QUESTIONS質問主意書

第192回国会 「伊方原発近辺を走る中央構造線に関する質問主意書」(2016年10月28日) | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)

質問主意書

質問第一六号

伊方原発近辺を走る中央構造線に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十月二十八日

福島 みずほ   

       参議院議長 伊達 忠一 殿

   伊方原発近辺を走る中央構造線に関する質問主意書

 早坂康隆氏(広島大学准教授)は、四国電力株式会社伊方発電所(以下「伊方原発」という。)の直下で巨大地震が起きうるとの警告を、熊本・大分群発地震を機に発している。雑誌「週刊金曜日」(本年十月二十一日号)によれば、早坂准教授は、伊方原発近辺の活断層帯について、小松正幸氏(愛媛大学名誉教授)ら約十人の研究者が議論を重ねた結果、伊方原発の前面海域六百メートル沖に中央構造線の主断層が走っており、これが活断層である可能性が高いとの結論を得ていること、また、伊方原発前面海域を走る中央構造線の両端が活断層であることが既にわかっているにもかかわらず、四国電力は伊方原発周辺の活断層調査をしていないことを指摘している。

 さらに、中央構造線のうち、伊方原発の東方で下灘-長浜沿岸活断層へと連続している部分は高角度であることがわかっているとし、熊本地震を起こした布田川断層が約八十度の高角右横ずれ断層であったことを例に挙げ、伊方原発の直近にある活断層が鉛直型である場合、伊方原発の直下で地震が発生することとなると指摘している。

 加えて、早坂准教授は、伊予灘では大きな地震が地下約十キロメートルで起こると推測できるとし、P波が到達したわずか一から二秒後に大きな揺れを引き起こすS波が原発を襲う危険性があることを指摘し、伊方原発が建っているのはダメージゾーンに位置するボロボロの岩盤であること、GPS観測網による変位ベクトルをみると、伊予灘の中央構造線付近に大きな歪みが溜まっていると推定されていることから、中央構造線がいつ活動してもおかしくない状態にあると考えていると述べている。

 なお、政府の地震調査研究推進本部は、石鎚山脈北縁西部の川上断層から伊予灘の佐田岬北西沖に至る区間の中央構造線断層帯が活動すると、マグニチュード八・〇程度もしくはそれ以上の地震が発生すると推定しており、早坂准教授もこれに異論はないとしている。

 これら、早坂准教授らの研究結果を踏まえて、以下質問する。

一 原発の安全性を確保するためには「最新の科学的知見」を反映させる必要があると考えるが、政府の認識はどうか。

二 中央構造線は、伊方原発近辺では、どこを走っていると政府は考えているか。

三 伊方原発近辺を走る中央構造線の両端が活断層であると政府は考えているか。

四 伊方原発近辺を走る中央構造線の両端の断層の角度はどの程度であると政府は考えているか。

五 伊方原発が建っているのはダメージゾーンに位置する岩盤であると政府は考えているか。

六 伊予灘の中央構造線付近には現在歪みが溜まっていると政府は考えているか。

七 地震調査研究推進本部は、伊予灘の中央構造線断層帯の活動により発生する地震規模について、マグニチュード八・〇程度もしくはそれ以上であると推定しているか。

八 前記七の「それ以上」とは、上限を示さずに用いられる概念であるが、伊方原発は「マグニチュード八・〇以上」の地震に耐えることができると政府は考えているか。

九 四国電力が伊方原発の前面海域における活断層の有無について調べているかどうか、政府は承知しているか。承知している場合、海岸から活断層までの距離について具体的に示されたい。

十 「伊方原発の危険性」を考えれば、熊本・大分群発地震を契機に、安全性を確認するための「海陸統合地震波探査」を早急に実施すべきと考えるが、政府の認識はどうか。

  右質問する。

答弁書

答弁書第一六号

内閣参質一九二第一六号

  平成二十八年十一月八日

内閣総理大臣 安倍 晋三   

       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員福島みずほ君提出伊方原発近辺を走る中央構造線に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出伊方原発近辺を走る中央構造線に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「最新の科学的知見」が具体的に何を指すのか明らかではないが、政府としては、原子力発電所の安全性の追求に終わりはなく、継続的な安全性の向上が重要であり、最新の知見を踏まえ、更なる安全性の向上に努めるべきであると考えている。

二について

 地震調査研究推進本部地震調査委員会が平成二十三年二月十八日に公表した「中央構造線断層帯(金剛山地東縁―伊予灘)の長期評価(一部改訂)について」(以下「長期評価」という。)において、中央構造線断層帯が、四国電力株式会社伊方発電所(以下「伊方発電所」という。)の敷地沖合約六キロメートルから八キロメートルのところを通過していると評価していると認識している。

三について

 御指摘の「中央構造線の両端」が具体的に何を指すのか明らかではないが、長期評価において、中央構造線断層帯は、金剛山地東縁から伊予灘までの約三百六十キロメートルにわたる活断層帯であると評価していると認識している。

四について

 御指摘の「中央構造線の両端」が具体的に何を指すのか明らかではないが、長期評価において、中央構造線断層帯は、東側の金剛山地東縁では西傾斜十五度から四十五度(深さ三百メートル以浅)、西側の伊予灘では高角度北傾斜(深さ二キロメートル以浅)であると評価していると認識している。

五について

 御指摘の「ダメージゾーン」が何を指すのか明らかではなく、お答えすることは困難である。

六について

 長期評価においては、中央構造線断層帯周辺では「全体として北西―南東方向の縮みがみられる」と評価しているところであり、伊予灘について、特に、御指摘のように「歪みが溜まっている」と評価しているものではない。中央構造線断層帯周辺については、長期評価が公表された以後も関係機関において地殻変動の観測を継続しているところであるが、現時点において長期評価を変更すべき特段の状況の変化は報告されていない。

七について

 長期評価において、中央構造線断層帯については、「石鎚山脈北縁西部の川上断層から伊予灘の佐田岬北西沖に至る区間が活動すると、マグニチュード八・〇程度もしくはそれ以上の地震が発生する」と推定されると評価している。

八について

 伊方発電所についての核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)及び同法の規定に基づく原子力規制委員会規則等に定める基準(以下「新規制基準」という。)に係る適合性審査において、四国電力株式会社(以下「四国電力」という。)は、中央構造線断層帯に加え、「別府―万年山断層帯」までの約四百八十キロメートルの区間にわたる地震を考慮し、御指摘の「マグニチュード八・〇以上」の地震を想定した評価を行っており、原子力規制委員会はこれを妥当であると判断している。

九について

 御指摘の「伊方原発の前面海域」の具体的な範囲が明らかではないが、四国電力が、伊方発電所の敷地周辺の海域において、活断層の有無等を調べるための調査を実施していることは承知している。お尋ねの「海岸から活断層までの距離」が、具体的にどの活断層までの距離を指すのか必ずしも明らかではないが、二についてでお答えしたとおり、伊方発電所の敷地沖合約六キロメートルから八キロメートルのところを中央構造線断層帯が通過していると認識している。

十について

 四国電力が、伊方発電所の敷地周辺において、活断層の有無等を調べるための調査を実施し、伊方発電所についての新規制基準に係る適合性審査において、原子力規制委員会はこれを妥当であると判断していることから、伊方発電所の安全性を確認するために、平成二十八年熊本地震を契機に御指摘の「海陸統合地震波探査」を早急に実施すべきであるとは考えていない。

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