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『虎に翼』① | 福島みずほ公式サイト(社民党 参議院議員 比例区)

NHK朝のドラマ『虎に翼』が毎回心に突き刺さる、励まされる

近現代史を一緒に生きるという感じがしている。ヤミ米を食べなくて餓死してしまったという山口判事の事はもちろん知っていた。しかしこれがドラマであの花岡さんが、となるとリアリティーが全く違ってくるのだ。心に本当に突き刺さってくる。

まだ、女性の法律家が1人もいなかった日本において、明治大学で勉強を始めた女性たち。法学をやろうと思う女性たちの気持ちや行動を見ていると、10代の頃、20代初めの頃を本当に思い出す。大教室で、授業を聞いていた頃を思い出す。

寅子さんたちがみんなで模擬裁判をやっていた時に、男子学生が揶揄し、からかう。激怒する女子学生たち。

女性が法学を勉強するのにこんな扱いだったのだ。また、法律家になれるかどうか明確でなかった時に法学を志し、弁護士になろうとしたことなど、本当に素晴らしい。

私は、なぜ法学を勉強するのなどを聞かれた事は1度もない。それもこれも先輩の女性たちが道を切り拓いてくれたからだと心から感謝をしている

1976年司法研修所において、男が命をかける司法界に女が来るのは許せないと裁判官出身の事務局長が発言し、大問題となった。他の裁判教官のなかにも、2年間の司法研修所生活を終えたら、裁判官、検察官、弁護士になろうなどとは思わず、家庭に入ってその能力を腐らせて、子育てをするのが良いと発言、勉強が好きな女性は議論好きで嫌いだなどの発言もあり。
これらの発言に対して、当時の司法修習生たちが大きく動き、国会で質問が出たり、大問題となり、この年の10月には、日本弁護士連合会が報告書をまとめている。
この時私は大学生だったが、罷免要求に賛同してサインをしたことを覚えている。

本当にひどい発言である。
その後、私が就職する時もまだ困難があった時代であったと思う。弁護士の機関誌である「自由と正義」に書いたのだが、当時アンケートを取ったことがある。株主総会の壇上に、女性の弁護士が座っていたら、総会屋の抑えが効かないなどということを言われたと言う人もいた。今はもうそんなことはないだろう。

私は弁護士になってから、女性の弁護士で嫌だと言われた事は1度もない。むしろ、私は、離婚事件やセクシャルハラスメントや女性の人権問題を多く手がけてきたために、女性の弁護士で本当によかった、話がしやすかったとよく言われた。ぜひ弁護団の中に女性の弁護士を入れてほしいと言われ入ったことも何度もある。

女性であることはハンデイではなく、むしろ可能性になったのである。司法試験に合格をしたときに、先輩の弁護士である中島通子さんや林陽子さんなどがお祝いの会食会を設けてくれた。受験生の時からがんばれ、がんばれ、早く試験に受かって一緒に活動しようと言われていた事は本当にラッキーだった。

先輩の弁護士たちがものすごく頑張って道を切り拓いてきてくれていたのである。そのことを痛感をしている。感謝しかない。

戦前、妻は無能力者とされ、妻は婚姻により夫の家に入るとされ、戸主およびその家族は、その家の名前を名乗るとされ、結婚には、親の同意が必要であり、相続は基本的に長男相続であった。姦通罪も男女不平等。

憲法24条は、家族の中の個人の尊厳と両性の本質的平等を決めた。憲法の中で、個人の尊厳という言葉が入っているのはここだけである。憲法24条がようやくできて、この憲法のもとで、民法の親族編相続編が大改正になる。家制度が廃止されたのである。民法の大改正のときにはこのドラマの中に描かれているように社会が壊れるなどといった議論が起きる。それを頑張って改正をするのである。

寅子さんが焼き鳥を包んでもらった新聞に、日本国憲法のことが載っている。憲法14条の法の下の平等などに心を踊らされた人はたくさんいるだろう。もちろん憲法9条も。

さまざまな苦難や犠牲を払って獲得した憲法のもとで、法律が変わり、新しい社会を作ろうと努力をし続けているということがよくわかる。
私は、戦後、家庭裁判所ができた事はもちろん知っていたが、こんな形でできたという事は知らなかった。少年事件を手がける弁護士たちに聞くと、宇田川さんという名で演じられている人物は確かに存在し、がんばって、家庭裁判所を作り、愛の裁判所という事はやはりキーワードだったそうだ。
戦災孤児の問題など、まさに放置された問題ではないだろうか。
今、空襲議員連盟で、法案を作り、成立させようとしているが、これも別の意味で戦災孤児の問題でもある。どれだけの辛苦をなめてきたのかと思う。

改めて、今の家庭裁判所が愛の裁判所になっているかということもつくづく思う。原点に帰って頑張りたいものである。

そして素晴らしいのは、寅子さんがヒロインであり、日本で初の弁護士、日本で初の裁判官になり、道を切り拓いてきた事はもちろんだが、完璧な人間としては描かれておらず、失敗もしたり、挫折もしたり、苦労しながらやっていることが描かれているのである。そして彼女を取り巻く人、それぞれも一人一人がまさにきっちり描かれていて、それぞれにとても感情移入をしてしまう。

戦う女、戦わない女、戦えない女と言うけれど、どれも一人一人がかけがえのない人であり、リスペクトされるべき存在なのである。

はるさん、花江さん、よねさん、梅子さん……、家事を切り盛りしながら、あるいはさまざまな悩みを抱えながら、限界を感じたりしながら、必死で生きている。
このドラマは、それぞれの女性たちに優劣をつけたり、裁いたりなんかしない。そして、そこで描かれているのはやはりシスターフッドである。

それにしても、伊藤沙莉さんはじめ、みんな演技がとてつもなくうまい。さまざまな泣くシーンや顔の表情など、本当にリアリティーがあってうまいと思う。

宇田川さんが言う。「法律ちゅうもんはな、縛られて死ぬためにあるんじゃない。人が幸せになるためにあるんだよ」
その通り。そしてそれは政治に置き換えてもいいことである。

私は、日本国憲法が大好きで、憲法9条はもちろんのこと法の下の平等を規定した憲法14条、憲法24条、個人の尊重と幸福追求権を規定した憲法13条など大好きである。
憲法が、六法全書の中に閉じ込められているのではなく、まさに日々の生活や人生に大きく影響を与えていることをこれほどまでに描いたドラマはあんまり見たことがない。すごく嬉しい。

戦前の法廷では、検察官と裁判官が壇上にいて、弁護士は下にいる。さまざまなことが本当に変わったのだ。

三淵嘉子さんは、広島、長崎の原爆投下は、国際法違反であるとした判決の右陪席で、いわゆる下田事件の判決を出している。戦争を起こした政府は、責任があるということも言っている。判決は棄却判決だが、この判決を味わって読んでみたい。三淵さんの平和への思いを感じている。

『虎に翼』は目が離せない。毎回毎回ハラハラドキドキする要素があるからである。登場人物、それぞれに感情移入して、素直に感じ、感動して、泣き、喜び、心配をしてしまう。

冒頭の歌の中でどこまでも飛んでいけというのは自分に対しても、そしてたくさんの人に対しても言いたい言葉でもある。どこまでもどこまでも自由に飛んで行きたい。

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