QUESTIONS質問主意書

第162回国会 「難民認定申請者の個人情報に対する守秘義務に関する質問主意書」(2005年6月22日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)

質問主意書

質問第三三号

難民認定申請者の個人情報に対する守秘義務に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十七年六月二十二日

福島 みずほ   

       参議院議長 扇 千景 殿

   難民認定申請者の個人情報に対する守秘義務に関する質問主意書

 我が国には、昭和五十六年に批准した「難民の地位に関する条約」に基づき、難民及び難民申請を行う者に対し、適切な庇護手続を行う義務がある。難民認定のプロセスの透明性を確保する観点からも、難民認定申請を行おうとする者の個人情報に対する守秘義務が徹底されることは、極めて重要であると考える。

 以上の観点により、出入国管理及び難民認定法に基づく難民認定申請者の個人情報に関して適切な取扱いがなされているかを明らかにしたいため、以下質問する。

一 難民認定申請者の個人情報を知ることができる公務員が個人情報の秘密を守る義務は、どのような法令によって定められているか。その内容を具体的に示されたい。

二 難民認定申請者の個人情報を知ることができる公務員の範囲は、どのような法令によってどのように明確になっているか。具体的には、難民調査官と法務大臣以外にだれがいるのか示されたい。

三 難民認定手続に関与する通訳人が、難民認定申請者の個人情報の秘密を守る義務は、どのような方法によって確保されているか。秘密保持契約又は業務委託等契約中の守秘義務条項による場合には、平成十六年中の難民認定手続における通訳人の数及びそのうち契約を締結していた人数を明らかにされたい。また、通訳人との間で締結した契約の種別(例えば「秘密保持契約」、「業務委託契約」など)及び具体的に守秘義務を課し、あるいは守秘義務の履行を確保する措置を講じた条項の文言を示されたい。

四 出入国管理及び難民認定法上の入国者収容所及び収容場に収容されている者の個人情報については、送還の執行をする準備として当該被収容者国籍国の大使館あて渡航証明書等旅券の代わりとなる書類の発給を要請する場合に開示されることがある。

1 旅券の代わりとなる書類の発給を要請する場合以外に、法務省機関が第三者(当該被収容者の国籍国政府機関を含む。)に開示することがあるか。開示することがある場合、その開示の基準及びその根拠法令を明らかにされたい。

2 旅券の代わりとなる書類の発給を要請する場合以外に、法務省機関が当該被収容者の国籍国政府機関に開示した場合、その記録は残されているか。残されている場合、平成十二年一月一日以降の記録中、被収容者本人の申出に基づく開示を除く開示事例を具体的に示されたい。

五 外国人に対する送還の執行をするに当たって、当該被収容者国籍国大使館あてに、旅券の発給、更新又は渡航証明書等旅券の代わりとなる書類の発給を受ける手続を行う場合、法務省職員が当該被収容者国籍国大使館に対し、当該外国人が日本において難民認定申請をした者であることを伝える行為を禁じる法令、通達又は内規などの基準があるか。ある場合、その具体的内容を示されたい。

六 平成十七年五月十六日以降につき、難民審査参与員は、難民認定申請者の個人情報の秘密を守る義務をどのような方法によって課せられているか。法令上の義務であれば、その根拠法令と内容を、契約上課されている場合には、契約の種別(例えば「秘密保持契約」、「業務委託契約」など)及び具体的に守秘義務を課し、あるいは守秘義務の履行を確保する措置を講じた条項の文言を示されたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第三三号

内閣参質一六二第三三号

  平成十七年七月一日

内閣総理大臣 小泉 純一郎   

       参議院議長 扇 千景 殿

参議院議員福島みずほ君提出難民認定申請者の個人情報に対する守秘義務に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出難民認定申請者の個人情報に対する守秘義務に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの点に関しては、例えば、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百条第一項において、国家公務員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならないこととされ、また、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号。以下「行政機関個人情報保護法」という。)第七条において、個人情報の取扱いに従事する行政機関の職員は、その業務に関して知り得た個人情報の内容をみだりに他人に知らせてはならないこととされている。

