QUESTIONS質問主意書

第171回国会 「厳しい雇用情勢の下における派遣労働者の保護等に関する質問主意書」(2009年4月28日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)

質問主意書

質問第一四六号

厳しい雇用情勢の下における派遣労働者の保護等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年四月二十八日

福島 みずほ   

       参議院議長 江田 五月 殿

   厳しい雇用情勢の下における派遣労働者の保護等に関する質問主意書

 派遣労働者をはじめとした非正規労働者の多くは、低賃金と不安定な就労形態の下で働くことを余儀なくされており、わが国が深刻な経済危機に直面する中、こうした派遣労働者等の諸権利がかつてなく脅かされている。とくに、理不尽な解雇や雇い止めによって仕事を奪われた派遣労働者等が、あわせて住居をも失い、生活に困窮する事態が広がっており、有効な対策の実施は一刻の猶予もならない。

 働く者が雇用や生活に不安を抱えることなく、その能力を十全に発揮して働くことができるよう、法整備が切実に求められており、とりわけ、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(以下、「労働者派遣法」という。)の抜本的な改正が急務である。

 そこで、以下質問する。

一 第百七十回国会に提出された「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下、「労働者派遣法改正案」という。)は、日雇派遣(日々又は三十日以内の期間を定めて雇用する労働者の派遣)を原則的に禁止するが、雇用期間を三十一日とした上で、所定労働日として雇用期間のうち数日を設定し、雇用期間の開始後に派遣元事業主から、労働者の所持する携帯電話にメールで所定労働日以外の就労日や派遣先等を随時、追加的に特定する不安定な就労形態は防止しうるか。

二 厚生労働省が平成二十一年三月三十一日に発表した「労働者派遣契約の中途解除に係る対象労働者の雇用状況について(速報)」によれば、常用型派遣労働者の八六・四%が調査期間中に離職し、そのうち、八九・六%が解雇されている。この結果をふまえるなら、常用型派遣労働者については、「すでに派遣元事業主との関係で雇用の安定が確保されている」との認識は、誤りであると考えるか。

三 深刻な経済危機の下、直接雇用の原則及び常用雇用の原則を逸脱した登録型派遣労働者の多くが、真っ先に「雇用調整」の対象となり、失業している。また、対象業務の自由化の進展に伴い、登録型派遣労働者の低賃金化も進んでいる。直接雇用又は常用雇用との対比で、こうした登録型派遣労働を選好する労働者が多くいることを実証する調査結果はあるか。

四 「労働者派遣法」は、事前面接(派遣労働者の特定を目的とした行為)を原則的に禁止するが、この趣旨としては、常用代替(通常の常用雇用に代えて派遣労働を活用すること)を防止することを含んでいるか。また、「労働者派遣法改正案」に基づき、常用型労働者派遣について、事前面接を解禁した場合、常用雇用(直接雇用)から常用型労働者派遣への代替を助長する効果があると考えるか。さらに、「労働者派遣法改正案」は、派遣元事業主による常用型派遣労働者の雇い入れ又は内定以前に、派遣先事業主による事前面接を許容する趣旨を含むか。

五 「労働者派遣法」は、派遣受入期間の制限のない業務について、同一の業務に同一の派遣労働者を三年を超えて受け入れており、その同一の業務に新たに労働者を雇い入れようとする場合、派遣先事業主に直接雇用申込義務を発生させるが、この趣旨としては、常用代替を防止することを含んでいるか。また、「労働者派遣法改正案」に基づき、常用型労働者派遣について、派遣先事業主の直接雇用申込義務を適用除外とした場合、常用雇用(直接雇用)から常用型労働者派遣への代替を助長する効果があると考えるか。

六 EUは昨年十月二十二日、派遣労働指令を採択し、派遣労働者の派遣先労働者との均等待遇を法制化したところであるが、「労働者派遣法改正案」は、派遣労働者の賃金を決定するにあたり、派遣先の同種の労働者の賃金を考慮要素の一つとすることを努力義務として規定する。しかし、結局、人件費を抑制することがもっとも重視され、派遣労働者の賃金が抑制されることにより、派遣先労働者の賃金との間に均衡を著しく欠くこととなった場合、違法となるか。

  右質問する。

答弁書

答弁書第一四六号

内閣参質一七一第一四六号

  平成二十一年五月十二日

内閣総理大臣 麻生 太郎   

       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員福島みずほ君提出厳しい雇用情勢の下における派遣労働者の保護等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出厳しい雇用情勢の下における派遣労働者の保護等に関する質問に対する答弁書

一について

 現在、国会に提出している労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)において、日々又は三十日以内の期間を定めて雇用する労働者について、労働者派遣を原則的に禁止することとしている趣旨は、派遣元事業主の雇用者責任が果たされないことを防止することにより、労働者の保護を図るものであり、御指摘のような就労形態の防止を目的とするものではない。

二について

 御指摘の調査結果は、昨今の厳しい経済状況において労働者派遣契約の中途解除の対象となった労働者の雇用状況等に関するものであり、これを基に、いわゆる常用型派遣の雇用の安定性について、一般的な認識をお答えすることは困難である。

三について

 厚生労働省が平成十九年に実施した「平成十九年就業形態の多様化に関する総合実態調査」によると、「登録型」の派遣労働者であって「現在の会社」又は「別の会社」で働きたい者(「登録型」の派遣労働者のうち八十二・五パーセント)のうち、「現在の就業形態を続けたい」を選択した者が四十五・〇パーセント、「他の就業形態に変わりたい」を選択した者が五十四・一パーセントであり、半数近くが「登録型」を選好している。

四について

 現行の労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。以下「法」という。)第二十六条第七項の規定の趣旨は、派遣先が派遣労働者を特定する場合には、派遣先と派遣労働者との間に雇用関係が成立すると判断される蓋然性が高くなり、労働者供給に該当する可能性があるほか、派遣労働者の雇用機会を狭めるおそれがあることから、これらを防止するものであり、御指摘の「常用代替」の防止を目的とするものではなく、改正法案における当該規定の改正により直接雇用がいわゆる常用型派遣に代替されることにはならないと考えている。

 また、この改正は、派遣元事業主に期間を定めないで雇用される派遣労働者の中から派遣労働者を特定することを可能とするものであり、派遣元事業主による雇入れ又は内定がなされる前の者については、派遣元事業主に期間を定めないで雇用される派遣労働者には当たらないことから、このような者について法第二十六条第七項に規定する派遣労働者を特定することを目的とする行為を可能とするものではない。

五について

 御指摘の「直接雇用申込義務」は、法第四十条の五の規定による義務を指すと考えるが、その趣旨は、派遣労働者の雇用の安定を図るため、派遣労働者の希望を踏まえて派遣先に直接雇用される機会を多く確保するものであり、御指摘の「常用代替」の防止を目的とするものではない。

 また、当該規定の対象業務になっている法第四十条の二第一項各号に掲げる業務の特性にかんがみると、改正法案における法第四十条の五の規定の改正により直接雇用がいわゆる常用型派遣に代替されることにはならないと考えている。

六について

 改正法案による改正後の法第三十条の二の規定は、派遣労働者の従事する業務と同種の業務に係る一般の賃金水準その他の事情を考慮しつつ、その他の要素も勘案し、その賃金を決定することを求めているものであり、お尋ねの場合について一概にお答えすることは困難である。

MENU