QUESTIONS質問主意書

第193回国会 「共謀罪及びテロ等準備罪に関する質問主意書」(2017年2月14日)

質問主意書

質問第二八号

共謀罪及びテロ等準備罪に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年二月十四日

福島 みずほ   

       参議院議長 伊達 忠一 殿

   共謀罪及びテロ等準備罪に関する質問主意書

一 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「パレルモ条約」という。)は、二〇〇〇年にイタリアのシチリア島パレルモで調印された。パレルモ条約の趣旨とパレルモ条約が調印された理由を政府はどのように理解しているか明らかにされたい。

二 パレルモ条約のなかに「テロ対策」という趣旨の文言が存在するか明らかにされたい。

三 パレルモ条約は「テロ対策」と関係ないと考えるが、関係があることを国際連合などの機関が明記した文書が存在するならば示されたい。また、政府がいうところの「テロ対策」とパレルモ条約との関係性が記された文書又は法令上の規定が存在するか明らかにされたい。

四 パレルモ条約を締結するためには国内法の制定が必要だとする理由を明らかにされたい。

五 パレルモ条約第二条の「組織的な犯罪集団」の定義には、「金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため」という要件が規定されている。これまで国会に三回提出され、かつ三回とも廃案になった共謀罪を新設するための法律案にこの要件が規定されていたか明らかにされたい。要件が規定されていなかったとしたら、その理由を示されたい。

六 国会に三回提出され、かつ三回とも廃案になった共謀罪を新設するための法律案に「テロ対策」又は「テロ」という文言が存在したか明らかにされたい。

七 政府は、これまでパレルモ条約を締結するためには共謀罪の新設が必要だと説明していたが、現在は、パレルモ条約を締結するためにはテロ等準備罪の新設が必要だと説明している。同じ条約を締結するために新設が必要だと説明している共謀罪とテロ等準備罪は、同じ趣旨の罪であるのか明らかにされたい。仮に違うものだとしたらどのような点が違うのか明らかにされたい。

八 政府が新設を検討しているテロ等準備罪の「等」とは何か明らかにされたい。

九 政府の考える「テロ」の定義を明らかにされたい。

十 「テロ行為」のための共謀に限定して処罰する場合、どのような措置を講ずれば「テロ行為」のための共謀に限定することが可能であると考えているのか明らかにされたい。

十一 組織的犯罪集団に係る者がATMで金員を下ろす行為は、テロ等準備罪の「準備」にあたるか明らかにされたい。

十二 組織的犯罪集団に係る者の二人が組織的犯罪に必要な金員について共謀する行為は、テロ等準備罪の「準備」にあたるか明らかにされたい。

十三 何ら犯罪と関係のない者同士が相談して生活費のために金員を下ろす行為と、組織的犯罪集団に係る者が組織的犯罪に必要な金員について共謀の上、金員を下ろす行為は、外見上は、全く同じである。前記十一又は前記十二がテロ等準備罪の「準備」にあたる場合、前記の金員を下ろす行為がテロ等準備罪の「準備」にあたるか、どのように判断するのか明らかにされたい。

十四 前記十三で述べたように、テロ等準備罪の「準備」にあたるか、外見上判断することは困難であり、「準備」について立証するものは、基本的に「自白」しか存在しない。準備の段階で犯罪が成立し、逮捕勾留が可能だとすると、被疑者に対する自白の強要につながるのではないか。政府の認識を明らかにされたい。

十五 テロ等準備罪の「準備」行為と予備罪とは何が違うのか明らかにされたい。

十六 インターネット上のメール、ライン、フェイスブックなどでのやりとりであっても、テロ等準備罪における共謀が成立する場合があり、これらによるやりとりがテロ等準備罪の成立要件から一律には除外されないと理解して構わないか、見解を示されたい。

