QUESTIONS質問主意書

第189回国会 「番号法、個人情報保護法に関する質問主意書」(2015年5月22日)

質問主意書

質問第一三六号

番号法、個人情報保護法に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年五月二十二日

福島 みずほ   

       参議院議長 山崎 正昭 殿

   番号法、個人情報保護法に関する質問主意書

一 番号法に関する基本的事項について

 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下「番号法」とする。)第十九条第十二号では、刑事事件の捜査、その他政令で定める公益上の必要があるとき等の場合に特定個人情報の提供が認められている。また公益上の必要がある場合について、同法施行令第二十六条では、破壊活動防止法、国際捜査共助等に関する法律、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律、犯罪による収益の移転防止に関する法律などを別表で規定し、特定個人情報の提供を認めている。

 番号法第十九条第十二号により提供される特定個人情報について、以下質問する。

1 内閣府大臣官房番号制度担当室作成の番号法の逐条解説(以下「逐条解説」という。)では、提供が認められる場合として、「個人番号を漏えいした本法違反の刑事事件において漏えいに係る特定個人情報を証拠として裁判所に提出する場合」が例示されている。また第百八十六回国会衆議院内閣委員会の三月七日の審議において政府は、「例えば調査した際に、たまたまそこのある情報に番号が含まれていた場合、それを持ってこられないというのは非常に調査の妨げになる」ために政令事項として定めたと答弁している。

 他方、市民団体の質問に、刑事訴訟法第百九十七条の規定に基づく「捜査関係事項照会」に応じて特定個人情報を回答(提供)することも番号法第十九条第十二号により可能と回答しており、警察関係者が「捜査関係事項照会書にマイナンバーを記せば、納税記録などが得やすくなり摘発の端緒として有用」と話していたとも報じられている(「サンデー毎日」二〇一五年二月一日号)。

 捜査関係事項照会の際に、個人番号により照会することが認められるか、政府の見解を示されたい。また番号法第十九条を提供の法的根拠として、個人番号が付いていなければ警察等に提供されない個人情報が、個人番号が付き特定個人情報となることにより提供可能になるか、政府の見解を示されたい。

2 番号法第二十条では、第十九条に該当する場合、特定個人情報の収集、保管が認められている。番号制度にはプライバシー侵害の危険があり、特定個人情報保護委員会による監視・監督、特定個人情報保護評価の実施、マイ・ポータルによる情報提供等記録の確認などの個人情報保護措置が規定されている。番号法第十九条及び同法施行令により警察等に提供された特定個人情報について、これら保護措置がどのように適用されるか、示されたい。

3 番号法第五十三条では、第十九条及び同法施行令により警察等に提供された特定個人情報は、特定個人情報保護委員会の指導及び助言、勧告及び命令、報告及び立入検査の適用除外とされている。逐条解説では刑事訴訟法、国税犯則取締法等において各種の保護措置や裁判所による救済措置等が講じられていることが理由とされているが、警察等に提供された特定個人情報が適切に取り扱われていることを確認する仕組みと、不適切な扱いに対する救済措置について示されたい。

4 番号法第九条第五項では、第十九条第十一号から第十四号までのいずれかに該当して特定個人情報の提供を受けた者は、その提供を受けた目的を達成するために必要な限度で個人番号を利用することができるとされている。番号法第十九条により刑事事件捜査のために提供された特定個人情報について、提供を求めた個別の刑事事件捜査に限定して利用されるのか、それともその他の刑事事件捜査等にも利用されうるのか、「目的」と「限度」の判断基準を示されたい。

5 第百八十三回国会衆議院内閣委員会の四月二十四日の審議において政府は、刑事事件捜査に関して証拠として押収した個人番号付き名簿を証拠として取り調べることはできるが、それを超えて個人番号をキーとして検索したりデータベースを作成したりすることは違法と答弁している。

 その一方で、第百八十六回国会衆議院内閣委員会の三月七日の審議において、破壊活動防止法第二十九条による公安調査庁と警察庁及び都道府県警察との間の特定個人情報を含む情報又は資料の交換は可能と答弁している。

 番号法施行令別表により公安目的で提供された特定個人情報は、長期間保管・利用されることが想定されるが、公安目的の範囲内としてデータベースを作成し共有することはないのか、またデータベースを作成せずに提供された特定個人情報をどのように保管・利用するのか、明らかにされたい。

6 第百八十六回国会衆議院内閣委員会の三月七日の審議において政府は、特定秘密保護法における適性評価への特定個人情報の利用に関し、特定秘密保護法第十二条第四項に基づく資料の提出や報告の徴収における特定個人情報の取扱いについて検討すると答弁している。現時点における検討状況を明らかにされたい。

二 個人情報保護法改正案について

 現行の個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)第二条(定義)は、第一項で「個人情報」について定義した上で、第六項で個人情報の「本人」について「個人情報によって識別される特定の個人をいう。」と定義している。今国会に提出されている個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案の第二条は、個人情報保護法第二条に「匿名加工情報」に関する次の第九項を加えるとしている。

