作成されたものではない。

 また、東電報告書によれば、ベルゴ社においては、品質部門が製造部門から独立していること、MOX燃料ペレットの外径測定とその評価が別の人間によって行われていること、東京電力の社員等の立会いによる再度のMOX燃料ペレットの外径測定が行われていること、内部監査が計画的に実施されていること並びに従業員の教育及び訓練が適切に行われていることが確認されており、不正に対する抑止効果が働いていると考えている。

十一の3の(2)及び(3)について

 東電報告書及びBNFL社におけるMOX燃料の品質管理に係るデータの不正問題に関連する報告書類は、東京電力及び関西電力株式会社により、それぞれの責任と判断で作成されたものであるので、両社が公開しているデータの程度に違いがある理由については、明確に答弁することは困難である。

 なお、東電報告書は、BNFL社におけるMOX燃料の品質管理に係るデータの不正問題にかんがみ、通商産業省から、東京電力に対し、念のためベルゴ社の品質管理状況を再確認するよう指示した結果作成されたものであり、そもそも、ベルゴ社に具体的な不正の疑義があるとして作成されたものではない。

十二について

 現時点では、フランスのコジェマ社製のMOX燃料の品質管理状況について、調査を行うことは考えていない。

 なお、通商産業省においては、今後同社製のMOX燃料の輸入燃料体検査申請がなされれば、これを審査することとなる。

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