二について

 法務省設置法(平成十一年法律第九十三号)、法務省組織令(平成十二年政令第二百四十八号)、法務省組織規則(平成十三年法務省令第一号)及び地方入国管理局組織規則(平成十三年法務省令第十三号)の規定に基づいて、難民の認定に関する事務を自ら所掌し、又は所属する組織において所掌する法務省の職員は、行政機関個人情報保護法の規定にのっとり、その事務の遂行に必要な場合には、難民認定申請者の個人情報を知ることができる。例えば、法務省入国管理局総務課難民認定室は、法務省組織令第五十二条第五号及び法務省組織規則第十七条第二項第二号の規定により、また、同局審判課は、法務省組織令第五十四条第五号の規定により、それぞれ難民の認定に関する事務を所掌しており、これらの課及び室に所属する職員は、難民認定申請者の個人情報を知ることができる。

 難民の認定に関する事務以外の事務を自ら所掌し、又は所属する組織において所掌する公務員は、行政機関個人情報保護法の規定にのっとり、その事務の遂行に必要な場合には、難民認定申請者の個人情報を知ることができる。例えば、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第六十一条の二の四第一項の規定により仮滞在許可を受けたために入管法第六十一条の二の六第二項の規定により退去強制手続が停止されるべき難民認定申請者について、退去強制に係る手続を所掌する地方入国管理局の職員がその情報を入手する場合がある。

三について

 難民認定手続に関与する通訳人に対しては、地方入国管理局の長との間で締結する通訳業務に関する契約において守秘義務を課す規定を置いている場合があるほか、地方入国管理局及び同支局(以下「地方入国管理局等」という。)において通訳を依頼するに当たり、誓約書を提出させることにより、又は口頭により、通訳業務上知り得た難民認定申請者又はその関係者に係る情報を外部に漏らし、又は他の目的のために使用しないよう求めるようにしている。

 お尋ねの「平成十六年中の難民認定手続における通訳人の数及びそのうち契約を締結していた人数」については、その調査の作業が膨大なものになることから、お答えすることは困難である。なお、法務省入国管理局においては、地方入国管理局等における出入国管理及び難民認定に係る諸手続に利用するため通訳人の名簿を作成しており、同名簿には平成十七年五月六日現在で六百七十五名を登載しているが、難民認定手続に関与する通訳人の大半は、同名簿に登載されている者から選任されている。

 また、お尋ねの「通訳人との間で締結した契約の種別」及び「具体的に守秘義務を課し、あるいは守秘義務の履行を確保する措置を講じた条項の文言」については、これらを網羅的に調査するためには膨大な作業を要することから、お答えすることは困難であるが、例えば、通訳及び翻訳業務に関する委託契約の契約書において、「本契約に基づく通訳又は翻訳業務上知り得た・・・関係者に係る秘密を外部に漏らし、又は他の目的のために利用してはならない」と定めたものがある。

四の1について

 御指摘の被収容者に係る個人情報については、被収容者本人の申出に基づいて第三者に伝えられる場合があるほか、我が国と外国との二国間で締約された領事条約等(以下「二国間領事条約」という。)の規定に基づく収容事実の通報、被収容者処遇規則(昭和五十六年法務省令第五十九号)第三十二条の規定に基づく伝染病患者等に係る保健所への通報、同規則第四十二条第二項の規定に基づく死亡者に係る親族等への通知等として第三者に伝えられることがある。

四の2について

 二国間領事条約に基づく通報等として被収容者に係る個人情報を被収容者の国籍国の政府機関に伝えた場合は、その記録を一定期間保存することとしている。また、お尋ねの事例の一つとしては、平成十五年九月十二日に収容したウズベキスタン人について、在日ウズベキスタン共和国大使館領事へ通報したことがある。

五について

 御指摘の行為そのものを禁じる法令、通達、内規等はないが、例えば、行政機関個人情報保護法第八条の規定により保有個人情報の目的外利用及び提供は制限されており、被収容者の国籍国の大使館に対し、被収容者が難民認定申請をした事実の有無に関する情報を提供したことはない。

六について

 難民審査参与員は、入管法第六十一条の二の十の規定に基づき、人格が高潔であって、難民の認定をしない処分又は難民の認定の取消しに係る異議申立てに関し公正な判断をすることができ、かつ、法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者のうちから法務大臣が任命する非常勤の国家公務員とされており、一についてで述べたとおり、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない等の義務を負っている。

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