 「この法律において「匿名加工情報」とは、次の各号に掲げる個人情報の区分に応じて当該各号に定める措置を講じて特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにしたものをいう。

 一 第一項第一号に該当する個人情報 当該個人情報に含まれる記述等の一部を削除すること(当該一部の記述等を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。

 二 第一項第二号に該当する個人情報 当該個人情報に含まれる個人識別符号の全部を削除すること(当該個人識別符号を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。」

 特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる「匿名加工情報」については、個人情報によって特定の個人を識別することができないことを理由として、当該情報の「本人」の権利が制限されたり、個人情報取扱事業者らに義務付けられた制限が取り払われたりするおそれがあるのではないか。

 すなわち「匿名加工情報」の匿名性が喪失し個人が識別されることが認められない限り、「本人」に認められた不服申立てをする権利などを行使できず、個人情報取扱事業者に義務付けられた本人同意を得ることなどの制限が履行されなくなるのではないのか、政府の見解を示されたい。

三 個人番号(マイナンバー)実務上の疑問点について

1 例えば、事業者が、雇用する従業者や委任関係にある役員など(以下「従業者等」という。)から、プライバシー権侵害のおそれなどを理由に個人番号の提示・記載を拒否された場合の取扱いや、従業者等から個人番号の記載のない所得税の扶養控除等申告書(以下「マル扶」という。)を受け取った場合の具体的な取扱いが不明である。この場合、事業者は、その従業者等が住民登録している市区町村に問い合わせることはできないと思うが、事業者はどのように対応したらよいのか定かではない。個人番号の提示を拒否された場合、給与や報酬など(以下「給与等」という。)を支払わなくとも、労働関係法規上許されるのか明らかにされたい。また逆に、給与等を支払った場合、税務等関係当局から行政規制を受けるのか明らかにされたい。

2 例えば、事業者は、従業者等に提出してもらうマル扶に配偶者や扶養親族等の個人番号を記載するように求めなければならない。事業者は、マル扶に記載された当該配偶者や扶養親族の個人番号に関する本人確認事務において、各本人に対し事業所へ出向くように求める必要があるのか。必要があるとすれば、極めて非効率と思うがいかがか。逆に、必要がないとすれば、どのような法理に基づいて是認されるのか。

3 例えば、新聞社、講演企画者のような事業者が、電話やネットで取材をし、相手方に謝金等を支払う場合に、その相手方の個人番号の提示や本人確認を対面で行わなければならないのか。個人番号の提示や本人確認を対面で行わなければならないとすれば、政府による「番号で事務の効率性が高まる」とする広報とは真逆で、極めて効率性が悪いと思うがいかがか。逆に、ネット等で個人番号の提示や本人確認を行うことが認められるとすると、ネット空間に特定個人情報が拡散され、場合によっては、特定個人情報などがハッカー等の餌食になるおそれがあるのではないか。政府は、こうした面でどのような対応策を考えているのか明らかにされたい。

4 例えば、給与等の支払を受ける従業者等や謝金等の支払を受ける受給者などが、支払をする事業者等の素性等が不透明なことから、自己の個人番号を提示することに不安がある場合、自己の個人番号を提示しない代わりに申告所得税の最高税率ないし相当の高い税率で源泉所得税の徴収を受けた上、確定申告でその差額の調整をすることでリスクを回避できる制度を導入している国があると聞くが、政府は承知しているか。我が国でも、特定個人情報の漏えい、他人による悪用から納税者を護るために、こうした制度を導入する考えはないか。

5 例えば、個人事業者は、給与受給者の支払調書など法定資料に自己の個人番号を記載して交付することになっているが、こうした事務手続を続けていけば、個人事業者の個人番号が各所へ拡散し、場合によっては漏えい・悪用され手に負えなくなる危険があると思わないか。こうした個人事業者の個人番号が各所へ拡散、漏えいすることで個人事業者のプライバシーが危険にさらされる又は悪用されることを防ぐために、当局が個人番号から組成した符号ないし個別の雇用主番号を発行することで個人事業者が自己の個人番号を支払調書に直接記載しなくともよい仕組みを導入している国があると聞くが、政府は承知しているか。我が国でも、個人事業者の特定個人情報の拡散・漏えいないし悪用のおそれを防止するために、こうした制度を導入する考えはないか。

6 個人番号の不適切利用等に対する事業者やその従業者(以下「事業者等」という。)に対する罰則の適用ルールが不透明なため、事業者等は怖くて個人番号を扱いたくないという声を各所で聞くが、こうした声に対する政府の見解を明らかにされたい。事業者等を保護するために、各人の個人番号を雇用等に使うことを止めて、各人の住民票コードないし個人番号から組成された分野別の符号ないし個別番号を使うセクトラル(分野別番号を使い共通番号等でネットワーク化する)モデルを採用することで、安心・安全な番号制を実施する考えはないか。言い換えると、医療情報等の管理等には、個人番号から組成した符号(医療等ID)を使うとしているが、租税、年金その他各種社会保障分野においても、直接個人番号を使わずそれぞれ独自の符号等を使うことで、罰則を廃止し、安心・安全をシステムで確保する賢明な番号政策を採るべきと思うがいかがか。