十七 日本が締結した条約のうち、留保を付して締結した条約にはどのようなものがあるのか。また、日本が留保を付して締結した条約がいくつあるのか明らかにされたい。

十八 パレルモ条約を締結するにあたり国内法に共謀罪を新設した国は、二箇国にすぎないが、パレルモ条約第三条の定める「越境性」を規定した国内法を制定した国はあるか明らかにされたい。

  右質問する。

答弁書

答弁書第二八号

内閣参質一九三第二八号

  平成二十九年二月二十四日

内閣総理大臣 安倍 晋三   

       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員福島みずほ君提出共謀罪及びテロ等準備罪に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

   参議院議員福島みずほ君提出共謀罪及びテロ等準備罪に関する質問に対する答弁書

一から三までについて

 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「本条約」という。)は、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うための協力を促進することを目的としている。

 また、お尋ねの「「テロ対策」という趣旨の文言」及び「政府がいうところの「テロ対策」」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、本条約において「テロ対策」という文言は用いられていないものの、本条約を採択した平成十二年の国際連合総会決議第二十五号には、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約が、とりわけ、マネー・ローンダリング、腐敗、絶滅危惧種の野生動植物の不正な取引、文化財に対する犯罪等の犯罪活動及び拡大している国際的な組織犯罪とテロリストによる犯罪活動とのつながりとの戦いのための有効な手段であるとともに国際協力のために必要な法的枠組みとなることを強く確信し」との趣旨の記載があると承知している。

四について

 政府は、一般に条約を締結するに当たっては、誠実にこれを履行するとの立場から、国内法制との整合性を確保することとしている。本条約の締結についても、このような方針の下に鋭意検討を行った結果、本条約が定める義務については、現行の国内法制で必ずしも担保されていないことから、締結に当たり新たな立法措置が必要であると考えている。

五及び六について

 御指摘の各法律案では、改正後の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)第六条の二の罪(以下「組織的な犯罪の共謀罪」という。)において、同法第三条等の文言を踏まえ、「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもの」等と規定することとし、本条約第二条(a)の「組織的な犯罪集団」や「金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため」に対応する文言を規定することとはしなかったものである。

 また、御指摘の各法律案においては、「テロ対策」又は「テロ」という文言は用いていなかった。

七及び十一から十六までについて

 現在、組織的な犯罪の共謀罪に関する過去の国会における御議論を踏まえ、本条約第五条1(a)(i)に規定する行為を犯罪とするための法整備の在り方として、テロ組織を含む組織的な犯罪集団と関わりがない方々が処罰の対象とならないことを明確にし、また、合意に加えて実行の準備行為が行われた場合に限り処罰の対象とするものとすること等を検討中である。もっとも、当該法整備に係る法律案については、現在、成案を得るべく検討中であり、その具体的な内容等に係るお尋ねについて、現時点でお答えすることは困難である。

八について

 一般に、テロ組織を含む組織的な犯罪集団は、組織の維持及び拡大等のため様々な犯罪に関与するものであり、お尋ねの「等」とは、テロ組織を含む組織的な犯罪集団が関与して実行されるテロ行為以外の組織犯罪を指す。

九について

 お尋ねの「テロ」がテロリズムを指すのであれば、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受入れ等を強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうと承知している。

十について

 お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。

十七について

 我が国が留保を付して締結した条約の最近の例として、第百八十九回国会において締結を承認された商標法に関するシンガポール条約(平成二十八年条約第五号)が挙げられる。

 また、これまで我が国は膨大な数の条約の締結を行っていることから、我が国が留保を付して締結した条約の数をお答えすることは困難である。

十八について

 一般的に、他国が条約を国内で実施するに当たりいかなる立法措置を講じているかについて、我が国として必ずしも網羅的にその詳細を承知しているわけではないが、例えば、セントクリストファー・ネーヴィスは、二千二年、当該時点で既に存在していた判例上の共謀罪に加えて、本条約上の義務をより確実に履行するため、新たに国際的な組織犯罪に関する共謀罪を規定する国内法を整備したと承知している。

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