7 原子力発電所事故が発生した際の避難マニュアルなどにおいて、国や自治体の機関から特定個人情報が漏れた場合(故意、過失を問わず)に対処するための事前の対策(準備)を国や自治体は採っているのか示されたい。

8 国や自治体の機関から特定個人情報が漏れたことにより住民が被害を受けた場合、補償や賠償はどのように行うのか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第一三六号

内閣参質一八九第一三六号

  平成二十七年六月二日

内閣総理大臣 安倍 晋三   

       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員福島みずほ君提出番号法、個人情報保護法に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出番号法、個人情報保護法に関する質問に対する答弁書

一の1について

 お尋ねの「捜査関係事項照会の際に、個人番号により照会すること」は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号。以下「法」という。)第十九条第十二号に該当する適法な特定個人情報の提供になり得る。また、お尋ねの「個人番号が付いていなければ警察等に提供されない個人情報が、個人番号が付き特定個人情報となることにより提供可能になる」については、その意味するところが必ずしも明らかではなく、お答えすることは困難である。

一の2及び3について

 法第十九条第十二号の刑事事件の捜査が行われる場合等における特定個人情報の提供及び提供を受け、又は取得した特定個人情報の取扱いについては、法第五十条から第五十二条までの規定は適用されず、また、当該特定個人情報は、法附則第六条第五項に規定する情報提供等記録開示システムの対象とはならない。一方、当該特定個人情報に係る特定個人情報ファイルを保有しようとするときは、法第二十七条の規定により特定個人情報保護評価を実施する必要がある。また、刑事事件の捜査において押収された資料等については、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)その他の関係法令に基づき適切に取り扱われるものと考えている。

一の4について

 法第十九条第十二号に該当して特定個人情報の提供を受けた者は、法第九条第五項の規定により、その提供を受けた目的を達成するために必要な限度で個人番号を利用することができることとされているが、その目的と限度の関係については、個別具体的な事案に即して判断されるべきものであり、あらかじめお尋ねの「判断基準」をお示しすることは困難である。

一の5について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。

 なお、御指摘の「破壊活動防止法第二十九条による公安調査庁と警察庁及び都道府県警察との間の特定個人情報を含む情報又は資料の交換」については、法第十九条第十二号に該当せず、認められていない。

一の6について

 特定秘密の保護に関する法律(平成二十五年法律第百八号)第十二条の規定による適性評価の実施においては、現時点で特定個人情報を利用する必要性はないと考えている。

二について

 特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる匿名加工情報については、個人情報に該当しないことから、個人情報に関して設けられた本人に認められる権利等に関する規定の適用はない。

三の1について

 御指摘の場合に、事業者が従業者等に給与等を支払わないことは、お尋ねの「労働関係法規」上許されるものではない。また、事業者が従業者等に給与等を支払うこと自体は国税に関する法令に抵触するものではないが、そのことが、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)等の規定により、従業者等が申告書等に個人番号を記載する義務を免除するものではない。

三の2及び3について

 法第十六条において、個人番号利用事務等実施者は、法第十四条第一項の規定により本人から個人番号の提供を受けるときは、本人確認の措置をとらなければならないものとされているが、所得税法第百九十四条第一項の規定により扶養控除等申告書を提出しなければならないこととされている給与等の支払を受ける者は、法第二条第十三項に規定する個人番号関係事務実施者に該当するため、法第十六条の規定により、個人番号利用事務等実施者として当該扶養控除等申告書に配偶者等の個人番号を記載するためにその提供を受ける際に本人確認の措置をとることとなる。また、本人確認の措置については、必ずしも対面で行う必要はなく、電子情報処理組織を使用して個人番号を提供する場合には、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行規則(平成二十六年内閣府・総務省令第三号)第四条の規定により地方公共団体情報システム機構による電子署名を要するなど、送受信の際の情報漏えいの防止を図った上で個人番号及び個人識別事項に係る情報を送信する方法も認めることとしている。

三の4について

 御指摘の「リスクを回避できる制度」については承知しておらず、そのような制度を導入することは考えていない。

三の5について

 法や国税に関する法令において個人番号の漏えいや悪用を防止するための仕組みは十分に整備されており、御指摘の「手に負えなくなる危険がある」とは考えていない。また、御指摘の「仕組み」については承知しておらず、そのような制度を導入することは考えていない。

三の6について

 御指摘の「個人番号の不適切利用等」に係る罰則が適用される要件については、法において明確に定められている。また、御指摘の「番号制」や「番号政策」を実施することは考えていない。

三の7について

 法第二条第十四項に規定する行政機関の長等は、特定個人情報ファイルを保有しようとするときは、法第二十七条の規定により特定個人情報保護評価を実施する必要があるが、同条第一項に規定する評価書には、特定個人情報の漏えいその他の事態を発生させる主なリスクについて分析し、このようなリスクを軽減するための措置についての記載がされている。

三の8について

 お尋ねについては、個別具体的な状況に即して判断されるものであり一概にお答えすることは困難であるが、国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)等に基づき適切に対応することとなる。

MENU